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オートバックスに聞く:新たな顧客価値を創造するAIビジネス戦略

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「クルマのことならオートバックス」で知られるオートバックスグループ(以下、オートバックス)が、AIを活用したビジネス変革の取り組みを開始した。同社は現在、全国で600を超える店舗を展開し、自動車用品の卸売・小売のみならず、車検・整備、車買取・販売、板金・塗装など、さまざまな商品・サービスを提供している。具体的に同社がどのようにAIを活用しているのか、そして新サービス立ち上げの経緯や狙いについて、AIビジネス戦略の鍵を握る人物に聞く。

 

AIによる画像認識を活用した「タイヤ摩耗診断」

自家用乗用車の日常点検・定期点検の整備は安全に自動車に乗るためには欠かせない。しかし、国土交通省と関係団体等で構成する「自動車点検整備推進協議会」のアンケートによると、日頃から行わなければならない日常点検を「全くしない」という人の割合は約35%にものぼる。その理由は「面倒だから」「お金がかかるから」「時間がないから」なのだという。

そこでオートバックスは、スマートフォン(以下、スマホ)で簡単かつ無料で自動車のメンテナンスの必要性を診断できれば、ユーザーのメンテナンスに対する意識を高めることができるのではないかと考えた。まずは、特に整備不良による事故が多いとされている「タイヤ」について、摩耗具合をスマホで撮影した画像から診断するというサービスの開発に着手し「かんたんタイヤ画像診断」として2017年9月に公開した。

使い方は簡単。スマホからHPにアクセスして自動車に装着しているタイヤの写真を「カメラ」のボタンをタップして撮影するか、予め撮影した写真を選択し、「紙飛行機」のボタンをタップすると、タイヤの摩耗度合いに応じて「大」「中」「小」の3段階のチェック結果と、状態に応じたアドバイスが送られる。なお、パソコンからも画像のアップロードと診断が可能だ。

「かんたんタイヤ画像診断」のトップページ

かんたんタイヤ画像診断」のトップページ

「かんたんタイヤ画像診断」での診断結果例

かんたんタイヤ画像診断」での診断結果例

かんたんタイヤ画像診断」は、IBM Cloud上で提供されているIBM WatsonのVisual Recognition (画像認識)APIを活用して、あらかじめ登録されている数百枚のタイヤ画像データから、送信されたタイヤ画像と近似する画像を抽出し、タイヤの摩耗状態を判別している。

AIを活用することでタイヤ点検サービスに変革を起こした同社だが、今後はどのようにAIを活用するのだろうか。同社常務執行役員・商品統括である佐々木勝氏と同社ICT・カーエレクトロニクス商品部長の八塚昌明氏にインタビューした。

 

「面倒・お金がかかる・時間がない」という悩みに「簡単・無料・すぐにできる」で応える

——「かんたんタイヤ画像診断」開発の経緯を教えてください。

八塚 自動車点検整備推進協議会の調査からもわかるとおり、自動車ユーザーの日常点検に対する意識を高めていく必要があります。オートバックス各店舗ではかねてより「タイヤ安全点検」を実施していますが、点検のために店舗に行くということ自体がお客様にとってはハードルのひとつになっていると感じていました。

株式会社オートバックスセブンの常務執行役員・商品統括 佐々木勝氏(右)、同社ICT・カーエレクトロニクス商品部長 八塚昌明氏(左)

株式会社オートバックスセブンの常務執行役員・商品統括 佐々木勝氏(右)、同社ICT・カーエレクトロニクス商品部長 八塚昌明氏(左)

この状況を改善するために、当初はオートバックスのピットマンがユーザーから送られてくるタイヤの画像を診断するという案も検討しましたが、人手で対応するには限界があります。そこで、AIによる画像認識でタイヤの摩耗状態を診断するサービスを発案しました。メンテナンスをなかなか行えないという方々の「面倒・お金がかかる・時間がない」というお悩みに「簡単・無料・すぐにできる」というかたちでお応えできると考えています。

——これまでにも、オートバックスではプロの目利きによる「タイヤ安全点検」が実施されています。AIによる摩耗診断の精度について不安はありませんでしたか?

佐々木 当初はありましたね。しかし、サービス開発前に簡易的なテストを行ったことで印象が変わりました。それは廃タイヤと新品のタイヤを50枚ずつ撮影した画像をWatsonに学習させたうえで、タイヤの摩耗診断を行うというものでした。少ないデータながら9割以上の精度で適切な摩耗診断がなされていました。学習の精度をもっと高めれば、十分にお客様に使っていただけるサービスになる。このテストで「いける!」という感触を得て、サービス開発が本格始動しました。

——「かんたんタイヤ画像診断」公開後の反応はいかがですか?

