大幅な成長を続けるために、ANTAは複雑な時期的な傾向を活用することを目指しました。マーチャンダイジング、製造、物流を最適化し、よりスマートなビジネスを構築するにはどうすればよいでしょうか？

ANTA GroupはIBM Servicesと協力して、自社の業務をエンドツーエンドでSAP S/4HANAと統合し、小売サイクルのあらゆる瞬間に機会を正確に特定する予測分析を可能にしました。

ファッション小売業は、消費者のトレンドが最も複雑で予測不可能な業界の1つです。どの商品がすぐに売り切れて、どの商品が売れ残るかは、複数の要因が影響しあいます。スポーツウェアも例外ではなく、異常に暑い夏から大きなスポーツトーナメントに至るまで、あらゆるものが需要の大きな変動を引き起こす可能性があります。

1991年以来、スポーツウェアのスペシャリストであるANTA Groupは、まさにその活動の中心にいます。同社は中国に拠点を置き、ANTA、FILA、DESCENTE、KOLON SPORT、SPRANDIなど、多くの有名な世界的ブランドのデザイン、マーケティング、流通を、自社店舗およびB2BおよびB2C小売パートナーを通じて行っています。

数百の商品シリーズと数千の在庫管理ユニットを抱えるANTA Groupにとって、将来の計画は非常に重要です。ANTA GroupのITシニア・ディレクターであるChen Dong Hai氏は、次のように説明しています。「当社は複数のブランドと10,000以上の小売店をサポートしているため、効果的なマーチャンダイジングを促進し、各商品シリーズを最適な数量で生産・供給して、あらゆる販売機会を確実に獲得する必要があります」

Chen Dong Hai氏はさらに次のように続けています。「お客様ごとに、スタイル、色、サイズ、価格について独自のニーズと好みがあり、季節にも大きく影響されます。トレンドの移り変わりは非常に早いので、年間を通じて複数の時点で計画を立てる必要があります。たとえば、通常、ANTAおよびANTA KIDSブランドだけで年間4回の個別のマーチャンダイジング計画演習を実施し、その洞察を利用して財務、サプライチェーン、製造、物流計画を調整します」

ANTA Groupは急速な成長を遂げています。2019年、同社は年間収益が前年比40%の増加を記録しました。ANTA Groupはこの傾向をうまく利用し、業務効率を高め、サプライチェーンを最適化し、売上増を目指しました。

「当社の財務、製造、サプライチェーン、物流組織はうまく機能していましたが、マーチャンダイジングへのアプローチにおいて新たな効率性を実現できる可能性があることが分かっていました」とChen Dong Hai氏は述べています。「特に、当社のさまざまな事業分野間のコラボレーションを改善できる可能性があると考えました。単一の統合された自動ERPシステムを使用して各ブランドのビジネスプロセスを再設計することで、プロセスの完了に必要な時間を大幅に短縮できると確信していました」

Chen Dong Hai氏は次のようにも述べています。「毎年多くの計画サイクルを完了できるようになるだけでなく、フロントツーバックの統合が緊密になることで、無駄のないリアルタイムの商品管理ができます。POSシステムやオンライン・システムのリアルタイムデータをマーチャンダイジング・プロセスに接続することで、最新の消費者傾向に基づいて小売店の在庫を動的に補充することが可能です。ANTA Groupにとって、これらの機能は売上を大幅に伸ばすものです。このアプローチは、より高品質でよりパーソナライズされたショッピング体験をお客様に約束します。」

目標を実現するために、ANTA Groupは中国全土のすべての事業を網羅する広範なデジタル・トランスフォーメーションの取り組みに着手しました。ファースト・ステップとして、同社は新しい働き方をサポートする全社規模のERPプラットフォームを模索しました。

ANTA Groupは、多数の主要なERPプラットフォームを徹底的に検討した結果、SAP S/4HANA上に統合運用を構築することを選択しました。最先端のメモリー内のテクノロジーを活用したSAP S/4HANAを使用すると、組織は非常に複雑な予測を迅速に作成し、その洞察をバリュー・チェーン全体に簡単に広めることができます。

「SAP S/4HANAはまさに次世代のデジタル・プラットフォームであり、急成長するビジネスをサポートするために求めていた高度な分析機能をすべて提供してくれました」とChen Dong Hai氏は振り返ります。「SAPはファッション小売業界でも大きな実績をあげており、このソリューションが業界固有のワークフロー要件をサポートできるという自信を与えてくれました。」

次に、ANTA Groupは変革の道のりをガイドしてくれる専門パートナーを探しました。複数のベンダーを慎重に評価した結果、ANTA GroupはSAP S/4HANAへの移行を合理化し、加速するために、IBM Servicesを選びました。

「IBMとSAPは緊密な戦略的提携を結んでいるだけでなく、IBM Servicesはシューズとアパレル向けのSAP業界ソリューションにおいて、豊富な素晴らしい経験を持っています」とChen Dong Hai氏は述べています。「最初から、IBMチームは貴重な洞察、アクセラレータ、最良実施例を提供してくれたので、私たちはトランスフォーメーション・プロジェクトを順調にスタートさせることができました。IBM Servicesのおかげで、安心して取り組むことができました。」

一連のIBM Design Thinkingワークショップを通じて、ANTA GroupとIBMは既存のワークフローを分析し、会社の目標を達成するために必要な変更を計画しました。IBMチームは、オンサイトでのコンサルティングと事前にパッケージ化された実装テンプレートを組み合わせることで、ANTA Groupのプロセスを大きく加速できるように支援しました。

