multibos コマンド

目的

rootvg 上の基本オペレーティング・システム (BOS) の複数バージョンの作成、更新、および管理を行います。

構文

multibos -s [-l device {-a | -f file | -b file | -x file}] [-e file] [-i file] [-L file] [-pntNX]

multibos -c -l device {-a | -f file | -b file | -x file} [-pnNX]

multibos -m [-pnX]

multibos -u [-pnX]

multibos -B [-ntX]

multibos -S [-nX]

multibos -R [-ptX]

multibos -C [VG name]

multibos -s -M file [-pntNX]

説明

multibos コマンドを使用して、ルート・レベルの管理者は同一 rootvg 上 に AIX® の複数インスタンスを作成できます。 multibos セットアップ操作では、待機基本オペレーティング・システム (BOS) が 作成され、このオペレーティング・システムは、別個のブート論理ボリ ューム (BLV) からブートします。 この操作では、所定の rootvg 上にブート可能な 2 つのセットの BOS が作成されます。 アドミニストレーターは BOS のどちらかのインスタンスから ブート可能です。これを行うには、それぞれの BLV を bootlist コマン ドに対する引数として指定するか、あるいはシステム・ファームウェアのブート操 作を使用します。BOS の 2 つのブート可能なインスタンスを同時に維持することができます。 ブート された BLV に関連する BOS のインスタンスは、アクティブ BOS と呼ばれます。ブートされていない BLV に関連する BOS のインスタンスは、 待機 BOS と呼ばれます。現在は、rootvg ごとに BOS の 2 つのインスタンスのみがサポートされています。

multibos は、セットアップ時またはその後のカスタマイズ操作の時に、管理者が このコマンドを使用して保守レベルおよびテクノロジー・レベルを更新し、待機 BOS にアクセスしてインストールし、カスタマイズすることを可能にします。 待機 BOS に対する更新の保守インストールにより、アクティブ BOS 上のシステム・ファイルが変更されることはありません。 これにより、アクティブ BOS を実動状態にして、待機 BOS の並行更新が可 能となります。

また、multibos コマンドでは、論理ボリュームとファイルシステムをコピーまたは 共有します。 デフォルトでは、BOS ファイルシステム (現行は //usr/var、および /opt)、および ブート論理ボリュームがコピーされます。 アドミニストレーターは、追加の BOS オブジェクトをコピーするこ とができます (-L フラグを使用)。

その他のすべてのファイルシステムと論理ボリュームは、BOS のインスタンス間で共用されます。 分離されているログ・デバイスの論理ボリューム (例えば、ファイルシステム内部に含まれていないもの) についてコピーはサポートされていませんが共用はされます。

AIX 5L バージョン 5.3 (5300-09 テクノロジー・レベル適用) では、AIX バージョン 6.1 (6100-02 テクノロジー・レベル適用) などの後のバージョンを待機インスタンスに取り込むことができます。この機能は、後のバージョンではシステムの mksysb バックアップを作成し、そのバックアップを使用して待機インスタンスの取り込みを行うことによって実行されます。 例えば、システム A がレベル 5.3.9.0 で、システム B がレベル 6.1.2.0 とします。mksysb -M コマンドを使用してシステム B のバックアップを作成し、mksysb バックアップを使用して、システム A にあるオペレーティング・システムの待機インスタンスの取り込みを行うことができます。
注:
  1. multibos コマンドの実行中に、システム活動状況が最小限であることを確認します。
  2. より高いレベルのオペレーティング・システムにとって新規のどの論理ボリューム属性またはファイルシステム属性も、待機インスタンスの作成時にインプリメントされません。その理由は、より低いレベルのオペレーティング・システムはそれらの属性を認識しないためです。
  3. AIX 6.1 インスタンスと AIX 5.3 インスタンスの両方を、長期間保持しないでください。互換性がないため、これらのインスタンスの間の切り替えができなくなる可能性があります。いずれかのインスタンスにコミットし、もう一方を除去してください。
  4. multibos で bos_hd* 名が作成されたアクティブ BOS 内の論理ボリュームでオペレーティング・システムが実行されていて、rootvg ディレクトリーにスタンバイ BOS がない場合、プリザベーション・タイプまたは移行タイプのインストールは、AIX 7200-00 から実行できます。システムに bos_hd* 名がある論理ボリュームは、bos_hd5bos_hd4bos_hd2bos_hd9var、および bos_hd10opt です。オペレーティング・システムに、論理ボリューム hd5hd4hd2hd9var、または hd10opt があってはなりません。-M フラグを指定した mksysb コマンドを使用して作成された mksysb イメージから multibos インスタンスを作成した場合、hd8 論理ボリュームが bos_hd8 に名前変更された可能性もあります。 この前提条件は、lsvg -l rootvg コマンドで確認できます。移行する前に、必ずシステムをバックアップしてください。また、/usr/lpp/bos/pre_migration ファイルを、メディアまたは移行先のレベルのネットワーク・インストール管理 (NIM) スポットからターゲット・システムにコピーして、ターゲット・システムでこのファイルを実行し、移行の警告が出されるかどうかを確認してください。

