mirscan コマンド

目的

不整合状態の物理区画、または入出力操作不能な物理区画を検索 して、修正します。

構文

mirscan -v vgname | -l lvname | -p pvname | -r reverse_pvname [ -a ] [ -o ] [ -q nblks ] [ -c lvcopy ] [ -s strictness ] [ -u upperbound ]

説明

mirscan コマンドでは、指定したデバイス上に割り当てられた各区画を調べます。 その区画が不整合状態か、整合状態かどうかのレポートを作成し、入出力 操作可能かどうかを示すレポートを出力します。 LVM デバイス・ドライバーが照会されて、区画が不整合状態か整合状態かを判別します。 その区画の不整合状態または整合状態に関係なく、区画が読み取 られて入出力操作可能かどうかを判別します。 デフォルトでは、区画の全体が読み取られますが、-q フラグが指定さ れている場合は、nblks 値により、読み取られる区画の数が決められます。 -a フラグが指定されていない場合は、全区画が読み取られた後でレポートが印刷され、実行が終了します。

-a フラグが使用されている場合は、すべての区画が調べられた後で、修正処置が行われます。 不整合区画は同期化されます。ある区画が入出力操作不能の場合、mirscan は、 強制同期操作で不良ブロック再配置またはハードウェア再配置を開始しようとします。 この操作により、入出力操作が実施不能なブロックにデータの正しいコピーを書き込める可能性があります。 それでもなお、その区画が読み取れない場合、mirscan コマンドでは、 そのような区画の新しい場所へマイグレーションしようとします。 デフォルトでは、選択される新しい場所は、区画を含む論理ボリュームに対する 割り振り拘束ポリシーと割り振り上限ポリシーに従うことになります。 -s フラグを使用すると、コマンド・ラインに指定した割り振り拘束値により、 その区画を含む論理ボリュームの元の割り振り拘束値がオーバーライドされます。 同様に、-u フラグを使用すると、コマンド・ラインに指定した割り振り上限値 により、区画を含む論理ボリュームの元の割り振り上限値がオーバーライドされま す。

mirscan コマンドにより、スキャンされた区画の状況レポートが印刷されます (標準出力に向けて)。 -a フラグを指定した場合、mirscan コマンドでは、行われる 各修正処置を含む状況レポートが印刷されます (標準出力に向けて)。 -o フラグを指定した場合は、レポートはコロンで区切られた出力形式となります。 -o フラグを指定していない場合は、デフォルトの動作により、可読形式でレポートが印刷されることになります。

ミラーリングされていない論理ボリューム上の区画は、スキャンされて、すべてのレポートの中に含められますが、そのような区画に対して同期操作またはマイグレーション操作を行うことはできません。 ストライプされた論理ボリューム上の区画は同期化が可能ですが、マイグレーションはできません。 ページング・デバイス上の区画のマイグレーションはできません。この理由は、mirscan プロセスが ページアウトされようとした場合に、このマイグレーションによりシステム停止と いう結果となるからです。 ブート論理ボリューム上の区画はマイグレーションができません。 アクティブな、ファームウェアに支援されたダンプ論理ボリューム上の区画はマイグレーションできません。上記のそれぞれの場合、情報エラー・メッセージが生成されて、修正処置レポートの中に示されます。

デフォルトでは、mirscan コマンドはボリューム・グループ上 でもどのようなロックも行いません。 これにより、mirscan コマンドは他の lvm コマンドと干渉し合うことなく バックグラウンドで実行できます。 -a フラグを指定し、かつ、マイグレーションの必要がある区画が ある場合は、ボリューム・グループがロックされ、マイグレーション操作がすべて実行されて 、そのボリューム・グループのロックが解除されます。 したがって、-a フラグを指定した場合は、マイグレーション操作の間、 ボリューム・グループがロックされるだけであるため、その他の lvm コマンドに 対する影響は最小となります。このマイグレーション操作は、実行終了直前に一回 すべて行われます。

