RIP は距離ベクトル・アルゴリズムを使用して、パス内のホップの数に基づいて、宛先への最善のパスを計算します。OSPF は、リンク状態または shortest path first アルゴリズムを使用します。
TCP/IP スタックでポリシー・ベース・ルーティングが使用され、ルーティング・ポリシーが動的ルーティング・パラメーターを使用して構成される場合は、ポリシー・ベース経路テーブルに対する動的ルーティング・サポートを提供するために、OMPROUTE に追加構成は必要ありません。ルーティング・ポリシーで指定される動的ルーティング・パラメーターは、TCP/IP スタックによって OMPROUTE に提供され、OMPROUTE によって計算される動的経路のスコープを制御します。この機能の説明については、ポリシー・ベース・ルーティングを参照してください。
OSPF および RIP (IPv4 および IPv6) を構成するには、以下のステップを実行します。
OMPROUTE 構成ファイル内に OSPF 構成ステートメントの ROUTERID パラメーターをコーディングして、ルーター ID を割り当てます。この値は、OMPROUTE 構成ファイルで定義された OSPF_INTERFACE の いずれかの IP アドレスでなければなりません。 OSPF 構成ステートメントの ROUTERID パラメーターを コーディングしない場合、OMPROUTE は、 ルーター ID として OSPF_INTERFACE ステートメントの 1 つから IP アドレスを選択します。 動的 VIPA (DVIPA) はシスプレックス内の z/OS® ホスト間で移動できるため、ルーター ID は、動的 VIPA ではなく物理インターフェースまたは静的 VIPA の IP アドレスにする必要があります。OSPF ステートメントの ROUTERID パラメーターに関する規則およびガイドラインについての詳細は、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。
図 1 に示されたネットワーク例では、ルーター ID は各 OMPROUTE ルーターを表す静的 VIPA アドレスにセットされています。TCPCS4 は ROUTERID=4.4.4.4 を持ち、TCPCS7 は ROUTERID=7.7.7.7 を持っています。
OMPROUTE 構成ファイル内に IPV6_OSPF 構成ステートメントの ROUTERID パラメーターをコーディングして、IPV6_OSPF ルーター ID を割り当てます。 このルーター ID には、IPv6 自律型システム内のルーター全体で一意性が確保されるように配慮された IPv4 スタイルの任意の小数点付き 10 進数値 (0.0.0.0 を除く) を割り当てられます。IPV6_OSPF 構成ステートメントの ROUTERID パラメーターがコーディングされずに、IPv4 OSPF プロトコルも使用される場合、OMPROUTE は IPv6 OSPF ルーター ID として IPv4 OSPF ルーター ID を使用します。IPv4 OSPF プロトコルが使用されない場合、IPV6_OSPF ステートメントの ROUTERID パラメーターを指定する必要があります。IPV6_OSPF ステートメントの ROUTERID パラメーターに関する規則およびガイドラインについての詳細は、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。
図 2 に示しているネットワーク例では、ROUTERID=64.64.64.64 を使用して、TCPCS64 の IPV6_OSPF ステートメントの ROUTERID パラメーターが明示的に構成されます。
複数のエリアを持つすべての OSPF AS は少なくとも 1 つのバックボーン・エリアを持つ必要があります。バックボーンは常に、エリア番号 0.0.0.0 で識別されます。複数のエリアを持つネットワークでは、バックボーンがエリア間を接続するコアの役割を果たします。他のエリアとは異なり、バックボーンのサブネットは物理的に切り離すことができます。この場合、バックボーンの論理的な接続は、中間にある非バックボーン・エリアを経由して、バックボーン・ルーター間に仮想リンクを構成することにより維持されます。詳しくは、ステップ 8 の手順を参照してください。
複数のエリアに接続されるルーターは、エリア・ボーダー・ルーターとして機能します。すべてのエリア・ボーダー・ルーターは、バックボーンの一部です。したがって、エリア・ボーダー・ルーターは、バックボーン IP サブネットに直接接続するか、または仮想リンク上の別のバックボーン・ルーターに接続されていなければなりません。
OSPF が経路の計算に使用する情報とアルゴリズムは、宛先が同一エリア内にあるか、OSPF AS 内の異なるエリアにあるか、または OSPF AS の外部にあるかによって変わります。すべてのルーターが、そのエリア内のすべてのリンクのデータベースを維持管理します。shortest path first アルゴリズムを使用して、エリア内の宛先への最適経路をこのデータベースから計算します。エリア間の経路は、OSPF AS の他のエリア内にある宛先に対して、エリア・ボーダー・ルーターが発信する要約公示に基づいて計算されます。外部経路 (例えば、RIP AS 内にある宛先への経路) は、AS 境界ルーターが発信し、OSPF AS 全体に流される AS 外部公示から計算されます。
