攻めのCOO:停滞を打破する5つの戦略

生産性と成長を求め、あらゆる業界でAIと自動化をめぐる競争が始まっています。2025年のCOOスタディでは、COOが組織のオペレーションそのものを根本から見直し、この変革を主導する5つの攻めの戦略について解説します。
生産性と成長を求め、あらゆる業界でAIと自動化をめぐる競争が始まっています。2025年のCOOスタディでは、COOが組織のオペレーションそのものを根本から見直し、この変革を主導する5つの攻めの戦略について解説します。

【このレポートでわかること】

エージェント型AIでCOOがオペレーション変革を加速し、成長とレジリエンスを同時に実現する5つの戦略を、COOが実行すべきアクション・ガイドとともに解説します。

 

  • 1.成長戦略:オペレーションの効率化という守りにとどまらず、成長とイノベーションを同時に牽引する攻めへのシフトが必要。AI前提の新しい価値創出が、COOの手にかかっている。
  • 2.データ戦略:全社で一貫した単一のデータに基づく意思決定を可能にするための基盤を整える。
  • 3.運用戦略:既存プロセスにAIを後付けするのではなく、自律的に学習・適応するワークフローを最初から設計する。
  • 4.技術戦略:AIを補助ツールではなく、意思決定・予測・実行を担う共同COOとして迎え入れ、COO自身の拡張知性として活用する。
  • 5.人材戦略:社員がAIを単に使うだけではなく、AIに目的を与え、成果を評価し、組織全体で連携させる指揮者へ進化することを目指す。

 

  • 事例
     
    • Lockheed Martin社の事例:AI Factoryで製造工程を自動化し、コストを削減
    • IBMの事例:自社を「クライアント・ゼロ」としてAI導入、オペレーション効率を大幅改善

 

【関連情報】
 

 

日本考察-日本企業における生成AI導入の課題と乗り越え方は?

本レポートには、日本市場向けの特別考察を掲載しています。

世界の先進企業では、経営層自らがAI活用を主導し、全社的な変革を推進しています。IBMは自社を「クライアント・ゼロ」としてAI導入を先行実践し、成果を上げており、それもこの動きの1つです。
一方、日本企業はPoC(概念検証)を重ね、品質や安定を重視しつつ慎重に変革を進める傾向があります。ここで重要なのが「共感型イノベーション」、つまり社員の共感と一体感を得ながら変革を進める姿勢です。
日本企業の強みは、社員とともに摩擦や混乱を乗り越え、秩序と品質を守りつつ「建設的な創造的破壊」を進めることにあります。共感を軸にした変革は、グローバル企業の模倣ではなく、日本独自の価値創造につがるでしょう。

詳しくはレポートをダウンロードしてご覧ください。

 

AIエージェント時代、COOの戦略はどう変わるべきなのか?

AIエージェントが業務を自律的に判断・実行する時代、COOに求められる役割は根本的に変わります。ポイントは、COOが「企業の実態を把握し、データ・人材・テクノロジー・ワークフローを統合できる唯一の立場」にいるという点です。オペレーションの全体像、サプライチェーン、顧客接点、バックオフィスなど、これらを横断的に理解し、実際の業務インパクトを最も深く把握しているのがCOOです。

だからこそ、AIを部分最適で導入するのではなく、企業構造そのものをAI前提で再設計する「オペレーティングモデルの刷新」を主導できるのもCOOになります。統合されたデータ基盤を整え、AIを中心に据えたワークフローを再構築し、社員を"AIの指揮者"へ育成する文化づくりまで、すべてをつなぐ視点を持てるのはCOOだけです。さらにCOOは、日々のオペレーション・データという最も重要な情報を握っているため、AIの判断精度・ガバナンス・リスク管理を実運用レベルで担保できます。この「正確な情報に基づいて変革を推進できる力」が、AI時代には決定的な競争力となります。

AIエージェント時代の競争力は、COOがどこまでAI時代のオペレーションを設計し、現場と経営をつなぐ新しい統合者になれるかで決まります。

 

 

成長戦略:変革型成長に注力する

COOの役割はこれまでにないほど拡大しています。今や卓越したオペレーションは前提となり、生産性の向上だけでなく、成長をどう加速させるかが問われています。実際、COOの3分の2が、従来のオペレーション業務と並行して戦略的成長とイノベーションにも優先的に取り組んでいると回答しており、それも当然の流れと言えるでしょう。

