OSPF および RIP (IPv4 および IPv6) を構成するステップ

RIP は距離ベクトル・アルゴリズムを使用して、パス内のホップの数に基づいて、宛先への最善のパスを計算します。OSPF は、リンク状態または shortest path first アルゴリズムを使用します。

始める前に

OSPF および RIP を構成するための一般的なステップは、以下のとおりです。詳細は、一般的なステップの後に記載してあります。
  1. グローバル構成オプションを設定します。
  2. OSPF プロトコルを使用する場合、OSPF ルーター ID を設定します。
  3. OSPF プロトコルを使用する場合、OSPF エリアを定義します。
  4. OSPF プロトコルを使用する場合、OSPF エリア間の情報交換を制限します。
  5. IPv4 OSPF または IPv4 RIP プロトコルを使用する場合、IPv4 インターフェースを定義します。
  6. IPv6 OSPF または IPv6 RIP プロトコルを使用する場合、IPv6 インターフェースを定義します。
  7. インターフェース・コスト (OSPF_INTERFACE、 RIP_INTERFACE、 IPV6_OSPF_INTERFACE、 および IPV6_RIP_INTERFACE) を定義します。
  8. OSPF プロトコルを使用する場合、仮想リンクを構成します。
  9. OSPF プロトコルを使用する場合、高コスト・リンクを管理します。
  10. RIP プロトコルを使用する場合、RIP フィルターを定義します。
  11. OSPF プロトコルを使用する場合、マルチプロトコル環境での経路優先順位を定義します。

TCP/IP スタックでポリシー・ベース・ルーティングが使用され、ルーティング・ポリシーが動的ルーティング・パラメーターを使用して構成される場合は、ポリシー・ベース経路テーブルに対する動的ルーティング・サポートを提供するために、OMPROUTE に追加構成は必要ありません。ルーティング・ポリシーで指定される動的ルーティング・パラメーターは、TCP/IP スタックによって OMPROUTE に提供され、OMPROUTE によって計算される動的経路のスコープを制御します。この機能の説明については、ポリシー・ベース・ルーティングを参照してください。

手順

OSPF および RIP (IPv4 および IPv6) を構成するには、以下のステップを実行します。

  1. グローバル構成オプションを設定します。 GLOBAL_OPTIONS ステートメントを使用して、OMPROUTE 処理に Ignore_Undefined_Interfaces パラメーターを設定します。未定義のインターフェースとは、明示的定義またはワイルドカード定義のいずれかである OMPROUTE インターフェース定義を使用して構成されていないスタック・インターフェースのことです。Ignore_Undefined_Interfaces パラメーターの値を YES に指定すると (Ignore_Undefined_Interfaces=YES)、OMPROUTE で未定義のインターフェースにデフォルト値が構成されることはなくなります。Ignore_Undefined_Interfaces を NO に設定すると、OMPROUTE では、スタック定義値をオーバーライドできるデフォルト値で未定義のインターフェースが構成されます。Ignore_Undefined_Interfaces のデフォルト値は、NO です。
    ヒント: Ignore_Undefined_Interfaces=YES と指定することによって、未定義のインターフェースが、ネットワーク接続に影響を及ぼす可能性があるデフォルト値で構成されないように設定できます。
  2. OSPF プロトコルを使用する場合、OSPF ルーター ID を設定します。 OSPF 自律型システム (AS) 内のすべてのルーターには、固有のルーター ID を割り当てる必要があります。
    • IPv4 OSPF

      OMPROUTE 構成ファイル内に OSPF 構成ステートメントの ROUTERID パラメーターをコーディングして、ルーター ID を割り当てます。この値は、OMPROUTE 構成ファイルで定義された OSPF_INTERFACE の いずれかの IP アドレスでなければなりません。 OSPF 構成ステートメントの ROUTERID パラメーターを コーディングしない場合、OMPROUTE は、 ルーター ID として OSPF_INTERFACE ステートメントの 1 つから IP アドレスを選択します。 動的 VIPA (DVIPA) はシスプレックス内の z/OS® ホスト間で移動できるため、ルーター ID は、動的 VIPA ではなく物理インターフェースまたは静的 VIPA の IP アドレスにする必要があります。OSPF ステートメントの ROUTERID パラメーターに関する規則およびガイドラインについての詳細は、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。

      図 1 に示されたネットワーク例では、ルーター ID は各 OMPROUTE ルーターを表す静的 VIPA アドレスにセットされています。TCPCS4 は ROUTERID=4.4.4.4 を持ち、TCPCS7 は ROUTERID=7.7.7.7 を持っています。

    • IPv6 OSPF

      OMPROUTE 構成ファイル内に IPV6_OSPF 構成ステートメントの ROUTERID パラメーターをコーディングして、IPV6_OSPF ルーター ID を割り当てます。 このルーター ID には、IPv6 自律型システム内のルーター全体で一意性が確保されるように配慮された IPv4 スタイルの任意の小数点付き 10 進数値 (0.0.0.0 を除く) を割り当てられます。IPV6_OSPF 構成ステートメントの ROUTERID パラメーターがコーディングされずに、IPv4 OSPF プロトコルも使用される場合、OMPROUTE は IPv6 OSPF ルーター ID として IPv4 OSPF ルーター ID を使用します。IPv4 OSPF プロトコルが使用されない場合、IPV6_OSPF ステートメントの ROUTERID パラメーターを指定する必要があります。IPV6_OSPF ステートメントの ROUTERID パラメーターに関する規則およびガイドラインについての詳細は、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。

      図 2 に示しているネットワーク例では、ROUTERID=64.64.64.64 を使用して、TCPCS64 の IPV6_OSPF ステートメントの ROUTERID パラメーターが明示的に構成されます。

  3. OSPF プロトコルを使用する場合、OSPF エリアを定義します。 図 1 および 図 2 に示しているネットワーク例では、ともに 2 つの方法で分割された IPv4 ネットワークと IPv6 ネットワークを表しています。最初の分割は、OSPF 自律型システム (AS) の中の IP サブネットワークと、OSPF AS にとって外部にある (RIP AS の中にある) IP サブネットワークとの間です。各 OSPF AS の中に含まれるサブネットワークは、エリアと呼ばれる領域にさらに分割されます。OSPF エリアは、連続する IP サブネットワークの集合です。エリアの機能は、異なるエリア内の宛先への経路を算出するために必要な、OSPF のオーバーヘッドを減らすことです。ルーター間で交換されて保管される情報量が減少し、経路テーブル計算が簡素化されて、必要なプロセッサー・サイクルが少なくなるので、オーバーヘッドが削減されます。

    複数のエリアを持つすべての OSPF AS は少なくとも 1 つのバックボーン・エリアを持つ必要があります。バックボーンは常に、エリア番号 0.0.0.0 で識別されます。複数のエリアを持つネットワークでは、バックボーンがエリア間を接続するコアの役割を果たします。他のエリアとは異なり、バックボーンのサブネットは物理的に切り離すことができます。この場合、バックボーンの論理的な接続は、中間にある非バックボーン・エリアを経由して、バックボーン・ルーター間に仮想リンクを構成することにより維持されます。詳しくは、ステップ 8 の手順を参照してください。

    複数のエリアに接続されるルーターは、エリア・ボーダー・ルーターとして機能します。すべてのエリア・ボーダー・ルーターは、バックボーンの一部です。したがって、エリア・ボーダー・ルーターは、バックボーン IP サブネットに直接接続するか、または仮想リンク上の別のバックボーン・ルーターに接続されていなければなりません。

    OSPF が経路の計算に使用する情報とアルゴリズムは、宛先が同一エリア内にあるか、OSPF AS 内の異なるエリアにあるか、または OSPF AS の外部にあるかによって変わります。すべてのルーターが、そのエリア内のすべてのリンクのデータベースを維持管理します。shortest path first アルゴリズムを使用して、エリア内の宛先への最適経路をこのデータベースから計算します。エリア間の経路は、OSPF AS の他のエリア内にある宛先に対して、エリア・ボーダー・ルーターが発信する要約公示に基づいて計算されます。外部経路 (例えば、RIP AS 内にある宛先への経路) は、AS 境界ルーターが発信し、OSPF AS 全体に流される AS 外部公示から計算されます。

    • IPv4 OSPF
      ルーターが接続されるエリアを定義するには、AREA 構成ステートメントを使用します。AREA ステートメントを使用しない場合、デフォルトでは、すべての OSPF インターフェースがバックボーン・エリアに接続されます。サンプル・ネットワーク内で、TCPCS4 と TCPCS7 は両方ともエリア・ボーダー・ルーターであり、バックボーン・エリア (0.0.0.0) とエリア 1.1.1.1 の両方に属します。
      AREA
        Area_Number=0.0.0.0;
      
      AREA
        Area_Number=1.1.1.1;
    • IPv6 OSPF

      ルーターが接続されるエリアを定義するには、IPV6_AREA 構成ステートメントを使用します。IPV6_AREA ステートメントを使用しない場合、デフォルトでは、すべての IPv6 OSPF インターフェースがバックボーン・エリアに接続されます。サンプル・ネットワーク内で、TCPCS64 と TCPCS67 はエリア・ボーダー・ルーターであり、バックボーン・エリア (0.0.0.0) とエリア 6.6.6.6 の両方に属します。

