alt_disk_copy コマンド

目的

現在稼働中のシステムのクローン (コピー) を代替ディスクに作成します。

構文

rootvg を代替ディスクにコピーする場合:

alt_disk_copy -d targetdisks... [-i image.data] [-s script] [-b bundlename] [-I installpflags] [-l imageslocation] [-f fixbundle] [-F fixes] [-e excludelist] [-w filesets] [-n] [-P phases] [-c console] [-x first_boot_script] [-R resolvconf] [-DBOVgruTS]

      

説明

alt_disk_copy コマンドを使用すると、ユーザーは、長時間マシンを停止させて障害リスクを軽減しなくても、 現行 rootvg を代替ディスクにコピーし、オペレーティング・システムを次の保守レベルまたはテクノロジー・レベルに更新することができます。 これを行うには、現行 rootvg のコピーを代替ディスク上に作成すると同時に、ソフトウェアの更新を適用します。 必要な場合、新しいディスクをブートした後で、bootlist コマンドが実行でき、ブート・リストを変更して、以前の保守レベルまたはテクノロジー・レベルのオペレーティング・システムに戻してブートすることができます。

実行中の rootvg のクローンを作成することによって、ユーザーはルート・ボリューム・グループのバックアップ・コピーを作成できます。 このコピーは、rootvg が障害を起こした場合にバックアップとして使用することもでき、追加更新をインストールすることによって 変更することもできます。 一例として、5300-00 システムのクローンを作成してから更新を インストールして、クローンの rootvg を 5300-01 の状態にすることが考えられます。 こうすれば、システムは、その稼働中に更新されることになります。新しい rootvg から リブートすれば、稼働中のシステムのレベルが 5300-01 になります。 このレベルに問題があれば、ブート・リストを 切り替えて 5300-00 ディスクに戻し、リブートすれば、システムは 5300-00 に戻ります。 さらに例を挙げるなら、rootvg のクローンを作成し、個々のフィックスを適用し、システムをリブートし、適用したフィックスをテストして、問題があれば、元の rootvg に戻してリブートするということもできます。

インストールの終了時には、ボリューム・グループ altinst_rootvg が、vary off された状態で、プレースホルダーとしてターゲット・ディスクに残されます。 これをオンに変更した場合は、このボリューム・グループは、論理ボリュームをまったく所有していない ものとして示されますが、このボリューム・グループには論理ボリュームが含まれています。ただし、これらの 論理ボリュームは、その名前が稼働中のシステム上の論理ボリュームの名前と競合することになってしまった ため、ODM から除去されてしまいます。altinst_rootvg ボリューム・グループをオンに変更しないで、その代わりに定義をそこに プレースホルダーとして残してください。

新しい代替ディスクからリブートした後は、lspv リストには以前の rootvg ボリューム・グループが old_rootvg として 表示されます。このボリューム・グループには元の rootvg にあった全ディスクが含まれています。 この以前の rootvg ボリューム・グループは、リブート時に not vary-on (オンに変更しない) に設定されています。 これを除去する場合は、必ず alt_rootvg_op -X old_rootvg コマンドまたは alt_disk_install -X old_rootvg コマンドを使用するようにしてください。