AREA
Area_Number=0.0.0.0;
AREA
Area_Number=1.1.1.1;
ルーターが接続されるエリアを定義するには、IPV6_AREA 構成ステートメントを使用します。IPV6_AREA ステートメントを使用しない場合、デフォルトでは、すべての IPv6 OSPF インターフェースがバックボーン・エリアに接続されます。サンプル・ネットワーク内で、TCPCS64 と TCPCS67 はエリア・ボーダー・ルーターであり、バックボーン・エリア (0.0.0.0) とエリア 6.6.6.6 の両方に属します。
IPV6_AREA
Area_Number=0.0.0.0;
IPV6_AREA
Area_Number=6.6.6.6;
オプションとして、エリアをスタブ・エリアとして定義することができます。AS 外部公示はこのスタブ・エリア内には流されません。 さらに、エリア間経路の要約公示のスタブ・エリアへの発信は抑止して、 一般に完全スタブ・エリアとして知られるものを作成することができます。
この場合でも、エリア・ボーダー・ルーターはデフォルトの経路をスタブ・エリアに公示するので、スタブ・エリアにとって外部である宛先に到達できます。スタブ内部の不明な宛先用のトラフィックは、デフォルト経路を使用してエリア・ボーダー・ルーターに転送されます。そのエリア内のルーターは、AS の外部を宛先とするトラフィック用にデフォルトの経路を使用することもできます。ボーダー・ルーターは、所有しているより完全なルーティング情報を使用して、このトラフィックをその宛先に向けて該当のパスに転送します。
別のオプションとして、IP アドレス範囲を使用して、エリアから発信される要約公示の数を制限する方法があります。IPv4 では、範囲は IP アドレスとアドレス・マスクによって定義されます。 宛先アドレスと範囲 IP アドレスに範囲マスクが適用された後で、両方のアドレスが一致すれば、宛先は該当範囲内にあると見なされます。IPv6 においては、範囲は IP アドレスの接頭部と接頭部の長さによって定義され、範囲の接頭部の長さで、宛先アドレスと範囲 IP アドレスが一致していれば、宛先は範囲内に入っていると見なされます。
エリア・ボーダー・ルーターでエリア用の範囲が構成されると、ボーダー・ルーターは、その範囲に含まれるエリア内の宛先に対する要約公示を抑止します。抑止された公示は、ボーダー・ルーターが接続されている他のエリアには発信されている場合があります。あるいは、エリア・ボーダー・ルーターは、該当範囲についての要約公示を 1 つ発信することも、公示をまったく発信しないこともあります。これは、構成ステートメントで選択されているオプションによって決まります。
次のステートメントは、OSPF エリアを スタブ・エリアとして構成します。 Import_Summaries=No パラメーターによって、スタブ・エリアへのエリア間経路の要約公示は抑止され、完全スタブ・エリアが作成されます。
AREA
Area_Number=2.2.2.2
Stub_area=Yes
Import_Summaries=No;
RANGE
IP_Address=9.67.101.0
Subnet_Mask=255.255.255.0
Area_Number=1.1.1.1
Advertise=No;
次のステートメントは、IPv6 OSPF エリアを スタブ・エリアとして構成します。 Import_Summaries=No パラメーターによって、スタブ・エリアへのエリア間経路の要約公示は抑止され、完全スタブ・エリアが作成されます。
IPV6_AREA
Area_Number=1.1.1.1
Stub_area=Yes
Import_Prefixes=No;
サンプル・ネットワークでは、 次の IPV6_RANGE ステートメントが TCPCS67 上に構成され、 その結果 TCPCS67 は、2001:0DB8:0:31::/64 接頭部内のすべての 宛先を、2001:0DB8:0:31::/64 接頭部への単一の経路として、 バックボーン・エリア (エリア 0.0.0.0) 内に公示します。
IPV6_RANGE
Prefix=2001:0DB8:0:31::/64
Area_Number=6.6.6.6
Advertise=Yes;
OMPROUTE は、未定義のインターフェースを無視するように構成されなかった場合、OMPROUTE に対して定義されていないスタック・インターフェースをデフォルト値によって構成します。 それらの値が、望ましくない場合があります。 例えば、サブネット・マスクにはクラス・マスクが使用され、MTU 値には 576 が使用されます。さらに、OMPROUTE はスタックの値をデフォルト値でオーバーライドします。 そのような状況にならないようにするために、RIP または OSPF を使用していないインターフェースも含めてすべてのインターフェースを構成するか、または未定義のインターフェースを無視するように OMPROUTE を構成してください。