      IPV6_AREA
         Area_Number=0.0.0.0;
      IPV6_AREA
         Area_Number=6.6.6.6;
  4. OSPF プロトコルを使用する場合、OSPF エリア間の情報交換を制限します。 エリア・ボーダー・ルーターが構成されていると、エリア境界を越える OSPF 経路情報は、構成ステートメントを使用して制御できます。z/OS CS 環境での複数エリアの有用性については、z/OS Communications Server のルーティング責任の最小化を参照してください。

    オプションとして、エリアをスタブ・エリアとして定義することができます。AS 外部公示はこのスタブ・エリア内には流されません。 さらに、エリア間経路の要約公示のスタブ・エリアへの発信は抑止して、 一般に完全スタブ・エリアとして知られるものを作成することができます。

    この場合でも、エリア・ボーダー・ルーターはデフォルトの経路をスタブ・エリアに公示するので、スタブ・エリアにとって外部である宛先に到達できます。スタブ内部の不明な宛先用のトラフィックは、デフォルト経路を使用してエリア・ボーダー・ルーターに転送されます。そのエリア内のルーターは、AS の外部を宛先とするトラフィック用にデフォルトの経路を使用することもできます。ボーダー・ルーターは、所有しているより完全なルーティング情報を使用して、このトラフィックをその宛先に向けて該当のパスに転送します。

    エリアをスタブ・エリアとして定義するには、次の要件を満たす必要があります。
    • バックボーン接続を維持するために、そのエリアを使用して仮想リンクが構成されていない。
    • エリア内のルーターはどれも AS 境界ルーター (外部ソースからの経路を、AS 外部公示として公示する OSPF ルーター) ではない。
      ヒント: 静的経路および RIP 経路は AS 外部経路です。

    別のオプションとして、IP アドレス範囲を使用して、エリアから発信される要約公示の数を制限する方法があります。IPv4 では、範囲は IP アドレスとアドレス・マスクによって定義されます。 宛先アドレスと範囲 IP アドレスに範囲マスクが適用された後で、両方のアドレスが一致すれば、宛先は該当範囲内にあると見なされます。IPv6 においては、範囲は IP アドレスの接頭部と接頭部の長さによって定義され、範囲の接頭部の長さで、宛先アドレスと範囲 IP アドレスが一致していれば、宛先は範囲内に入っていると見なされます。

    エリア・ボーダー・ルーターでエリア用の範囲が構成されると、ボーダー・ルーターは、その範囲に含まれるエリア内の宛先に対する要約公示を抑止します。抑止された公示は、ボーダー・ルーターが接続されている他のエリアには発信されている場合があります。あるいは、エリア・ボーダー・ルーターは、該当範囲についての要約公示を 1 つ発信することも、公示をまったく発信しないこともあります。これは、構成ステートメントで選択されているオプションによって決まります。

    規則:
    1. 範囲が公示されない場合には、その範囲に入るすべての宛先のエリア間経路がなくなります。
    2. バックボーン接続を維持するために、そのエリアを使用して仮想リンクが構成されているエリアには、範囲を使用できません。
    • IPv4 OSPF

      次のステートメントは、OSPF エリアを スタブ・エリアとして構成します。 Import_Summaries=No パラメーターによって、スタブ・エリアへのエリア間経路の要約公示は抑止され、完全スタブ・エリアが作成されます。

      AREA
        Area_Number=2.2.2.2
        Stub_area=Yes
        Import_Summaries=No;
      図 1 に示されたサンプルで、次の RANGE ステートメントを TCPCS7 上に構成し、TCPCS7 が 9.67.101.0 サブネット内の宛先をバックボーン・エリア (エリア 0.0.0.0) に公示しないようにできます。
      RANGE
         IP_Address=9.67.101.0
         Subnet_Mask=255.255.255.0
         Area_Number=1.1.1.1
         Advertise=No;
    • IPv6 OSPF

      次のステートメントは、IPv6 OSPF エリアを スタブ・エリアとして構成します。 Import_Summaries=No パラメーターによって、スタブ・エリアへのエリア間経路の要約公示は抑止され、完全スタブ・エリアが作成されます。

      IPV6_AREA
         Area_Number=1.1.1.1
         Stub_area=Yes
         Import_Prefixes=No;

      サンプル・ネットワークでは、 次の IPV6_RANGE ステートメントが TCPCS67 上に構成され、 その結果 TCPCS67 は、2001:0DB8:0:31::/64 接頭部内のすべての 宛先を、2001:0DB8:0:31::/64 接頭部への単一の経路として、 バックボーン・エリア (エリア 0.0.0.0) 内に公示します。

      IPV6_RANGE
         Prefix=2001:0DB8:0:31::/64
         Area_Number=6.6.6.6
         Advertise=Yes;
  5. IPv4 OSPF または IPv4 RIP プロトコルを使用する場合、IPv4 インターフェースを定義します。 スタックが使用する各インターフェースは、OSPF_INTERFACE、RIP_INTERFACE、または INTERFACE ステートメントを使用して、OMPROUTE に定義します。このトピックでは、OMPROUTE へのインターフェースを構成する際に考慮すべき、各インターフェース・タイプの相違を説明しています。一般的には、次のガイドラインにしたがってください。
    • OSPF プロトコルが他のルーターとの通信に使用するインターフェースは、OSPF_INTERFACE ステートメントを使用して構成する必要があります。
    • RIP プロトコルが他のルーターとの通信に使用するインターフェースは、RIP_INTERFACE ステートメントを使用して構成する必要があります。
    • 他のすべてのインターフェースを INTERFACE ステートメントで構成するか、または OMPROUTE 構成ファイル内で GLOBAL_OPTIONS ステートメントの IGNORE_UNDEFINED_INTERFACES パラメーターを使用して、未定義のインターフェースを無視するように OMPROUTE を構成してください。どちらか一方を実行することが重要です。

      OMPROUTE は、未定義のインターフェースを無視するように構成されなかった場合、OMPROUTE に対して定義されていないスタック・インターフェースをデフォルト値によって構成します。 それらの値が、望ましくない場合があります。 例えば、サブネット・マスクにはクラス・マスクが使用され、MTU 値には 576 が使用されます。さらに、OMPROUTE はスタックの値をデフォルト値でオーバーライドします。 そのような状況にならないようにするために、RIP または OSPF を使用していないインターフェースも含めてすべてのインターフェースを構成するか、または未定義のインターフェースを無視するように OMPROUTE を構成してください。

    VIPA インターフェースは上記ガイドラインの例外です。このインターフェースについてはこのステップで詳述します。

    z/OS Communications Server は、ホスト・アドレスにサブネットワークのブロードキャストかまたはネットワーク・アドレスを使用することに対して、RFC 規則を強制します。(ホスト部分にすべて 1 を持つアドレスは、サブネット・ブロードキャストです。 ホスト部分にすべて 0 を持つアドレスは、サブネットのネットワーク・アドレスです。) したがって、OSPF_INTERFACE、RIP_INTERFACE、または INTERFACE ステートメント上の subnet_mask は、そのサブネットにアドレスのホスト部分にすべて 0 またはすべて 1 のホーム・アドレスがないように、十分な 0 ビットを持たなければなりません。例えば、サブネットが 10.1.1.1 および 10.1.1.2 の 2 つのホーム・アドレスを持っている場合、サブネット・マスクは少なくとも 2 ビットの 0 を持っていなければなりません。例えば、255.255.255.252 です。ただし、サブネットが 10.1.1.1、10.1.1.2、10.1.1.3、および 10.1.1.4 の 4 つのホーム・アドレスを持つ場合は、サブネット・マスクの少なくとも 3 つのビットにゼロが入っていなければなりません (例えば、255.255.255.248)。この場合は、そのサブネットが持つことのできるホーム・アドレスの最大数は 6 つ (10.1.1.1 から 10.1.1.6 まで) です。一般的に、サブネット・マスクが n 個の 0 ビットを持っていると、((2**n)-2) 個の ホーム・アドレスがそのサブネットに存在できます。この制限は、ホーム・アドレスが 別の TCP/IP スタックに構成されていたとしても、適用されます。

    規則:
    1. OMPROUTE は、最大で 255 個の物理的な、IPv4 の実インターフェース (つまり、データを実際に送受信できるインターフェース) をサポートします。 理論上では、構成できる VIPA の数に制限はありませんが、実際上はネットワーク設計による制限があります。
    2. RIP バージョン 1 はブロードキャストを使用し、RIP バージョン 2 はマルチキャストを使用します。 RIP バージョン 1 は、マルチキャストをサポートしてブロードキャストをサポートしない (これがデフォルトの QDIO 構成です) メディア上では実行できません。QDIO モードでの OSA-Express 機構操作 (例えばギガビット・イーサネット) を構成してブロードキャスト・パケットの送受信を行うには、TCP/IP プロファイルの中で LINK ステートメントに IPBCAST パラメーターを使用します。 OSA-Express のマイクロコード・レベルは、このパラメーターを使用するためにブロードキャストをサポートする必要があります。 一部のレベルの OSA-Express マイクロコードは、マルチキャストをサポートしますが、ブロードキャストをサポートしません。 この事例では、ブロードキャストを必要とする RIP バージョン 1 よりも、マルチキャストを必要とする RIP バージョン 2 が推奨されます。
    • マルチアクセス・パラレル・インターフェースの構成