COOは長年、オペレーションの予測可能性を高めるために、変動を最小限に抑えることに注力してきました。けれども今は、不確実性を排除するのではなく、うまく管理する方向へと舵を切っています。COOの46%は、より大きなイノベーションを実現するためなら、多少の業務効率低下はやむを得ないと答えています。

こうした現実には、新たなバランス感覚が求められます。これからのオペレーションは、既知の状況に合わせて最適化するだけでなく、「効率性」と「柔軟性」、「標準化」と「カスタマイズ」、「最適化」と「レジリエンス」の間でバランスを図らねばならないのです。

 

アクション・ガイド:
変革型成長をリードするために実行するべきこととは?

COOは今や、戦略を実行するだけでなく、戦略を形作る役割も担う必要があります。オペレーションの責任者から「可能性の創造者」へと進化していくために、次のステップが迅速なスタートを切るための指針となるでしょう。

 

  1. 不確実性を受け入れる
  2. イノベーションはリターンを生むことを証明する
  3. 全社的なイノベーションを推進する


※詳細はレポートをダウンロードしてご確認ください

 

 

データ戦略:オペレーションを企業データ戦略の中核に据える

統合され、信頼できるデータは、生の情報に価値を与え、先見性を生み出します。 実際、CEOの3分の2が、コラボレーションを促し、イノベーションを推進するには、組織全体で統合されたデータ・アーキテクチャーが鍵になると回答しています。またCOOの70%近くも、堅牢なエンタープライズ・データ・アーキテクチャーが、信頼性の高いビジネス・インサイトを生成して競争優位性を維持する上で重要だと考えています。
しかし、CEOスタディ2025によると、調査された組織の半数が、最近の急速な投資拡大やガバナンス不足の影響でシステムが分断され、場当たり的な状態に陥っていると答えています。そして、組織全体のデータ・アーキテクチャーの構成要素を十分に整備し、全部門にわたってデータ統合を拡張できていると回答したCOOの割合は、わずか19%にすぎません。
部門横断のインサイトを統合できないことは、組織の脆弱性にもつながります。実際に、COOにITオペレーションへの投資が失敗した要因を尋ねたところ、最も多く挙げられたのはデータに関する課題でした。


データ・ドリブン戦略の中心には、信頼できる唯一の情報源、すなわち統合されたエンタープライズ・インテリジェンスの構築が欠かせません。

かつてオペレーション部門は、戦略的インテリジェンスの提供者ではなく「受け手」と見なされてきましたが、今や組織のインサイトを生み出す「中核的ハブ」へと変貌を遂げつつあります。オペレーション・リーダーは顧客・製品情報に加えて、サプライチェーンや生産、デリバリーといったデータにもアクセスできるという独自の立場を活かすことで、全社的な意思決定をより高度なものへと導いています。そして、それらのデータが信頼性高く、容易にアクセスできれば、自信を持ってエージェント型AIに迅速かつ正確なアクションを取らせることができるようになるでしょう。

 

アクション・ガイド:
組織にとって"1つの真実"となるデータ基盤を構築するには?

サイロ化された情報を体系的に結びつけることができている組織は、分散化されたままの競合他社には見えていないビジネスチャンスを、いち早く把握することが可能です。

 

  1. オペレーショナル・インテリジェンスの基盤を構築する
  2. 部門を超えてインサイトをつなぐ
  3. アクセス性と説明責任とのバランスを取る


※詳細はレポートをダウンロードしてご確認ください

 

ケース・スタディー

Lockheed Martin社 :AIを核に、オペレーションを根本から刷新

 

背景と課題

航空宇宙および防衛技術分野のグローバル・リーダーであるLockheed Martin社は、人々と国家の安全を守るために、革新的で次世代型のセキュリティー・ソリューションを設計・提供しています。パートナー企業からの新たな要件に応えるため、同社は複雑に入り組んだデータ環境を横断的に統合する必要がありました。

ソリューション

同社は、中央集権型ソリューションとして包括的なエンタープライズ・データ・プラットフォームを導入し、データとAIツールの数を半減させました。この変革の要となったのが、"AI Factory"です。エンジニアがAIソリューションを大規模に構築し、改善し、展開することができる安全なAIエコシステムのことで、AI Factoryは、オープンソースの大規模言語モデル(LLM)をはじめ、各分野で最先端のモデル群を搭載しており、1万人のエンジニアがこれを活用して、イノベーションの加速とビジネス変革を推進することを可能にしています。

