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THINK Business

DX時代の攻めと守りを同時に叶える
ハイブリッドなクラウド戦略という解決策

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新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、消費者の生活や社会は大きく変わった。さらにそれ以前から進んでいた市場、経済、国際情勢など環境変化のスピードも加速している。その中で企業が持続的に収益性を高めていくには、テクノロジーを活用して、変化に迅速に対応しながら、新しい機会を生かせる体制を整える必要がある。

DXを成功させるテクノロジー・プラットフォームの4つの条件

デジタル・トランスフォーメーション(DX)では通常、多様なデータを活用しながら、自動化、効率化、データ活用の高度化を図っていく。しかし、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)など先端技術を使うためにクラウド上にシステムを短期間で構築しても、価値あるデータを活かしきれないことが多い。その一因は、これまで蓄積してきたデータが社内の既存システムに分散し、連携がとれておらず、十分に既存の資産を生かしきれていないことにある。

実はDXを進める過程で意外に盲点になりやすいのが、データ活用を支えるアーキテクチャーやプラットフォームの違いがビジネス目的の達成にどう影響するか、という観点だ。個人情報や履歴など機微なデータもあるので、データやサービスの特性や利用目的に合った「設置場所」を個別に考えることも大切だが、それぞれを連携させて包括的に管理するIT基盤を構築することも重要になる。特に、ビジネスに用いるテクノロジー・プラットフォームの必須要件は4つある。

  1. 既存のシステム環境、アプリ、データといった「資産」を新しい利用環境(クラウド)で活用、連携できる。
  2. 特定のベンダーや特定のアーキテクチャーにとらわれず、オープンで、あらゆる戦略上の選択肢がとれる。
  3. データの特性や要件に合わせて、柔軟に構成できる。
  4. あらゆる法規制に対応し、セキュリティー面で安全である。

既存のIT資産を生かしつつ、新しいテクノロジーを活用し、安全性やセキュリティーも確保しながらイノベーションを起こす。容易に実現できそうに思えるが、技術的なハードルは非常に高い。実際に、オンプレミス(自社運用のサーバー)からクラウドへの移行は一筋縄でいかない。世界的にも、企業が利用するアプリケーションの中で、クラウド上で稼働しているものは全体の2割程度といわれている。業務の遂行に不可欠な基幹システムはそもそも移行しにくいうえ、法規制や業界固有の商習慣に合わせて独自に作り込み、複雑な設計になっていることが多い。現行サービスの中断や遅延などの移行リスク、システムトラブルを思えば、移行をためらうのは当然だ。最近では、また社内各所で個別にDXを進めた結果、部分的にクラウド化され、多種多様なプラットフォームが混在することもある。

そこで注目したいのが「ハイブリッドクラウド」だ。これは、オンプレミス、プライベートクラウド(自社専用のクラウド環境)、パブリッククラウド(ベンダーが個人や企業に提供するクラウド環境)などを柔軟に組み合わせてシステム環境を構築するやり方だ。新旧の資産を融合させた基盤があれば、企業がこれまで培ってきたもの、環境はそのままに、成長戦略を描くことができる。実際にハイブリッドクラウドを活用し、より柔軟かつ高度なデータ活用を実現する業界別アプローチを紹介しよう。

IBMのHybrid Cloud
ハイブリッドクラウド基盤の考え方

図:ハイブリッドクラウド基盤の考え方

[金融業界]
基幹系システムを活用しながら新しいデジタルサービスを展開

銀行は経営資源の中核であるお金を扱い、日本企業の競争力を支える重要な産業だ。与信関連費用を増やして経済再生など、社会的責任も重い。昨今は変容するサイバーセキュリティーやコンプライアンス要件に対応し、安全性や信頼性の確保も要求されている。一方、銀行の経費率は70%を超え、事業運営の効率化が急務となっている。新しい収益源も開拓しなければならない。

IBMの目指すHybrid:銀行の場合
金融機関を取り巻く環境

図:金融機関を取り巻く環境

そのための変革を難しくする一因とされてきたのが、勘定系やそれを担う基幹系システムだ。その多くは、1980年代半ばに構築されたシステムベースとなっている。その刷新には大きな投資が必要であり、また多大なリスクを伴う。一部の金融機関は、アーキテクチャーを変えずに、言語やインフラのみを置き換えたパッケージに更改して対応しようとしてきたが、目標とするコスト削減や迅速な開発のハードルは高かった。

それに代わるものとしてIBMが推奨するのが、現行のシステムを勘定系などの基幹システム(ビジネスサービス)とモバイルやWEBなどを介した各種業務システム(フロントサービス)に切り分け、両者を疎結合させる構成に変える方法だ。勘定系の基幹システムは維持しながら、モバイルやウェブを活用した新規事業をクラウドベースで迅速に展開することができる。

