delta コマンド

目的

SCCS ファイルにデルタを作成します。

構文

delta [ -r SID ] [ -s ] [ -n ] [ -g List ] [ -p ] [ -m ModificationRequestList ] [ -y [ Comment ] ] File ...

説明

delta コマンドは、get -e コマンドによって取得されたファイル・バージョンへの変更を、指定したソース・コード制御システム (SCCS) ファイルにインストールします。

delta コマンドは、 指定されたファイル s に対応する g ファイルを読み取って (SCCS が作成し、 使用するファイルについては、 get コマンドのセクションを参照)、 新しいデルタを作成します。g ファイルの行はすべて 512 字以下になります。

File 値にディレクトリーを指定すると、delta コマンドはディレクトリー内にあって、以前編集のためにチェックされたすべての SCCS ファイル (つまり、プレフィックス s. を持つすべてのファイル) に対して、要求されたアクションを実行します。 File 値に - (負符号) を指定すると、delta コマンドは標準入力を読み取って、個々の行を SCCS ファイルの名前として解釈します。 delta コマンドが標準入力を読み取る際には、-y フラグを指定しなければなりません。v ヘッダー・フラグが設定されている場合は、 -m フラグも指定しなければなりません。 delta コマンドは、ファイル終わり文字に達するまで、標準入力を読み取ります。

注: SOH ASCII 文字 (バイナリーの 001) で始まる行は、 ¥ (円記号) を使って、SOH を囲まない限り、SCCS ファイルに入れることはできません。SOH は SCCS にとって特別な意味を持っているので、エラーとなります。

get コマンドが大量のデータを生成しているときは、SCCS ファイルに対して get コマンドを使用した後、続けて同じファイルに delta コマンドを使用することは避けてください。 その代わりに、get コマンドと delta コマンドを交互に使用してください。

delta コマンドは、SCCS ファイルの特定のバージョンについて行われた変更を保存します。 delta コマンドを使用するには、次のようにします。

  1. get -e コマンドを使用して、 編集可能バージョンのファイルを取り込みます。
  2. そのファイルを編集します。
  3. delta コマンドを使用して、 SCCS ファイルの新バージョンを作成します。

delta コマンドは、-y オプションが指定されていないと、コメントの入力を求めるプロンプトを表示します。コメントはその特定のデルタに適用され、SCCS ファイル・ヘッダーに記述されます。 get コマンドを使用してデルタを取り込んだときは、コメントは取得されず、取得したファイルのテキスト内に記述されません。 コメントを使用して、デルタが作成された理由をトラックします。

コメントを見るには、エディターを使用して SCCS ファイルを調べ、cat コマンドで SCCS ファイルを 表示画面に出力するか、 あるいはファイルの選択した部分を prs コマンドを使用して 標準出力に出力します。SCCS ファイルの内容を直接変更してはならないことに注意してください。 デルタ・コメントを変更するには、cdc コマンドを使用します。

注: ファイルに拡張識別キーワードが含まれている場合は、そのファイルに delta コマンドを使用しないでください。読み取り専用ファイル・バージョンは、キーワードをテキスト値に置き換えます。 読み取り専用ファイルに delta コマンドを使用すると、キーワードが失われます。 この状況から回復するには、デルタを除去するか、あるいは再度ファイルを編集して、 識別キーワードを変更してください。

ファイルの編集可能コピーが存在しない限り、SCCS は delta コマンドの使用を許可しません。

キーワードが失われないようにするには、-f フラグを 指定して admin コマンドを使用し、i ヘッダー・フラグを指定します。 このようにすれば、ファイル・バージョンにキーワードがないと、エラーとなります。

フラグ

項目 説明
-g List get コマンドが g ファイルを作成するときに無視する SID (デルタ) のリストを指定します。 このフラグを使用した後は、get コマンドは g ファイルを作成する際に指定されたデルタを無視します。
-m ModificationRequestList SCCS ファイルに v ヘッダー・フラグ・セットが設定されている場合は、 新しいデルタを作成する理由として、変更要求 (MR) 番号を入力しなければなりません。

-m フラグを指定しないで、v ヘッダー・フラグが設定されると、 delta コマンドは標準入力から MR を読み取ります。 標準入力がワークステーションの場合は、 delta コマンドは MR の入力を求めるプロンプトを表示します。 ファイルの終わりに達するまで、delta コマンドは入力を取り込み続けます。 このコマンドは、コメントの前の MR は必ず読み取ります (-y フラグを参照)。 リスト内の MR を区切るのに、ブランク、タブ文字、またはその両方を使用できます。

v ヘッダー・フラグに値がある場合、 それは MR 番号の妥当性を検査するプログラムの名前と解釈されます。 delta コマンドが、MR 検証プログラムから非ゼロ終了値を戻す場合は、 delta コマンドは、MR 番号の一部が無効だったと想定して、 実行を停止します。

-n delta コマンド処理の完了時に通常は除去される g ファイルを保存します。
-p デルタが適用される前後の SCCS ファイルの相違を (diff コマンドのフォーマットで) 標準出力に書き出します。 フォーマットについての説明は、 diff コマンドのセクションを参照してください。
-r SID SCCS ファイルに作成するデルタを指定します。このフラグを使用できるのは、同一人物によって同一の SCCS ファイルについて複数の未処理の get -e コマンドが実行された場合だけです。 SID 値は、get コマンド・ラインで指定された SID か、作成される SID (get コマンドによって報告される) のどちらかです。 指定された SID の識別が一意的にできない場合、あるいは SID を指定されなければならないのに指定されていない場合には、エラーとなります。
-s delta コマンドの正常終了時に、 標準出力に通常書き出される情報を抑止します。
-y[Comment] デルタを作成する理由を記述しているテキストを指定します。 null 文字列は有効な Comment 値と見なされます。 コメント行に特殊文字やブランクが含まれている場合は、 その行を単一引用符または二重引用符で囲まなければなりません。

-y フラグを指定しないと、delta コマンドはブランク行まで、 またはファイルの終わりまで、標準入力からのコメントを読み取ります。

キーボード入力の場合は、delta コマンドはコメントの入力を求めるプロンプトを表示します。 行の最後の文字が ¥ (円記号) の場合は、その行は無視されます。 コメントの長さは、512 文字以内でなければなりません。

終了状況

このコマンドは次の終了値を戻します。

項目 説明
0 正常終了。
>0 エラーが発生しました。

  1. SCCS ファイルに対して行った変更を記録するには、次のように入力します。
    delta s.prog.c

    これによって、SCCS ファイル s.prog.c にデルタが追加され、prog.c を編集して行った変更を記録します。 次に、delta プログラムは、行った変更を要約したコメントを求めてきます。コメントを入力して、次にファイルの終わり文字を入力するか、またはリターン・キーを 2 回押して、コメントの入力が完了したことを示します。

  2. SCCS ファイルについて行った変更を、 簡潔な説明コメントを付けて記録するには、次のように入力します。
    delta -y "This delta contains the payroll function" s.prog.c

ファイル

項目 説明
/usr/bin/delta delta コマンドが入っています。