z/OS Communications Server は、ホスト・アドレスにサブネットワークのブロードキャストかまたはネットワーク・アドレスを使用することに対して、RFC 規則を強制します。(ホスト部分にすべて 1 を持つアドレスは、サブネット・ブロードキャストです。 ホスト部分にすべて 0 を持つアドレスは、サブネットのネットワーク・アドレスです。) したがって、OSPF_INTERFACE、RIP_INTERFACE、または INTERFACE ステートメント上の subnet_mask は、そのサブネットにアドレスのホスト部分にすべて 0 またはすべて 1 のホーム・アドレスがないように、十分な 0 ビットを持たなければなりません。例えば、サブネットが 10.1.1.1 および 10.1.1.2 の 2 つのホーム・アドレスを持っている場合、サブネット・マスクは少なくとも 2 ビットの 0 を持っていなければなりません。例えば、255.255.255.252 です。ただし、サブネットが 10.1.1.1、10.1.1.2、10.1.1.3、および 10.1.1.4 の 4 つのホーム・アドレスを持つ場合は、サブネット・マスクの少なくとも 3 つのビットにゼロが入っていなければなりません (例えば、255.255.255.248)。この場合は、そのサブネットが持つことのできるホーム・アドレスの最大数は 6 つ (10.1.1.1 から 10.1.1.6 まで) です。一般的に、サブネット・マスクが n 個の 0 ビットを持っていると、((2**n)-2) 個の ホーム・アドレスがそのサブネットに存在できます。この制限は、ホーム・アドレスが 別の TCP/IP スタックに構成されていたとしても、適用されます。
OMPROUTE (OSPF) にマルチアクセス・パラレル・インターフェース (同一ネットワーク内に IP アドレスを持つ 1 次およびバックアップ冗長インターフェース) を構成する場合、常に OSPF_INTERFACE ステートメントに Parallel_OSPF パラメーターを使用して、各 OSPF インターフェースが 1 次かまたはバックアップかを指定します。OSPF_INTERFACE ステートメントの IP_address パラメーターがワイルドカード (*) を使用している場合、インターフェースに Name パラメーターも組み込んで、1 次とバックアップ を区別してください。 OSPF_INTERFACE ステートメントとそのパラメーターについて詳しくは、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。
Point-to-Point インターフェースの場合、OMPROUTE は宛先 IP アドレスを知っている必要があります。 OSPF または RIP がインターフェース上で実行される場合、 宛先 IP アドレスは、もう一方の端のルーターが検出されて OMPROUTE と情報を共用する際に 確認されます。さらに、OSPF または RIP を実行するインターフェースに宛先アドレスを定義すると、OMPROUTE は、その宛先アドレスへの経路を、近隣ルーターが完全な隣接になる前に確認し、公示できます。これは、近隣ルーターの検出に時間がかかる場合など、それが ただちに、かつ確実に使用可能になると期待されない場合に役立つことがあります。
インターフェースが単なる INTERFACE (OSPF または RIP を実行しない) の場合、DESTINATION_ADDR パラメーターを指定して、インターフェースのリモート・エンドのアドレスへのホスト経路を作成できます。
OSPF_INTERFACE
IP_Address=9.67.106.7
Name=CTC7TO4
Subnet_mask=255.255.255.0
Attaches_to_Area=1.1.1.1
Destination_Addr=9.67.106.4;
RIP_INTERFACE
IP_Address=9.67.103.7
Name= CTC7TO6
Subnet_mask=255.255.255.0
Destination_Addr=9.67.103.6
RIPV2=Yes;
INTERFACE
IP_Address=9.67.111.1
Name=CTCX
Subnet_mask=255.255.255.0
Destination_addr=9.67.111.2;
Point-to-Multipoint に対応したインターフェース (例えば、XCF および IUTSAMEH 接続を含む MPCPTP) の場合、OMPROUTE は、OSPF または RIP パケットを通信する必要のある他のルーター (近隣) の IP アドレスを知っている必要があります。ただし、ホストがこれらのネットワーク・タイプに接続したときに起こる基本シグナルによって、スタックは必要なアドレスを得ることができます。これに対して、OMPROUTE は、スタックからそれらの IP アドレスを確認します。 その結果、interface ステートメント上のその他のルーターの IP アドレスを 構成する必要はありません。
OSPF_INTERFACE
IP_Address=9.27.13.81
Name=XCFD00
Attaches_to_Area=1.1.1.1
Subnet_mask=255.255.255.0;
RIP_INTERFACE
IP_Address=9.27.23.81
Name=MPCA01
Subnet_mask=255.255.255.0
RIPV2=Yes;
INTERFACE
IP_Address=9.27.33.81
Name=XCFB00
Subnet_mask=255.255.255.0;
