スマートフォンの普及から、AI、5G、自動運転車の台頭に至るまで、世界がデジタル・コネクテッドの時代に突入していることは明らかです。そして、その土台となるのが半導体です。

デジタル・インフラストラクチャーの急速な成長を考えると、デジタル・エコシステムの基盤である半導体を製造する企業が、絶えず変化する競争上の課題に直面していることは驚くことではありません。チップの性能向上への絶え間ないプレッシャーなどは、よく聞く課題です。しかし、今日のチップ製造業者は、設計に始まる一連のプロセスに大きく影響する、競争要件の変化に対応する必要もあります。

チップ製造において、パッケージング(デバイス内で使用できるよう半導体のパーツを封入すること)は、常に基本中の基本でした。しかし今日、パッケージングの問題は、チップのコストはもちろん、チップのパワー、性能、機能を左右する大きな競争上の差別化要因となっています。

では、プロセスにはどのような影響があるのでしょうか。パッケージング構造の複雑化に伴い、開発から試作、さらにはテストに至るサイクル全体が大幅に長くなっています。製造プロセスでは、設計から完成品に至るまで、100を超えるパラメーターについて、ほとんどまたはまったく誤差が許されない非常に詳細な適切な指示が必要です。

従来の方法では、チップ製造業者は、最適な「レシピ」を特定するために、段階的な調整を余儀なくされていました。この試行錯誤のアプローチの副産物は、この方程式の「料理人」である開発エンジニアへの大きな負担に加えて、無駄の増加と製造歩留まりの低下です。

レシピ策定の試行錯誤を最小限に抑えることで、開発サイクルを最大

30%

削減

データ駆動型の最適化により、半導体製造業の顧客の装置メンテナンス・コストを

50%

削減

パナソニック・コネクト社の企業理念は、そのプロセス・オートメーション事業部を通じて、半導体製造業者がこれらのプロセスの課題に対処し、生産プロセスを最適化し、高品質の製品を提供できるよう支援することです。30年にわたりチップ製造業者に専用の生産装置を提供してきたパナソニック社は、半導体パッケージングの新たなトレンドに適応できるようにそれらの製造業者を支援する重要な立場にあることを認識していました。

特に関心があったのは、先進の分析機能を装置ソリューションに導入して、製造業の顧客に真に画期的な結果をもたらすオポチュニティーであったと、半導体プロセス事業部長である廣島満氏は言います。

2019年当時、廣島氏とそのチームは、そのオポチュニティーを市場投入できる具体的なソリューションに転換するというビジョンを実現するには、同社のコア装置のコンピテンシーを増強する必要があるということを認識していました。「当社は、AIやディープ・ラーニングなどの分野における先進の分析テクノロジーのポートフォリオに加え、業界のプロセスに関する深い専門知識を持つ”ベンダー”との提携を模索していました」と、廣島氏は説明します。「IBMは、これら2つの重要な領域で強みを発揮できる唯一のプロバイダーとして際立っていました」

コンピューターを使用して作業するパナソニック社の技術者

機械学習アルゴリズムと最適なレシピ

IBMがこのプロジェクトのために集めたチームには、IBM Research®のAIとディープ・ラーニングのエキスパートと、IBM Consulting™のプロセスのエキスパートや業界コンサルタントが含まれています。業務提携の最初の数カ月間、IBMとパナソニック社の両チームは連携しながらソリューションのオポチュニティーを特定して絞り込みました。IBMは、この業務提携の基調の設定、全体目標の決定、ソリューションの共同作成に、IBM Garage™の方法論(ITと運用の担当者が反復的で影響力の強い連携を行う)を適用しました。

様々な課題と最速の価値実現の評価に基づいて、合同チームは、パナソニック社初のスマート・ファクトリー製品である2つのプロセス制御ソリューションを共同開発しました。1つ目のソリューションは、レシピ生成の完全自動化により先進のプラズマ・ダイサーを作成するものでした。

稼働中のパナソニック社製シリコン・ウェハー装置

プラズマ・パッケージングはちょっとした魔法のようなものです。最適なプラズマのレシピを探しているエンジニアが最終的に求めているものは、正確なカット・パターンを実現するウェハーです。つまり、真空圧や真空力、電子エネルギー、イオン・エネルギー、ガスなどの可変要素に関して、複数の正しい意思決定を行う必要があります。

