外部 IP ワークロード・バランシング・ソリューション

IBM の Network Dispatcher (WebSphere® Edge Server の一部) および Cisco の Content Switching Module (CSM) は、外部 IP ワークロード・バランシング・ソリューションの例です。このようなソリューションはシスプレックス外部に存在し、シスプレックス内部に向けて処理を指図することができます。外部 IP ワークロード・バランシング・ソリューションでは、通常、全サーバーのインスタンスを代表する単一 IP アドレスを定義してから、新規の処理要求 (例えば、新規 TCP 接続要求) を使用可能なサーバー間にバランスをとって配分します。

外部ロード・バランサーは、通常、ロード・バランシング対象のアプリケーションのセットを代表する 1 つのクラスター IP アドレスを使用します。クライアント・アプリケーションは、その要求のすべてに対応してこのクラスター IP アドレスを宛先 IP アドレスとして使用します。外部ロード・バランサーによって、その宛先へのパケットの転送に使用可能な方式が異なる場合があります。さまざまなロード・バランシング・ソリューションによって、その方式を記述する場合に使用する用語が異なる場合もあります。本書の説明では、これらの方式の中の 2 つの例として、ディスパッチ・モードおよび直接指定モードについて説明します。

ロード・バランサーがディスパッチ・モードを使用する場合は、着信 IP パケットの宛先 IP アドレスは変更されません。代わりに、ロード・バランサーは、ターゲット z/OS® システム上のネットワーク・アダプターの MAC アドレスを使用して、パケットをそのシステムへ転送します。この技法は、ターゲット・システムとロード・バランサーが同一ネットワークに接続されている場合 (つまり、介在するルーターがない場合) に効果的です。受信側の z/OS システムは、パケットの宛先 IP アドレスを検査して、それが HOME リスト内の IP アドレスの 1 つに一致すれば、そのパケットを受け入れます。 したがって、ディスパッチ・モードでは、すべてのターゲット z/OS システムの HOME リストに、ロード・バランサーのクラスター IP アドレスが定義されている必要があります。ただし、これらのアドレスが動的ルーティング・プロトコルによって外部に公示されないことが重要です。これを達成する 1 つの方法は、これらの IP アドレスをループバック・アドレスとして z/OS 上で定義することです。

ロード・バランサーとターゲット・システムとの間に複数ホップが存在している場合 (つまり、経路指定によってパケットをターゲットに送る必要がある場合)、または複数の z/OS ターゲット・システムが同一の OSA-Express アダプターを共用している場合には、ディスパッチ・モードについての特別な考慮事項もあります。これらのシナリオでは、以下の手法を使用して正しいターゲット・システムにパケットを経路指定できます。

これに対して、ロード・バランサーが直接指定モードを使用している場合、ロード・バランサーは、ネットワーク・アドレス変換 (NAT) などのテクノロジーを使用して、宛先 IP アドレス (つまりクラスター IP アドレス) をターゲット z/OS システムが所有する IP アドレスに変換します。これらの接続用の IP パケットをクライアントに送り返す場合は、ロード・バランサーは、ソース IP アドレス (つまりターゲット z/OS システムの IP アドレス) を変換して、 アプリケーションがその要求上で以前に使用したクラスター IP アドレスに戻します。

ロード・バランサー構成によっては、クライアント IP アドレスに対しても NAT を実行する場合があります。このクライアントの IP アドレスを、ロード・バランシング・デバイスが所有する IP アドレスで置き換えることができます。 これは、ターゲット・システムからのすべての出力パケットがロード・バランシング・デバイスを必ずトラバースし、NAT を実行してサーバーの IP アドレスをクライアントが元々使用していたクラスター IP アドレスに変更して戻せるようにするために、必要な場合があります。したがって、直接指定モード・ソリューションでは、シスプレックスに到達するロード・バランス接続の IP アドレスは、要求を出したクライアントの実 IP アドレスを反映していない場合があることに注意する必要があります。 このことが重要な考慮事項となるのは、着信接続上で可視になっているクライアント IP アドレスに、シスプレックス内のすべての定義または構成が依存する場合です。

外部ロード・バランシング・ソリューションには、ワークロードの分散方法に影響を与える複数の構成オプション (ラウンドロビン、重み付けラウンドロビンなど) がある場合があります。一部のソリューションでは、ワークロード・バランシング決定に影響する可能性のある推奨値を z/OS シスプレックス内部のコンポーネントから取得することもあります。詳しくは、シスプレックス対応の外部ロード・バランシング・ソリューションを参照してください。