フラグ

項目 説明
-a 修正処置を行う必要があることを指定します。
-c lvcopy 論理ボリュームの特別なコピーを指定します。 -c フラグと一緒に指定できるのは -l フラグだけです。 -c フラグは、-p-r、または -v フラグと共に使用されると、無視されます。
-l lvname スキャンされる論理ボリュームを指定します。
-o コロンで区切られた出力形式をレポートに使用する必要があることを指定します。 このオプションを使用しない場合は、デフォルトの動作により、可読形式でレポートが印刷されることになります。
-p pvname スキャンされる物理ボリュームを指定します。
-q nblks どの部分の区画を読み取る必要があるかを指定します。 nblks 値が 0 の場合は、区画が入出力操作可能かどう かを決めるために、それぞれの区画の最初と中間と最後の 512 バイトだけが読み取られます。 非ゼロ nblks 値は、区画が入出力操作可能かどうかを決めるため に、それぞれの区画の最初の 512 バイトの nblks ブロックのみを読み取る必要があることを示します。 -q フラグを指定しない場合は、区画の全体が読み取られます。
-r reverse_pvname ボリューム・グループ内の区画が pvname 上には存在しないが 、pvname 上にミラー・コピーが存在している場合に、どの区 画のスキャンも必要であることを指定します。 pvname に区画の正しい最新コピーが何らかの形で存在する場合 は、システムから pvname を除去前に、これを実行する可能性がありま す。
-s strictness (y, n, s) 割り振り拘束値を指定します。この値は、元の割り振り拘束値をオーバーライドす ると考えられます。 正しい値は yn、および s です。y により、割り振り拘束 が使用可能となり、n により割り振り拘束は使用不可となり、s により 「拡張割り振り拘束」が使用可能となります。 デフォルトでは、mirscan による区画上のマイグレーション操作が必要 な場合、このコマンドはその区画を含む論理ボリュームの元の割り振り拘束値に 従うことになります。 -s フラグを使用すると、オーバーライドする割り振り拘束値が使用されます。 -s フラグが -p-r、または -v フラグと共に使用された 場合は、オーバーライドする割り振り拘束値が、複数の論理ボリュームの元 の割り振り拘束をオーバーライドします。
-u upperbound 元の割り振り上限値をオーバーライドするための割り振り上限値を指定します。 この上限値は 1 から、ボリューム・グループの中の物理ボリュームの総 数までの間の値とする必要があります。 デフォルトでは、mirscan による区画上のマイグレーション操作が必要とされる ときに、このコマンドはその区画を含む論理ボリュームの元の割り振り上限値に従 うことになります。 -u フラグが使用された場合は、オーバーライドする割り振り上限値が使 用されます。 -u フラグが -p-r、または -v フラグと共に使用 された場合は、オーバーライドする割り振り上限値が、複数の論理ボリュー ムの元の割り振り上限値をオーバーライドします。
-v vgname スキャンされるボリューム・グループを指定します。

終了状況

終了コードの 0 は、mirscan がその実行を終了できたこと 、ならびに実行段階で検出したエラー状態を修正できたことを示します。 終了コードの 1 は、mirscan がその実行を終了できたが、 必ずしも検出したすべてのエラーを修正できたわけではないことを示します。したがって、さらに修正処置が依然として必要です。 例えば、修正処置が必要であるが、-a フラグが無指定だった 場合は、終了コードの 1 が使用されます。 終了コードの 2 は、mirscan がその実行を終了できなかったことを示します。 例えば、ターゲット・デバイスが ODM の中にリストされていない場合は、終了コードの 2 が使用されます。

セキュリティー

RBAC ユーザーおよび Trusted AIX ユーザーへの注意: このコマンドは特権命令を実行できます。 特権命令を実行できるのは特権ユーザーのみです。 権限および特権についての詳細情報は、「セキュリティー」の『特権コマンド・データベース』を参照してください。 このコマンドに関連した特権および権限のリストについては、lssecattr コマンドまたは getcmdattr サブコマンドの項を参照してください。

  1. 以下の入力を行います。それにより、論理ボリューム lv33 をスキャンし、各区画の 状況を報告して、各区画の全ブロックを読み取ってその区画が入出力操作可 能だったかどうかを決めます。
    mirscan -l lv33
  2. 以下の入力を行います。それによって、論理ボリューム lv33 をスキャンし、 各区画の状況を報告して、各区画の最初の 2 つのブロックだけを読み取って区画 が入出力操作可能だったかどうかを決めます。
    mirscan -l lv33 -q 2
  3. 以下の入力を行います。それによって、論理ボリューム lv33 をスキャンし、各区画の状況を報告し、 検出されたすべての不整合区画を同期化させて、入出力操作不能な全区画をマイグ レーションします。
    mirscan -l lv33 -a
  4. 以下の入力を行います。それによって、hdisk4 上の割り当てられたすべての 論理区画をスキャンして、各区画の状況を報告します。
    mirscan -p hdisk4
  5. 以下の入力を行います。それによって、hdisk4 上にあるボリューム ・グループ内に割り当てられたすべての区画を見つけ、hdisk4 上にある区画のミ ラー・コピー (ミラー・コピーの元は hdisk4 上にはない) である全区画の状況をス キャンおよび報告します。
    mirscan -r hdisk4
    これが有用となるのは、hdisk4 をシステムから除去する前に実行する場合です。
  6. 以下の入力を行います。それによって、ボリューム・グループ vg05 をスキャンし、 割り当てられた各区画の状況を報告し、各区画の最初と中間と最後の 512 バイト を読み取ってその区画が入出力操作可能かどうかを決めます。
    mirscan -v vg05 -q 0