      OMPROUTE (OSPF) にマルチアクセス・パラレル・インターフェース (同一ネットワーク内に IP アドレスを持つ 1 次およびバックアップ冗長インターフェース) を構成する場合、常に OSPF_INTERFACE ステートメントに Parallel_OSPF パラメーターを使用して、各 OSPF インターフェースが 1 次かまたはバックアップかを指定します。OSPF_INTERFACE ステートメントの IP_address パラメーターがワイルドカード (*) を使用している場合、インターフェースに Name パラメーターも組み込んで、1 次とバックアップ を区別してください。 OSPF_INTERFACE ステートメントとそのパラメーターについて詳しくは、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。

    • Point-to-Point (CTC など)

      Point-to-Point インターフェースの場合、OMPROUTE は宛先 IP アドレスを知っている必要があります。 OSPF または RIP がインターフェース上で実行される場合、 宛先 IP アドレスは、もう一方の端のルーターが検出されて OMPROUTE と情報を共用する際に 確認されます。さらに、OSPF または RIP を実行するインターフェースに宛先アドレスを定義すると、OMPROUTE は、その宛先アドレスへの経路を、近隣ルーターが完全な隣接になる前に確認し、公示できます。これは、近隣ルーターの検出に時間がかかる場合など、それが ただちに、かつ確実に使用可能になると期待されない場合に役立つことがあります。

      ヒント: OSPF を実行する Point-to-Point インターフェースの場合、OMPROUTE は、Point-to-Point インターフェース上のそれ自体のホーム・アドレスへのホスト経路を公示しません。デフォルトでは、OMPROUTE はリンク先へのホスト経路を公示し、もう一方の端のルーターに依存して、OMPROUTE のホーム・アドレスへのホスト経路を公示します。この動作については、OSPF アーキテクチャー、RFC 1583 (OSPF Version 2) のセクション 12.4.1 に記述されています。 つまり、Point-to-Point リンクの OMPROUTE のホーム・アドレスは、その公示に使用可能な近隣ルーターがない限り、到達可能と公示されないことを意味します。OMPROUTE は、RFC 2328 に記述されている拡張機能を実装して、この制限を打開します。近隣ルーターが Point-to-Point リンクで確実に使用可能にならない場合、 その Point-to-Point インターフェースの OSPF_INTERFACE ステートメントに パラメーター SUBNET=YES をコーディングできます。 このパラメーターによって、OMPROUTE は RFC 2328 のセクション 12.4.1.1 に記述されているオプション 2 を実装して、Point-to-Point リンクのサブネット・アドレスへの経路を公示します。これにより、近隣ルーターの状況に関係なく、両方のエンドポイントが到達可能になります。

      インターフェースが単なる INTERFACE (OSPF または RIP を実行しない) の場合、DESTINATION_ADDR パラメーターを指定して、インターフェースのリモート・エンドのアドレスへのホスト経路を作成できます。

      サンプル OSPF_INTERFACE:
      OSPF_INTERFACE
      	IP_Address=9.67.106.7
      	Name=CTC7TO4
      	Subnet_mask=255.255.255.0
      	Attaches_to_Area=1.1.1.1
      	Destination_Addr=9.67.106.4;
      サンプル RIP_INTERFACE:
      RIP_INTERFACE
      	IP_Address=9.67.103.7
      	Name= CTC7TO6
      	Subnet_mask=255.255.255.0
      	Destination_Addr=9.67.103.6
      	RIPV2=Yes;
      サンプル INTERFACE:
      INTERFACE
      	IP_Address=9.67.111.1
      	Name=CTCX
      	Subnet_mask=255.255.255.0
      	Destination_addr=9.67.111.2;
    • Point-to-multipoint

      Point-to-Multipoint に対応したインターフェース (例えば、XCF および IUTSAMEH 接続を含む MPCPTP) の場合、OMPROUTE は、OSPF または RIP パケットを通信する必要のある他のルーター (近隣) の IP アドレスを知っている必要があります。ただし、ホストがこれらのネットワーク・タイプに接続したときに起こる基本シグナルによって、スタックは必要なアドレスを得ることができます。これに対して、OMPROUTE は、スタックからそれらの IP アドレスを確認します。 その結果、interface ステートメント上のその他のルーターの IP アドレスを 構成する必要はありません。

      サンプル OSPF_INTERFACE:
      OSPF_INTERFACE	
      	IP_Address=9.27.13.81
      	Name=XCFD00	
         Attaches_to_Area=1.1.1.1
      	Subnet_mask=255.255.255.0;
      サンプル RIP_INTERFACE:
      RIP_INTERFACE
      	IP_Address=9.27.23.81
      	Name=MPCA01
      	Subnet_mask=255.255.255.0
      	RIPV2=Yes;
      サンプル INTERFACE:
      INTERFACE
      	IP_Address=9.27.33.81
      	Name=XCFB00
      	Subnet_mask=255.255.255.0;
    • ブロードキャスト・ネットワーク・インターフェース (イーサネットなど)

      OSPF または RIP プロトコルがイーサネットのようなブロードキャスト・メディアを使用して通信する場合、これらのネットワークではブロードキャストとマルチキャストが可能です。したがって、OSPF または RIP パケットを他のルーターとの間で通信するために、OMPROUTE がネットワーク上の他のルーターの IP アドレスを知る必要はありません。OMPROUTE は、該当のブロードキャスト・アドレスまたはマルチキャスト・アドレスを使用して、ネットワーク上の他のルーターにパケットを送信します。他のルーターの IP アドレスは、それらのルーターから OSPF/RIP パケットを受信したときに得ます。ネットワークの指定ルーターの選択を補助するため、OSPF_INTERFACE に ROUTER_PRIORITY パラメーターを含める必要があります。

      サンプル OSPF_INTERFACE:
      OSPF_INTERFACE	
      	IP_Address=9.59.101.5
      	Name=TR1	
         Subnet_mask=255.255.255.0
      	Attaches_to_Area=1.1.1.1
      	Cost0=2
      	Router_Priority=1;
      サンプル RIP_INTERFACE:
      RIP_INTERFACE
      	IP_Address=9.29.107.3
      	Name=TR2
      	Subnet_mask=255.255.255.0
      	RIPV2=Yes;
      サンプル INTERFACE:
      INTERFACE
      	IP_Address=9.77.14.49
      	Name=ETHB00
      	Subnet_mask=255.255.255.0;

      トークンリング・メディアに接続されたルーターがマルチキャスト MAC アドレス 0xC000.0004.0000 を listen しない場合、そのトークンリング・メディアを使用して、OSPF または RIP バージョン 2 プロトコルと通信する OMPROUTE については、トークンリング・マルチキャストを参照してください。

      マルチキャストをサポートしないルーターを含むブロードキャスト・メディアとインターフェースを取る場合、そのインターフェースを非ブロードキャスト・ネットワーク・インターフェースとして構成できます。これにより、OMPROUTE は、マルチキャスト・アドレスを使用するのではなく、近隣アドレスにユニキャストするようになります。 ただし、ユニキャストするには、ネットワーク上にすべてのルーターを構成する必要があります。 そうしないと、マルチキャストされたパケットが受信されることはありません。

      OSPF_INTERFACE に DR_NEIGHBOR と NO_DR_NEIGHBOR パラメーターの一方または両方を使用し、RIP_INTERFACE にブロードキャスト機能のある NEIGHBOR パラメーターを使用して、近隣ルーターを定義することも可能ですが、これは必要なく、またお勧めできません。これらのインターフェースで近隣ルーターを定義する場合には、そのすべてを定義しなければなりません。一部のものがインターフェースで定義されていると、OMPROUTE は RIP または OSPF を定義されていない近隣ルーターに伝えなくなります。

    • VIPA インターフェース (静的 VIPA および動的 VIPA)

      OMPROUTE が RIP プロトコルだけを使用する場合、VIPA インターフェースは INTERFACE ステートメントを使用して定義します。OMPROUTE が、OSPF だけ、または OSPF と RIP の両方を使用する場合は、VIPA インターフェースは OSPF_INTERFACE ステートメントを使用して定義します。

      サンプル OSPF_INTERFACE:
      OSPF example:
      	OSPF_INTERFACE	
      	IP_Address=4.4.4.4
      	Name=VIPA1
         Subnet_mask=255.255.255.252;
      サンプル INTERFACE:
      non-OSPF example:
      	INTERFACE
      	IP_Address=6.6.6.6
      	Name=VIPA1
      	Subnet_mask=255.255.255.252;
      規則: 指定できる、最も特定されたサブネット・マスクは、255.255.255.252 です。
      OSPF_INTERFACE または INTERFACE ステートメントの中の名前がタイプ VIRTUAL の リンクを参照している場合、OMPROUTE は適切なときに以下の経路を生成、および公示 します。
      • そのステートメントに指定されたネットワークへのネットワーク経路
      • そのステートメントに指定されたサブネットへのサブネット経路
      • そのステートメントに指定された IP_address へのホスト経路