例えば、ある大手金融機関の新サービスもそうした仕組みを用いている。その銀行は残高確認や振込、定期預金などの取引をユーザーにとって使いやすいアプリを開発したが、コンプライアンスやリスク管理のために、アプリ内で確認・承諾の手続きが増えれば、ユーザーには負担となる。そこで、勘定系などの各種システムをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で連携させ、処理のほとんどをバックエンドで行うアーキテクチャーを構築したのだ。ユーザーの使いやすさを軸に操作性や機能の改善に努めた結果、高評価を得ている。基幹システムを生かしながら、ユーザーのエクスぺリエンスのための新しいDX戦略を、クラウドをつかって実現した好例である。

IBMが展開する金融向けDXを支えるデジタルサービス・プラットフォームは、業界共通サービスを金融サービス向けクラウドでオープンかつ安定的に提供するソリューションだ。このプラットフォームを通じて、データ連携をより進めることで、例えば、モバイルアプリから得られる情報を、デジタル・マーケティングや新たな知見の発掘に生かし、新しいビジネスチャンスが見いだされる可能性がある。

[ヘルスケア業界]
センシティブな情報を扱いながら内外組織間でデータ連携

医療業界は、医師や看護師の献身的な働きに大きく依存してきた労働集約型産業だ。医療の高度化や複雑化、高齢化社会における患者の増加に加えて、直近では新型コロナウイルスの流行により医療資源が逼迫。医療従事者の労働負荷増大に拍車がかかっている。労務負荷の軽減や業務効率の向上にはテクノロジーの活用が欠かせないが、医療業務データのデジタル化や共有化には遅れが目立ち、現場を支援するためのAI活用も局所的である。病院ごとに使用する情報システムが異なり、病院間での医療データの共有・利活用も進んでいない。

こうした問題に対して、地域やグループ病院内の複数の医療機関をつなぐ、仮想的な情報システム基盤を構築することが1つの解決策となる。病院間のデータに互換性があり、どの病院でも同じように操作できれば、病院や地域をまたいで医療従事者を再配置したり、患者の需要に応じた医療サービスを提供しやすくなる。既存の電子カルテシステムを維持しながら、共通基盤経由でAIをはじめとする最新技術を低コストで用いて、診断支援、業務の自動化、リソース活用の最適化などがハイブリッドクラウドの活用を通じて可能になるのだ。具体的には、遠隔診療や、個別最適化医療という形でIT活用の利点が患者にも還元される。

IBMの目指すHybrid:ヘルスケアの場合
AI・クラウド活用による地域医療変革を通した社会貢献

図:AI・クラウド活用による地域医療変革を通した社会貢献

こうした医療基盤を地域医療に拡大し、既往症や過去治療歴、投薬状況などを病院間で共有すれば、患者に切れ目のない医療・介護サービスが提供でき、病院側は医療業務の効率化にもつながる。また、医療現場では、個人情報や秘匿性の高い情報を扱うので、セキュリティーの確保がきわめて重要だ。クラウド上でブロックチェーン技術などを用いれば、透明性や安全性の高い情報活用が可能になる。アカデミア間の共同研究をはじめ、製薬会社や保険会社などともデータ連携し、医療や健康に広く寄与するエコシステムの形成がすでに始まっている。データそしてクラウドの活用を通じ、内外組織、そして新旧のシステムが連携されることで実現する、医療環境の拡充に注目いただきたい。

[製造・サプライチェーン]
効率化しながら環境変化に柔軟に対応

日本の製造業は、少子高齢化により労働力不足や技術継承の問題を抱えてきた。コロナ禍で、現場で議論しながら自発的にカイゼンする従来の手法がとれなくなるなか、自動化、省人化、AIを活用した「匠(たくみ)」技能の補完などに早急に着手しなくてはならない。

製造現場の生産効率を高め、外的ショックに迅速に対応する柔軟性を持つためには、電子化→自動化→自立化のステップで進めるとよい。現場のノウハウをデータ化し、現場のサーバーや個人のパソコンにとどまっていたデータも含めてクラウド上で結びつけて活用すれば、より大きな価値を生み出せる。

IBMの目指すHybrid:製造・サプライチェーンの場合
デジタル技術活用の3つのステップ

図:デジタル技術活用の3つのステップ

コロナ禍によって同じく顕在化したのが、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の課題だ。国や地域ごとに需要量が大きく変動し、実店舗とオンラインのバランスが変化するなど、需給調整は一層難しくなり、作業負荷が増している。現場のエッジ機器のデータで稼働、流通在庫、故障状況などを把握して需給計画を最適化する、リスク要因を把握・対応して事業継続性を確保するなど、関係企業とクラウド上でデータ連携してSCM全体でDXを推進する必要がある。

クラウドの活用とは、決して既存資産と決別しゼロから構築を始めるものではない。既存資産をうまく活用しつつ、クラウドで最新のテクノロジーの導入を進めるのが、これからのDXの進め方だ。IBMは世界中の企業が直面する様々な課題に多く接し、DXを通じて課題解決をサポートしてきた実績がある。その知見を活用し、変わるものと変わらないもの、守るものと攻めるもの、新しいものと従来のものを明確にしたうえで、うまく「両立」させるアプローチ、すなわちハイブリッドなクラウド戦略が今必要とされている。

※2020年12月9日~2020年12月31日に日経電子版広告特集にて掲載。
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