混沌を脱し収益力の強化へ

ハイブリッド・バイ・デザインがビジネス価値を生み出す仕組み
混沌を脱し収益力の強化へ:ハイブリッド・バイ・デザインがビジネス価値を生み出す仕組み
ハイブリッド・バイ・デザインがビジネス価値を生み出す仕組み

本レポートは、「Hybrid by design(ハイブリッド・バイ・デザイン)」と呼ばれる手法を用いて、組織の「The Great Tech Reset(テクノロジーのグレート・リセット)」を設計し、実装する方法に関するレポートシリーズの第1弾です。

第1弾では、ハイブリッド・バイ・デザインの概要、仕組み、踏み出すべき一歩を含め、全体像を明らかにします。

【このレポートでわかること】
 

Hybrid by designの導入として、今ある資産をどのような観点で整理・評価し、ROI向上に繋げるべきかを解説します。

 

【ケース・スタディー】

 

【関連情報】

 

 

Hybrid by designとは何なのか。それはビジネスにどのように役立つのか。


Hybrid by designは、ハイブリッドクラウド上で機能する、検証済みかつ体系化されたアーキテクチャー・フレームワークであり、テクノロジーによってビジネス価値を最適化することを可能にします。これにより、将来のビジネス成果を実現するために必要な俊敏性、スピード、統合が実現し、ビジネスは前進します。 
Hybrid by designは元々、クラウド・アーキテクチャーの考えから始まりました。それは、ビジネス上の優先順位を考慮しつつ、意図的にハイブリッドクラウド環境を設計する手法です。こうした手法を利用する組織は、オンプレミスのデータセンターに加え、パブリッククラウドやプライベートクラウドを組み合わせて利用することで、俊敏性とスピードを高め、ビジネス施策を拡張しました。 

生成AIがビジネスに浸透しつつある中、Hybrid by designの原則はクラウド・コンピューティングにとどまらず、企業全体、つまりはプラットフォームや、セキュリティー、AI、クラウド、データなどのあらゆるテクノロジー資産で適用されるようになりました。Hybrid by designは、巧妙な設計と統合によって、ばらばらなテクノロジーからなる不協和音を、ビジネス成果を増幅する“シンフォニー” へと昇華することができるのです。

これまでの標準:Hybrid by default(ハイブリッド・バイ・デフォルト) 
一方、多くの組織においてより一般的なのは、テクノロジーが調和したシンフォニーではなく、クラウドとオンプレミス・データセンターが混在してしまった「Hybrid by default」です。 Hybrid by default では、一貫した意図が存在せず種々混合しており、複雑でサイロ化したカオス(混沌)な環境となっています。コストは上昇し、投資対効果は低下し、実装の失敗、導入者の後悔を招く結果に陥りやすい面があります。統合された最良のビジネス成果を目指す包括的な計画に欠けており、技術的負債が散在しています。

 

個別最適による混沌を脱し、 収益力の強化へ

IBVの調査によると、ITプロジェクトの投資利益率(ROI)に対して高い期待を持つ組織は多くありません。
企業は、何十年にもわたり新しいテクノロジーを活用して、業績の改善を図ってきました。しかし、テクノロジーの“ネクスト・ビッグ・シング”(次の大ブーム)を追い求めた結果、実装の遅れや膨大な技術的負債が残されました(技術的負債は、手持ちのテクノロジーが修正・更新が必要な「負債」となり、「資産」としての価値が損なわれる状態を指します。これは通常、サンク・コストにもかかわらず、自組織のテクノロジーがあまりにも柔軟性と統合性に欠けるため新しいビジネス目標に対応できないと組織が判断した場合に発生します)。

今や生成AIが大きな存在感を示しており、「The Great Tech Reset」を加速させています。生成AI からクラウド、プラットフォーム、ソフトウェアに至るまで、テクノロジーの“シンフォニー” を最大限に活用するために、テクノロジー資産を見直し、モダナイズするチャンスなのです。
経営層は、AIをより効果的に大規模展開する機会を得ています。また、その変革の潜在能力を触媒として活用し、IT資産と生み出されるビジネス成果を全面的に見直すことも可能です。

 