OSPF または RIP プロトコルがイーサネットのようなブロードキャスト・メディアを使用して通信する場合、これらのネットワークではブロードキャストとマルチキャストが可能です。したがって、OSPF または RIP パケットを他のルーターとの間で通信するために、OMPROUTE がネットワーク上の他のルーターの IP アドレスを知る必要はありません。OMPROUTE は、該当のブロードキャスト・アドレスまたはマルチキャスト・アドレスを使用して、ネットワーク上の他のルーターにパケットを送信します。他のルーターの IP アドレスは、それらのルーターから OSPF/RIP パケットを受信したときに得ます。ネットワークの指定ルーターの選択を補助するため、OSPF_INTERFACE に ROUTER_PRIORITY パラメーターを含める必要があります。
OSPF_INTERFACE
IP_Address=9.59.101.5
Name=TR1
Subnet_mask=255.255.255.0
Attaches_to_Area=1.1.1.1
Cost0=2
Router_Priority=1;
RIP_INTERFACE
IP_Address=9.29.107.3
Name=TR2
Subnet_mask=255.255.255.0
RIPV2=Yes;
INTERFACE
IP_Address=9.77.14.49
Name=ETHB00
Subnet_mask=255.255.255.0;
トークンリング・メディアに接続されたルーターがマルチキャスト MAC アドレス 0xC000.0004.0000 を listen しない場合、そのトークンリング・メディアを使用して、OSPF または RIP バージョン 2 プロトコルと通信する OMPROUTE については、トークンリング・マルチキャストを参照してください。
マルチキャストをサポートしないルーターを含むブロードキャスト・メディアとインターフェースを取る場合、そのインターフェースを非ブロードキャスト・ネットワーク・インターフェースとして構成できます。これにより、OMPROUTE は、マルチキャスト・アドレスを使用するのではなく、近隣アドレスにユニキャストするようになります。 ただし、ユニキャストするには、ネットワーク上にすべてのルーターを構成する必要があります。 そうしないと、マルチキャストされたパケットが受信されることはありません。
OSPF_INTERFACE に DR_NEIGHBOR と NO_DR_NEIGHBOR パラメーターの一方または両方を使用し、RIP_INTERFACE にブロードキャスト機能のある NEIGHBOR パラメーターを使用して、近隣ルーターを定義することも可能ですが、これは必要なく、またお勧めできません。これらのインターフェースで近隣ルーターを定義する場合には、そのすべてを定義しなければなりません。一部のものがインターフェースで定義されていると、OMPROUTE は RIP または OSPF を定義されていない近隣ルーターに伝えなくなります。
OMPROUTE が RIP プロトコルだけを使用する場合、VIPA インターフェースは INTERFACE ステートメントを使用して定義します。OMPROUTE が、OSPF だけ、または OSPF と RIP の両方を使用する場合は、VIPA インターフェースは OSPF_INTERFACE ステートメントを使用して定義します。
OSPF example:
OSPF_INTERFACE
IP_Address=4.4.4.4
Name=VIPA1
Subnet_mask=255.255.255.252;
non-OSPF example:
INTERFACE
IP_Address=6.6.6.6
Name=VIPA1
Subnet_mask=255.255.255.252;
物理ネットワーク・インターフェース上で、ネットワークに対してこれらの経路を公示するための条件は、以下のとおりです。
OSPF では、RANGE ステートメントは、サブネット・マスクに基づいたアドレス範囲に関する領域の外部に、VIPA を公示するためまたは公示しないため に使用できます。
動的 VIPA (DVIPA) の場合、リンク名は DVIPA の作成時にスタックがプログラムに基づいて割り当てます。したがって、DVIPA の場合、INTERFACE または OSPF_INTERFACE ステートメントにセットされた名前フィールドは、OMPROUTE によって無視されます。
スタックは多数の定義済み DVIPA および DVIPA 範囲を持つことができるので、DVIPA のみで使用できる追加のワイルドカード機能が、OSPF_INTERFACE ステートメントと INTERFACE ステートメントにあります。
DVIPA インターフェースの範囲は、OSPF_INTERFACE または INTERFACE ステートメントの Subnet_Mask パラメーターを使用して定義することができます。このようにして定義された範囲には、マスクと IP アドレスで定義されるサブネット内に入るすべての IP アドレスが含まれます。IP アドレス・パラメーターは、定義されている範囲のサブネット番号であり、その範囲にあるホスト・アドレスでないことが必要です。Subnet_Mask パラメーターの詳細情報は、このステップの前半にあります。
次の例では、10.138.65.81 から 10.138.65.94 までの範囲の DVIPA インターフェースが定義されています。
OSPF example:
OSPF_INTERFACE
IP_Address=10.138.65.80
Name=DVIPAs
Subnet_mask=255.255.255.240;
non-OSPF example:
INTERFACE
IP_Address=10.138.65.80