      物理ネットワーク・インターフェース上で、ネットワークに対してこれらの経路を公示するための条件は、以下のとおりです。

      • ネットワーク経路 - VIPA が物理ネットワーク・インターフェースと同じ ネットワーク上になく、フィルターまたは RANGE によって許可されている場合。
      • サブネット経路 - VIPA サブネット経路が、フィルターが それを拒否したときの RIP を除くすべての条件において OMPROUTE に公示される。
      • ホスト経路 - フィルターまたは RANGE によって許可。OSPF INTERFACE ステートメント に定義されている VIPA のホスト経路の公示は、その VIPA を定義する OSPF_INTERFACE ステートメントの SUBNET パラメーターによって制御 できます。SUBNET=YES の場合、ホスト経路は公示されません。SUBNET=NO (これがデフォルト) の場合、ホスト経路は公示されます。このパラメーターは注意して使用してください。動的 VIPA またはサブネットが複数のホスト上に存在する VIPA に対して、VIPA ホスト経路を抑制しないでください。これらの制限は、OMPROUTE によって強制しないしできないため、強制するかどうかはユーザーの判断によります。
      物理ネットワーク・インターフェースの RIP_INTERFACE ステートメントでは、 VIPA 経路は以下のフィルター・パラメーターによって公示することが可能になります。
      • Send_Net_Routes
      • Send_Subnet_Routes
      • Send_Host_Routes、および Send_Only
      さらに、RIP のグローバル FILTER および Send_Only ステートメントは、 どの経路を公示するかまたはしないかを指定するのに使用できます。

      OSPF では、RANGE ステートメントは、サブネット・マスクに基づいたアドレス範囲に関する領域の外部に、VIPA を公示するためまたは公示しないため に使用できます。

      注: RIP の場合は、Send_Only = (VIRTUAL) フィルターと Send_Net_Routes、Send_Subnet_Routes、および Send_Host_Routes フィルターの組み合わせか、または VIPA 経路を伴う FILTER ステートメントにより、RIP インターフェースを介して VIPA 経路を公示できるかどうかを指定します。RIP と違って、OSPF には ルーティング・フィルターはありません。 OSPF では、どの経路のアドレス範囲を エリアの外部に公示するか、あるいは公示しないかを 制御するのに、RANGE ステートメントを使用できます。 しかし、ルーティング・フィルターとして使用するほどの、細かい制御はできません。 エリア・ボーダー・ルーター構成では、 一意的にサブネットされた VIPA アドレスが複数ある場合、RANGE ステートメントを使用して、 どの経路の VIPA サブネット・アドレス範囲が、 エリアの外部に公示できるか、あるいは公示できないかを指定できます。

      動的 VIPA (DVIPA) の場合、リンク名は DVIPA の作成時にスタックがプログラムに基づいて割り当てます。したがって、DVIPA の場合、INTERFACE または OSPF_INTERFACE ステートメントにセットされた名前フィールドは、OMPROUTE によって無視されます。

      スタックは多数の定義済み DVIPA および DVIPA 範囲を持つことができるので、DVIPA のみで使用できる追加のワイルドカード機能が、OSPF_INTERFACE ステートメントと INTERFACE ステートメントにあります。

      DVIPA インターフェースの範囲は、OSPF_INTERFACE または INTERFACE ステートメントの Subnet_Mask パラメーターを使用して定義することができます。このようにして定義された範囲には、マスクと IP アドレスで定義されるサブネット内に入るすべての IP アドレスが含まれます。IP アドレス・パラメーターは、定義されている範囲のサブネット番号であり、その範囲にあるホスト・アドレスでないことが必要です。Subnet_Mask パラメーターの詳細情報は、このステップの前半にあります。

      次の例では、10.138.65.81 から 10.138.65.94 までの範囲の DVIPA インターフェースが定義されています。

      サンプル OSPF_INTERFACE:
      OSPF example:
      	OSPF_INTERFACE	
      	IP_Address=10.138.65.80
      	Name=DVIPAs
         Subnet_mask=255.255.255.240;
      サンプル INTERFACE:
      non-OSPF example:
      	INTERFACE
      	IP_Address=10.138.65.80
      	Name=DVIPAs
      	Subnet_mask=255.255.255.240;

      次の例では、ホーム・アドレスが 10.138.65.98 であるインターフェースだけが定義されます。これは、この定義のサブネット番号 (IP_Address パラメーターと Subnet_mask パラメーターのバイナリー・ファイル AND 演算を使用して入手したもの) が 10.138.65.96 であるためです。この定義は、IP_Address パラメーターがこのサブネット番号に等しくないので、DVIPA ワイルドカードとして扱われません。

      OSPF_INTERFACE
      IP_Address=10.138.65.98
      Name=DVIPA
      Subnet_mask = 255.255.255.240;

      次の例では、24 ビット・マスク (255.255.255.0) で IP アドレス 10.138.120.x および 10.138.121.x を DVIPA に指定しているので、10.138.120.0/24 と 10.138.121.0/24 の 2 つのサブネットになります。10.138.120.0/24 サブネットは 10.138.120.1 から 10.138.120.254 までの範囲となり、10.138.121.0/24 サブネットは 10.138.121.1 から 10.138.121.254 までの範囲となります。拡張ワイルドカード機能を持つ 2 つの OSPF_INTERFACE ステートメントを定義しています。

      OSPF_INTERFACE
         IP_Address=10.138.120.0  
         Name=DVIPAs                 
         Subnet_mask=255.255.255.0;
      OSPF_INTERFACE
         IP_Address=10.138.121.0     
         Name=DVIPAs                 
         Subnet_mask=255.255.255.0;

      次の例では、23 ビット・マスク (255.255.254.0) で IP アドレス 10.138.120.x および 10.138.121.x を DVIPA に指定しているので、1 つにまとめられたサブネット 10.138.120.0/23 になります。10.138.120.0/23 サブネットは、10.138.120.1 から 10.138.121.254 までの範囲となります。

      OSPF_INTERFACE
         IP_Address=10.138.120.0     
         Name=DVIPAs                 
         Subnet_mask=255.255.254.0;
      注:
      • 標準的なワイルドカードを使用して IP_Address=10.138.120.* とコーディングした場合、サブネット・マスクが考慮されないため、OMPROUTE は、DVIPA の 10.138.121.x アドレスと一致しません。 したがって、このような DVIPA は OSPF ドメインに追加されない可能性があります。
      • 複数のネットワークの DVIPA が 1 つのスーパーネットにまとめられた場合、同じマスクの原則が拡張ワイルドカード機能に適用されます。 例えば、23 ビット・マスク (255.255.254.0) のスーパーネット・アドレス 192.168.100.0 は、192.168.100.1 から 192.168.101.254 までの範囲をカバーします。
      VIPA が TCP/IP スタック間で移動し、OMPROUTE がこれらのスタックに動的ルーティングを提供する場合は、追加の考慮事項を検討する必要があります。VIPA のこのような移動は、動的 VIPA を使用して、手作業で、または自動的に行うことができます。VIPA が正しく処理され、ルーティング・プロトコルによって公示されるためには、これらのアドレスが TCP/IP スタック上でアクティブになった時に、VIPA を (他のすべてのインターフェースと同様に) OMPROUTE に構成する必要があります。この VIPA の OMPROUTE への構成は、以下の方法で行うことができます。
      • 各 VIPA を、それ自身の OSPF_INTERFACE または INTERFACE ステートメントを使用して、明示的に構成する
      • 単一の OSPF_INTERFACE または INTERFACE ステートメントにより、DVIPA の範囲を構成する
      • interface ステートメントで使用できるワイルドカード機能を使用して、単一の OSPF_INTERFACE または INTERFACE ステートメントにより、VIPA のグループを構成する

      移動する可能性のある VIPA に OMPROUTE を構成するための方法としてお勧めできるのは、あるスタック上にいつか存在する可能性のあるすべての VIPA を使用して、その TCP/IP スタック上に OMPROUTE を事前に構成することです。この方法で事前構成すれば、各 OMPROUTE は、そのスタックに追加される可能性のある VIPA について準備できます。VIPA が特定の OMPROUTE のスタックに存在しない間は、構成情報は使用されません。ただし、VIPA がその OMPROUTE のスタックに存在する期間中は、OMPROUTE は構成情報を使用できます。この方法であれば、VIPA が TCP/IP スタック間で移動しても、各移動について OMPROUTE 構成を変更することなく対応できます。

      このトピックで説明されている VIPA の事前構成を行っていない場合でも、VIPA が、対応する TCP/IP スタック上でアクティブになった時に適切に処理、公示されるように、OMPROUTE に VIPA を定義することができます。この構成を行うには、OMPROUTE 構成ファイルに該当の OSPF_INTERFACE または INTERFACE ステートメントを追加し、その後、MODIFY procname,RECONFIG コマンドを出して、OMPROUTE に構成ファイルを再読み取りさせます。