Hybrid by designを始めるために

1. 見直す

知るべきこと:

今日のテクノロジー・リセットが、明日の持続的な競争優位につながる

最先端のテクノロジーにより、収益性を損ねるようなことがあってはなりません。経営層の72% が、IT 投資ポートフォリオのROI を25% 以上向上させることを、2024 年における経営層の最優先事項と位置付けています。

例えば、約3分の1の組織がクラウド化への行程である「クラウド・ジャーニー」が頓挫したと回答しています。また37% の組織は、最小限のワークロードを移行しただけで、「完了」したと見なしています。これでは、投資効果が現れる前に勢いはそがれてしまうでしょう。中途半端な導入では、業績改善によるROI が実装コストを上回る転換点に達する前に取り組みが頓挫してしまいます。その結果、クラウド・プログラムは改革の機会ではなく、必要であるが歓迎されないリソースの浪費要因として捉えられてしまいます。 

“中途半端” な状況は、クラウド分野にだけに限った話ではありません。経営層の55% が、重要なビジネス課題を解決するためのITソリューションの設計は、重大な障害、または実質的に行き止まりになると回答しています。生成AI へのアプローチで過去の失敗を繰り返さないようにするためには、テクノロジーのリセットが必要です。現在、クラウドIT 資産とサービスのうち、要件どおりに機能しているものは29% に過ぎません。残りの71% は、実質的に技術的負債といえます。

支出の量ではなく、支出の質が重要

事業部門とIT部門のリーダーは、次の3つの数字について合意する必要があります。

  1. 業績向上を目的とする投資に割り振るIT予算の割合
  2. ITポートフォリオ全体から得られる現在のROI
  3. アイデアを収益化するまでに要する時間(設計および実装速度)

 

実行すべきこと:

リセットして、水準を上げる

ROI を見直す

永続的な競争優位性は微調整だけでは得られません。Hybrid by design は継続的な改善を促進しますが、目指すのはムーンショット(実現すれば飛躍的な効果が期待できる取り組み)です。この意図的なアプローチを導入することによって、ほんのわずかな進化ではなく、本質的な変化を追求し、AIの真の力を解き放つために必要な行動変化を浮き彫りにすることができます。そのために、以下のアクションに着手することが必要です。

  1. 新たなテクノロジーへの取り組みに、より高い目標を設定することでROI をさらに高める
  2. IT 予算の焦点を業務継続性の確保から、画期的なソリューションの強化へとシフトする
  3. 体系化して簡素化する

 

※詳細はレポートをダウンロードしてご確認ください。 

 

2. 明らかにする

知るべきこと:

生成AIは、どのテクノロジー環境が砂上の楼閣で、どのテクノロジー環境が堅固な土台の上に築かれているかを明らかにする

新しいHybrid by designのテクノロジー資産へ意図的に投資することは、生成AIの取り組みを成功に導く基盤となります。しかし、2024年時点で、生成AI投資に対応するためのクラウドおよびデータ機能が完全に整っていることを「強く確信している」と答えた経営層はわずか16%にとどまります。また、27%の経営層は準備ができているか分からないと答えています。

 

生成AIの拡張を阻むハードル

生成AIのパイロットから実際の導入までの過程には、次のような障害が散在していることがよくあります。
 

  • 自由なデータフローを妨げる障害。
    システムが異なると摩擦が生じ、一貫性のないITスタック間でワークフローがスムーズに機能しにくくなります。こちらのCRMシステムとあちらのマーケティング自動化プラットフォームとが、うまく相互運用できない、というようなことがよくあります。データが自由に流れることができなければ、コラボレーションとイノベーションは損なわれるでしょう。
     
  • 断片化したガバナンス構造。
    ワークフローの分散や分断は、シャドーIT*、作業の重複、潜在的なコンプライアンス問題につながる可能性があります。
     
  • セキュリティーの懸念。
    サイバーセキュリティーがますます重要になる中、IT資産全体のセキュリティー対策とコンプライアンスを管理することが不可欠です。
     

* シャドーITは管理部門の許可なく社内で使われているIT機器やシステムのこと。
 

生成AIに対応した技術基盤の構築

生成AIはデータが糧です。企業が迅速なイノベーションを推進するのに必要となる効果的なアウトプットを学習し生成するには、大量のクリーンで正確な情報が必要です。AIエンジンにデータを供給するには、データレイク、ウェアハウス、高速パイプラインなどの堅固なデータ・インフラストラクチャーが必要不可欠になります。最新の技術スタックに投資することで、生成AIを成功に導く基礎を築くだけでなく、部門横断的なチーム間での自由な情報交換を通じて、一貫したイノベーションの基盤を構築することになるでしょう。