Name=DVIPAs
Subnet_mask=255.255.255.240;
次の例では、ホーム・アドレスが 10.138.65.98 であるインターフェースだけが定義されます。これは、この定義のサブネット番号 (IP_Address パラメーターと Subnet_mask パラメーターのバイナリー・ファイル AND 演算を使用して入手したもの) が 10.138.65.96 であるためです。この定義は、IP_Address パラメーターがこのサブネット番号に等しくないので、DVIPA ワイルドカードとして扱われません。
OSPF_INTERFACE
IP_Address=10.138.65.98
Name=DVIPA
Subnet_mask = 255.255.255.240;
次の例では、24 ビット・マスク (255.255.255.0) で IP アドレス 10.138.120.x および 10.138.121.x を DVIPA に指定しているので、10.138.120.0/24 と 10.138.121.0/24 の 2 つのサブネットになります。10.138.120.0/24 サブネットは 10.138.120.1 から 10.138.120.254 までの範囲となり、10.138.121.0/24 サブネットは 10.138.121.1 から 10.138.121.254 までの範囲となります。拡張ワイルドカード機能を持つ 2 つの OSPF_INTERFACE ステートメントを定義しています。
OSPF_INTERFACE
IP_Address=10.138.120.0
Name=DVIPAs
Subnet_mask=255.255.255.0;
OSPF_INTERFACE
IP_Address=10.138.121.0
Name=DVIPAs
Subnet_mask=255.255.255.0;
次の例では、23 ビット・マスク (255.255.254.0) で IP アドレス 10.138.120.x および 10.138.121.x を DVIPA に指定しているので、1 つにまとめられたサブネット 10.138.120.0/23 になります。10.138.120.0/23 サブネットは、10.138.120.1 から 10.138.121.254 までの範囲となります。
OSPF_INTERFACE
IP_Address=10.138.120.0
Name=DVIPAs
Subnet_mask=255.255.254.0;
移動する可能性のある VIPA に OMPROUTE を構成するための方法としてお勧めできるのは、あるスタック上にいつか存在する可能性のあるすべての VIPA を使用して、その TCP/IP スタック上に OMPROUTE を事前に構成することです。この方法で事前構成すれば、各 OMPROUTE は、そのスタックに追加される可能性のある VIPA について準備できます。VIPA が特定の OMPROUTE のスタックに存在しない間は、構成情報は使用されません。ただし、VIPA がその OMPROUTE のスタックに存在する期間中は、OMPROUTE は構成情報を使用できます。この方法であれば、VIPA が TCP/IP スタック間で移動しても、各移動について OMPROUTE 構成を変更することなく対応できます。
このトピックで説明されている VIPA の事前構成を行っていない場合でも、VIPA が、対応する TCP/IP スタック上でアクティブになった時に適切に処理、公示されるように、OMPROUTE に VIPA を定義することができます。この構成を行うには、OMPROUTE 構成ファイルに該当の OSPF_INTERFACE または INTERFACE ステートメントを追加し、その後、MODIFY procname,RECONFIG コマンドを出して、OMPROUTE に構成ファイルを再読み取りさせます。
スタック・インターフェースに インターフェース定義を割り当てる方法 (ワイルドカードおよび明示的):
ワイルドカード・インターフェース定義は、 インターフェース定義を簡単に行う方法として便利な場合があります。 しかし、予期しない結果を避けるためには、その構文解析方法、 およびインターフェース定義のさまざまなタイプが相互に作用する方法を 必ず理解してください。 以下は、OMPROUTE が IPv4 スタック・インターフェースの OMPROUTE 構成ファイルで、一致する定義を検出する際に使用するアルゴリズムの概要です。
OMPROUTE に対して IPv6 インターフェースを構成するときは、以下のガイドラインを使用します。
インターフェースが TCP/IP スタックによって動的に生成される場合、その名前パラメーターは、TCP/IP スタックによって生成されるものに一致する必要があります。 TCP/IP スタックによって動的に生成されるインターフェースの名前は、以下のようになります。
動的 XCF インターフェースのルーティング・パラメーターがすべて同じになる場合は、ワイルドカード定義を使用できます。その場合、システム上で可能なすべての動的 XCF インターフェースについての知識や定義の作成は必要ありません。例えば、名前 EZ6* のワイルドカード定義は、TCP/IP スタック上で生成される可能性があるすべての動的 XCF インターフェースに一致します。EZ6XCF* のワイルドカード定義は、他の z/OS イメージへ接続するために生成される可能性があるすべての動的 XCF インターフェースに一致します。