      規則: OMPROUTE 構成ファイルにおいて GLOBAL_OPTIONS IGNORE_UNDEFINED_INTERFACES=YES をコーディングしていない場合は、OMPROUTE 構成ファイルの変更と RECONFIG コマンドの発行は、対応する TCP/IP スタックへ VIPA を最初に移動させる前に行う必要があります。
      ガイドライン: OMPROUTE 構成ファイルにおいて GLOBAL_OPTIONS IGNORE_UNDEFINED_INTERFACES=YES をコーディングした場合は、OMPROUTE 再構成を使用して、スタックにおいてアクティブになっているが OMPROUTE によって無視される VIPA インターフェース用の定義を追加することができます。ただし OMPROUTE は、DVIPA の移動またはその他の方法によってインターフェースがスタックから削除され、再度追加されるまで、VIPA と新しい定義とを関連付けません。

    スタック・インターフェースに インターフェース定義を割り当てる方法 (ワイルドカードおよび明示的):

    ワイルドカード・インターフェース定義は、 インターフェース定義を簡単に行う方法として便利な場合があります。 しかし、予期しない結果を避けるためには、その構文解析方法、 およびインターフェース定義のさまざまなタイプが相互に作用する方法を 必ず理解してください。 以下は、OMPROUTE が IPv4 スタック・インターフェースの OMPROUTE 構成ファイルで、一致する定義を検出する際に使用するアルゴリズムの概要です。

    1. 以下のように、インターフェースの RIP_Interface 定義を検索します。
      1. 明示的に一致する RIP_Interface 定義を検索します (動的 VIPA、 あるいは名前と IP アドレスが正確に一致していれば、IP アドレスは正確に一致する)。 検出された場合、 その定義を使用し、ステップ b に進みます。
      2. インターフェースが動的 VIPA ならば、動的 VIPA ワイルドカードとして 一致する RIP_Interface 定義を検索します。 一致する動的 VIPA ワイルドカード定義は、定義 IP アドレスが、定義サブネット・マスクとインターフェースのホーム・アドレスとを AND 処理することによって得られた値と一致する定義です。動的 VIPA ワイルドカード定義の検索時に、定義名パラメーターは無視されます。一致する動的 VIPA ワイルドカード定義が検出された場合は、 その定義を使用し、ステップ b に進みます。
      3. 最初の 3 オクテットがインターフェースのホーム・アドレスの最初の 3 オクテットに一致し、名前がインターフェースのリンク名に一致する、1 オクテット・ワイルドカード RIP_Interface 定義 (n.n.n.*) を検索します。検出された場合、 その定義を使用し、ステップ b に進みます。
      4. 最初の 2 オクテットがインターフェースのホーム・アドレスの最初の 2 オクテットに一致し、名前がインターフェースのリンク名に一致する、2 オクテット・ワイルドカード RIP_Interface 定義 (n.n.*.*) を検索します。検出された場合、 その定義を使用し、ステップ b に進みます。
      5. 最初のオクテットがインターフェースのホーム・アドレスの最初のオクテットに一致し、名前がインターフェースのリンク名に一致する、3 オクテット・ワイルドカード RIP_Interface 定義 (n.*.*.*) を検索します。検出された場合、 その定義を使用し、ステップ b に進みます。
      6. 最初の 3 オクテットがインターフェースのホーム・アドレスの最初の 3 オクテットに一致し、名前パラメーターがコーディングされていれば、無視する、1 オクテット・ワイルドカード RIP_Interface 定義 (n.n.n.*) を検索します。検出された場合、 その定義を使用し、ステップ b に進みます。
      7. 最初の 2 オクテットがインターフェースのホーム・アドレスの最初の 2 オクテットに一致し、名前パラメーターがコーディングされていれば、無視する、2 オクテット・ワイルドカード RIP_Interface 定義 (n.n.*.*) を検索します。検出された場合、 その定義を使用し、ステップ b に進みます。
      8. 最初のオクテットがインターフェースのホーム・アドレスの最初のオクテットに一致し、名前パラメーターがコーディングされていれば、無視する、3 オクテット・ワイルドカード RIP_Interface 定義 (n.*.*.*) を検索します。検出された場合、 その定義を使用し、ステップ b に進みます。
      9. 4 オクテット・ワイルドカード RIP_Interface 定義 (*.*.*.* または ALL) があれば、 その定義を使用して、ステップ b に進みます。
        制約事項: タイプ (OSPF_INTERFACE または RIP_INTERFACE) ごとに使用できる 4 オクテット・ワイルドカードは 1 つのみです。
    2. インターフェースの OSPF_Interface 定義を検索します。 このステップは、ステップ a の結果に関係なく行われます。OSPF_Interface 定義を検索するステップは、OSPF_Interface 定義が検索されることを除いて、RIP_Interface 定義を検索するステップと同じです。
    3. RIP_Interface 定義か OSPF_Interface 定義のいずれか、 または両方が検出されれば、アルゴリズムは完了です。 この場合、インターフェース定義は検索されません。 RIP_Interface 定義も OSPF_Interface 定義も検出されなかった場合、ステップ d に進みます。
    4. インターフェースの Interface 定義を検索します。 Interface 定義を検索するステップは、Interface 定義が検索されることを除いて、RIP_Interface ステートメントを検索するステップと同じです。
    5. 定義が検出されない場合は、Global_Options Ignore_Undefined_Interfaces の値を チェックしてください。 このオプションがオンになっていれば、インターフェースは無視されます。 オンになっていない場合、 インターフェースは、MTU 値 576 およびクラス・マスクのサブネット・マスクを 指定した Interface ステートメントで定義された場合と同様に扱われます。
    アルゴリズムは完了です。 このアルゴリズムの主要な結論は、次のとおりです。
    • 名前が一致するワイルドカード・インターフェース定義は、 どちらの定義のワイルドカードがより明確かに関係なく、 名前が一致しない同じタイプのワイルドカード・インターフェース定義に優先します。
    • インターフェースが動的 VIPA でない場合、定義ステートメントでコーディングされたサブネット・マスクは、どの定義、ワイルドカード、その他がインターフェース用に選択されるかに影響しません。サブネット・マスクは、定義の特性であって、 選択基準の特性ではありません。
    • RIP_Interface 定義または OSPF_Interface 定義、 あるいは両方が検出されれば、Interface 定義は考慮されません。 つまり、たとえ Interface 定義が明示的であっても、より明確なワイルドカードの一致であっても、 一致する RIP_Interface 定義または OSPF_Interface 定義は すべての Interface 定義を置き換えることを意味します。 例えば、3 オクテット・ワイルドカード OSPF_Interface 定義は、 明示的な Interface 定義を置き換えます。
    • インターフェースは、RIP_Interface と OSPF_Interface の両方でもかまいません。 OMPROUTE は、両方のプロトコルの同じインターフェースでの実行をサポートします。 しかし、インターフェースは、ルーティング・プロトコルを実行しない インターフェース (すなわち、Interface ステートメントで定義された) と、RIP か OSPF、 あるいはその両方を実行するインターフェースの両方にはできません。
  6. IPv6 OSPF または IPv6 RIP プロトコルを使用する場合、IPv6 インターフェースを定義します。 スタックが使用中の各 IPv6 インターフェースを OMPROUTE に対して定義するには、IPV6_OSPF_INTERFACE、IPV6_RIP_INTERFACE、または IPV6_INTERFACE ステートメントを使用します。IPv6 インターフェースの OMPROUTE への定義は、OMPROUTE に IP アドレスも MTU サイズも指定しないため、IPv4 インターフェースの定義に比べてきわめて簡単です。その代わりに、インターフェースをその名前で定義するのみで、OMPROUTE は TCP/IP スタックから IP アドレスと MTU サイズを確認します。また、マルチキャスト・サポートは IPv6 の基本要件であるため、 非ブロードキャスト・マルチアクセスに関する考慮事項、 あるいは隣接または宛先アドレスの定義を必要とする可能性に関する その他の考慮事項はありません。

    OMPROUTE に対して IPv6 インターフェースを構成するときは、以下のガイドラインを使用します。

    • IPv6 OSPF プロトコルが他のルーターとの通信に使用するインターフェースは、IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントを使用して構成する必要があります。
    • IPv6 RIP プロトコルが他のルーターとの通信に使用するインターフェースは、IPV6_RIP_INTERFACE ステートメントを使用して構成する必要があります。
    • その他のすべてのインターフェースは、IPV6_INTERFACE ステートメントで構成できます (OMPROUTE のデフォルト値を受け入れることができない場合、またはそのインターフェース上に追加のプレフィックスを定義したい場合)。
    • インターフェース名は、IPV6_INTERFACE、IPV6_OSPF_INTERFACE、 および IPV6_RIP_INTERFACE ステートメント上にコーディングする必要があります。 NAME パラメーターの値は、TCP/IP プロファイル内の INTERFACE ステートメントでコーディングしたインターフェース名に一致する必要があります。アスタリスク (*) で終了するワイルドカード名は、コーディングしてもかまいません。例えば、OSAQDIO* は OSAQDIO1、OSAQDIO2、OSAQDIOABC などの名前のスタック・インターフェースに一致します。

