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進化し続けるコンタクトセンター、IBM WatsonがCRM変革を後押し

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クラウド型CRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)ソリューションを提供するセールスフォース・ドットコム。2018年12月5日、東京ビッグサイトにおいて、同社が主催する「Salesforce World Tour Tokyo」が開催された。

サンフランシスコを拠点とし、「世界で最も革新的な企業」にも選出される米Salesforceの日本法人の主催ということもあり、メイン会場となった大ホールは西海岸の豊かな自然をイメージさせるセコイアの木やブラックベアのイラストで飾られた。

開放的な雰囲気が漂う会場内では、複数のセッションで構成された基調講演のほか、ブース展示、セッション、ネットワーキングなどのプログラムが行われ、来場者は日本でも新たに巻き起こるであろう「第4次産業革命」時代に求められるさまざまなスキルを体感した。

同イベントには1万人の来場者が詰めかけ、オンラインでのセッション視聴数は20万に達し、熱気に包まれた。スポンサー参加企業数も85社を数える中、日本IBMは「IBM Watsonで進化するCRM」をテーマに参加した。

 

Salesforce×Watson によるIBMコンタクトセンター変革

A Celebration of Trailblazers——ようこそ 夢を現実に変える人々“Trailblazers”が創る世界へ。そんなキャッチフレーズが掲げられた基調講演に続くブレイクアウトセッションでは、日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業本部 理事で、セールスフォース・プラクティスリーダーとしてSalesforceのサービス導入を推進する浅野智也氏が登壇。「AIを活用したIBMコンタクトセンター改革」というタイトルで、IBM WatsonとSalesforce Service Cloudを使って変革を進めるIBMのコンタクトセンターについて40分のスピーチを行った。セッションは200名を超え、立ち見客が出るほど大盛況だった。

浅野氏はセッションに先立ち、Salesforceとのパートナーシップの要点を以下の4つにまとめている。


(1)2016年に米IBMがBluewolfを買収。クラウド型CRMサービスの構築に当たり、日本IBMはコンサルタントやSEを集めた「Bluewolf専門チーム」を設立し、Salesforceに特化したコンサルティングを提供する。
(2)IBM WatsonとSalesforce Einsteinの連携により、新しい顧客体験を提供できるようになる。
(3)IBMグループであるThe Weather Companyのグローバルな気象データをSalesforce のプラットフォームへ提供していく。
(4)Salesforce向けに特化した統合製品をリリースする。

その後、浅野氏は“Salesforce×IBM Watson”のユースケースとして、IBMコンタクトセンターにおける「コグニティブ・サポート・プラットフォーム」構築について解説した。

IBMは現在まで170カ国でビジネスを展開し、社員数は約36万6000人。ソフトウェア、ハードウェア、サービスなどの製品やソリューションの数は7,000にものぼる。これだけ巨大な規模を誇るテクノロジーカンパニーだからこそ、同社コールセンター業務は「非常に複雑」。かつては300のシステムで運営されていたという。「しかし、Salesforce Service CloudとIBM Watsonが活用されたことで、まったく新しいシステムへリプレイスされました」(浅野氏)。

IBMのコールセンター業務の統合にあたり、 “2種類のステークホルダー(お客様)”がいたと浅野氏は話す。片方はもちろんIBMユーザーのこと。もう片方はコールセンターのエージェント(オペレーター)のことだ。両者にヒアリングを重ねた結果、次のような“課題”が分かってきた。

「ユーザーは『コールセンターでサービスを受ける度に担当者が代わる』『メール、チャット、電話での記録を関連付けてほしい』といった不満をお持ちでした。対してIBMのエージェントから挙がった声は『お客様に対応するためのシステムが多すぎる』『お客様との接触履歴が見つからない』『社内のサポートが不十分で、お客様からの問い合わせに対応できない』といったもの。両者はほとんど同様のことで不満や悩みを持っていたのです」(浅野氏)

その背景には、技術革新が進む中でユーザーの期待値は日々高まっていることがある。その期待に答えるには、ユーザー一人ひとりの要望を先読みして能動的に対応するような高いレベルのサービスが求められている。IBMは「お客様第一」をポリシーとしながら、「IBMサポートのあるべき姿」として、8割は各ユーザー共通の対応を行い、残りの2割で個別対応しようと考えた。「シームレスな体験をサポートするために、まずオムニチャネル連携が不可欠。それによりIBMエージェントの経験値やナレッジをデータとして蓄積できる。さらに分析やシェアができるようになればサポートレベルは常に向上していくだろう。また、お客様個人のニーズやお悩みにフォーカスしたサービスに変革するためには、エージェント一人ひとりの経験やノウハウだけでは対応に限界があるため、ここにコグニティブ活用としてIBM Watsonを投入する」——。

 

3カ月で実現したCRM変革による効果

こうしてIBMコンタクトセンター変革における大命題は、個々人のエージェントのレベルを上げて「問題回避」すること、お客様自身が自分で解決できるようにする「セルフサービス」のサポートを行うこと、難易度が高い質問の場合にも対応できる「適切な担当者への迅速なルーティング」を確立することの3本柱に絞られ、そこにIBMのソリューションが割り当てられた。AIの導入に関しては、「すでに広く採用が進んでいるWatson Chatbotのみならず、Watsonが使えるところにはどこにでも活用していく『Watson Everywhere』が基本的な姿勢」だと浅野氏は話す。

2017年2月に始まった「コグニティブ・サポート・プラットフォーム」の構築プロジェクトは、SalesforceとWatsonの活用により、開始から約3カ月間で実用化に成功。その後も改良を加えながら進歩し続けることで、すでに1万2200人ものエージェントがこのシステムを活用。さまざまな効果を上げているという。

