デジタルワーカーとは

シンガポールの中央ビジネス地区の夜景。海面に映るライト。

デジタルワーカーとは

かつては「デジタルワーカー」という言葉で、デジタル・スキルを持つ従業員を指していましたが、最近では、人と連携して特定のタスクやプロセスを実行するように訓練されたソフトウェア・ロボットの一カテゴリーとして定義されています。

具体的には、Forrester社はデジタルワーカーの自動化について次のように定義しています。「対話型インテリジェンスや[ロボティック・プロセス・オートメーション](RPA)など、[インテリジェントな自動化](IA)の構成要素を組み合わせたもので、従業員と共に業務にあたる。これらは人間の意図を理解し、質問に答え、人間に代わって行動する。制御や権限は人間に委ねられ、エクスペリエンスが強化される」

IBM Automationもデジタルワーカーについて同様に捉えており、さまざまなスキルを使用してエンドツーエンドの複雑なプロセスのうちで意味のある部分を独立して実行できるソフトウェアベースの労働力として定義しています。デジタルワーカーは、機械学習、コンピューター・ビジョン、自然言語処理などの人工知能機能を活用して、所定のワークフローの中で一連のタスクを実行します。例えば、買掛金を扱うデジタルワーカーは、カスタマー・サービス担当、請求担当、入金消込担当または異議解決担当という3つの従来の職務の一部を自律的に遂行してOrder to Cash(OTC)プロセスを完了できる可能性があります。デジタルワーカーを活用すると従業員のキャパシティーが増えます。このためデジタル・トランスフォーメーションの取り組みを通じてデジタルワーカーは広く導入され、企業はより戦略的なタスクに労働力を再配置できるようになりました。

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デジタル労働力の導入

デジタルワーカーを導入する際、設計者は自動化できるプロセスと人間の要素の両方を考慮します。具体的には、デジタルワーカーが従業員とどのようにやり取りしながらインテリジェントなワークフローを最適化できるかを考慮します。

そこからのプロセスは、通常以下のような流れになります。

  1. 必要性を評価:デジタルワーカーに担当させるプロセスをチームとして特定する必要があります。この段階では、例えばインテリジェントなデータ・キャプチャーや基本的なビジネス・ルールの導入など、よりよい意思決定を可能にするための比較的シンプルな取り組みから始め、徐々に複雑にしていくことをお勧めします。

  2. プロセスの文書化:新しいデジタルワーカーを正しくトレーニングするために、プロセスを詳細に文書化する必要があります。

  3. デジタルワーカーのトレーニング:デジタルワーカーに移行するための文書化されたプロセスを特定できたら、対象のワークフローの中でタスクを処理するようにデジタルワーカーをトレーニングします。また、ボットが例外を特定して人間の担当者向けにフラグを付けるよう指示しておきます。こうして、より複雑なユースケースが担当者に回ってくるようになり、人間は退屈な監視作業から解放されます。

  4. パフォーマンスの評価:このステップでは、当該のデジタルワーカーのパフォーマンスをチームが評価し、ビジネスに適切な投資収益率(ROI)をもたらしたかどうかを確認します。チームはプロセス・マイニングプロセス・マップを活用して、トレーニングの取り組みを検証できます。加えて、この機会を利用してボトルネックを特定し、プロセスをさらに最適化できます。

例:デジタルワーカーのOcash

Ocashは、入金消込処理を専門とするデジタルワーカーであり、財務・会計部門にとって最新の戦力です。会社の業務の中でどの職種にあたるかを検討してデジタルワーカーを配置することは、多くの場合に有用です。

Ocashを作成するために、IBMのサービス・チームは最初に、ワークフローがもたらす成果を意識しました。ERPシステムからデータを取得して、OTCのプロセスを分解し、その構成要素を特定しました。そこから、チームはプロセスの中で手作業が特に多い側面の1つに焦点を当てました。チームは、自動化が可能なタスクは自動化し、引き続き人間の作業が必要なタスクは拡張しました。

Ocashは、自動化に最適なタスクを実行するように設計されており、必要な場合にのみ人による手作業を介入させます。一方、Ocashの設計者は、これらのやり取りをプロセスを最適化する機会として利用しました。例えば、プロセス開始時の顧客との請求書の正確性の確認作業を自動化すると、後で発生する支払い紛争の数を大幅に削減できます。

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デジタルワーカーの用途

デジタルワーカーはデジタル・タスク以外への拡張も可能ですが、さまざまなビジネス機能のサポート業務で主に活用されています。例としては、次のようなものがあります。

  • サプライチェーン:Amazonなどの小売業者は、在庫数量や価格のチェックを支援するためにロボットを活用しています。

  • 人事福利厚生に関する質問へのリアルタイムでの回答、従業員のデータの収集、複雑なタスクを対象分野の専門家にルーティングする処理をボットで行うことで、社内での従業員体験が強化されます。

  • 営業と製品サポート:製品に関する基本的な質問はボットで回答できることから、カスタマー・サクセス・チームや営業チームが見込み顧客と既存顧客の管理を進めやすくなります。また、緊急度に応じてリクエストをルーティングできることから、優先度の高いチケットがタイミングよく処理され、総合的な顧客体験が向上します。

デジタルワーカーに伴う課題

デジタルワーカーはプロセスの効率を向上させますが、デジタル労働力を導入する中で課題が生じることがあります。成功を阻む障壁には次のようなものがあります。

  • 自動化できるタスクが少なく、デジタルワーカーのコストを正当化することが難しい場合があります。

  • 非構造化データ・ソースはテクノロジーで扱うのが難しい場合があります。

  • 文書化のための情報収集に多くのコストとリソースを要する場合があります。

  • 構成と適応が可能な設計になっていないデジタルワーカーは拡張が難しい場合があります。
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