      インターフェースが TCP/IP スタックによって動的に生成される場合、その名前パラメーターは、TCP/IP スタックによって生成されるものに一致する必要があります。 TCP/IP スタックによって動的に生成されるインターフェースの名前は、以下のようになります。

      • 同じ z/OS ホスト内にある別の TCP/IP スタックへ接続するために生成される IPv6 動的 XCF インターフェースには、常に EZ6SAMEMVS という名前が付きます。
      • 別の z/OS イメージ内の TCP/IP スタックへ接続するために生成される IPv6 動的 XCF インターフェースには、常に EZ6XCFxx という名前が付きます。ここで、xx は、他の z/OS ホストの SYSCLONE 値です。

      動的 XCF インターフェースのルーティング・パラメーターがすべて同じになる場合は、ワイルドカード定義を使用できます。その場合、システム上で可能なすべての動的 XCF インターフェースについての知識や定義の作成は必要ありません。例えば、名前 EZ6* のワイルドカード定義は、TCP/IP スタック上で生成される可能性があるすべての動的 XCF インターフェースに一致します。EZ6XCF* のワイルドカード定義は、他の z/OS イメージへ接続するために生成される可能性があるすべての動的 XCF インターフェースに一致します。

      次の定義は、 デフォルト値から変更した hello およびデッド・ルーター・インターバルで、 すべての IPv6 動的 XCF インターフェースを OMPROUTE に定義します。

      IPV6_OSPF_INTERFACE
      	NAME=EZ6*
      	HELLO_INTERVAL = 30
      	DEAD_ROUTER_INTERVAL = 120;

      hello およびデッド・ルーター・インターバルの 10 および 40 のデフォルト値が受け入れ可能ならば、この定義はさらに単純化されます。

      IPV6_OSPF_INTERFACE
      	NAME=EZ6*;
    • インターフェース上に 1 つ以上の接頭部を定義 するには、IPV6_OSPF_INTERFACE、IPV6_RIP_INTERFACE、 および IPV6_INTERFACE ステートメントに PREFIX パラメーターを使用します。 PREFIX パラメーターの使用が必要になるのは、IPv6 ルーター探索を使用して確認できないインターフェースに定義する必要がある接頭部の場合に限られます。また、この方法で OMPROUTE に定義された接頭部は、TCP/IP が インターフェース上にホーム・アドレスを自動構成するのに使用しないことも注意してください。

      次のサンプルは、 接頭部を定義した IPv6 OSPF インターフェースを示しています。

      IPV6_OSPF_INTERFACE
      	NAME=OSAQDIO4L6
      	PREFIX=2001:0DB8:1::/48
      	PREFIX=2001:0DB8:2::/48;

      IPv6 OSPF インターフェース上にこの方法で定義された接頭部は、 到達可能として公示され、OMPROUTE によって生成されたリンク LSA にも組み込まれるため、 それらがローカル接頭部であることは、リンク上のすべての IPv6 OSPF ルーターに認識されます。 OMPROUTE が IPv6 RIP も実行する場合は、IPv6 RIP フィルター操作で 認められれば、IPv6 RIP 自律型システムにも到達可能として公示されます。

      次のサンプルは、 接頭部を定義した IPv6 RIP インターフェースを示しています。

      IPV6_RIP_INTERFACE
      	NAME=OSAQDIO3L6
      	PREFIX=2001:0DB8:3::/48
      	PREFIX=2001:0DB8:4::/48;

      IPv6 RIP インターフェースにこの方法で定義された 接頭部は、IPv6 RIP フィルター操作で認められれば、IPv6 RIP 自律型システムに 到達可能として公示されます。 OMPROUTE が IPv6 OSPF を実行し、RIP 経路をインポート する IPv6 AS 境界ルーターとして構成される場合は、IPv6 OSPF 自律型システムにも 到達可能として公示されます。

      次のサンプルは、 接頭部を定義した IPv6 汎用インターフェースを示しています。

      IPV6_INTERFACE
      	NAME=OSAQDIO2L6
      	PREFIX=2001:0DB8:5::/48
      	PREFIX=2001:0DB8:6::/48;

      IPv6 汎用インターフェースにこの方法で定義された 接頭部は、OMPROUTE が IPv6 RIP を実行し、IPv6 RIP フィルター操作で 認められれば、RIP 自律型システムに到達可能として公示されます。 OMPROUTE が IPv6 OSPF を実行し、直接経路をインポート する IPv6 AS 境界ルーターとして構成される場合、IPv6 OSPF 自律型システムにも 到達可能として公示されます。

    スタック・インターフェースに インターフェース定義を割り当てる方法 (ワイルドカードおよび明示的):

    IPv6 インターフェースの場合は、 インターフェース名ワイルドカードを使用して、定義を単純化することができます。 しかし、予期しない結果を避けるためには、その構文解析方法、 およびインターフェース定義のさまざまなタイプが相互に作用する方法を、 必ず理解してください。 以下は、OMPROUTE が IPv6 スタック・インターフェースの OMPROUTE 構成ファイルで、一致する定義を検出する際に使用するアルゴリズムの概要です。

    1. 以下のように、インターフェースの IPv6_RIP_Interface 定義を検索します。
      1. インターフェースの明示的に一致する IPv6_RIP_Interface ステートメントを検索します。 これは、名前パラメーターがインターフェースの名前に正確に一致しているステートメントです。検出された場合は、 その定義を使用し、ステップ b に進みます。
      2. 名前に最も一致する IPv6_RIP_Interface ワイルドカードを検索します。 IPv6_RIP_Interface ワイルドカード定義は、 最も固有なワイルドカード (最長のワイルドカード名ストリング) から始め、 一致が検出されるまで固有性が減少する順序でそれぞれのチェックを行って、 検索されます。 一致が検出されたら、 ただちにその定義を使用し、ステップ b に進みます。
    2. インターフェースの IPv6_OSPF_Interface 定義を検索します。 このステップはステップ a の結果に関係なく行われます。IPv6_OSPF_Interface 定義を検索するステップは、IPv6_OSPF_Interface 定義が検索されることを除いて、IPv6_RIP_Interface 定義を検索するステップと同じです。
    3. IPv6_RIP_Interface 定義または IPv6_OSPF_Interface 定義のいずれか、 あるいは両方が検出されれば、アルゴリズムは完了です。 この場合、IPv6_Interface 定義は検索されません。 IPv6_RIP_Interface 定義も IPv6_OSPF_Interface 定義も検出されなかった場合、ステップ d に進みます。
    4. インターフェースの IPv6_Interface 定義を検索します。 IPv6_Interface インターフェース定義を検索するステップは、IPv6_Interface 定義が検索されることを除いて、IPv6_RIP_Interface 定義を検索するステップと同じです。
    5. 定義が検出されない場合は、Global_Options Ignore_Undefined_Interfaces の値を チェックしてください。 このオプションがオンになっていれば、インターフェースは無視されます。 オンになっていない場合、 インターフェースは、IPv6_Interface ステートメントで定義された場合と同様に扱われます。 すべてのパラメーターにデフォルト値が使用されます。

    アルゴリズムは完了です。 このアルゴリズムの主要な結論は、次のとおりです。

    • IPv6_RIP_Interface 定義または IPv6_OSPF_Interface 定義、 あるいは両方が検出されれば、IPv6_Interface 定義は考慮されません。 つまり、たとえ IPv6_Interface 定義が明示的であっても、より明確なワイルドカードの一致であっても、 一致する IPv6_RIP_Interface 定義 または IPv6_OSPF_Interface 定義はすべての IPv6_Interface 定義を 置き換えることを意味します。 例えば、名前パラメーターが V* の IPv6_OSPF_Interface 定義は、明示的またはワイルドカードに関係なく、名前パラメーターが V で始まるすべての IPv6_Interface に取って代わります。この場合、IPv6_Interface 定義は予備であって、使用することはできません。OMPROUTE は、このケースを検出すると、 メッセージ EZZ8068I を出して、予備の IPv6_Interface 定義を削除します。
      注: スタックにインストール済みのインターフェースに IPv6_Interface 定義が既に選択済みであり、その次にその IPv6_Interface 定義を予備にする IPv6_OSPF_Interface 定義 または IPv6_RIP_Interface 定義が RECONFIG を使用して追加されると、OMPROUTE は、メッセージ EZZ8069I を出して、IPv6_Interface 定義を保存します。
    • インターフェースは、IPv6_RIP_Interface と IPv6_OSPF_Interface の両方でもかまいません。 OMPROUTE は、両方のプロトコルの同じインターフェースでの実行をサポートします。 しかし、インターフェースは、ルーティング・プロトコルを実行しない インターフェース (すなわち、IPv6_Interface ステートメントで 定義された) と、IPv6 RIP か IPv6 OSPF、あるいはその両方を実行する インターフェースの両方にはできません。
  7. インターフェース・コスト (OSPF_INTERFACE、 RIP_INTERFACE、 IPV6_OSPF_INTERFACE、 および IPV6_RIP_INTERFACE) を定義します。 OSPF プロトコルと RIP プロトコルは両方とも、インターフェースに関連付けられたコスト値を持っています。両方のプロトコルとも、宛先に達するための経路のコストは、宛先に到着するまでに通過する各リンクのコストの合計です。図 1 に示されたサンプル・ネットワークで、TCPCS7 から TCPCS4 を経由してルーター 3.3.3.3 に行く経路のコストは、TCPCS7 から TCPCS4 へのリンクのコストに、TCPCS4 からルーター 3.3.3.3 へのリンクのコストを加えたものです。