次の定義は、 デフォルト値から変更した hello およびデッド・ルーター・インターバルで、 すべての IPv6 動的 XCF インターフェースを OMPROUTE に定義します。
IPV6_OSPF_INTERFACE
NAME=EZ6*
HELLO_INTERVAL = 30
DEAD_ROUTER_INTERVAL = 120;
hello およびデッド・ルーター・インターバルの 10 および 40 のデフォルト値が受け入れ可能ならば、この定義はさらに単純化されます。
IPV6_OSPF_INTERFACE
NAME=EZ6*;
次のサンプルは、 接頭部を定義した IPv6 OSPF インターフェースを示しています。
IPV6_OSPF_INTERFACE
NAME=OSAQDIO4L6
PREFIX=2001:0DB8:1::/48
PREFIX=2001:0DB8:2::/48;
IPv6 OSPF インターフェース上にこの方法で定義された接頭部は、 到達可能として公示され、OMPROUTE によって生成されたリンク LSA にも組み込まれるため、 それらがローカル接頭部であることは、リンク上のすべての IPv6 OSPF ルーターに認識されます。 OMPROUTE が IPv6 RIP も実行する場合は、IPv6 RIP フィルター操作で 認められれば、IPv6 RIP 自律型システムにも到達可能として公示されます。
次のサンプルは、 接頭部を定義した IPv6 RIP インターフェースを示しています。
IPV6_RIP_INTERFACE
NAME=OSAQDIO3L6
PREFIX=2001:0DB8:3::/48
PREFIX=2001:0DB8:4::/48;
IPv6 RIP インターフェースにこの方法で定義された 接頭部は、IPv6 RIP フィルター操作で認められれば、IPv6 RIP 自律型システムに 到達可能として公示されます。 OMPROUTE が IPv6 OSPF を実行し、RIP 経路をインポート する IPv6 AS 境界ルーターとして構成される場合は、IPv6 OSPF 自律型システムにも 到達可能として公示されます。
次のサンプルは、 接頭部を定義した IPv6 汎用インターフェースを示しています。
IPV6_INTERFACE
NAME=OSAQDIO2L6
PREFIX=2001:0DB8:5::/48
PREFIX=2001:0DB8:6::/48;
IPv6 汎用インターフェースにこの方法で定義された 接頭部は、OMPROUTE が IPv6 RIP を実行し、IPv6 RIP フィルター操作で 認められれば、RIP 自律型システムに到達可能として公示されます。 OMPROUTE が IPv6 OSPF を実行し、直接経路をインポート する IPv6 AS 境界ルーターとして構成される場合、IPv6 OSPF 自律型システムにも 到達可能として公示されます。
スタック・インターフェースに インターフェース定義を割り当てる方法 (ワイルドカードおよび明示的):
IPv6 インターフェースの場合は、 インターフェース名ワイルドカードを使用して、定義を単純化することができます。 しかし、予期しない結果を避けるためには、その構文解析方法、 およびインターフェース定義のさまざまなタイプが相互に作用する方法を、 必ず理解してください。 以下は、OMPROUTE が IPv6 スタック・インターフェースの OMPROUTE 構成ファイルで、一致する定義を検出する際に使用するアルゴリズムの概要です。
アルゴリズムは完了です。 このアルゴリズムの主要な結論は、次のとおりです。
コスト値を構成する方法は、OSPF プロトコルと RIP プロトコルで異なります。宛先への優先度が高い経路が、優先度の低い経路よりも必ず低いコストになるように OSPF リンクのコスト値を構成します。コストが高く、優先度の低い経路は、優先度の高い経路に障害が発生した場合を除き、使用されることはありません。
次の例では、図 1 に示したサンプル・ネットワークを使用しており、スタック上の特定のインターフェースに構成されたコストを表すために、「スタック (インターフェース)」という表記方法を使用しています。例えば TCPCS7(9.67.106.7) は、TCPCS7 上のインターフェース 9.67.106.7 用に構成されたコストを指します。これらの例は、サンプル・ネットワークの IPv4 部分を使用しますが、経路コストを計算する同じ方式が IPv6 部分にも使用されます。
TCPCS7 からルーター 3.3.3.3 への経路として以下の 3 つが可能です。
TCPCS7 からルーター 3.3.3.3 への優先経路が TCPCS4 を経由する場合、インターフェース・コストは、以下の式が真となるように構成する必要があります。
TCPCS7(9.67.106.7) + TCPCS4(9.67.101.4) < TCPCS7(9.67.102.7)
TCPCS7(9.67.106.7) + TCPCS4(9.67.101.4) < TCPCS7(9.67.100.7) +
8.8.8.8(9.67.105.8) + TCPCS4(9.67.101.4)
ある経路を別の経路より望ましいとする理由は無数にあります。OSPF リンク・コストを割り当てる 1 つの方法は、物理メディアの帯域幅に逆比例する値をコストにセットすることです。これにより、より高い帯域幅の経路がより低いコストを持つことになり、したがってより優先順位の高い経路になります。
