Royal Melbourne Hospital(RMH)は、1848年にオーストラリア初の公立病院としてビクトリア州に設立されました。現在では州最大の医療機関の1つとなっており、医療、外科、メンタルヘルスの専門家によるサービスや、リハビリテーション、高齢者ケア、外来患者、コミュニティ・プログラムなどを幅広く提供しています。同院は、心的外傷のサポートのようなサービスを提供する州の指定機関であり、神経科学、腎臓学、腫瘍学、心臓病学、バーチャルヘルスなど、一部の主要な専門分野における三次サービスの中心を担っています。
RMHは、メルボルンの西部と北部の郊外を中心に55万人以上の人々にサービスを提供しています。この医療サービスには、主力施設であるRoyal Melbourne Hospital以外にも、CityおよびRoyal Parkの2つの主要キャンパス、感染症研究所のほか、メンタルヘルス、居住ケア、リハビリテーション、地域密着型のサービスを提供する12か所のサテライト拠点を運営しています。
RMHの広範な環境を維持するため、600人以上の施設管理(FM)職員が24時間体制で働いており、清掃、廃棄物管理、病棟サポートと患者搬送、メンテナンス、エンジニアリングおよび生物医学工学サービス、エネルギーおよびユーティリティ管理、配電盤、駐車場、患者向けフードサービス、ホスピタリティケータリングなどの幅広い非臨床サービスを提供しています。
長年にわたり、FMはポケットベル、メッセージシステム、電話、チケット、その他の紙ベースのツールからなる旧式のシステムを使用してサービスのリクエストに対応してきました。システム移行前、施設サービスを依頼する方法は8種類ありました。しかし、システムは統合されていないサイロで管理されており、ワークロードも着実に増加していたため、RMHは、これらのシステムに負荷がかかる前にFMの業務プロセスを合理化して見直し、より効率的で持続可能なサービス提供につなげたいと考えていました。
「FMスタッフは、サービス提供における日々の運営上の課題に直面することが多くなっていました。」と話すのは、RMHのCAFMプロジェクト・ディレクターであるAdriana Stormont氏。「また、意思決定に役立つデータの質も不足していました。資産データは一元化されておらず、透明性もなかったため、ライフサイクルコスト、メンテナンス、保証、請負契約、その他の資産管理のベスト・プラクティスのためだけでなく、新たに導入された法規制に準拠するために取得すべきその他の重要情報を得ることができませんでした。」
これらの問題に対処するために、RMHは独立したサービスレビューを開始し、デジタルタスク管理システムを推奨しました。「その後、一般公開入札で市場をテストし、包括的な評価と調達のプロセスに従いました」とStormont氏は言います。「評価の過程で、私たちは地域および州内の医療機関および商業団体への視察訪問と会議を行いました。」
2018年11月、RMH取締役会は、モビリティデジタルタスク管理プラットフォームを含む統合職場管理システム(IWMS)に対するビジネスケースの資金提供を承認しました。また、2019年には、デジタル導入と変革変革を監督するコンピューターを使った施設管理(CAFM) プロジェクトチームも設立しました。同院は、活用していくIWMSとしてIBM®TRIRIGAプラットフォームを選択しました。TRIRIGAは、分析、重要なアラート、および自動化されたプロセス機能をひととおり備えており、可視性、リソース利用率、FMニーズの制御と自動化を向上させます。
IBMは、ソリューションの設計とプロジェクトの実施にIBM Internet of Things(IoT)ソフトウェアの豊富な経験を持つIBMビジネス・パートナーであるTRIXi Building Insightsを起用しました。
CAFMプロジェクトでは、100以上のビジネスプロセスの見直し、7つのワークストリームのデザインセッション、データ移行、変更管理、複数の部門にわたるユーザーテストとトレーニングが行われました。しかし、プロジェクトが2020年初頭まで予定通りかつ予算内で進行するなか、誰も想像しなかったような形で予期せぬ事態が起こり、RMHとFMに試練が訪れました。
2023年半ば現在、CAFM-TRIRIGAソリューションは、病院全体で50万件以上の内部患者移送を含む150万件以上のタスクを処理してきました。
CAFMにより、多くの紙ベースのプロセスを約400のデジタルタスクに置き換えたことで、職員たちはモバイルデバイスを介してタスクを受けるようになりました。
2020年初頭、RMHがCAFM-TRIRIGAシステムの開始を間近に控えていた矢先、新型コロナウイルス感染症がオーストラリアを襲い、病院はパンデミックへの備えを始めました。新型コロナウイルス感染症患者の治療、感染が疑われる患者(SCOVID)の監視、重症度に応じた患者対応など臨床スタッフに課せられた特別な要求が加わったことでFMスタッフの仕事量も増加し、感染性消毒と感染性廃棄物だけでも、通常時の3倍の需要がありました。
CAFM-TRIRIGAシステムは4月下旬に稼動する予定でしたが、同院は新型コロナウイルス感染症患者の急増が予想されたため、運用・保守モジュールの稼動日を3月31日に早めることにしました。「これは嵐が過ぎるのを待つようなものではなく、雨の中でダンスするのを学ぶようなものです」とStormont氏は言います。「できるだけ早くCAFMを立ち上げることで、この課題に対処し、臨床現場の職員をより適切にサポートするためのデジタルツールを手に入れる必要があると思ったのです。」
CAFM-TRIRIGAシステムは、新型コロナウイルス感染症および感染が疑われる患者の病棟に入る職員の準備を含め、新型コロナウイルス感染症の清掃および廃棄物活動に関するレポート作成支援にすぐに影響を与えました。「2021年の冬にオーストラリアでデルタ株に関連する新型コロナウイルス感染症の感染者数が急増したときも、RMHにとってCAFM-TRIRIGAは重要なツールでした。新型コロナウイルス感染病棟以外の医療サービス全体でティア1およびティア2の曝露が確認された時には、CAFM-TRIRIGAのおかげで臨床スタッフのサポートに加え、病院内の施設スタッフの追跡ができました」と、RMHの施設管理ディレクターであるMichael McCambridge氏は述べています。