生成AIモデルは計算集約的です。生成AIモデルの学習と実行にはかなりの処理能力が要求されます。レガシー・システムは、生成AIの要求に応えられる能力をまったく備えていません。

ハイブリッド・バイ・デザイン化するには、現在のコンピューティング能力や、データ分散(クラウド、オンプレミス、エッジ)、データ・アクセス・プロトコル、セキュリティー管理、および既存の技術投資を活用できる可能性を包括的に評価する必要があります。このアプローチは、テクノロジーの信頼性(ダウンタイムの削減、運用の円滑化)を高めるだけでなく、組織の適応性(変更への対応の容易化、意思決定の迅速化)も強化します。オンサイトとオンラインのあらゆるものをシームレスに接続して、生成AIに最適な環境を構築することを想像してみてください。これは、利益を促進するスマートな働き方の実現という真の成果につながります。
 

 

 実行すべきこと:

基盤を再構築する

Hybrid by design のアーキテクチャー原則(システムなどの設計や運用に関する基本方針)を用いて技術的負債を返済し、これまで制約だった基盤を資産に変えましょう

企業は、“ITにおけるネクスト・ビッグ・シング”というハイプ・サイクル*を経験するたびに、技術的負債を積み重ねてきました。例えば、カスタムビルドされたエンタープライズ・ソフトウェア・ソリューションに覚えがあるでしょうか。これは、確かに最適化はされたが、同時に開発や維持に膨大なコストと時間がかかるソリューションでした。テクノロジーが進化するにつれ、これらのカスタム・システムは時代遅れとなり、最新ツールとの統合が困難になりました。それでも多くの組織はこのカスタムされたソリューションを維持し続けました。こうしたツールなどが、大企業内の複雑なテクノロジー遺産の原因となり、結果として現状のI 資産は、生成AI時代に必要とされるAI対応の全社規模の基盤からかけ離れてしまいました。

生成AIは、“ITにおけるネクスト・ビッグ・シング”にとどまらない、大企業の基本的な働き方そのものを変革するテクノロジーです。Hybrid by designのアプローチの構築は、改善のロードマップに向けた道を拓くでしょう。そのために、以下のアクションに着手することが必要です。 

  • ビジネスの重要問題の解決にはスピードが命
  • 既存の遊休資産を“起こし” て、ROI の高いAI 案件をサポートする
  • 力業で取り組むのではなく、AI でスマートにモダナイズする

※詳細はレポートをダウンロードしてご確認ください。 

 

3.一歩立ち止まる

知るべきこと:

棚卸しに時間をかければ、リセットの速度は上がる

あまりに多くのばらばらな取り組みに、次々とリソースを割り当てていては、成功は望めません。時間をかけて、最大のビジネス価値を生み出す可能性がある幾つかの重要な領域を特定する必要があります。そうすることで、これらの領域に集中し、 少しでも早く規模を拡張できるようになります。 言い換えれば、実際には減速した方が、長期的には速く動けるようになるということです。 

  • 過去に失敗したデジタル・トランスフォーメーション(DX)プログラムは、84% にまで上る
  • 55%の企業が、技術的負債がビジネス目標達成の障壁になっていると回答している

 

まずは過去を振り返り、冷静かつ確固たる評価をしてから、全速力で走りだす

技術革命には組織の振り返りが必要となりますが、AI 導入が成功するかどうかは、 まさにその振り返りにかかっています。

AI競争を勝ち抜くためには、進行中のAI 革命に対する組織の準備態勢について、ビジネスとIT 両面から冷静かつ確固たる評価をする必要があります。それは、現在のテクノロジー資産に至った経緯について責任追及するためではありません。組織のHybrid by default 状態を明確に評価し、Hybrid by design のメリットを明確に把握するためです。