    この環境で移行タイプまたはプリザベーション・タイプのオペレーティング・システム・インストールを実行する前に、ディスク制御ブロックが rootvg に有効なレベルであることを確認してください。/usr/lpp/bosinst/blvset -d /dev/hdiskN -g level コマンドを実行できます。ここで、hdiskN は、bos_hd5 論理ボリュームを収容しているディスクです。このコマンドが 0.0 または予期しないレベルを返した場合は、bosboot -ad /dev/ipldevice コマンドを実行して修正し、blvset コマンドを再実行して確認します。6.1 または 7.1 が返される必要があります。

  5. 『構文』セクションに示すフラグに加え、-V フラグを指定すると、ブート時に inittab から検証操作が実行されます。 このエントリーを変更しないようにすることが重要です。 検証操作を行うと、multibos ユーティリティーにより、論理ボリュームとファイルシステムの変更をアクティブ・インスタンスとスタンバイ・インスタンスの間で同期化することができます。 また、このエントリーにより、mksysb リストア後の初期ブート時に ODM とデバイスの同期化も行われます。 この操作を行わないと、アクティブ・インスタンスとスタンバイ・インスタンスがいずれも、ファイルシステムと論理ボリュームの通常の操作と整合しなくなる可能性が生じます。
mksysb バックアップのファイルシステム・タイプ (JFS または JFS2) は、multibos コマンドが実行されるシステムのタイプと同じである必要があります。例えば、/usr ファイルシステムが JFS2 ファイルシステムの場合は、mksysb バックアップの /usr ファイルシステムも JFS2 ファイルシステムである必要があります。
multibos コマンドの実行後、ログは /etc/multibos/logs/op.alog ファイルに保管されます。alog -f /etc/multibos/logs/op.alog -o コマンドを使用してログ・ファイルを表示できます。
注: 最初に待機インスタンスを (-m フラグを使用して) 作成してからバックアップを作成することにより、両方のインスタンスを含むバックアップを作成することができます。ただし、バックアップをディスク上にリストアできる唯一の方法は、alt_disk_mksysb コマンドを使用することです。