    コスト値を構成する方法は、OSPF プロトコルと RIP プロトコルで異なります。宛先への優先度が高い経路が、優先度の低い経路よりも必ず低いコストになるように OSPF リンクのコスト値を構成します。コストが高く、優先度の低い経路は、優先度の高い経路に障害が発生した場合を除き、使用されることはありません。

    次の例では、図 1 に示したサンプル・ネットワークを使用しており、スタック上の特定のインターフェースに構成されたコストを表すために、「スタック (インターフェース)」という表記方法を使用しています。例えば TCPCS7(9.67.106.7) は、TCPCS7 上のインターフェース 9.67.106.7 用に構成されたコストを指します。これらの例は、サンプル・ネットワークの IPv4 部分を使用しますが、経路コストを計算する同じ方式が IPv6 部分にも使用されます。

    TCPCS7 からルーター 3.3.3.3 への経路として以下の 3 つが可能です。

    • 直接 (TCPCS7 から 3.3.3.3)
    • TCPCS4 経由 (TCPCS7 から TCPCS4 を経由して 3.3.3.3)
    • ルーター 8.8.8.8 と TCPCS4 を経由 (TCPCS7 から 8.8.8.8 と TCPCS4 を経由して 3.3.3.3)

    TCPCS7 からルーター 3.3.3.3 への優先経路が TCPCS4 を経由する場合、インターフェース・コストは、以下の式が真となるように構成する必要があります。

    TCPCS7(9.67.106.7) + TCPCS4(9.67.101.4) < TCPCS7(9.67.102.7) 	
    TCPCS7(9.67.106.7) + TCPCS4(9.67.101.4) < TCPCS7(9.67.100.7) + 
    8.8.8.8(9.67.105.8) + TCPCS4(9.67.101.4)

    ある経路を別の経路より望ましいとする理由は無数にあります。OSPF リンク・コストを割り当てる 1 つの方法は、物理メディアの帯域幅に逆比例する値をコストにセットすることです。これにより、より高い帯域幅の経路がより低いコストを持つことになり、したがってより優先順位の高い経路になります。

    RIP リンクのコスト値は、通常 1 の値にセットされます。この結果、宛先への経路のコストは、宛先に到達するためのホップの数になります。サンプル・ネットワーク内で、TCPCS7 からルーター 3.3.3.3 への RIP 経路の場合、3 つの可能な経路が次のコストを持つことになります。
    • 直接 (TCPCS7 から 3.3.3.3)、コスト = 1
    • TCPCS4 経由 (TCPCS7 から TCPCS4 を経由して 3.3.3.3)、コスト = 2
    • ルーター 8.8.8.8 と TCPCS4 経由 (TCPCS7 から 8.8.8.8 と TCPCS4 を経由して 3.3.3.3)、コスト = 3

    TCPCS4 を経由する経路を優先経路にしたい場合、これは TCPCS7 からルーター 3.3.3.3 に直接行くコストを増やすことで実現できます。 これは、ルーター 3.3.3.3 上の 9.67.102.3 のアウト・メトリックか、TCPCS7 上の 9.67.102.7 のイン・メトリックのいずれかを増やすことで、実行できます。イン・メトリックおよびアウト・メトリックの値を増やす場合、宛先への到達コストが RIP 最大の 15 を超過しないように注意してください。

    • IPv4 OSPF および RIP

      OSPF インターフェースのコスト値は、OSPF_INTERFACE ステートメントの COST0 パラメーターを使用して設定されます。RIP インターフェースのイン・メトリックおよびアウト・メトリックは、RIP_INTERFACE ステートメントの IN_METRIC および OUT_METRIC パラメーターを使用して設定されます。

    • IPv6 OSPF および RIP

      IPv6 OSPF インターフェースのコスト値は、IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントの COST パラメーターを使用して設定されます。IPv6 RIP インターフェースのイン・メトリックおよびアウト・メトリックは、IPV6_RIP_INTERFACE ステートメントの IN_METRIC および OUT_METRIC パラメーターを使用して設定されます。

  8. OSPF プロトコルを使用する場合、高コスト・リンクを管理します。 OSPF ルーティング・トラフィックは定期的な性格をもつため、リンクの基礎になるデータ・リンク接続が常にオープンしている必要があります。これはネットワーク・セグメントに高いコストの使用料金をもたらします。これを避けるため、次の 2 つの構成ステップにより、プロトコルの定期的な性格を禁止することができます。

    最初のステップは、リンクをデマンド・サーキットとして定義することです。 これが行われると、インターフェースを介して送信されるリンク状態公示 (LSA) が定期的にリフレッシュされなくなります。実際に変更のあった LSA のみが公示されます。さらに、これらの LSA のエージングは、リンク状態データベースからエージアウトされないように使用不可になります。

    実行できるもう 1 つのステップは、 このリンクにハロー抑止を定義することです。 ハロー抑止は、リンクがデマンド・サーキットで、かつ Point-to-Point か Point-to-Multipoint のいずれかである場合のみ意味を持ちます。 ハロー抑止では、OSPF hello パケットの定期的伝送が禁止されます。

    • IPv4 OSPF

      OSPF インターフェースをデマンド・サーキットとして定義するには、最初に Demand_Circuit=YES パラメーターをグローバル OSPF 構成ステートメントに指定する必要があります。次に、デマンド・サーキットとして構成する 各インターフェースの OSPF_INTERFACE ステートメントに、Demand_Circuit=YES パラメーター を指定する必要があります。 OSPF_INTERFACE ステートメントの Hello_Suppression パラメーターを使用して、ハロー抑止を構成します。 OSPF_INTERFACE ステートメントでの Hello_Suppression パラメーターの構成について詳しくは、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。ハロー抑止を実装した場合、OSPF_INTERFACE ステートメントの PP_Poll_Interval パラメーターを使用して、近隣関係に障害があるがインターフェースは依然使用可能なときに、近隣関係を再確立するために OMPROUTE が近隣に連絡を試みる間隔を指定できます。

    • IPv6 OSPF

      IPv6 OSPF インターフェースをデマンド・サーキットとして定義するには、 最初に Demand_Circuit=YES パラメーターを グローバル IPv6 OSPF 構成ステートメントに指定する必要があります。 次に、デマンド・サーキットとして構成する各インターフェースの IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントに、Demand_Circuit=YES パラメーターを 指定する必要があります。 IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントの Hello_Suppression パラメーターを使用して、ハロー抑止を構成します。 IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントでの Hello_Suppression パラメーターの構成について詳しくは、「z/OS Communications Server: IP 構成解説書」を参照してください。ハロー抑止を実装した場合、IPV6_OSPF_INTERFACE ステートメントの PP_Poll_Interval パラメーターを使用して、近隣関係に障害があるがインターフェースは依然使用可能なときに、近隣関係を再確立するために OMPROUTE が近隣に連絡を試みる間隔を指定できます。

  9. RIP プロトコルを使用する場合、RIP フィルターを定義します。 特定の RIP ルーティング情報を他のルーターにブロードキャストしないか、または他のルーターからのブロードキャストを受け入れないようにするか、あるいは、その両方を実行するよう OMPROUTE に RIP フィルターを構成できます。フィルターは、個々の RIP インターフェースに 適用することもすべての RIP インターフェースに適用することもできます。 フィルターを定義する際、フィルター・タイプ (送信または受信) が、フィルターに掛けられる経路情報を識別する値とともに指定されます。 フィルターを使用することにより、ネットワークにブロードキャストされる RIP ルーティング情報の量または、OMPROUTE が保守する RIP ルーティング情報の量 (あるいは、その両方) を制限することができます。さらに、フィルターは、ネットワークの部分から宛先アドレスを隠すために使用することもできます。
    • IPv4 RIP
      個々の RIP インターフェースのフィルターを 構成するには、RIP_INTERFACE ステートメントの FILTER パラメーターを使用します。 すべての IPv4 RIP インターフェースに適用されるフィルターを構成するには、 グローバル FILTER ステートメントを使用します。 図 1 に示されたサンプル・ネットワークで、10.1.1.0 サブネットを TCPCS6 から隠したい場合 (TCPCS6 のリモート側にあるすべてのルーターおよびホストとともに)、TCPCS7 に次のフィルターを定義できます。
      Filter=(nosend,10.1.1.0,255.255.255.0);
    • IPv6 RIP

      個々の IPv6 RIP インターフェースの フィルターを構成するには、IPV6_RIP_INTERFACE ステートメントの FILTER パラメーターを使用します。 すべての IPv6 RIP インターフェースに適用されるフィルターを構成するには、 グローバル IPV6_RIP_FILTER ステートメントを使用します。 例えば、図 1 に示したサンプル・ネットワークで、2001:0DB8:0:A1B/64 接頭部を TCPCS4 から隠したい場合、TCPCS4 に次のフィルターを定義できます。