元の rootvg に戻る必要がある場合は、 bootlist コマンドを使用して、元の rootvg からリブートするようにブート・リストを変更します。

注:
  1. 代替ディスク操作で、alt プレフィックスを使用して、ボリューム・グループ、論理 ボリューム、特殊装置ファイル、およびファイルシステムを作成します。 alt_disk_copy がシステムで使用される場合は、管理者としては、alt プレフィックスが付いているボリューム・グループ、論理ボリューム、特殊装置ファイル、またはファイルシステムの保有または作成は避ける必要があります。代替ディスク操作により、これらの項目が不用意に除去、変更、または損傷される場合があるからです。
  2. NIM 代替ディスク移行 (バージョンまたはリリース・レベルのアップグレード用) は、nimadm コマンドでサポートされます。さらに詳しくは、nimadm 文書を参照してください。
  3. 論理ボリューム名に関する現行の LVM 限度は、15 文字です。代替ディスクのインストール・コマンド では、4 文字の alt_ プレフィックスが前に付加されるため、コピーまたはインストールの 対象となる rootvg 内の元の論理ボリューム名の限度は 11 文字になります。 元の 論理ボリューム名が 11 文字を超えている場合は、image.data をカスタマイズして使用すること によって、短縮できます (-i フラグを参照)。
  4. rootvg ボリューム・グループのクローン作成時には、bosboot コマンドによって、新しいブート・イメージが作成されます。 /dev/ipldevice を除去または変更すると、bosboot コマンドは失敗します。
  5. 代替 rootvg ボリューム・グループに対して、LVM コマンド (exportvgimportvgvaryoffvg、 または chlv など) を直接使用しないでください。
  6. この機能は、ネットワーク・インストール・マネージメント (NIM) によっても使用できます。 詳しくは、「NIM Guide」を参照してください。
  7. alt_disk_copy コマンドは、マウント済みのファイルシステムのみをバックアップします。 バックアップしたいファイルシステムは、すべてマウントするようにしてください。 mksysb コマンドは、rootvg 内のマウント済みのジャーナル・ファイルシステム (JFS) と拡張ジャーナル・ファイルシステム (JFS2) を バックアップします。 ファイルシステムのバックアップの詳細については、mount コマンドを参照してください。
  8. バックアップ・エラーを防ぐには、システムのバックアップ中はシステム・アクティビティーを静止しておく必要があります。 alt_disk_copy コマンドの実行中にバックアップ・エラーまたはリストア・エラーが発生した場合、メッセージが表示されますが、コマンドは続行され、他に問題がなければコマンドは 0 を返します。 この動作は環境変数 ALT_BAK_ERR_FAIL および ALT_BAK_ERR_REPORT で制御できます。 ALT_BAK_ERR_FAIL 環境変数が 1 に設定され、バックアップ操作またはリストア操作中にエラーが発生した場合、alt_disk_copy コマンドはクリーンアップ操作を実行し、実行を停止します。 ALT_BAK_ERR_REPORT 環境変数が 1 に設定され、バックアップ操作またはリストア操作中にエラーが発生した場合、alt_disk_copy コマンドは実行を続けますが、戻りコードは 1 に設定され、bootlist は代替ディスクからのブートに設定されません。

  9. システムをアップグレードするために alt_disk_copy コマンドを使用することにしており、rootvg の現行レベルが 6100-08 SP2 または 7100-02 SP2 より前の場合、alt_disk_copy 操作の前に、元の rootvg にアップグレードしようとしているレベルで bos.alt_disk_install.rte ファイルセットをインストールします。bos.alt_disk_install.rte ファイルセットをインストールしないと、ブート・イメージを作成中に代替 rootvg にエラー・メッセージが表示されます。
  10. tcbck -n ALL コマンドに続いて alt_disk_copy 操作を行うと、TCB 対応システムで以下のエラーが発生する場合があります。
    error: 3001-020 The file /dev/altinst_rootvg was not found.
    TCB データベース内の altinst_rootvg エントリーは、# tcbck -d /dev/altinst_rootvg コマンドを実行して除去できます。
  11. システムを代替ディスクに対してブートした後で、ネットワーク・ファイルシステム (NFS) クライアントは、コピーされたシステムから NFS ディレクトリーにアクセスしたときに ESTALE エラーを受け取ることがあります。これらのクライアントは、影響を受けたディレクトリーをアンマウントして再マウントする必要があります。

