ハイランドソフトウェア社は1年以内に、AWSおよび自社データセンターでのコンピューティングコストを15%以上削減しつつ、サービス品質を維持しました。どのように実現したのでしょうか。同社は、IBM® Turbonomicを活用して、非常に複雑なハイブリッドクラウド環境を制御したのです。そして、これはまだ節約の一端に過ぎないかもしれません。
世界中で14,000社以上の顧客にSaaSおよびPaaSによるコンテンツ管理およびプロセスオートメーションソリューションを提供するハイランドソフトウェア社は、膨大なリソースと処理能力を必要としています。同社は自社データセンターとAmazon Web Services(AWS)のパブリッククラウドを併用したハイブリッドクラウド環境でホスト型ソリューションを展開しています。さらに同社は、全製品を通じてペタバイト級のデータを預けている2,000社以上の顧客をサポートしており、パブリッククラウドでは数千のElastic Compute Cloud(EC2)インスタンスとElastic Block Store(EBS)クラスターを使った大規模な運用を行っています。
これらすべてのコンピューティングリソースを最適化し、無駄を削減しながら顧客向けのサービスパフォーマンスを確保することは、大きな課題です。それが、ハイランドソフトウェア社のクラウド・ビジネス・オペレーション・マネージャーであるJoseph Quinto氏とそのチームの使命です。「私たちは、多様なパラメーター群全体にわたるリソースを管理しなければなりません」とQuinto氏は語ります。「各製品にはそれぞれ固有のリソース要件があり、その製品群の中にも、業界ごとにニーズが大きく異なる顧客が存在します。変数が非常に多く、それぞれがリソースの最大活用に異なる課題をもたらします。
これまで、ハイランドソフトウェア社は、この課題に対処するためにチームの規模を拡大して対応しようとしました。しかし、これほど大規模かつ複雑な環境における膨大なリソース全体を可視化し、その使用状況をバランスよく管理することは、人の手には負えないものでした。そこで同社は、Turbonomicプラットフォームを導入しました。「理想の状態には、まだ多くの課題が残っていました」とQuinto氏は語ります。「でも、私たちだけではもう限界に達していたんです。そこに、AIと機械学習の観点からTurbonomicが持つ力が本当に活きてきました。」
ハイランドソフトウェア社のチームは、データセンターのリソースおよび拡大を続けるAWS環境の一部にTurbonomicを適用しました。その効果は即座に現れました。「AWS環境でTurbonomicを導入した最初の月に、2,000件以上のリソース調整を行い、月間平均支出の8%以上を削減しました」とQuinto氏は語ります。
Quinto氏によれば、これほど早くコスト削減を実現できたのは、Turbonomicがすぐに使える状態で提供されているからです。「起動するとすぐにデータを取り込み、アクションを実行する準備が整います」と同氏は述べています。Turbonomicは、テクノロジースタック全体にわたるリソース使用状況を可視化し、AIを活用してリソースの適切なサイズや割り当てに関する推奨を行います。チームはその上で、ポリシーやルールを設定し、これまで不可能だった規模で適切なリソース管理アクションを自動化することができます。
「現在私たちが実現できているリソースのバランス調整は、管理している顧客数やインスタンス、環境の多さを考えると、人の手では到底不可能です」とQuinto氏は語ります。「今では、人がシステムを確認して必要なキャパシティを判断するのではなく、最小限のリソースを割り当て、あとは必要に応じてTurbonomicがリソースレベルを自動でスケールアップまたはスケールダウンして管理してくれます。これにより、以前発生していたチケットやノイズが大幅に減りました。」
ハイランドソフトウェア社は2021年にTurbonomicの利用を開始し、最初の約2年間はほぼデータセンターのリソースに限定して適用していましたが、その後AWS環境にも拡張しました。データセンター側では、既存リソースの最大活用と新たなハードウェア購入の抑制において、クリティカルなプラットフォームとなっています。「データセンターにおいては、もはや『あると便利なツール』ではなく、『なくてはならない存在』です」とQuinto氏は語ります。「そして、AWS側でも『なくてはならない存在』に近づきつつあります。」
