概要

ヘルスケアにおける相互運用性が重要な理由

ヘルスケア・データに安全な方法でアクセスして共有することには常に困難が伴います。 ヘルスケア・データの特性により、次のようなパラドックスが生まれます。 機密性が高く、高いレベルのプライバシーとセキュリティーを必要とするため、共有は困難ですが、必要なときにアクセスできないことは、重大な損害をもたらす可能性があります。 相互運用性が欠如していると、個人または集団の健康ニーズに対する理解が不完全になり、不健康な結果と高額なコストにつながることがあります。

人が長生きして世界中で高齢化が進むにつれ、相互運用性とデータ共有は、効果的なヘルスケアを提供するためにますます重要になっていきます。 米国では、医療研究・品質調査機構が、年配の米国人3人のうち2人に、少なくとも2つの、動作や身体の健康に慢性的な異常があると推定しています。 現在、慢性的な疾患が複数ある人のための治療が、米国の医療費の66%を占めている、と見積もられています。

国家医療IT調整官室(ONC)は、その全国的なロードマップ(PDF、3.5 MB)で、米国では電子医療記録(EHR)の使用が劇的に増加していることを明らかにしました。 多くの病院が、外部の医療機関から提供される医療記録や患者データへ定期的にアクセスできますが、受け取ったデータを個別の患者記録に統合してる病院はその半数未満です。 したがって、重要な臨床データへのアクセスは改善されていますが、利害関係者を結び付けて統合データ・エコシステムを構築するためには、まだ多くの作業の実施が必要です。

ヘルスケア・データの相互運用性は、医師や医療従事者が患者のより良い全体像を把握することに加えて、医療業界全体の組織を支援します。 医療情報システムの統合がさらに進めば、健康保険の使用率とサービスの需要についての理解が深まると見込まれます。 行政サービス提供者は、人口データにアクセスして傾向を確認し、市民のニーズを満たすことができるようになります。 また、ライフサイエンスの組織では、堅固なデータ・セットを活用して、迅速でより多くの情報に基づいた研究の推進が可能になると見込まれます。

相互運用性の向上により、組織は、ある日は個人を患者と見なし、別の日には健康保険加入者と見なし、また別の日には医療アプリケーションの消費者として見なすということがなくなります。 代わりに、業界全体の意思決定者は、その情報源に関係なく、人がどのように医療情報にアクセスして使用するかに注目できるようになります。これにより、優れたケア・モデルを推進し、患者の安全の向上を追求し、サービス提供の対象者の体験を向上させることができるようになります。

ヘルスケアにおける相互運用性のメリット

ケアの連携が向上

データにアクセスすると、臨床医は患者の最も重要な健康情報に簡単にアクセスすることができるため、検査の反復が削減され、不注意による治療の相互作用を防止し、不十分な伝達を軽減することができます。

パフォーマンスの向上

データをより簡単に組み合わせることができる場合は、分析も簡単になる場合があります。 相互運用性により、組織は、データの傾向や過去の実績を調査し、患者ケアやその他の分野でデータ駆動型の改善を行えるようになります。

エクスペリエンスの向上

データ相互運用性により、組織内外での余分な管理作業を削減できるため、従業員とサービス提供の対象者にとってより満足度の高いエクスペリエンスが実現します。

FHIRの概要

FHIRとは

Fast Healthcare Interoperability Resources(FHIRとも呼ばれる)は、HL7と呼ばれる以前の標準フレームワークから構築された、ヘルスケア・データ向けのオープンソースの標準フレームワークです。 FHIRは、あるシステムから別のシステムへのヘルスケア・データの移行を容易にするために作成されました。

FHIRは、患者、病気、医薬品などのリソースにデータを編成し、そのデータがさまざまなコンピューター・システムやアプリケーションでどのように編成されて解釈されるかを示す、標準化された構造を提供します。 FHIRは、財務データおよびワークフロー・データ(請求情報、予約など)の構造に使用することもできます。

米国の主要な医療システムの多くは、既にFHIRを医療ITの実務で採用しています。 メディケアのBlue Button 2.0イニシアチブは、FHIRに基づいています。復員軍人援護局は、Lighthouseと呼ばれるFHIRプラットフォームを開発しました。 どちらも、患者が医療情報にアクセスするためのプラットフォームをFHIRを介して提供しています。