SAP Integrated Delivery Frameworkは、配信の役割、方法論、サービスを調整することで、プロジェクト全体でのコラボレーションの成功を促進し、低リスク、高いコスト効率、予定通りの導入を実現しました。

「IBM Servicesのおかげで、わずか9カ月という短期間で、SAP S/4HANAの計画から本格的な運用に移行することができました」とChen Dong Hai氏は述べています。「新しいソリューションは、バックオフィス、工場、小売業務など、当社のビジネスのあらゆる側面を統合しています。単一のデジタル・プランニング・エンジンで複数のブランドとビジネス・モデルをサポートすることで、私たちは変革の目標を実現するための強力な立場に立っています。」

現在、ANTA GroupはSAP S/4HANAを使用して、すべてのブランド、チャネル、サプライヤー、プロフィットセンターのパフォーマンスを一元化して正確に把握しています。グループ全体の主要業績評価指標の監視と管理を統合することで、同社は新たな小売トレンドを迅速に洞察し、月末の決算に要する時間を短縮できます。

SAP S/4HANAに移行して以来、ANTA Groupは消費者の需要の変化を検出し、解釈する能力を変えました。マーチャンダイジング・プロセスを加速することで、在庫消費、商品カテゴリー、地理的地域、対象年齢層などの側面に沿って、より頻繁かつ詳細な分析を実行できるようになりました。

「以前は、各ブランドに対して年間4回程度の計画サイクルしか実行する時間がありませんでしたが、SAP S/4HANAのおかげで、さらに深く掘り下げることができるようになりました」とChen Dong Hai氏は説明します。「たとえば、今年はANTA KIDSブランドに関する12の計画サイクルを実行する予定です。分析が3倍に増えることで、予測の精度が大幅に向上し、各商品ラインの最適な品質を生み出し、あらゆる販売機会を活用し、売上増を実現できます。重要なのは、計画の頻度を増やすことが、お客様にとってより関連性の高い、パーソナライズされたショッピング体験につながり、ブランドとの関わりを強化できるということです。」

新しい働き方は、ANTA Groupの事業運営にも大きなメリットをもたらします。バリューチェーン全体の情報の流れを改善することで、財務、製造、物流、サプライチェーンのプロセスを自動的に作成、スケジュール設定、最適化することができます。

Chen Dong Hai氏は次のように付け加えています。「当社のサプライチェーン全体の業務効率は80%以上向上したと推定しています。これにより、生産遅延のリスクが劇的に軽減され、スループットが向上し、急速なビジネスの成長を継続することができます。」

IBMのグローバル・コンシューマー・インダストリー担当ゼネラル・マネージャーのStephen Laughlin氏は、「新しいデジタル・プラットフォームの構築は、商品流通の効率化を実現し、ANTA Group全体の商品補充の意思決定にかかる時間を短縮します。また、ANTA がコグニティブ・エンタープライズを目指し、マルチブランド、オムニチャネル、グローバル展開をサポートするためのデジタル・トランスフォーメーションの次の段階に向けた強固な基盤を築くことができます。」

ANTA Groupは、アジャイル・デジタル・オペレーションを究極のテストにかける機会に恵まれました。2020年初頭に新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のパンデミックが発生したとき、同社は全国的なロックダウンによる財政悪化を軽減するために、デジタルファーストの小売モデルに急速に舵を切ることができました。

「間違いなく、IBM Servicesが提供するSAP S/4HANAプラットフォームは、当社の電子商取引ストアを通じて顧客の注文を促進、処理する能力を拡大する上で重要な役割を果たしました」とChen Dong Hai氏は説明します。「小売業者は、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のような突然の経済ショックに対して特に脆弱になる可能性があり、この困難な時期に対処することができた当社の成功は、デジタル変革が非常に重要であることを示しています。危機にもかかわらず、私たちはデジタル・チャネルを活用して、すべてのお客様にシームレスな小売ジャーニーを提供することができました。」

IBMおよびSAPとのコラボレーションによる多くの肯定的な結果に基づいて、ANTA Groupは現在、将来に目を向けています。

Chen Dong Hai氏は次のように述べています。「デジタル時代において、顧客ロイヤルティを獲得する最善の方法は、市場で最も信頼できる最高の品質を確立することです。ANTAは、テクノロジーを活用して経営の中核的な変革を促進することに常に取り組んできました。私たちは、より多くの消費者との直接対話を推進するために将来を見据え、データの洞察を活用し、人工知能と自動化を用いてワークフローをよりインテリジェントにすることで、進化し続ける消費者の期待に応え、さらにはそれを超えることを目指しています。」

Chen Dong Hai氏は次のように結論付けています。「私たちの次の目標は、中国で開拓してきたデジタル戦略を世界中の他の事業部門に適用することです。当社のSAP S/4HANAの導入をテンプレートとして使用することで、国際市場での成長を加速できると確信しており、その歩みを続けるにあたり、IBM Servicesとの緊密な連携を継続する予定です。

1991年に設立され、中国の晋江に本社を置くANTA Group（リンクはibm.com外部）は、スポーツウェア、アクセサリー、その他のスポーツ用品のデザイン、生産、マーケティングを専門とする大手スポーツウェア企業です。上場企業であるANTA Groupは、ANTA、FILA、DESCENTE、KOLON SPORT、SPRANDI などのブランドを扱う、中国最大のスポーツウェア複合企業の 1 つです。中国だけでも、ANTAは2018年に7,000万足以上の靴を販売しました。