インターネット・プロトコル

3 番目のネットワーク・レベル・プロトコルはインターネット・プロトコル (IP) で、インターネットに信頼性が低いコネクションレスのパケット送達を提供します。

IP がコネクションレスであるのは、情報のパケットを個別に処理するからです。 また、信頼性が低い理由は、送達を保証しない、つまり、送信側ホスト、受信側ホスト、または中間ホストからの肯定応答を必要としないからです。

IP は、ネットワーク・インターフェース・レベルのプロトコルへのインターフェースを提供します。 ネットワークの物理接続により、情報はヘッダーとデータが付いたフレーム単位で転送されます。 ヘッダーには発信元アドレスと宛先アドレスが入っています。 IP は、物理フレームによく似た情報が入っているインターネット・データグラムを使用します。 データグラムにもヘッダーがあり、このヘッダーにデータの送信元と宛先の両方の IP アドレスが入っています。

IP は、インターネットを介して送信されるデータのすべてのフォーマットを定義します。

図 1. インターネット・プロトコル・パケット・ヘッダー
インターネット・プロトコル・パケット・ヘッダー
この図は、通常の IP パケット・ヘッダーの最初の 32 ビットを示します。 それぞれの内容については次の表を参照してください。

IP ヘッダーのフィールド定義

項目 説明
Version (バージョン) 使用する IP のバージョンを指定します。 IP プロトコルの現行のバージョンは 4 です。
Length (長さ) データグラム・ヘッダーの長さを 32 ビットのワード単位で指定します。
Type of Service そのパケットに必要な優先順位、遅延、スループット、および信頼性のタイプを指定する 5 つのサブフィールドから成ります。 (インターネットは、この要求を保証しません。) これら 5 つのサブフィールドのデフォルト設定は、ルーチンの優先順位、通常の遅延、通常のスループット、および通常の信頼性です。 このフィールドは、現時点のインターネットでは一般的には使用されません。 この IP のインプリメンテーションは、IP 仕様 RFC 791、インターネット・プロトコル の要件に準拠しています。
Total Length (全長) ヘッダーとデータの両方が入ったデータグラムの長さを、オクテット単位で指定します。 ゲートウェイでのパケットのフラグメント化と、それに伴う宛先での再アセンブリーが提供されています。 IP パケットの全長は、インターフェースごとに、ifconfig コマンド、またはシステム管理インターフェース・ツール (SMIT) 高速パスの smit chinet を使用して構成できます。構成データベースに永続的に値を設定するには SMIT を使用し、実行中のシステム内で値を設定または変更するには、ifconfig コマンドを使用します。
Identification (ID) データグラムを識別する固有な整数が入っています。
Flags (フラグ) 「Identification」フィールドとともに、データグラムのフラグメント化を制御します。 この Fragment Flags は、データグラムがフラグメント化されているかどうかと、現行のフラグメントが最後のものであるかどうかを指定します。
Fragment Offset 元のデータグラム内のフラグメントのオフセットを、8 オクテット単位で指定します。
Time to Live (存続時間) データグラムがインターネット上に止まる時間を指定します。 これにより、誤って経路指定されたデータグラムが永久にインターネット上に残っていることがなくなります。 デフォルトの存続時間は 255 秒です。
Protocol 高水準プロトコルのタイプを指定します。
Header Checksum ヘッダーの値の整合性を確認するために計算された数値を示します。
Source Address 送信側ホストの IP アドレスを指定します。
Destination Address 受信側ホストの IP アドレスを指定します。
Options (オプション) ネットワークのテストとデバッグに使用されます。 このフィールドは、すべてのデータグラムに必要というわけではありません。
End of Option List
オプション・リストの終わりを示します。 これは、個々のオプションの終わりでなく、最終オプションの終わりに使用されます。 このオプションを使用する必要が生じるのは、これを使用しないと、オプションの終わりが IP ヘッダーの終わりと一致しなくなる場合のみです。 End of Option List は、オプションがデータグラムの長さを超える場合に使用されます。
No Operation
これ以外のオプション間の位置合わせのため、例えば、後続のオプションの開始位置を 32 ビット境界に合わせるために使用されます。
Loose Source and Record Route
インターネット・データグラムの送信元が、宛先へのデータグラムの転送と経路情報の記録のためにゲートウェイによって使用される経路指定情報を提供する手段となります。 これは 送信元経路であり、ゲートウェイまたはホストの IP は、任意の数の中間ゲートウェイからなる任意の経路を使用して、経路内の次のアドレスに到達できます。
Strict Source and Record Route
インターネット・データグラムの送信元が、宛先へのデータグラムの転送と経路情報の記録のためにゲートウェイによって使用される経路指定情報を提供する手段となります。 これは、完全 送信元経路です。つまり、経路内に指定されている次のゲートウェイやホストに到達するには、そのゲートウェイやホストの IP は、この送信元経路内にある次のアドレスにデータグラムを直接送信する必要があり、しかも、次のアドレス内に指定されている直接接続されたネットワークだけにしか送信することができません。
Record Route
このオプションを使用すると、インターネット・データグラムの経路を記録できます。
Stream Identifier
このオプションを使用すると、ストリームの概念をサポートしないネットワーク内でもストリーム ID を搬送できます。
インターネット・タイム・スタンプ
経路内を通過する間のタイム・スタンプを記録できます。

発信パケットの前には、自動的に IP ヘッダーが付加されます。 着信パケットからは、上位レベルのプロトコルに送信される前に、IP ヘッダーが除去されます。 IP プロトコルでは、インターネット・ネットワーク内のホストの汎用アドレッシングが可能です。