      IPv6_RIP_Filter=(noreceive,2001:0DB8:0:A1B/64);
  10. OSPF プロトコルを使用する場合、マルチプロトコル環境での経路優先順位を定義します。 この経路優先順位の説明は複雑です。OSPF または IPv6 OSPF ルーティング・プロトコルのみ、あるいはその両方がネットワークで使用されている場合、経路の優先順位はそれほど重要ではありません。加えて、AS 境界ルーターとして構成された OSPF または IPv6 OSPF ルーターが 1 つもない場合、経路の優先順位はまったく考える必要がありません。以下の情報は、マルチプロトコルまたは AS 境界ルーターを持つ環境のために提供されています。 この説明においては、RIP は RIP と IPv6 RIP の両方、OSPF は OSPF と IPv6 OSPF の両方、OSPF 構成ステートメントは OSPF ステートメントと IPV6_OSPF ステートメントの両方に適用するように意図されています。

    OMPROUTE は、同じ宛先に 2 つの経路がある場合どちらを選択するかを、異なるルーティング・プロトコルから得た優先順位、または OSPF AS 境界ルーターから提供された情報を使用して決めます。OMPROUTE が適用する優先順位の順序を説明するため、最初に幾つかの用語を定義しておく必要があります。

    RIP 経路
    RIP プロトコルから得た経路。RIP 経路は、近隣ルーターからの RIP パケットに提供された情報を使用して生成されます。例えば、図 1 のサンプル・ネットワークで、TCPCS7 から宛先サブネット 30.1.1.0 への経路は RIP 経路です。
    OSPF 内部経路
    OSPF プロトコルから得た経路であり、この経路は、宛先に達するまでに通るすべてのパスが OSPF 自律型システムの内部にあります。例えば、図 1 のサンプル・ネットワークで、TCPCS7 からルーター 2.2.2.2 上の宛先 9.67.108.2 への経路は、OSPF 内部経路です。
    OSPF 外部経路
    OSPF プロトコルから得た経路であり、この経路は、宛先に達するまでに通るパスの一部が OSPF 自律型システムの内部にはない経路です。パスが自律システムから離れるのは、AS 境界ルーターから OSPF 自律システムに取り込まれた情報を使用する場合です。このように OSPF AS に取り込まれる情報には、別の自律システム (例えば RIP) からインポートされる情報と、AS 境界ルーターで静的に構成されているかまたはそのルーターに直接接続されている宛先に関する情報があります。例えば、図 1 のサンプル・ネットワークでは、TCPCS4 から TCPCS6 上の宛先 9.67.103.6 への経路は、OSPF 外部経路です。AS 境界ルーターとして構成されている TCPCS7 では、その宛先に関する情報が RIP AS から OSPF AS にインポートされています。

    OSPF 外部経路は、マルチプロトコル比較値の設定を基に、2 つのカテゴリーに分類されます。OSPF AS に外部情報をインポートする AS 境界ルーターで比較値が Type1 に設定されている場合は、この情報を使用して生成される OSPF 外部経路は OSPF タイプ 1 外部経路になります。AS 境界ルーター上で比較値が Type2 にセットされている場合、生成された経路は OSPF タイプ 2 外部経路になります。例えば、図 1 のサンプル・ネットワークで、TCPCS7 (AS 境界ルーター) 上の比較値が Type1 にセットされている場合、TCPCS4 から TCPCS6 上の宛先 9.67.103.6 への経路は、OSPF タイプ 1 外部経路です。TCPCS7 上の比較値が Type2 にセットされている場合、経路は OSPF タイプ 2 外部経路です。

    マルチプロトコルの比較

    この比較値を構成することにより、複数の異なる自律システムからの経路が共存しているときに、それらの経路のコストをどのように取り扱うかを指定することができます。OMPROUTE の場合、この値は、OSPF または IPV6_OSPF 構成ステートメントに COMPARISON パラメーターを使用して構成できます。COMPARISON=Type1 を指定すると、異なる自律型システム (例えば、OSPF AS と RIP AS) の中で使用される経路コスト値は、比較できると見なされます。COMPARISON=Type2 を指定すると、異なる自律型システムで使用される経路コスト値は、比較できないと見なされます。

    比較値は、ルーターが提供する機能によって、さまざまな方法で使用することができます。
    • AS 境界ルーターとして、OMPROUTE は比較値を使用して、AS 境界ルーターが OSPF AS 内にインポートしたルーティング情報を使用して OSPF AS 内のルーターが生成した外部経路のタイプ (タイプ 1 またはタイプ 2) を判別します。
    • AS 境界ルーターとして、OMPROUTE は、OSPF AS から RIP AS に経路をインポートするときに、どのように経路コスト値を割り当てるかを決める際にも、比較値を使用します。
      • COMPARISON=Type1 (コスト値が比較可能であることを示す) と構成されている場合は、RIP AS にインポートされた OSPF 経路が、その OSPF 経路の実際のコストとともに公示されます。例えば、サンプル・ネットワークで、TCPCS7 が COMPARISON=Type1 を使用して構成され、TCPCS7 から TCPCS2 上の宛先 9.67.108.2 への OSPF 経路のコストが 7 である場合、TCPCS7 は RIP AS にその宛先への RIP 経路をコスト 7 として公示します。
        注:
        1. この規則 (COMPARISON=Type1 の場合に OSPF 経路が RIP AS に どのように公示されるかを定義した規則) の例外は、インポートされる OSPF 経路が OSPF タイプ 2 外部経路である場合です。この場合、その経路はまったく RIP AS に公示されません。
        2. RIP AS 内のすべての宛先は、15 以下のコストで到達できなければならないという要件を覚えておくことが重要です。COMPARISON=Type1 を使用する場合は、OSPF 経路のコスト値が低い必要があります。OSPF AS 内の宛先のうち、15 を超えるコストを使用しなければ RIP AS から到達できない宛先は、到達不能となります。
      • COMPARISON=Type2 (コスト値が比較不可であることを示す) と構成されている場合は、RIP AS にインポートされる OSPF 経路は、コスト 1 として公示されます。RIP AS 内のルーターが、同じ宛先に到達可能な 2 つの経路 (1 つは RIP AS への内部経路で、もう 1 つは OSPF からインポートされた経路) を持っているときに、この方法を使用すると、OSPF からインポートされた経路の方が優先されます。例えば、図 1 に示されたサンプル・ネットワークで、TCPCS7 が COMPARISON=Type2 で構成され、TCPCS7 が TCPCS6 を通過せずに 30.1.1.0 サブネット内の宛先に到達できる場合 (サンプルには示されていないリンクを使用)、TCPCS7 は RIP AS に、宛先への RIP 経路をコスト 1 として公示します。この結果 TCPCS6 は、TCPCS7 を経由して宛先にコスト 2 で到達できると判断します。TCPCS6 にとって、RIP AS の内部の宛先に達するための経路のコストが 2 より大きい場合、TCPCS7 を経由する経路が選択されます。
        注: この規則 (COMPARISON=Type2 の場合に OSPF 経路が RIP AS に どのように公示されるかを定義した規則) の例外は、インポートされる OSPF 経路が OSPF タイプ 2 外部経路である場合です。この場合その経路は、OSPF タイプ 2 外部経路の実際のコストを使用して RIP AS に公示されます。
    • 別の自律型システムからのルーティング情報を持つ他のルーターと同様に、OMPROUTE は比較値を使用して、別の自律型システムからの情報を使用して生成された複数の経路の中から 1 つを選択します。この場合比較値をどのように使用するかについては、表 1 に示されています。

    以上の定義を踏まえた上で、異なるプロトコルから入手した、または OSPF AS 境界ルーターによって提供された情報を使用して得た、同じ宛先への複数の経路からどれを選択するかに使用する優先順位の順序を、表 1 に示します。表 1ソースの比較 は、複数の経路から選択する優先順位を使用するルーター上の比較値の設定 (OSPF 構成ステートメント上の COMPARISON パラメーターを使用した) を指します。経路 1 および経路 2 は、選択される指定可能な 2 つの経路です。

    表 1. 経路の優先順位
    ソースの比較 経路 1 のタイプ 経路 2 のタイプ 選択される経路
    Type 1 OSPF 内部 RIP OSPF 内部
    Type 1 OSPF 内部 OSPF タイプ 1 外部 OSPF 内部
    Type 1 OSPF 内部 OSPF タイプ 2 外部 OSPF 内部
    Type 1 RIP OSPF タイプ 1 外部 最小コストの経路
    Type 1 RIP OSPF タイプ 2 外部 RIP 経路
    Type 1 OSPF タイプ 1 外部 OSPF タイプ 2 外部 OSPF タイプ 1 外部
    Type 2 OSPF 内部 RIP OSPF 内部
    Type 2 OSPF 内部 OSPF タイプ 1 外部 OSPF 内部
    Type 2 OSPF 内部 OSPF タイプ 2 外部 OSPF 内部
    Type 2 RIP OSPF タイプ 1 外部 OSPF タイプ 1 外部
    Type 2 RIP OSPF タイプ 2 外部 最小コストの経路
    Type 2 OSPF タイプ 1 外部 OSPF タイプ 2 外部 OSPF タイプ 1 外部