TCPCS4 を経由する経路を優先経路にしたい場合、これは TCPCS7 からルーター 3.3.3.3 に直接行くコストを増やすことで実現できます。 これは、ルーター 3.3.3.3 上の 9.67.102.3 のアウト・メトリックか、TCPCS7 上の 9.67.102.7 のイン・メトリックのいずれかを増やすことで、実行できます。イン・メトリックおよびアウト・メトリックの値を増やす場合、宛先への到達コストが RIP 最大の 15 を超過しないように注意してください。
OSPF インターフェースのコスト値は、OSPF_INTERFACE ステートメントの COST0 パラメーターを使用して設定されます。RIP インターフェースのイン・メトリックおよびアウト・メトリックは、RIP_INTERFACE ステートメントの IN_METRIC および OUT_METRIC パラメーターを使用して設定されます。
IPv6 OSPF インターフェースのコスト値は、IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントの COST パラメーターを使用して設定されます。IPv6 RIP インターフェースのイン・メトリックおよびアウト・メトリックは、IPV6_RIP_INTERFACE ステートメントの IN_METRIC および OUT_METRIC パラメーターを使用して設定されます。
VIRTUAL_LINK ステートメントはリンクのエンドポイントのルーター ID を指定し、双方のエンドポイントに構成する必要があります。図 1 に示されたサンプル・ネットワークでは、エリア 1.1.1.1 へのバックボーン接続を復元するため、TCPCS4 と TCPCS7 の間に仮想リンクを次のように構成します。
TCPCS4:
VIRTUAL_LINK
Virtual_Endpoint_RouterID=7.7.7.7
Links_Transit_Area=1.1.1.1;
TCPCS7:
VIRTUAL_LINK
Virtual_Endpoint_RouterID=4.4.4.4
Links_Transit_Area=1.1.1.1;
IPV6_VIRTUAL_LINK ステートメントはリンクのエンドポイントのルーター ID を指定し、双方のエンドポイントに構成する必要があります。サンプル・ネットワークでは、エリア 6.6.6.6 へのバックボーン接続を復元するため、TCPCS64 および TCPCS67 の間に仮想リンクを次のように構成します。
TCPCS64:
IPV6_VIRTUAL_LINK
Virtual_Endpoint_RouterID=67.67.67.67
Links_Transit_Area=6.6.6.6;
TCPCS67:
IPV6_VIRTUAL_LINK
Virtual_Endpoint_RouterID=64.64.64.64
Links_Transit_Area=6.6.6.6;
最初のステップは、リンクをデマンド・サーキットとして定義することです。 これが行われると、インターフェースを介して送信されるリンク状態公示 (LSA) が定期的にリフレッシュされなくなります。実際に変更のあった LSA のみが公示されます。さらに、これらの LSA のエージングは、リンク状態データベースからエージアウトされないように使用不可になります。
実行できるもう 1 つのステップは、 このリンクにハロー抑止を定義することです。 ハロー抑止は、リンクがデマンド・サーキットで、かつ Point-to-Point か Point-to-Multipoint のいずれかである場合のみ意味を持ちます。 ハロー抑止では、OSPF hello パケットの定期的伝送が禁止されます。
OSPF インターフェースをデマンド・サーキットとして定義するには、最初に Demand_Circuit=YES パラメーターをグローバル OSPF 構成ステートメントに指定する必要があります。次に、デマンド・サーキットとして構成する 各インターフェースの OSPF_INTERFACE ステートメントに、Demand_Circuit=YES パラメーター を指定する必要があります。 OSPF_INTERFACE ステートメントの Hello_Suppression パラメーターを使用して、ハロー抑止を構成します。 OSPF_INTERFACE ステートメントでの Hello_Suppression パラメーターの構成について詳しくは、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。ハロー抑止を実装した場合、OSPF_INTERFACE ステートメントの PP_Poll_Interval パラメーターを使用して、近隣関係に障害があるがインターフェースは依然使用可能なときに、近隣関係を再確立するために OMPROUTE が近隣に連絡を試みる間隔を指定できます。