制限

ミラーリングが解除された区画およびストライプ済み区画は、マイグレーションには適格でありません。 ミラー・スキャンはページング・デバイス上の区画をマイグレーションしません。その理由は、mirscan プロセスによるページアウト発生時はシステ ムが停止してしまうからです。 ブート論理ボリュームからの区画をマイグレーションすることはできま せん。

場所

/usr/sbin/mirscan

標準出力

レポート内の各行は、物理区画上の操作に対応します。 mirscan によって行うことのできる操作には 4 種類があります。スキャン操作 で判別す ることは、区画が同期化されているかどうか、および区画が入出力操作可能かどう かです。 再同期操作 は、不整合区画上で行われる修正処置であり、この処置 では区画を同期状態に戻す試みがなされます。 強制再同期操作 は、入出力操作不能な区画上で行われる修正処置であり 、この処置は、不良ブロック再配置またはハードウェア再配置を開始させよう とします。 強制再同期操作の終了時は、区画が入出力操作可能かどうかを決めるために、 区画が再度読み取られます。 マイグレーション操作 は、入出力操作不能な区画上で行 われる修正処置であり、これは入出力可能な物理位置にデータを移す試みの中で行 われます。

レポートのデフォルト形式には、以下の列見出しが含まれます。 -o フラグ指定時は、ヘッダーは表示されませんが、出力レポートはコロンで区切られた出力形式で印刷されます。 列およびその意味は次のとおりです。
項目 説明
OP このフィールドに有効な値は srf、および m です。値 s はスキャン操作を意味します。 値 r は再同期操作を意味します。値 f は強制再同期操作を意味しますが、こ の操作は不良ブロック再配置またはハードウェア再配置を開始するために行われます。 値 m は、マイグレーション操作を意味します。
STATUS このフィールドに有効な値は SUCCESS または FAILURE です。スキャン 操作の場合、FAILURE の意味はスキャン対象の区画が不整合状態または入出力不能 であることを示します。再同期操作の場合、FAILURE の意味はその区画 が同期状態でなかったことを示します。 強制再同期操作の場合、FAILURE の意味は、区画が依然として入出力操作 不能であることを示します。 マイグレーション操作の場合、FAILURE の意味は、マイグレーション操作が 完了しなかったことを示します。
PVNAME 操作対象となる区画が存在する物理ボリュームの名前を示します。 マイグレーション操作の場合は、PVNAME はソース物理ボリュームを指し、 TARGETPV は宛先物理ボリュームを指します。
PP 操作対象となる区画の物理区画番号を示します。 特定の物理ボリューム上の先頭区画の PP 値は 1 です。0 ではありません。
SYNC このフィールドに有効な値は synced または stale です。ここで表示された値は、 この操作終了後の区画状態を意味します。 例えば、再同期操作が正常終了した場合は、値の synced が表示されます。
IOFAIL このフィールドの有効値は、yes または no です。示された値は、操作が完了した後の区画の状態を示します。例えば、マイグレーション操作が正常終了した場合は、その区画はもう入出 力操作上の問題がなくなったことを示す値の no が表示されま す。
LVNAME 操作対象となる区画が置かれている論理ボリュームの名前を示します。
LP 操作対象となる区画の論理区画番号を示します。 特定の論理ボリューム上の先頭区画の LP 値は 1 です。 0 ではありません。
CP 操作対象となる区画の論理コピー番号を示します。 論理ボリュームの先頭論理コピーの CP 値は 1 です。 0 ではありません。
TARGETPV マイグレーション操作にターゲットとして使用された物理ボリュームの名前を示します。 マイグレーション操作以外の全操作タイプでは、このフィールドは ブランクのままです。
TARGETPP マイグレーション操作にターゲットとして使用された区画の物理区画番号を示します。 マイグレーション操作以外の全操作タイプでは、このフィールドは ブランクのままです。 特定の物理ボリューム上の先頭区画の TARGETPP 値は 1 です。 0 ではありません。