Hybrid by design のアプローチの利点として、ビジネス・リーダーはモダナイゼーションの他に、俊敏性、セキュリティー、ビジネス・アクセラレーション、コスト最適化、そして生成AI の活用を挙げています。言い換えれば、生成AI は適切に設計されたハイブリッド環境に組み込まれて初めて、革新的な価値を発揮することができるのです。

現在のテクノロジー資産に至った経緯を探ることで、より計画的で価値を重視したアプローチへの道が拓けます。積み上がってしまった技術的負債を取り除き、AI の可能性を最大限に引き出すように設計された意図的なHybrid by design のアーキテクチャーを採用することが、前進するための方法です。

 

実行すべきこと:

全社規模のソリューションを実現するための道を切り拓く

レガシー技術に対処して、新しい働き方や業務を妨げる障害を取り除きましょう

リーダーは、以下のアクションに着手することが必要です。

  • 業績改善を目的としたIT 予算を増やす
  • IT ポートフォリオ全体の総IT 支出から得られる利益を増幅させる
  • IT アイデアをより早くビジネス成果に変える

※詳細はレポートをダウンロードしてご確認ください。

 

Hybrid by designの実践:事例

デルタ航空:Hybrid by designで変革

デルタ航空は、コロナ禍による経済的な低迷からの回復と、終息後に求められた新しいプレミアムな顧客体験の提供という課題に直面していました。これに対応するため、同社は分散していたワークロードをハイブリッドクラウドに移行し、オープンなクラウド・アーキテクチャーを活用して運用をモダナイズしました。その結果、複数のクラウド環境にまたがる開発・セキュリティ・オペレーションを標準化し、680機以上の航空機で無料Wi-Fiを提供するなど、顧客体験の向上を実現。さらに、今後は従業員のエンゲージメントや生産性、市場投入までの時間、コスト効率を25〜30%改善することを目指しています。
 

アルゼンチン保健省(AMoH):ハイブリッド・バイ・デザインを採用して、より安定したITインフラストラクチャーを構築

アルゼンチン保健省は、患者が複数の医療機関を行き来する医療環境において、公衆衛生統計の流れと基盤システムの管理を自動化する必要に迫られていました。これに対し、同省はレガシーなモノリシックアプリケーションから脱却し、Red Hat®の技術を基盤とした柔軟で安定したITインフラを構築。全国規模のデジタル医療ネットワークを整備することで、医療機関間の標準化された統合と安全なデータアクセスを実現しました。その結果、コロナ禍で増加した1,500%のトランザクションにも対応可能となり、電子記録の管理や新サービスの追加にも柔軟に対応できる体制を整えました。

IBM:30億ドルの生産性向上

IBMは、全社規模での生産性向上と業務の簡素化を目指し、Hybrid by designのアプローチを導入しました。従来の複雑なプロセスや手作業を見直し、生成AI「watsonx™」を活用して業務の自動化とデータ統合を推進。CRMプラットフォームの提供やアプリケーション実行コストの削減、社員向けデジタルアシスタントの導入などを通じて、業務効率と顧客体験の向上を実現しました。IBMはこの取り組みにより、2024年末までに30億ドルの経費削減を達成できると見込んでいます。

 

ハイブリッド・バイ・デザインで混沌を脱し収益力の強化へ

生成AIの導入によって、組織は自らのテクノロジー基盤を見直さなければならなくなっています。これを機に、Hybrid by design を取り入れ、テクノロジー基盤をリセットすれば、持続的な競争優位性が獲得できるでしょう。
このことは、AI の優位性を最適化するだけでなく、俊敏性、スピード、無限大のキャパシティーなど、来たるべきテクノロジーへの備えにもなります。

レポートをダウンロードして、具体的な実行すべきアクションをご確認いただき、組織のAI態勢を強化するための意図的なクラウド環境を整えるための戦略策定にお役立てください。


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著者について

久波健二(監訳者), 日本アイ・ビー・エム株式会社 IBMコンサルティング事業本部 技術理事、ハイブリッドクラウド・サービス 担当CTO

発行日 2024年5月7日

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