IBM Researchチームは、PoC(概念実証)ソリューションを開発するために、ディープ・ラーニング・アルゴリズムを開発し、エンジニアが膨大な計算により最適な可変点の組み合わせを迅速に導き出せるようにしました。「エンジニアは、直感や試行錯誤に頼るのではなく、直感的で視覚的なインターフェース(IBM Consultingが設計)により、わずか数秒で正確にプロセスをシミュレートできます」と廣島氏は説明します。

チームが共同作成した2つ目のPoCソリューションは、別の問題点 (スマートなデータ駆動型のメンテナンス手法によって、プラズマ洗浄機の性能を最適化する必要性)に対処するものでした。「このプラズマ洗浄アプリケーションは、レシピではなく、先進の計算機能を使用して、洗浄とメンテナンスの最適なタイミングを特定します」と廣島氏は言います。「タイミングが早すぎると無駄なコストがかかりますし、遅すぎると品質が低下するだけでなく、機械の故障につながる可能性さえあります」

ダイシング・ソリューションと同様に、このマシン・ステータス・アプリケーションは、IBM Researchが開発したアルゴリズムによって支えられています。このアプリケーションは、機械にマウントされたセンサーのデータを使用して、機械の稼働効率の変化を機械のさまざまなパーツの状態と関連付けます。非常に直感的で視覚的なアウトプットは、大きな負担を抱えた技術者にとって「欲しいものリスト」のようなものだと、廣島氏は説明します。「例えば、工場にいる技術者は、数あるプラズマ洗浄機のうち1台の性能が最適でないこと、そして電極の汚れが最も大きな原因であることをアラートで知ることができます。この洞察により、技術者は、高品質を維持し、生産の中断を最小限に抑えるための是正措置を取ることができます」と廣島氏は言います。

自律的な工場生産への道

プロセス・オートメーション事業部のプロダクト・マーケティング担当マネージャーであり、開発の中心人物である辨野宏氏は、両アプリケーションが、製造現場での強力な分析がチップの設計と製造の方法を変革する可能性があることを実証していると説明します。「当社が実施した厳密なテストとシミュレーションでは、プラズマ切断ソリューションによって開発サイクルが30%も短縮されました。このサイクルの短縮により、エンジニアがAIベースの分析を活用して最適なプラズマのレシピを策定する際の試行錯誤を、大幅に回避できます」と辨野氏は言います。さらに、AIを活用した最適化により、プロセスから発生する無駄も大幅に削減されました。

パナソニック社のプラズマ洗浄アプリケーションは、その設計どおり、装置のメンテナンスに関する意思決定において、機械学習による洞察がまったく新しいデータ駆動型アプローチの基盤となることを示しました。このアプリケーションのテストでは、不要なメンテナンスの削減、事前対応型のパーツ発注、機械の故障減少の組み合わせにより、製造業の顧客のメンテナンス・コストを50%削減できる可能性があることが実証されました。

パナソニック社は、これらの新しいソリューションの市場投入を準備していますが、これらの指標は、半導体の製造現場におけるAIにより、設計と生産の最適化が可能になったという強力なメッセージを示しています。そして、これらの手法を採用することで、チップ製造業者は、今日の競争の激しいグローバル市場の需要拡大に、よりよく対応できるようになります。

これまでのIBMとの連携は、パナソニック社の長期ビジョンへの道筋を決定的に前進させたと、廣島氏は言います。「私たちは、個々の機械の状況データのエッジ解析により、機械が最適な状態で稼働する自律型製造装置の基盤を作成したことを実証しました」と廣島氏は説明します。「この成果の次のステップとして、複数の機械をクラウド上で統合し、工場全体のレベルで自律的な製造を実現していきます。この高度に自律化した機械群、つまり自律型工場こそ、私たちが目指す支援の究極の形なのです。このように、企業の枠を超えたIBMとの連携により、その方向に大きな一歩を踏み出すことができるのです。私たちは、既存のアイデアやプロセスを超えて、イノベーションを起こします」

パナソニック・コネクト社のロゴ

パナソニック・コネクト社について

大阪に本拠を置くパナソニック・コネクト社(ibm.com外部のリンク)は、デジタル変革に焦点を当てるパナソニック・ホールディングス株式会社の事業会社です。同社のプロセス・オートメーション事業部は、世界中の製造業の顧客に装置、ソフトウェア、サービスを提供しています。

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2022年10月

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