米国の国家医療IT調整官室が、FHIRを全国的な相互運用性ロードマップ(PDF、3.5 MB)の重要な一部としています。 新しい政府規制と相互運用性の規則では、FHIRの広範な採用が求められるため、医療組織(特にメディケアまたはメディケイドのサービスの支払いを受け取る医療組織)にとっては、FHIRを理解して相互運用性の戦略に組み込むことが不可欠です。

医療情報交換

医療情報交換と相互運用性

最近の消費者は、情報へのアクセスに関して高い期待を持ち、多くの人が、自分の健康とケアに関する記録に迅速かつ継続的にアクセスすることを期待しています。 そのため、多くの医療組織が、医療情報交換(HIE)を構築しています。これは、相互運用が可能なシステムを利用して、電子医療情報をシームレスかつ安全に共有するための専用ネットワークです。

EHRの採用はHIEの構築に向けた幸先の良い第一歩でしたが、HIEの完全なメリットを得るために必要な相互運用性のレベルを達成するためには、克服すべき課題が依然として多く存在します。 その課題には以下が含まれます。

標準化の欠如:FHIRやHL7などの標準的なレコード形式はより一般的なものになりつつあり、新しい規制により、EHRベンダーは相互運用性をサポートするAPIを提供するよう促されています。しかし、標準形式に変換して他のユーザーと共有するのが難しい、カスタマイズされたEHRシステムを使用している医療機関や医療システムが数多く存在します。

セキュリティー:医療組織では、特に 医療システムへのサイバーセキュリティー攻撃の件数が増加(PDF、1.3 MB)している中で、アクセス可能な医療情報への二―ズと、機密性の高い情報を保護して患者のプライバシーを維持する必要性とのバランスを取ることが難しくなっています。

同意:医療情報が医療機関の間で自由に流れる電子医療システムの構築では、患者の同意が必要とされるタイミングや必要とされる同意レベルが必ずしも明確ではありません。 医療組織は、当然のことながらこれについて用心し、情報を共有しないに越したことはないと判断する傾向があります。

医療従事者の負担:記録保持のための新しいツールが導入されると、関係者はその使用方法を学ぶ必要があります。 医療従事者は多くの場合、新しいシステムについては慎重になります。EHRシステムは、臨床医のニーズよりも、管理や請求のワークフローをサポートする作業をより適切に実施することが多いためです。

これらの課題は、簡単に解決されるものではありません。 クラウド・コンピューティング(特にハイブリッドクラウド)の進歩により、組織は一貫性のある方法でデータを移動し、保護することが容易になりました。 クラウド環境では、組織は、FHIRのような業界標準形式にデータを標準化するデータ・パイプラインを構築する機会が得られます。また、データを必要とする人(医療保険支払者、医療機関、患者自身など)は誰でも、データへ安全にアクセスできるようになります。

立ってホワイト・ボードを見ている男性

ヘルスケア・データの相互運用性の利用についての詳細

行政の規制

相互運用性を促進するCMSの取り組み

2016年に米国のオバマ大統領は、「21st Century Cures Act」に署名して、情報のブロックを解決するための大きな一歩を踏み出しました。この法案は、EHRシステムが、連邦認証を維持するために患者向けのAPIを提供することを要求するものです。 2020年にメディケア・メディケイド・サービス・センター(CMS)は、連邦基金のプログラムから基金を受け取る健康保険と医療機関に対して医療情報に容易にアクセスできるようにするための措置を要求する規則を発行しました。

ほとんどのポリシーでは、医療保険支払者がアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)とデータ交換を実装するよう重点的に促しています。この2つが、医療機関ディレクトリー、患者の請求データ、利用データへのタイムリーなアクセスを容易にするその他のリソースへの安全なアクセスを実現します。 このアクセスにより、患者だけでなく、医療機関や医療保険支払者も患者のケアについてより包括的に状況を把握できるようになり、より広範な公衆衛生の取り組みがサポートされることになります。

