同僚を装った人物からの機密情報を要求するEメール、国税庁の名を語った脅迫的なボイスメール、外国の有力者からの金銭の提供など、これらはソーシャル・エンジニアリングのほんの一例にすぎません。ソーシャル・エンジニアリングは心理操作を使用し、技術的またはデジタル・システムの脆弱性ではなく、人間のミスや弱点を利用するため、「ヒューマン・ハッキング」と呼ばれることもあります。
サイバー犯罪者は、ソーシャル・エンジニアリング戦術を頻繁に使用して、個人データや財務情報(ログイン認証情報、クレジットカード番号、銀行口座番号、社会保障番号)を取得し、ID盗用に使用します。これにより他人の金銭やクレジットカードを使用して物を購入したり、他人の名前でローンを借りたり、他人の失業手当を申請することができてしまいます。
さらに、ソーシャル・エンジニアリング攻撃は、大規模なサイバー攻撃への最初の段階となる可能性もあります。例えば、サイバー犯罪者は被害者を騙してユーザー名とパスワードを共有させ、それらの認証情報を使用して被害者の雇用主のネットワークにランサムウェアを仕掛ける可能性もあるからです。
ソーシャル・エンジニアリングがサイバー犯罪者にとって魅力的なのは、ファイアウォール、アンチウイルス・ソフトウェア、その他のサイバーセキュリティーの制御を回避するという難しい技術的作業をすることなく、デジタル・ネットワーク、デバイス、アカウントにアクセスできるためです。
ISACAのState of Cybersecurity 2022レポートによると、ソーシャル・エンジニアリングが現在のネットワーク侵害の主な原因となっている理由の1つはここにあります。また、IBMのデータ侵害のコストに関する調査によると、ソーシャル・エンジニアリングの手口(フィッシングやビジネス・メール詐欺など)による侵害は、最もコストがかかるものの1つであることがわかっています。