効果

生成AIモデルの導入によって、専門的なコーディング・スキルが不要となり、従業員は自然言語でソース・データについて尋ねることができるようになりました。さらに、AI Factory内に構築されたエージェント・フレームワークとバーチャル・アシスタントにより、複雑なワークフローをより適切に管理し、人とテクノロジーのやりとりを簡素化し、プロセスの自動化と最適化を通じて効率性を向上させることができたのです。このエンタープライズ・ソリューションによって、Lockheed Martin社はばらばらだった46種のデータ・システムとツールを単一の統合プラットフォームに集約することができました。生成AIを用いた質問応答パイロット・プログラムの初期の結果では、サンプル質問に対する回答の精度が大幅に向上し、プロンプト・エンジニアリングを導入した場合は45%から56.8%に、さらにクエリー最適化によって66.0%に上昇しました。

※詳細はレポートにてご確認ください。

 

 

運用戦略:プロセスの設計者からイノベーションの推進役へ

COOは、次世代のAIを旧来のプロセスに上乗せするだけでは、外部環境の変化に持続的に対応しきれないことを理解しています。多額のAI投資にもかかわらず、COOの約半数は、自社の現在のオペレーション・プロセスでは「地政学的な変動」(49%)や「規制環境の変化」(51%)に対応するのは難しいと考えています。

オペレーションの再構想には、組織のDNAそのものを根本的に再構築することが求められます。これは断片的なワークフローの調整では解決できません。COOの64%が、自社のビジネス機能はエンドツーエンドのワークフローと高度に「統合済み」であると回答している一方で、その自信の裏には重大な乖離があります。実際には、COOの59%が依然として、エージェント型AIや生成AIを自社プロセスに統合することに苦慮しているというのです。

この実装に対する認識のギャップは、厳しい事実を示唆しています。「統合済み」のワークフローの中には、最新に見せかけた旧式のアーキテクチャーが含まれている場合があるのです。従来のプロセスに将来のテクノロジーを無理に組み込むことでは、真の課題解決とは言えません。AIが「脇役」ではなく「主役」として活躍する、全く新しいオペレーション・フレームワークを設計することが大切です。


 

アクション・ガイド:
創造的破壊を武器に、ワークフローを刷新するには?


「昔からこうしてきたから」という言葉には要注意です。創造的破壊者の素養を持つCOOは、「なぜ?」という問いを強力な革新のツールにすることができます。ここでは、「なぜ?」を組織で活かすための具体的なアクションを紹介します。
 

  1. 建設的な創造的破壊を評価する
  2. 再構築を優先する
  3. 戦略的なAIによるプロセス再設計を試す


※詳細はレポートをダウンロードしてご確認ください

 

 

技術戦略:エージェント型AIの力で、AIを「もう一人のCOO」として迎え入れる

一部のCOOはAIをリスクとして捉えています。断片化したデータや老朽化したインフラが、業務を妨げるのではないかと懸念しているからです。しかし経営層の90%は、1年以内にオペレーション担当者がAIエージェントによってインサイトに富んだリアルタイムの分析を行えるようになると期待しています。さらに、その役割は「戦術的」なものから「戦略的」なものへと進化すると見込んでいます。つまり、ポケットに入れて持ち歩ける“共同COO”と上手に付き合う時代がやって来たのです。

AIを身近な共同パートナーとして受け入れることで、COOは自身が担う影響力の大きい重要タスクを、より精緻かつ安定して遂行できるようになります。ただしそのためには、最高情報責任者(CIO)の協力が欠かせません。
62%のCOOは、ビジネス目標を達成するにはオペレーションとCIOとの関係強化が不可欠だと考えています。COOとCIOの強力なパートナーシップがあれば、AIシステムはサイロに閉じた状態で稼働するのではなく、組織全体のインサイトを活用できるようになるでしょう。これにより、COOは自分の”共同COO”であるAIが自身の仕事をよく理解していることを把握し、信頼することができるのです。AIを受け入れることで、COOは自身の役割が縮小するのではなく、進化することに気づくでしょう。そして、今後はあらゆる組織が、常時稼働するCOOを必要とするときが来ます。2027年までに、経営層の75%は、エージェント型AIによって24時間365日のオペレーションが実現されると予測しています。そのようなオペレーションは、ビジネス界がここ数十年にわたり目指してきた理想でもあります。

AIを共同COOとして位置づけるモデルは、単なるテクノロジーの進歩という範疇を超えています。それはAI時代に向けたオペレーション・リーダーシップの進化を象徴し、人間の創造性とイノベーション、戦略的なインサイト、そして倫理的な判断が、AIの卓越したパターン認識能力やデータ処理能力と調和的に融合する姿を示しています。こうした未来において、オペレーションは現状を管理するだけでなく、より高いレベルの先見性とレジリエンスを備えた組織の潜在能力を引き出す存在となります。

 

アクション・ガイド:
創造的破壊を武器に、ワークフローを刷新するには?