ノートPCを使って仕事をする医療従事者

相互運用性への準備

必須の相互運用性標準が組織にどのように影響を与えるかをご覧ください。

相互運用性の課題

ヘルスケアにおける相互運用性の課題

多くの医療の専門家やリーダーが優れた相互運用性により医療全体が改善されることに同意する一方で、医療組織がデータやシステムの相互運用性を高めるにつれて直面しやすくなる共通の課題が存在します。 これらの課題と組織での克服方法について説明します。

まとまりのない調整
相互運用性を改善するには、異なる組織、規制当局、リーダーの間の緊密な連携、および組織内の調整が必要です。 規制当局は、医療組織に対して従うべき標準と規則を提供します。しかし、相互運用性について積極的に対応する組織では、専用の相互運用性戦略を策定し、相互運用性計画を優先する必要があります。

限られた予算
すべての組織が、真に相互運用可能なシステムの構築に必要な技術リソースに投資するための、必要な財務的リソースまたは技術的リソースを保有しているわけではありません。 医療記録システムの更新に利用可能な政府助成金がある可能性があります。利用資格について組織で確認することをお勧めします。 多くのクラウド・ベンダーでは、技術的な費用をより手頃で予測可能なものにできる従量制課金の支払モデルも提供しています。

テクノロジー ・ニーズの多様化
組織は、どのようなタイプのケアを提供するか、どの国や地域に属しているかに応じて、さまざまなルールや規制を遵守する必要があります。そのため、多くの組織では、データが高度にカスタマイズされています。 組織では、ハイブリッドクラウド・プラットフォームを通じて、さまざまな社内外のシステムを接続できます。これにより、必要なカスタマイズを犠牲にすることなく、データを組み合わせて統合できます。

レガシー・システム
古いレガシー・システムを使用する医療組織は、システムをモダナイズしながら相互運用性の要件も満たすという二重の課題に直面しています。 組織では、ハイブリッドクラウド・アプローチを使用して、レガシー・システムからデータを抽出し、データを最新のアプリケーションやプログラム用にアクセスしやすくして、両方の目標を達成できます。 このアプローチでは、システムの更新中にデータ移動を継続するという選択肢が得られます。

相互運用性レベル

ヘルスケアにおける相互運用性のレベル

医療向けの相互運用性には、情報科学専門家と医療情報管理システム協会(HIMSS)によって定義されている4つの異なるレベルがあります。 これらのレベルの中には、既存の医療ITアーキテクチャーとITシステムを使用して実現できるものもありますが、患者中心のテクノロジーでのイノベーションと追加の開発が必要なものもあります。

以下が、そのレベルです。

コンピューターのスクリーンで分析する医療従事者

相互運用性のジャーニー

相互運用性へのパスに沿った成熟度の段階についてご覧ください

相互運用性に関する参考情報

ヘルスケア・テクノロジー

テクノロジーがヘルスケアにおけるイノベーションをどのように形成し、推進するかをご覧ください。

ヘルスケアの変革

テクノロジーが、患者中心のケア・モデルをどのように改善し、サポートできるかを説明します。

ヘルスケア・データの分析

堅固なデータの洞察と分析により医療がメリットを得られる理由についてご覧ください。

医療保険支払者への相互運用性のメリット

医療保険支払者とその保険加入者に対して相互運用性が提供する機会について説明します。

医療の相互運用性の義務を超えて

相互運用性への長期的な投資が効果をもたらす理由について2人の専門家が説明します。

相互運用性ソリューション

医療向け相互運用性ソリューション

IBMでは、コンサルティングからデータ管理、直感的なAPIサポートまで、お客様の組織の相互運用性戦略をサポートおよび開発するための数多くのソリューションを提供しています。

ユニバーサル表示と画像変換

最大10ユーザーまでのリアルタイム・コラボレーションをサポートする診断品質のユニバーサル・ビューアーを使用して、画像表示を簡素化します。

ベンダー・ニュートラルなアーカイブ

ソースや形式に関係なく画像データを集約する画像アーカイブを使用して、組織全体で接続された画像処理戦略を構築します。

統合された臨床開発管理システム

データ管理システムを使用して臨床試験を合理化します。このシステムは、すべての試験現場で使用できる統一された直感的な単一プラットフォーム上で、すべての試験フェーズをサポートします。

ヘルスケア・コンサルティング

業界のエキスパートが、相互運用性の課題への対処を指南し、お客様の組織の要件と目標をサポートする戦略の策定を支援します。