フラグ

項目 説明
-b bundlename オプション・ファイルのパス名と、rootvg のクローンの後でインストールされるパッケージまたはファイルセットのリスト。 このオプションを指定するときは、-l フラグも使用する必要があります。
-B mksysb またはクローン作成の後でブート・リストを 実行しないことを指定することになります。このフラグが設定されている場合は、-r フラグは使用できません。
-c console 代替 rootvg のシステム・コンソールとして使用されるデバイス名。 このフラグが有効なのは、-O フラグと共に指定された 場合のみです。
-d targetdisks 代替 rootvg が作成される 1 つ以上のターゲット・ディスクの名前をスペースで区切ったリストを指定します。 ただし、複数のディスクを指定する場合は、リストを引用符 (" ") で囲む必要があります。これらのディスクは、現在ボリューム・グループ定義が入っているものであってはなりません。 lspv コマンドによって、これらのディスクがボリューム・グループ None に属していることが表示されるはずです。
-D デバッグをオンにします (-x 出力を設定します)。
-e excludelist rootvg のクローンを作成する際に使用する、オプションの exclude.list。 除外のルールは、grep コマンドの パターン・マッチング・ルールに従います。excludelist には絶対パス名を指定する必要があります。
注: 特定のファイルをバックアップから除外したい場合は、ASCII エディターを 使用して /etc/exclude.rootvg ファイルを作成し、システム・バックアップ・イメージに 組み込みたくないファイル名のパターンを入力します。このファイルに入っているパターン が grep コマンドのパターン・マッチング・ルールへの入力となって、バックアップから除外される ファイルを判別します。/etc/exclude.rootvg ファイルにリストされている ファイルを除外したい場合は、「Exclude Files」フィールドを選択し、タブ・キーを 1 回 押して、デフォルト値を「yes」に変更します。例えば、scratch ディレクトリーのすべての目次を除外する場合は、exclude ファイルを次のように 編集します。
         /scratch/
例えば、/tmp ディレクトリーの内容を除外し、それ以外に パス名に /tmp があるディレクトリーがあっても、そのいずれも除外されることがない ようにする場合は、exclude ファイルを次のように編集します。
         ^./tmp/
すべてのファイルは、「.」(現在の作業ディレクトリー) に関係するファイルのバックアップが作成されます。 行の先頭にある文字列に検索を一致させることが重要であるファイル またはディレクトリーをいずれも除外する場合は、検索ストリングの先頭文字として脱字記号文字 (^) を 使用し、その後にドット文字 (.) を続け、除外対象のファイル名またはディレクトリーをその後に 続けます。 除外対象のファイル名またはディレクトリーが別のファイル名またはディレクトリーの サブストリングである場合は、脱字記号文字に続けてドット文字 (^.) を使用して、検索が 行頭から始まる必要があることを示し、ドル記号文字 ($) を使用して、検索が行末で 終了する必要があることを示します。
-f fixbundle オプションのファイルと、rootvg のクローン作成後にインストールする APAR のリスト。 このオプションを指定するときは、-l フラグも使用する必要があります。
-F fixes rootvg のクローンの後にインストールする APAR (例えば IX123456) のオプションのリスト。 このオプションを指定するときは、-l フラグも使用する必要があります。
-g ディスクのブート可能性検査をスキップします。
-i image.data rootvg から作成されたデフォルトの image.data ファイルの代わりに使用する、オプションの image.data ファイル。 image.data ファイル名は、絶対パス名 (例えば、/tmp/my_image.data など) である 必要があります。
-I installpflags 新しいファイルセットを更新、またはクローンの altinst_rootvg にインストールするときに使用するフラグ。デフォルトのフラグは、-acgX です。このオプションを指定するときは、-l フラグも使用する必要があります。
-l imageslocation rootvg のクローンの後で適用される installp のイメージまたは更新情報の場所。 これは、ディレクトリーの絶対パス名でも デバイス名 (例えば、/dev/rmt0 など) でも かまいません。
-n NIM クライアントを継続します。 /.rhosts ファイルと /etc/niminfo ファイルが、代替 rootvg のファイルシステムにコピーされます。
-O ターゲット altinst_rootvg 上でデバイスのリセットを 実行します。これが原因で、ユーザー定義デバイス構成があっても、代替ディスクのインストールでは、そのいずれも 保存しません。このフラグは、1 つ以上のターゲット・ディスクが、異なるシステムの rootvg になる場合に便利です (例えば、論理区画化を行う場合または システム・ディスクの交換を行う場合に便利です)。
-P phases alt_disk_copy のこの呼び出し中に実行するフェーズ (複数の場合も ある)。有効な値は 1、2、3、12、23、また は all (デフォルト) です。
12
フェーズ 1 および 2 を実行します。
23
フェーズ 2 および 3 を実行します。
all
3 つのフェーズすべてを実行します。
-r alt_disk_copy コマンドの終了時に、代替ディスクからリブートすることを指定します。
-R resolvconf rootvg のクローンが作成された後に、既存の resolv.conf ファイルと置き換わる resolv.conf ファイル。絶対パス名を指定する 必要があります。
-s script mksysb のインストールまたは rootvg のクローンの終了時に実行される、オプションのカスタマイズ・スクリプト。 このファイルは実行可能ファイルでなければなりません。 このスクリプトは、/alt_inst ファイルシステムがアンマウントされる前に、稼働中のシステムで呼び出されるので、リブートの前に、稼働中のシステムから /alt_inst ファイルシステムに、ファイルがコピーできます。
-S クローン作成またはインストール操作を開始する前に、ターゲット・ディスクでのスペース・チェックをスキップするよう指示します。
重要: JFS2 ファイルシステムには、JFS ファイルシステムより多くのメタデータが含まれます。 -S フラグを -T フラグと共に使用すると、スペース・チェックはスキップされます。 この状態では、新しく作成された JFS2 ファイルシステムに、ファイルシステムの内容と追加のメタデータを保管するための十分なスペースがあるかどうかの検証は行われません。
-T ターゲット・ディスクで rootvg ボリューム・グループの再作成処理中に、JFS ファイルシステムを JFS2 ファイルシステムに変換するよう指示します。
-u 定義済み状態のworkload partition (WPAR) に属するファイルシステムを、代替システムにコピーします。
注: 代替ディスクに組み込まれるためには、定義済み状態の WPAR に属するすべてのファイルシステムが、rootvg ボリューム・グループに 入っている必要があります。
-V 詳細出力をオンにします。 これによって、rootvg クローン作成のためにバックアッ プしようとするファイルが表示されます。
-w filesets rootvg のクローン作成後にインストールするファイルセットのリスト。 このオプションを指定するときは、-l フラグも使用する必要があります。
-x first_boot_script すべてのファイルシステムがマウントされた後で、代替 rootvg の初期ブート中に実行される、 オプションのカスタマイズ・スクリプト。