最も成果を上げているCOOは、AIを自らの専門性を脅かすものとは見なさず、自らの力を拡張し、可能性を広げる”レンズ”として捉えています。人間とAIが生産的に協働するCOOモデルを築くためのステップを次に紹介します。
 

  1. 高付加価値領域での変革を目指す
  2. 自律的なオペレーションを共に築く
  3. AIによる意思決定範囲を明確にする
     

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人材戦略:従業員を「AIの利用者」から「AIの指揮者」へ

従業員の65%はAIが生産性を高めていると回答しているのに対し、根強い懸念も残っています。45%はテクノロジーの進歩によって自身の役割がなくなることを心配しており、66%は新しいテクノロジーのために職務内容が大幅に変化するだろうと予想しているのです。これは、従業員の積極的なエンゲージメントだけでなく、彼らの不安をも浮き彫りにしています。

とはいえ、従業員は仕事を離れたプライベートでも新しいAI技術を取り入れていることが多く、AIのポジティブな可能性に対するオープンな姿勢もうかがえます。従業員の80%は職場の技術進歩についていけていると回答し、73%はAIが自身のイノベーションを促進していると述べていることは、AIオーケストレーションへのスムーズな移行にとって重要な足がかりとなります。

AIオーケストレーションとは、複数の自律型AIの能力を指揮・連携・最適化することで、戦略的な成果を達成するプロセスです。そのためには、従業員がAIをただ使う方法を知っているだけでなく、目的を定義し、アウトプットを評価し、人間の判断と統合し、パフォーマンスを測定する方法まで理解することが求められます。このオーケストレーション・モデルの導入を成功させるためには、全社的な連携と、組織文化の変革が不可欠です。

COOは部門横断的な可視性を持ったプロセス責任者であり、ビジョンと技術・組織の実行力を通じて組織を導く独自の立場にあります。また、全社的な視点を有しており、各部門のリーダーには真似できない方法で、AIオーケストレーションの能力をエンドツーエンドのワークフローに適合させることが可能です。
最も優れたAIの指揮者(AIオーケストレーター)は、AIシステムの運用メカニズムと、それがもたらすビジネスへのより広い影響の両方を把握しています。このリテラシーがあることで、いつAIの能力を活用すべきか、いつ人間のインサイトで補完すべきか、そしていつプロセスを完全に再設計すべきかについて、組織の戦略やガイドラインに基づいて判断できます。

 

アクション・ガイド:
創造的破壊を武器に、ワークフローを刷新するには?

未来は、従業員を最も効果的にAIの戦略的オーケストレーターへと変革できる組織に開かれています。その勢いを加速させるためのアクションは次の通りです。
 

  1. スタートアップ精神を育む
  2. 補完し合う専門性を融合させる
  3. 実践を通じてスキルを築く

     

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未来をつくるCOOの役割:AIと人間の協働の橋渡し

COOは、オペレーションの設計者からイノベーションの推進役へと進化しつつあり、オペレーショナル・エクセレンスと戦略的なイノベーションを融合させる存在です。いまやオペレーションは組織のインサイト・ハブとして、データを先見性へと変換し、人間とAIの協働によるワークフローへと再構築する役割を担っています。

これは、ここ数十年で最も重大なオペレーション・リーダーシップの刷新と言えるでしょう。最も成功するCOOは、自分たちの究極の貢献が過去のオペレーションを完璧にすることではなく、未来の可能性を設計することにあることを認識しています。

戦略を確実に実行するためのCOOの具体的なアクションや、IBMの35億米ドル規模の生産性の飛躍的向上を実現した事例を、ぜひレポートをダウンロードしてご覧ください。


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著者について

田中 栄一(日本版監修), 日本IBM 執行役員 コンサルティング事業本部 オペレーション担当

発行日 2025年12月1日