空調機器と冷媒の両方を製造する世界で唯一のメーカーであるダイキン工業株式会社(以下、ダイキン工業)は、環境に関する国際条約により現在の冷媒の主力となっているHFC(ハイドロフルオロカーボン)の削減が求められる中、冷媒にこれまでにない価値を付け、社会全体で回収して再利用する循環のスキームづくりに乗り出しました。IBMのブロックチェーン技術を活用することで、そのプロセスのトレーサビリティーとマネタイズを担保するITプラットフォームを構築。将来的には冷媒のサプライチェーンにかかわる事業者やステークホルダーが収益を得ることができる、サーキュラー・エコノミーの実現を目指しています。
空調機器事業の売上高で世界第1位¹ の実績を誇るダイキン工業にとって、近年の大きなテーマとなっているのが環境規制への対応です。エアコンの冷媒として使われてきたHFC(ハイドロフルオロカーボン)が、2016年から新たな規制対象に加えられ、我が国を含む先進国はその新規生産量と消費量を、数量ではなくCO2換算の総量で、段階的に削減していくことが求められています。
ただし、HFCの規制は必ずしもリスクだけではありません。環境保護への貢献によって新たな市場がつくられ、ビジネスも広がっていくからです。
ダイキン工業は、他のさまざまな資源と同じように、冷媒を回収して再利用する社会で循環するスキームをつくることで、冷媒そのものから新たな価値を生み出そうとしています。
循環の各プロセスが収益と紐づけられた、社会全体としてのサーキュラー・エコノミーを実現すべく模索を続けていたダイキン工業の目にとまったのが、サプライチェーンの来歴を管理するIBMのブロックチェーン技術です。
日本IBMからも、「冷媒の価値化の構想とブロックチェーンは非常に相性が良い」という前向きな返答があり、2021年9月に両社の共創がスタートしました。
まずはビルの空調設備から回収した冷媒を運ぶボンベのトレーサビリティーを管理するシステムのプロトタイプを構築。さらに両社は、環境問題の解決に高い関心をもつ北九州市、ゼネコンの竹中工務店、全国に多数のビルを保有する住友不動産、さらに冷媒の再生工場として西日本のアオホンケミカル、東日本の阿部化学といった自治体や企業の賛同を得て、このプロトタイプをベースとした実証実験を2022年5月より開始しました。
実証実験は現在も進行中で、さまざまな課題は山積しているものの、サーキュラー・エコノミーを支えるITプラットフォームを構築することで、冷媒の回収率および再生率は確実に向上すると期待されます。そもそもフロン類の総量規制はますます厳しくなるため、今後HFCの供給と需要のバランスが崩れ、供給量が圧倒的に足りなくなることが避けられません。
その意味でも冷媒の再生は“待ったなし”です。 冷媒のサーキュラー・エコノミーの実現は、まさにその柱となるものであり、ダイキン工業は究極的には冷媒を100%回収し、100%再生するところまで持っていきたいと考えています。日本IBMとの共創による知見も生かしながら、空調と冷媒の両方を手掛けるグローバルNo.1の企業としての責務を果たしていこうとしています。
ダイキン工業株式会社(ibm.com外部へのリンク)は、世界で唯一、空調機器と冷媒の両方を製造する企業として、環境技術を活かした製品・サービスを世界中に提供してきました。また、2025年度までの戦略経営計画「FUSION25」の成長戦略テーマの1つとして、カーボンニュートラルへの挑戦を進め、環境先進企業として真のエクセレントカンパニーを目指しています。