MPIO デバイス属性

以下の属性は、マルチパス・デバイスによってのみサポートされます。 これらの属性は、SMIT、またはコマンド (特に lsattr および chdev コマンド) を使用して表示または変更することができます。

いくつかのマルチパス入出力 (MPIO) デバイス属性では、属性の並行更新が使用可能になっています。それらの属性値はディスクがオープンされて使用中であるときでも更新でき、新しい値は即時に有効になります。一部の属性、特に reserve_policy 属性では、属性を変更できるタイミングや属性に指定できる新しい値について、制限が存在する場合があります。例えば、あるディスクがオープンされていて、クラスター・リポジトリー・ディスクとして現在使用中である場合、そのディスクに対して予約ポリシーを設定しようとすると、他のクラスター・ノードがリポジトリーへのアクセスを失うことになるため、その試みは AIX® オペレーティング・システムによってブロックされます。

すべての MPIO デバイスがサポートしなければならない必須デバイス属性は、reserve_policy です。 一般に、マルチパス・デバイスは PR_key_value デバイス属性も持っています。 マルチパス・デバイスは、 追加のデバイス固有の属性をもつことができます。 その他のデバイス固有の属性は、次のとおりです。

FC3_REC
デバイスが、ファイバー・チャネルのクラス 3 を使用するエラー・リカバリーをオンにする必要があるかどうかを指定します。この機能を使用可能にすると、ファイバー・チャネルに関連する特定のタイプのファブリック・エラーについて、エラー検出とエラー・リカバリーの効率が向上します。この属性は、限られた一連のデバイスでのみ使用できます。この属性は、以下の値を持つことができます。
true
ファイバー・チャネルのクラス 3 を使用するエラー・リカバリーを使用可能にします。
false
ファイバー・チャネルのクラス 3 を使用するエラー・リカバリーを使用不可にします。
reserve_policy
デバイスのオープン時に予約方式を使用するかどうかを定義します。 この値は次のとおりです。
no_reserve
予約方式をデバイスに適用しません。 デバイスは他のイニシエーターによってアクセスされる可能性があり、 それらのイニシエーターは他のホスト・システム上にある可能性があります。
single_path
SCSI2 予約方式をデバイスに適用します。 これは、 このデバイスが予約方式を発行したイニシエーターによってのみアクセスできることを意味します。 このポリシーにより、 同一ホストまたは他のホスト上の他のイニシエーターはこのデバイスにアクセスできなくなります。 このポリシーでは、SCSI2 予約ポリシーを使用して単一イニシエーター (パス) にデバイスをロックします。 他のいずれかのパスを使用して経路指定されたコマンドは、予約上の矛盾を起こします。

複数のパス間でコマンドを交替させるパス選択アルゴリズムを使用すると、single_path 値を選択したときにスラッシングが生じる可能性があります。 例えば、 デバイス固有の PCM が複数のパスにわたって入出力を分散する値に設定される必須属性をもっているものと想定します。 single_path が有効な場合、ディスク・ドライバーはバス・デバイス・リセット (BDR) を発行してから、前の予約を破棄する次のコマンドを送信するための新規パスを使用して予約を発行する必要があります。 異なるパスが選択されるたびに、BDR の送信およびターゲット・デバイスへの予約の発行というオーバーヘッドが原因で、 スラッシングと、パフォーマンスの低下が生じます。 (AIX PCM は、ユーザーが、スラッシングを引き起こす可能性があるアルゴリズムを選択することは認めません。)

PR_exclusive
デバイスのオープン時に SCSI3 永続予約、排他ホスト方式を適用します。 PR_key_value 属性値は、ホスト・システムごとに固有のものでなければなりません。 PR_key_value 属性を使用して、他のホスト・システムのイニシエーターがデバイスにアクセスできないようにします。
PR_shared
デバイスのオープン時に SCSI3 永続予約、共用ホスト方式を適用します。 PR_key_value 値は、ホスト・システムごとに固有のものでなければなりません。 他のホスト・システムのイニシエーターは、デバイスにアクセスするためには、 登録が必要です。
PR_key_value
これは、デバイスがいずれかの永続予約ポリシー (PR_exclusive または PR_shared) をサポートする場合にのみ必要です。
変更の始めrw_timeout および min_rw_to変更の終わり
変更の始めrw_timeout 属性は、SCSI コマンドがストレージ・デバイスに対して実行されるたびに、そのコマンドの完了までに許可される時間を秒単位で指定します。 MPIO 環境では、コマンドはさまざまなパスで再試行されるために、複数回のタイムアウトが発生する可能性があります。