FMの職員はモバイルスマートデバイスを使い、臨床病棟、救急部門、関連医療サービス、その他多くの関係者からTRIRIGA Request Centralに寄せられるサービスリクエストに対応し始めました。CAFM-TRIRIGAを使用すると、各部門で使用およびアクティブに監視されているスマートデバイスとダッシュボードを介して、タスクとジョブをリアルタイムで表示できます。
医療サービスの複数の分野では、手作業や労働集約的、あるいは紙ベースのプロセスが多いため、従来、透明性、可視性、説明責任を欠いていました。CAFM-TRIRIGAを使用してタスク管理をデジタル化することで、現在臨床領域を網羅するスケジュールされたタスクと事後対応タスクを含む利害関係者の基盤は医療サービス全体に拡大し続けています。現在、対応しているワークグループには、清掃員、生物医学技師、臨床助手、放射線技師などの多様な関係者がいます。
システム稼動から1年余りの2021年7月までに、50万件以上のサービス要請がCAFM-TRIRIGA情報管理システムを通じて提出されました。それからおよそ2年後、このシステムは病院全体で50万件以上の内部患者移送も含む150万件以上のタスクを処理するまでになりました。現在、IBM TRIRIGAソリューションの利用は拡大し続けており、今後、資産管理、プロジェクト管理、スペースと不動産の統合、エネルギーとユーティリティの管理、IoTパイロットプロジェクトで利用される予定です。
Stormont氏によると、同院のFMの対応範囲では現在、病棟の清掃、患者の移送、病理検査や医薬品の配送・回収、事後保守や定期保守、医療機器の修理、心的外傷のサポートやヘリポートの復旧など、600件以上のサービス依頼をタスク管理プラットフォーム上でデジタル化しています。「CAFM-TRIRIGAサービスリクエストポータルには、すべてのサテライト拠点も含めた総勢12,000人のスタッフ全員がアクセスできます」と彼女は言います。
導入後、FMスタッフは次のようなパフォーマンスアクティビティの改善を確認しました。
CAFM-TRIRGAを使用することで、FMチームは「部品取り寄せ」であろうと、医療上の理由で部屋が使用できず「対応が保留になる」場合であろうと、タスクを通じて要求者に対して明確なコミュニケーションがとれるため、さらに効率よくサービスの要求に対応できます。「今では、かつてないほど迅速に対応し、需要に応じて人材を再配分できる透明性を手に入れました」とStormont氏は語ります。
RMHは、CAFM-TRIRIGAのロードマップを他の主要関係者とともに成長・発展させ、エネルギー管理、資産管理、スペース管理など、臨床能力をサポートする機能モジュールを開発し続けてます。今後、同院はオートメーションを接続するためのIoTプラットフォームを最大限に活用し、センサー技術を使用して資産のパフォーマンスに関する改善データと分析を提供していきます。「サイロ化された多くのシステムがこのシステムに置き換わったことは、今でも当院のビジネスプロセス改革の起爆剤になっています」とStormont氏。「現在プロジェクトを開発中ですが、2023年の後半にはCAFM-TRIRIGAと病院の電子医療記録を統合して新たな病院の指令室に組み込むことで、臨床能力特有のプロセス効率をさらに向上させる予定です。」
「このツールのおかげで、よりスマートに仕事ができ、より革新的かつサスティナブルになれることに非常に興奮しています。しかし何よりも、患者様のコミュニティーに改善した成果を届けてくれる臨床パートナーのサポートをより適切に行えることを非常に嬉しく思います。」
IBM TRIRIGAソリューションは当初から、IBMデータセンターからのマネージドサービスとして導入されました。IBM Cloud Delivery Servicesチームは、アプリケーションのサポートを提供し、ソリューションを積極的に監視および管理します。
「世界も、人々の働き方も日々変化しています。マネージャーは、組織内でその変化をどのように推進していくか認識する必要があります」と TRIXiのマネージングディレクター兼創設者であるMark Williams氏は言います。「IBM TRIRIGAのようなソリューションを導入することで、RMHに大きなメリットがもたらされたことは明らかです。人々の働き方をデジタル化することで、たとえ困難な時期であっても、前向きな変化を起こすことができるのです。」
RMHは1848年にビクトリア州初の公立病院として開院しました。現在ではオーストラリア有数の公的医療機関の1つとなっており、医療、外科、メンタルヘルスの専門家によるサービスや、リハビリテーション、高齢者ケア、外来患者、コミュニティ・プログラムなど、総合的なヘルスケア・サービスを提供しています。RMHには12,000人を超える職員がおり、地域コミュニティーおよび州全体の広範囲にわたる住民の両方に専門的なサービスを提供しています。地域では、メルボルン西部および北部郊外を拠点とする55万人以上の地域住民にサービスを提供するほか、専門医による治療が必要な広範囲の患者にもサービスを提供しています。このコミュニティーは、文化、言語、年齢、民族、社会経済的地位の点において多様なコミュニティーです。
ニュー・サウス・ウェールズ州セント・レオナーズを拠点とするTRIXi(ibm.com外部リンク)は、建物の管理者、デベロッパー、設計者、リース会計士と連携し、施設管理の改善と建物資産の最も効率的な利用の実現、そして、より持続可能な社会を目指しています。同社は、不動産管理の可視性、制御、自動化を高めるためのIoTシステムの設計および統合に特化した企業です。
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2023年11月、米国で作成
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