終了状況

項目 説明
0 すべての alt_disk_copy 関連操作が正常に 完了しました。
>0 エラーが発生しました。

  1. 実行中の 5300-00 rootvg のクローンを hdisk3 に作成した上で、/updates から更新を適用して、 クローンの rootvg を 5300-01 レベルにするには、次のように入力します。
         alt_disk_copy -d hdisk3 -F 5300-01_AIX_ML -l /updates 
    これで、次回のリブート時には hdisk3 からブートされるように、ブート・リストが設定されます。
  2. 実行中の rootvg のクローンを hdisk3hdisk4 に作成し、/updates にある すべての更新情報に対して update_all を実行するには、次のように入力します。
         alt_disk_copy -d "hdisk3 hdisk4" -b update_all -l /updates
    これで、次回のリブート時には hdisk3 からブートされるように、ブート・リストが設定されます。
  3. 実行中の rootvg のクローンを hdisk1 に作成し、フェーズ 1 の後で停止するには、次のように入力します。
        alt_disk_copy -d hdisk1 -P1  
    注意: クローン作製された rootvg を使用するために、このブート・リストを変更してはなりません。
  4. 既存の代替 rootvg に対してフェーズ 2 とフェーズ 3 を実行し、正常に完了した時点で システムをリブートするには、次のように入力します。
       alt_disk_copy -d hdisk1 -P23 -r
  5. 実行中のシステムのクローンを hdisk1 および hdisk2 に作成し、ファイルシステムを JFS ファイルシステムから JFS2 ファイルシステムに変換するには、次のコマンドを実行します。
    alt_disk_copy -B -T -d "hdisk1 hdisk2"

位置

/usr/sbin/alt_disk_copy

ファイル

項目 説明
/usr/sbin/alt_disk_copy alt_disk_copy コマンドが入ります。