チームはAWSに対して段階的なアプローチを取っています。まずは主要な3製品を対象に、Turbonomicを活用して必要最小限のリソースレベルを明確に把握し、それらの基準値を自動的に維持するためのルールを設定しています。「課題は、私たちの環境とデータの複雑さにあります」とQuinto氏は語ります。「すべての製品パターンに対して、ポリシーやルールを構築しているわけではありません。信頼できるデータがあり、正しい判断につながると確信できる領域に限定して、戦略的にTurbonomicにアクションを任せています。」
Quinto氏は、TurbonomicがAWSの拡張機能を有効に補完している点にも言及しています。「当社の製品の中にはAWS上で構築されていないものもあり、AWSの拡張機能を十分に活用できない場合があります。Turbonomicは、そうした部分を補ってくれるのです。」
顧客体験の保護
では、リソース使用の管理を強化したことは、顧客のサービスパフォーマンスにどのような影響を与えたのでしょうか。
「顧客の体験を支え、向上させることが、私たちのすべての取り組みの土台です」とQuinto氏は語ります。「Turbonomicを活用して、顧客に必要なキャパシティを必要なときに、必要なかたちで提供できるようにしています。新たな顧客が増えても、既存のリソースと既定の目標内で、しっかりと対応できています。」
ハイランドソフトウェア社は、AWS環境内の最初の3つの製品にTurbonomicを導入してから1年足らずで、既存の支出を約15%削減しました。さらに、リソースの最適化とコスト回避により、データセンター関連でも同様に約15%のコスト削減を達成しています。
しかし、これはまだ始まりに過ぎません。「これまでの節約効果は大きいですが、私たちにできることの可能性を考えると、まだほんの入り口にすぎないと思っています」と、Quinto氏は語ります。実際、Turbonomicをさらに多くのAWS環境やハイランドソフトウェア社の製品に接続する中で、Quinto氏とそのチームは今後の目標として、毎月30万米ドルのコスト削減を掲げています。
この目標達成を後押しする要因のひとつが、TurbonomicとIBM® Cloudabilityプラットフォームの連携です。これらは互いに補完し合う2つのソリューションとして機能します。チームはCloudabilityを活用してクラウドコストに関するインサイトを得て、過剰支出や異常値に関する詳細情報を抽出することで、Turbonomicをどこに、どのように適用すれば最大の効果が得られるかを把握しています。
またQuinto氏は、製品タイプ、顧客プロファイル、使用パターンといった多様な変数に応じて、Turbonomicに取り込むシステムデータをさらに洗練させ、よりスマートできめ細かく、継続的な最適化を実現していくことを目指しています。「ある製品はフロントエンド層の容量を増やす必要があるかもしれませんし、別の製品はバックエンド層や検索インデックスの強化が必要かもしれません。Turbonomicでそこまでの判断ができるようになるには、まだ十分ではないかもしれませんが、私たちはそこを目指しています。本当の目標は、クラウド環境のサステナビリティーと収益性を継続的に高めながら、お客様の体験もより良いものにしていくことなのです。」
ハイランドソフトウェア社は、多様なコンテンツを大量に取り込み、処理・管理するためのインテリジェント・コンテンツ・ソリューションを開発・提供しています。これらのソリューションは、世界中の14,000社以上のお客様による業務判断やワークフローの改善・加速・自動化を支援しています。ハイランドソフトウェア社は1991年に設立され、オハイオ州ウェストレイクに本社を構えています。
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引用または説明されているすべての事例は、一部のクライアントがIBMの製品を使用し、達成した結果の例として提示されています。他の運用環境における実際のパフォーマンス、コスト、節約、またはその他の成果は異なる場合があります。