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Smarter Business

経営に貢献するクラウドの利活用に向けて|Microsoft社との協業で支援できること

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向田 隆

向田 隆
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
ハイブリッドクラウド・サービス
Azure&GCPストラテジック・パートナーシップ
アソシエイト・パートナー

クラウドベースのアプリケーション/システム開発部門に所属。主に、パブリッククラウドを活用した情報システム戦略策定、業務改革構想、全社アーキテクチャー標準化、既存システムのマイグレーション/モダナイゼーションの計画化などのプロジェクトを支援。認定Azure Solution Architect Expert。認定ITコーディネーター(経済産業省推進資格)。

2021年度版の総務省の「情報通信白書(IBM外のWebサイトへ)」によると、クラウド・サービスを一部でも利用している企業の割合は 68.7%であり、そのうち、クラウド・サービスの効果について、「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答した企業の割合は 87.1%にもなります。企業活動で不可欠となったクラウドを利活用していくには、どのような備えが必要となるのでしょうか。その最新のトレンドをご紹介します。

経営において重要度を増したクラウドの利活用。そしてシステム構築は共創の時代に

下図はクラウド活用における代表的なテーマをまとめています。最近は、ITコストの削減といった「守りの目的」から、新しいビジネスの創出やチャネル拡大といった「攻めの目的」へと変化しています。また、その適用範囲も、IT部門での課題解決から、企業グループや業界レベルでの検討へと広がっています。

クラウド利活用の適用範囲

出典:IBM

そのトレンドは、企業におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)への取り組みにより、さらに加速しています。DXのプロジェクトでは、経営上の新しいアイデアを素早く試して、改善していきたいという強いニーズがあります。そのため、クラウドにより、DXを支えるビッグデータやAI、IoTなどの最新のテクノロジーが直ぐに利用できる環境が求められているのです。

そして、クラウド上でのシステム構築をご支援するITソリューション企業には、従来の「受託型」から脱却し、企業と伴走しながら新しいアイデアを実現していく「共創型」への変革が期待されています。特に、企業が新しいアイデアの実現に集中できるように、クラウドを利活用するための技術面や運用面でのハードルを下げる仕掛け、仕組みを提供していくことが重要になります。

IBMが共創するDXは、「The DX Forum」オンデマンド版でもご視聴いただくことができます。

共創を実現するための仕掛けと仕組み:「マルチクラウド」と「クラウド・エンジニアリング」

IBMのサービス部門であるIBMコンサルティング事業では、企業がクラウドを徹底的に利活用できるようにするために、「マルチクラウド」と「クラウド・エンジニアリング」という2つの戦略的な施策に取り組んでいます。

共創を実現するための仕掛けと仕組み

出典:IBM

マルチクラウド
マルチクラウドは、企業が適材適所でどのクラウドを選択しても、各クラウドの特徴を最大限に活用しながら、高い品質のシステム構築ができるようにするための“仕掛け”です。具体的には、主要なクラウドベンダー各社と緊密なパートナーシップを結び、お互いの強みを生かした付加価値の高い提案や新たなサービスの開発、および、戦略的な技術者の育成を進めています。

加えて、特定のクラウドベンダーに制限されず、利用する環境を柔軟に変更したいというニーズにも応えるため、IBMでは、企業の貴重な資産であるアプリケーションのポータビリティーを確保し、同じアプリケーションがどのクラウド環境でも稼働できる、Red Hat社のOpenShiftを利用したシステム構築を推進しています。

クラウド・エンジニアリング
クラウド・エンジニアリングは、クラウド上で迅速にシステム開発や運用ができるようにするための“仕組み”です。クラウドの特性を最大限に活用した「開発」は、従来の方法と比較して難易度が高くなりました。例えば、クラウドネイティブや、コンテナ化といった新しい技術への理解、アジャイル開発、継続的なインテグレーション/デリバリー(CI/CD)など、クラウドとの親和性の高い運営形態へのトランスフォーメーションが求められているためです。

クラウドの利活用に成功している現場であっても、高度な知見をもつエンジニアの「匠のスキル」により、ようやく運営できているケースが少なくありません。クラウド・エンジニアリングの狙いは、その匠のスキルを紐解いて、標準的な手法として確立し、数多くのプロジェクトに横展開することです。

アプリケーションの視点

  • 業務系のSaaSや、既存システムとの連携なども踏まえた、全体最適化されたアーキテクチャのグランドデザイン、アプリケーション設計手法の適用
  • 既存システムを有効活用するためのマイグレーション/モダナイゼーションを実践
  • システム開発を加速するために、各業界の業務に特化したアプリケーション・フレームワークの提供(デジタルサービス・プラットフォーム/DSP

インフラとプラットフォームの視点

  • システム開発の初期段階から運用/管理も視野に入れた検討がおこなえるようにする、オペレーション・バイ・デザインのコンサルテーション
  • 各クラウドが提供しているサービスを最大限活用したオペレーション/サービス・マネジメント基盤の構築
  • 運用/管理プラットフォームのサービス化(クラウドにおける運用/管理は、“つくる”から“利用する”時代に)

「マルチクラウド」の実践へ:Microsoft社との協業

さて、この記事の最後では、筆者が担当するMicrosoft社との協業を題材に、マルチクラウドの実践における3つのポイントについて紹介いたします。

1つ目のポイントは、両社の強みを生かした提案の実現です。Microsoft社の特徴は、Azureに加え、業務システムをカバーするDynamics 365や、ワークスペース領域をカバーするMicrosoft 365やTeamsなど、企業のあらゆるニーズに応えるクラウド・サービスが提供されていることです。

一方、IBMは企業の基幹システムにおける豊富なシステム構築の実績を持ちます。さらに、グローバルでデリバリーチームが展開されているため、DX事例などの海外での最新の知見も活用することができます。Microsoft社とIBMがお互いの強みを生かした、ミッション・クリティカル領域でのクラウド・トランスフォーメーションの提案をおこなっています。

Microsoft社とIBMがお互いの強みを生かした、ミッション・クリティカル領域でのクラウド・トランスフォーメーションの提案

出典:IBM

2つ目のポイントは企業のニーズに応えた新しいサービスの提供です。2021年に、Azure上でRed Hat社のOpenShift環境をマネージドサービスとして提供できる「ARO(Azure Red Hat OpenShift)(IBM外のWebサイトへ)」をリリースしました。Kubernetesコンテナー・プラットフォームで実績があるRed Hat社のOpenShiftの環境が、Azure上で直ぐに利用ができ、かつ、利用者はインフラの管理からも解放されるという、画期的なサービスを提供しています。

そして、IBMをはじめとする多くのソフトウェアベンダーでは、業務パッケージなどの自社のソフトウェアをOpenShiftに対応させています。AROの活用によりそれらのソフトウェアも直ぐに活用ができるため、Azure上でのシステム構築のさらなる加速を可能にしています。

3つ目のポイントは、戦略的な技術者の育成です。IBMでは現在、グローバルで、のべ3万名を超える社員がAzure認定資格を所有しています。その内訳は、コンサルタント、アーキテクト、プロジェクト・マネージャー、そして技術専門家など多岐に渡ります。そのため、Azureの知見を持つメンバーがシステム構築のさまざまな局面において参画することができるのです。

また、クラウドの技術スキルは世界共通であり国境が存在しません。IBMでは、海外人材も視野に入れて技術者の調達を実践しています。なお、日本IBMにおいても、2021年に認定資格を取得したプロフェッショナルの数が飛躍的に増加しました。

Microsoft社とIBMがお互いの強みを生かした、ミッション・クリティカル領域でのクラウド・トランスフォーメーションの提案