IPv6 OSPF インターフェースをデマンド・サーキットとして定義するには、 最初に Demand_Circuit=YES パラメーターを グローバル IPv6 OSPF 構成ステートメントに指定する必要があります。 次に、デマンド・サーキットとして構成する各インターフェースの IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントに、Demand_Circuit=YES パラメーターを 指定する必要があります。 IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントの Hello_Suppression パラメーターを使用して、ハロー抑止を構成します。 IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントでの Hello_Suppression パラメーターの構成について詳しくは、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。ハロー抑止を実装した場合、IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントの PP_Poll_Interval パラメーターを使用して、近隣関係に障害があるがインターフェースは依然使用可能なときに、近隣関係を再確立するために OMPROUTE が近隣に連絡を試みる間隔を指定できます。
Filter=(nosend,10.1.1.0,255.255.255.0);
個々の IPv6 RIP インターフェースの フィルターを構成するには、IPV6_RIP_INTERFACE ステートメントの FILTER パラメーターを使用します。 すべての IPv6 RIP インターフェースに適用されるフィルターを構成するには、 グローバル IPV6_RIP_FILTER ステートメントを使用します。 例えば、図 1 に示したサンプル・ネットワークで、2001:0DB8:0:A1B/64 接頭部を TCPCS4 から隠したい場合、TCPCS4 に次のフィルターを定義できます。
IPv6_RIP_Filter=(noreceive,2001:0DB8:0:A1B/64);
OMPROUTE は、同じ宛先に 2 つの経路がある場合どちらを選択するかを、異なるルーティング・プロトコルから得た優先順位、または OSPF AS 境界ルーターから提供された情報を使用して決めます。OMPROUTE が適用する優先順位の順序を説明するため、最初に幾つかの用語を定義しておく必要があります。
OSPF 外部経路は、マルチプロトコル比較値の設定を基に、2 つのカテゴリーに分類されます。OSPF AS に外部情報をインポートする AS 境界ルーターで比較値が Type1 に設定されている場合は、この情報を使用して生成される OSPF 外部経路は OSPF タイプ 1 外部経路になります。AS 境界ルーター上で比較値が Type2 にセットされている場合、生成された経路は OSPF タイプ 2 外部経路になります。例えば、図 1 のサンプル・ネットワークで、TCPCS7 (AS 境界ルーター) 上の比較値が Type1 にセットされている場合、TCPCS4 から TCPCS6 上の宛先 9.67.103.6 への経路は、OSPF タイプ 1 外部経路です。TCPCS7 上の比較値が Type2 にセットされている場合、経路は OSPF タイプ 2 外部経路です。
マルチプロトコルの比較
この比較値を構成することにより、複数の異なる自律システムからの経路が共存しているときに、それらの経路のコストをどのように取り扱うかを指定することができます。OMPROUTE の場合、この値は、OSPF または IPV6_OSPF 構成ステートメントに COMPARISON パラメーターを使用して構成できます。COMPARISON=Type1 を指定すると、異なる自律型システム (例えば、OSPF AS と RIP AS) の中で使用される経路コスト値は、比較できると見なされます。COMPARISON=Type2 を指定すると、異なる自律型システムで使用される経路コスト値は、比較できないと見なされます。
以上の定義を踏まえた上で、異なるプロトコルから入手した、または OSPF AS 境界ルーターによって提供された情報を使用して得た、同じ宛先への複数の経路からどれを選択するかに使用する優先順位の順序を、表 1 に示します。表 1 のソースの比較 は、複数の経路から選択する優先順位を使用するルーター上の比較値の設定 (OSPF 構成ステートメント上の COMPARISON パラメーターを使用した) を指します。経路 1 および経路 2 は、選択される指定可能な 2 つの経路です。
ソースの比較 | 経路 1 のタイプ | 経路 2 のタイプ | 選択される経路 |
---|---|---|---|
Type 1 | OSPF 内部 | RIP | OSPF 内部 |
Type 1 | OSPF 内部 | OSPF タイプ 1 外部 | OSPF 内部 |
Type 1 | OSPF 内部 | OSPF タイプ 2 外部 | OSPF 内部 |
Type 1 | RIP | OSPF タイプ 1 外部 | 最小コストの経路 |
Type 1 | RIP | OSPF タイプ 2 外部 | RIP 経路 |
Type 1 | OSPF タイプ 1 外部 | OSPF タイプ 2 外部 | OSPF タイプ 1 外部 |
Type 2 | OSPF 内部 | RIP | OSPF 内部 |
Type 2 | OSPF 内部 | OSPF タイプ 1 外部 | OSPF 内部 |
Type 2 | OSPF 内部 | OSPF タイプ 2 外部 | OSPF 内部 |
Type 2 | RIP | OSPF タイプ 1 外部 | OSPF タイプ 1 外部 |
Type 2 | RIP | OSPF タイプ 2 外部 | 最小コストの経路 |
Type 2 | OSPF タイプ 1 外部 | OSPF タイプ 2 外部 | OSPF タイプ 1 外部 |