パケット配布のための経路の選択

シスプレックス・ディストリビューターは、動的 XCF インターフェース (IPCONFIG または IPCONFIG6 ステートメントに DYNAMICXCF パラメーターを指定) を使用して、すべての着信パケットをターゲット・スタックに配分します。z/OS 以外の層 1 ターゲットへの経路選択の決定方法については、DataPower によるシスプレックス分散を参照してください。

動的 XCF インターフェースを使用することには幾つかの利点 (構成の単純化など) があります。その理由は、シスプレックス環境内の既存 XCF 通信リンクを利用可能で、すべてのターゲット・システムに対して分離した通信パスの定義が不要だからです。このことが特に有用なシナリオとしては、ターゲット・システムに直接ネットワーク接続機能がなく、ルーティング・スタックのネットワーク接続機能に依存する場合です。

シスプレックス・ディストリビューターには、DVIPA パケットを転送するための代替ネットワーク・パスの選択を可能にする最適化ロジックも組み込まれています。この最適化ロジックは、以下の構成のシスプレックス・ディストリビューターで自動的に実行されます。

このような最適化により、同一 CPC 内部では、DVIPA パケットの転送のための最良のパフォーマンス特性が提供されます。

ルーティング・スタックとターゲット・スタックが別 CPC にある構成では、以下の場合、動的 XCF インターフェース以外のインターフェースを使用して分散 DVIPA パケットを転送するほうが適切な場合があります。

これらの構成では、代替ネットワーク接続経由で DVIPA パケットを転送することにより実際にパフォーマンスを向上させる (つまり待ち時間と CPU コストの削減) ことができ、その一方でシスプレックス XCF インターフェースの使用率は減少します。

TCP/IP プロファイルの VIPADYNAMIC ブロックで VIPAROUTE ステートメントを使用すると、DVIPA パケットをターゲット・スタックに転送するための経路選択とインターフェース選択の面で、シスプレックス・ディストリビューターのロジックに影響を与えることができます。VIPAROUTE ステートメントを使用することによって、宛先またはターゲット IP アドレスとしてターゲット・スタック上のどの IP アドレスを経路ルックアップ選択時に使用するか指示可能です。シスプレックス・ディストリビューターは、着信パケットの処理時に、一致する VIPAROUTE ステートメントが定義済みかどうか判別し、定義済みの場合は、TCP/IP スタックは、ターゲット IP アドレスに到達するために使用可能な最適経路を戻します。その後、着信パケットは、外部ヘッダー内の VIPAROUTE ターゲット IP アドレスの宛先を使用してカプセル化され、ターゲット・スタックへ転送されます。IPv4 パケットをカプセル化する場合には Generic Routing Encapsulation (GRE) が使用され、IPv6 パケットをカプセル化するには外部 IPv6 ヘッダーが使用されます。これにより、ルーティング・スタックとターゲット・スタックが同一 MVS イメージ上、同一 CPC 上、またはその両方にある場合に最適化された通信パスを維持しながら、異なる CPC 間で DVIPA パケットを転送するための最適なインターフェースを選択可能となります。

動的 XCF インターフェースをまったく使用したくない場合は、動的経路を定義する際に、動的 XCF インターフェースを使用してターゲット・スタックの IP アドレスに到達するためのコストが、その他のインターフェースを使用して IP アドレスに到達するためのコストより高くなるようにする必要があります。詳しくは、OSPF および RIP (IPv4 および IPv6) を構成するステップを参照してください。これを行わないと、通常ルーティング・テーブルで動的 XCF インターフェースが選択された場合には、動的 XCF インターフェースが使用される可能性があります。動的 XCF インターフェースを使用する経路のコストを高くすることによって、ほとんどの DVIPA トラフィックの転送用にはその他のインターフェースを使用し、優先ネットワーク・インターフェースに障害が起こった場合のバックアップとして、動的 XCF インターフェースを維持しておくことができます。

次のケースでは、VIPAROUTE が指定されていても、動的 XCF インターフェースが配布に使用されます。

これらの条件が検出されると、配分側スタックが最初に接続要求をターゲット・スタックに送付しようとする場合と同様に、配分側スタックでメッセージが発行されます。

動的 XCF アドレスは、VIPAROUTE 定義が使用される場合でもやはり構成する必要があります。その理由は、シスプレックス・ディストリビューターは、シスプレックス内の個々のターゲット TCP/IP スタックを識別するために、引き続き動的 XCF アドレスを使用するからです。また、以下のように、シスプレックス内通信を今も動的 XCF 接続に依存している機能も幾つかあります。