佐々木 現在は1日に数百件ほどのアクセスをいただいています。ほとんど広告のようなものは出していないので、この結果には喜んでいます。

 

「来店すれば30分」が、1分のタイヤ診断で「顧客の裾野が広がる」

——新機軸のサービス提供となります。特にこのサービスは無料で使うことができますが、貴社のビジネスにどのような効果があると期待されていますか?

佐々木 これまでオートバックス各店舗でタイヤの摩耗診断、メンテナンスを行ってきましたが、ご来店いただき、かつ点検作業を合わせれば、30分ほどのお時間を頂戴することになります。私たちは、お客様にその貴重な時間を節約いただきたいと考えています。タイヤ画像診断は、1分で終わるものです。日常点検を行っていないという35%のお客様に対しても、その大切さに気付いていただければと思っています。

また、タイヤの摩耗状態診断によりオートバックス店舗でのタイヤ売上増も期待しているのですが、それ以上に目指しているのは「お客様の裾野拡大」です。AIを活用した点検をスマートフォンで無料でできるとなると、今までオートバックス店舗にいらっしゃったことのない主婦層や若年層のお客様との接点を持つ機会を創出できると考えています。

佐々木勝氏

私たちは「車をより長く使っていただく」ということに貢献していきたいのです。「アプリでこんな診断結果が出たんです」——そうしたところから我々のスタッフとお客様とのコミュニケーションが始まる、そのような場面が増えることでより多くのお客様のよりよいカーライフをお手伝いしたいのです。

 

新たな顧客価値創造は「時間消費」の提案・開発

——タイヤ摩耗診断をきっかけに、先々に計画されているというAI活用のビジネス戦略についても教えてください。

八塚 今回公開したサービスは「タイヤ診断」のみですが、今後はタイヤ診断で取得した情報に加え、自動車免許保有者数のおおよそ一割に当たるオートバックス会員様の購買履歴、さらにはIoT進展を見越したうえで自動車の走行傾向といった情報を組み合わせて活用できればと考えています。デジタル技術によってお客様のカーライフにおいて本当に必要な商品やサービスをご提案することがオートバックスの付加価値になります。

——オートバックスでは「常にお客様の最適なカーライフを提案し豊かで健全な車社会を創造することを使命とします」を経営理念として掲げています。貴社はAIやデジタル技術によって目まぐるしく変化するユーザーのライフスタイルにどのように対応しますか?

佐々木 当社は自動車ユーザーへ常に新しい商品・サービスを提供し、安心・安全なカーライフを提供してきました。そして、これからは「時間消費」の提案・開発を行いたいと考えています。働き方改革、ネットショッピングという時流からもわかるとおり、デジタル技術によりライフスタイルが変化することでお客様が使える「時間」は増えます。そしてあらゆるビジネスがこの時間の争奪戦を繰り広げていきます。自動車関連でいえば自動運転やカーシェアリングによってお客様のライフスタイル、クルマの楽しみ方が変化していきます。その時にお客様に新しい「時間消費」を提案するためには、従来とは異なる視点での商品やサービスの開発が必要です。AIの活用はまさにそのような商品やサービス開発のために今取り組むべきことなのです。

佐々木勝氏

 

サービスの差別化にAIを活用するために。企業のデジタル変革を支えるIBM Cloud

オートバックスはIBM Cloud上で提供されているWatson APIを活用して新しいサービスを開発し、お客様との新しい接点を生み出した。インタビューの中で佐々木氏が述べているように、IBM CloudではAIを活用したアイデアやコンセプトをすぐに形にして検証することができ、小規模であっても自社で保有しているデータを活用することができる。スピードと柔軟性の観点からクイックにプロトタイプを開発、確認・修正することが可能な Agile 手法を採用することで、画面の見直しや画像の追加などが迅速に実施でき、今回のプロジェクトにおいて実質的な機能開発はわずか2ヶ月だった。
また、IBM Cloudはビジネスのためのクラウドとして高いセキュリティーを確保しているので、安心して運用できる。

AIを活用したビジネスのデジタル変革で競争優位を得る鍵は、いち早く取り組み、アイデアを形にすることだ。ビジネスのためのAI、ビジネスのためのクラウドを活用して欲しい。

オートバックス かんたんタイヤ画像診断

 

株式会社オートバックスセブンについて

オートバックスセブンロゴ

1974年、日本初のカー用品総合専門店として誕生して以来、日本最大級の店舗ネットワークや圧倒的な品ぞろえでクルマ社会の発展に寄与。今では「カーライフサイクル」をトータル的に支援する存在として「クルマのことならオートバックス」と真に信頼されるブランドを目指して、グループ全体でより豊かなクルマ社会への貢献を続けている。

 

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