ファイバー・チャネル対応 AIX 接続ディスクに含まれるディスク ODM では、rw_timeout としてデフォルト値 30 秒が使用されます。 一部のデバイスについては、rw_timeout 属性を 10 秒と低く抑えることが AIX で許可されています。

AIX では、一部の MPIO FC 接続ディスクに、特殊な固有のタイプ disk/fcp/mpioosdisk が使用されます。 この固有のタイプは、rw_timeout 属性の最小許容値に異なる要件を持っている可能性がある、さまざまなストレージ・デバイス・モデルに使用されます。 結果として、このタイプのディスクは、そのディスクの実際の最小タイムアウト値を指定する min_rw_to 属性を持ちます。

例えば、lsattr -Rl hdisk5 -a rw_timeout コマンドは、hdisk5rw_timeout 値 10 秒が許可されることを示しているとします。 ただし、min_rw_to 属性の値が、rw_timeout 属性として異なる、より大きな最小値を指定している可能性があります。 IBM® 以外のベンダーによって提供されたストレージ・デバイスを使用している場合、そのストレージ・ベンダーから ODM パッケージを入手し、インストールしてください。 ストレージ・ベンダーの ODM パッケージでは、rw_timeout 属性として許可される値の範囲が異なる可能性があります。

変更の終わり
変更の始めrw_max_time変更の終わり
変更の始めこの属性は、入出力操作それぞれを完了するまでの、MPIO デバイスが使用する概算の最大時間を秒単位で指定します。 この時間は、入出力要求がディスク・ドライバーに出された時点から、ディスク・ドライバーが入出力要求を呼び出しプロセスに返す時点までの時間です。 ディスクが、Logical Volume Manager (LVM) ミラーリング構成のような冗長構成の一部である場合、この属性を使用できます。 この属性が設定されていると、入出力操作でコマンド・タイムアウトのようなエラーが検出された場合、通常の再試行操作すべてを完了する前に、その入出力操作は失敗する可能性があります。 そのため、この属性にはより迅速な冗長性が用意されています。

この属性がデフォルト値 0 に設定されていると、ディスク・ドライバーおよび Path Control Module (PCM) は、再試行カウンターがしきい値に達するまで、入出力操作を再試行します。 この入出力操作の再試行には、エラーの数とディスクの構成に応じて、数分かかる場合があります。 rw_max_time 属性がゼロ以外の値に設定されている場合、また io_thrshld_tmr 属性を持つファイバー・チャネル・アダプターを使用している場合、最も優れた結果を得るには、io_thrshld_tmr 属性を yes に設定してください。

変更の終わり
変更の始めio_thrshld_tmr変更の終わり
変更の始めio_thrshld_tmr 属性は FC ドライバーのエラー・リカバリーのしきい値タイマーです。 このファイバー・チャネル (FC) 入出力属性は、コマンド・タイムアウト処理に対する FC デバイス・ドライバー制御を強化します。 この属性の有効な値は以下のとおりです。
yes
入出力しきい値属性が有効になります。 この属性を有効にすると、FC デバイス・ドライバーの保留キューにおいて入出力操作をモニターする FC デバイス・ドライバーでしきい値タイマーが開始されます。 rw_timeout の時間 (秒) (SCSI デバイス・ドライバーによって指定されている最大読み取り/書き込みタイムアウト) を超えて入出力操作が保留状態にあると、FC デバイス・ドライバーはその入出力操作を完了して、SCSI デバイス・ドライバーによって要求される必要な状況を出力します。 SCSI デバイス・ドライバーは、その SCSI デバイス・ドライバーが FC デバイス・ドライバーに送信する入出力操作ごとに rw_timeout 属性を制御します。
no
入出力しきい値属性が無効になります。 これはデフォルト値です。
FC SCSI デバイスのエラー・リカバリーを有効にするには、以下のコマンドを入力します。
# chdev -U -l fscsi0 -a io_thrshld_tmr=yes
fscsi0 は FC SCSI デバイス・インスタンスです。
FC SCSI デバイスのエラー・リカバリーを無効にするには、以下のコマンドを入力します。
# chdev -U -l fscsi0 -a io_thrshld_tmr=no
fscsi0 はファイバー・チャネル SCSI デバイス・インスタンスです。

io_thrshld_tmr 属性は並行更新をサポートしています。 つまり、FC SCSI デバイス・インスタンス fscsi0 がオープンしていて使用中の間に属性を更新できます。

変更の終わり