フラグ

項目 説明
-a update_all インストール・オプションを指定します。セットアップとカスタマイズ操作の場合に有効です。
-B ブート・イメージ作成操作。AIX bosboot コマンドを使用して、待機ブート・イメージが 作成され、待機 BLV に書き込まれます。
-b file セットアップまたはカスタマイズ操作時にインストールされるインストール・バンドルを指定します。 インストール・バンドルの構文は、geninstall 規則に従っていることが必要です。
-c 待機 BOS の中でカスタマイズされたソフトウェア更新 を行います。
-C VG name rootvg ボリューム・グループのようにリブート時に自動的にオンに構成変更されないボリューム・グループを同期するために、ボリューム・グループを同期に対してオンに構成変更することができます。multibos コマンドがディスク上で代替 root ボリューム・グループ (オペレーティング・システム) を作成し、それがブートされた後に、ボリューム・グループを自動的にオフに構成変更するには、multibos -C VG name コマンドを使用する必要があります。
-e file セットアップ操作時に除外されるアクティブ BOS ファイルを正規の構文表現でリストします。
-f file セットアップまたはカスタマイズ操作時にインストールされる修正情報 (APAR など) をリストします。 リストの構文は、instfix 規則に従ったものです。
-i file 現行 rootvg から作成されるデフォルト image.data ファイルの 代わりに使用するオプションの image.data ファイルを指定し ます。
-L file あるファイルを指定して、待機 BOS に組み込むた めの追加の論理ボリューム・リストを入れます。
-l device セットアップまたはカスタマイズ操作時にソフトウェア更新の デバイスまたはディレクトリーをインストールします。
-m 待機 BOS をマウントします。
-M file mksysb イメージを含むファイルを指定します。 mksysb イメージは、mksysb -M コマンドを使用して作成されています (AIX 6.1 (6100-02 適用) 以降)。
-N ブート・イメージ処理をスキップします。このフラグを 使用するのは、AIX のブート処理をよく理解した経験のあるアドミニス トレーターだけにしてください。
-n 失敗時に終結処理を行わないようにします。このオプションは、失敗した 操作の後の multibos データの保存に有用です。
-p 所定の操作のプレビューを行います。セットアップ、除去、マウント、アンマウント 、およびカスタマイズの各操作の場合に有効です。
-R すべての待機 BOS オブジェクトを除去します。
-S 待機 BOS ファイルシステムへの chroot アクセスを使用して対話式シェルを開始します。
-s 待機 BOS のインスタンスを作成します。
-t multibos によりブート・リストが変更されないようにします。
-u 待機 BOS をアンマウントします。
-x file update_all (-a)、インストール・バンドル・ファイル (-b)、フィックス・リスト・ファイル (-f) などの他のすべてのカスタマイズ・パラメーターの前に、オプションのカスタマイズ・スクリプトを実行します。スクリプトの絶対パス名を使用する必要があります。
-X multibos に関係するタスクの実行にスペースが必要な場合 に、ファイルシステムの自動拡張を可能にします。multibos のすべての操作は、この フラグを使用して実行することをお勧めします。

終了状況

項目 説明
0 すべての multibos コマンド操作が正常に完了しました。
>0 エラーが発生しました。

セキュリティー

root ユーザーのみが multibos コマンドを実行できます。

  1. 待機 BOS セットアップ操作のプレビューを実行するには、次のコマンドを入力します。
    multibos -Xsp
  2. 待機 BOS をセットアップするには、次のコマンドを入力します。
    multibos -Xs
  3. オプションの image.data ファイル /tmp/image.data および除外リスト /tmp/exclude.list を使用して待機 BOS をセットアップするには、次のコマンドを入力します。
    multibos -Xs -i /tmp/image.data -e /tmp/exclude.list 
  4. 待機 BOS をセットアップし、バンドル・ファイル /tmp/bundle としてリストされ、イメージ・ソース /images にある追加のソフトウェアをインストールするには、次のコマンドを入力します。
    multibos -Xs -b /tmp/bundle -l /images
  5. update_all インストール・オプションを指定して待機 BOS でカスタマイズ操作を実行するには、次のコマンドを入力します。
    multibos -Xac -l /images
  6. すべての待機 BOS ファイルシステムをマウントするには、次のコマンドを入力します。
    multibos -Xm
  7. 待機 BOS の除去操作プレビューを実行するには、次のコマンドを入力します。
    multibos -RXp
  8. 待機 BOS を除去するには、次のコマンドを入力します。
    multibos -RX
  9. 既存の mksysb ファイル /backups/mksysb1 を使用して rootvg の待機インスタンスを転送するには、次のコマンドを入力します。
    multibos -M /backups/mksysb1 -sX

制限

  • multibos コマンドは、AIX 5L バージョン 5.3 (5300-03 推奨メンテナンス・パッケージ適用)およびそれ以降でサポートされています。
  • 現行 rootvg には、BOS オブジェクト・コピーごとに十分なスペースが必要です。 BOS オブジェクト・コピーは、オリジナルと同じディスク (複数の場合あり) 上に 置かれます。
  • コピーされる論理ボリュームの総数は、128 を超えることができません。コピーされる論理 ボリュームと共用論理ボリューム総数は、ボリューム・グループの制限数に応じて決まります。

ファイル

項目 説明
/usr/sbin/multibos multibos コマンドが入っています。
/etc/multibos multibos データおよびログが入っています。