さらに浅野氏はセッションのなかで、ソフトウェア開発会社である米Autodesk社におけるIBM Watson活用事例を動画とともに紹介。同社もWatsonを利用したChatbotを活用し、お客様サポートを向上させる仮想エージェント「AVA」(エイヴァ)を運用している。「Watsonを用いたChatbotだけでお客様の質問に毎月3万件超も回答。対応して終わりというわけではなく、蓄積されたデータを製品開発やマーケティングにフィードバックしている素晴らしい事例です」。

浅野氏はここまでに紹介してきた事例を背景としながら「変革による効果とは?」として、自身のセッションをこう結んだ。

「このようにIBM はサポートサービスの標準レベルを引き上げ、IT業界のみならずほかの業界にも影響を与えています。今回紹介したIBMコンタクトセンターの事例では、その変革のミッションをコスト削減に限定せず『お客様のロイヤルティを測るNPS向上』『収益増加に対するエージェントの貢献度合いの明確化』『効率の最適化』にまで拡げました。コグニティブなテクノロジーを駆使し、よりパーソナルで、シンプルで、かつ的確なソリューションへ——。CRMの領域においても、お客様の問題を迅速に解決へと導いていきます」(浅野氏)

 

クラウドCRMに対する“世界”からの声

続いて、浅野氏に誘われながらセッションに登壇したのは、Bluewolf社CRO(Chief Relationship Officer)のグレッグ・キャプラン氏。同社は、世界中のSalesforceユーザー企業2,500社以上から集めた18万件超のデータ・ポイントから、トップ企業によるSalesforce活用法をまとめたレポート「The State of Salesforce」を7年連続で発行している。その最新版となる「2018〜19年 年次レポート」では初めて“日本語版”も発行されている。同レポートの英語版以外が発行されるのは初めてのことで、Salesforceのサービスの売上が急成長している市場である日本への期待の高さが伺われた。この日の「Salesforce World Tour Tokyo」では、IBMブース内で来場者へ無料配布も行った。

キャプラン氏は「このレポートから見えてきた3つのグローバルポイント」として「従業員の満足度がイノベーションを推進する」「カスタマーエクスペリエンス戦略には一元化されたベースが必要」「部門横断的なガバナンスが継続的なイノベーションを促進する」と提言した。その要旨は以下の通りだ。

●従業員の満足度がイノベーションを推進する
浅野氏のセッションで紹介されたユースケースはいずれも、フロントオフィスにいるスタッフがこれまでバックオフィスにあった情報にアプローチできるようになったことで、従業員満足度を向上させたケーススタディだった。「The State of Salesforce」でもユーザー企業の回答者のうち94%が「フロントオフィスとバックオフィスがつながることで『仕事がしやすくなった』」と回答している。

●カスタマーエクスペリエンス戦略には一元化されたベースが必要
IBMカスタマーサポートは「カスタマーエクスペリエンス戦略」を持っている。「The State of Salesforce」からもそうした戦略を機能横断的に実行しなければいけない、と読み解けるはずだ。カスタマーエクスペリエンス戦略は1部門に閉じて実行するものではなく、イノベーションプラットフォームを用いて一元化しながら実行すべきもの。Salesforceはそれを可能にするプラットフォームである。

●部門横断的なガバナンスが継続的なイノベーションを促進する
Salesforceプラットフォームの中でイノベーションをどのように推進していくのか——。企業のニーズも変わっていく中、重要なのはガバナンスを用いて管理していくことではないだろうか。「The State of Salesforce」では10社のうち7社が部門横断的なガバナンスを持っていた。これからの企業は“残りの3社”に入らないように、ガバナンスのフレームワークを策定していく必要がある。

 

デモ動画が伝えるクラウドCRMのUX

日本IBMの展示ブースでは、2種類のソリューションがデモとともに紹介された。

1つめのブース「IBM WatsonによるCRMの革新」では、コンタクトセンターの生産性の向上を図るIBM WatsonとSalesforceとの連携ソリューションとして、デモを展示。

デモは、先般リリースされた「Watson Discovery for Salesforce」内で、架空の2製品のマニュアルをWatsonに学習させ、Salesforce Service Cloud内の類似ケースやマニュアルの関連部分の表示をケースに関連させて行うもの。カスタマーサービス担当者は顧客からの依頼や質問などに関連する情報をリアルタイムで入手できるようになる。Watson Discovery for SalesforceはSalesforce内だけでなく外部データも参照可能で、ブースに訪れた来場者からは「過去の問い合わせ履歴が他社のプロジェクト管理ツールにあるため、それらを参照できるようになると効果が高まりそう」との声も聞かれたという。

2つめのブース「IBM AppConnectによる基幹系システムとの連携」ではクラウド連携サービスある「IBM AppConnect」による、Salesforceと“ERP”を含んだ各基幹系システムとの連携ソリューションが紹介された。

App ConnectはSaaSアプリケーションから複雑なシステムまで、柔軟にクラウドとオンプレミス間を接続し、ビジネスデータを統合するIBMのサービス。本ブースのデモ動画内では、Salesforceをフロント画面としながら受注や在庫確認のインプットを行い、ERPに流してリアルタイムで返す——そんな一連の流れが表現された。

浅野氏とキャプラン氏による講演終了後、本ブースには参加者がデモ動画を見たり、スタッフに質問したりと、活発なやりとりが行われた。また、本ブースはBluewolfとの共同出展で企画されたものであり、キャプラン氏のセッションで紹介された「The State of Salesforce」日本語版をブース内で配布。用意された200部は、講演終了後1時間程度でなくなってしまうほどの盛況ぶりで、主催者であるSalesforceが提供するサービスへの関心の高さが伺われた。

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