audit コマンド

目的

システム監査を制御します。

構文

audit { on [ panic | fullpath] | off | query | start | shutdown }{-@ wparname ...}

説明

audit コマンドは、いくつかのキーワードを使用してシステム監査を制御します。コマンドを入力するたびにキーワードを 1 個含める必要があります。start キーワードと shutdown キーワードは、監査システムを始動および停止し、システム構成をリセットします。 off キーワードと on キーワードは、システム構成に影響を与えずに、監査システムを中断し再始動します。 query キーワードを使うと、現在の状況を照会できます。

監査システムは、次の構成ファイル内で設定された命令に従います。

  • /etc/security/audit/config
  • /etc/security/audit/events
  • /etc/security/audit/objects
  • /etc/security/audit/bincmds
  • /etc/security/audit/streamcmds

WPAR で実行する場合、-@ オプションはサポートされません。

キーワード

項目 説明
start 監査サブシステムを始動します。このキーワードは構成ファイル内の命令を読み取って、以下のタスクを実行します。
役割監査
現在システムでアクティブなすべての役割を監査します (それらの役割が /etc/security/audit/config ファイルの役割スタンザに構成されている場合)。
オブジェクト監査
/etc/security/audit/objects ファイル内の監査イベント定義をカーネルに書き込んで、オブジェクト監査イベントを定義します。
注: ファイルシステム・オブジェクトの 1 つの親ディレクトリーが存在しない場合、このフラグは失敗し、ENOENT エラーが発行されます。
イベント監査
/etc/security/audit/config ファイル内の監査クラス定義をカーネルに書き込んで、監査クラスを定義します。
ビン監査
/etc/security/audit/config ファイルの中のビン・スタンザ内の構成情報に従って auditbin デーモンを始動します (始動スタンザに binmode=on が含まれている場合)。
ストリーム監査
/etc/security/audit/config ファイルの中のストリーム・スタンザ内の定義に従って監査ストリーム・コマンドを呼び出します (始動スタンザに streammode=on が含まれている場合)。
注: 標準出力 (stdout) および標準エラー (stderr) のプロセスが、ストリーム監査の呼び出し時にクローズされない限り (つまり、コマンド /usr/sbin/audit start 1>&- 2>&- が実行される場合)、この呼び出しはブート時に、またはリモート・シェル (rsh) から行わないでください。
絶対パス監査
/etc/security/audit/config ファイル内の開始スタンザに fullpath=on が含まれている場合、FILE_OpenFILE_Read、および FILE_Write の監査イベントについてファイルの絶対パス名を取り込みます。
ユーザー監査
現在システムにログインしているすべてのユーザーを監査します (それらのユーザーが /etc/security/audit/config ファイルのユーザー・スタンザにセットアップされている場合)。
監査ログ
/etc/security/audit/config ファイルの中の始動スタンザ内の定義に従って、監査ログ・コンポーネントを使用可能にします。
監査範囲
Trusted AIX® 監査範囲が /etc/security/audit/config ファイルの WPAR 監査範囲 (WAR) スタンザ内に設定されている場合、 それらをカーネルに書き込みます。
グローバルに開始される WPAR 監査
WPAR が /etc/security/audit/config ファイルの WPARS スタンザに格納されている場合、それらを監査します。この監査は、グローバル WPAR から このコマンドの -@ wparname パラメーターを 指定することによってのみ使用できます。
shutdown 監査レコードの収集を終了し、カーネル・テーブルからクラスの定義を除去することによって構成情報をリセットします。 すべての監査レコードが、バックエンド・コマンドに関する指定に従って、カーネル・バッファーからビン・ファイルまたは監査ストリームにフラッシュされます。これらのバックエンド・コマンドは、ビン・モード監査の場合は /etc/security/audit/bincmds ファイルに入っており、ストリーム・モード監査の場合は /etc/security/audit/streamcmds ファイルに入っています。 監査データの収集は、次回 audit start コマンドが実行されるまで停止されます。このキーワードとともに -@ wparname パラメーターを使用すると、指定された WPAR の監査が使用不可になります。
off 監査システムを中断しますが、構成は引き続き有効です。 データ収集は、audit on コマンドが実行されるまで休止されます。-@ オプションは、このキーワードではサポートされません。
on [panic | fullpath] システムが正しく構成されていれば (例えば、最初に audit start コマンドが使用され、構成がまだ有効である場合など)、中断後に監査システムを再始動します。 コマンドを実行したときにすでに監査が開始されている場合は、bin データ収集のみを変更できます。

-@ オプションは、このキーワードではサポートされません。

panic オプションを指定した場合は、bin データ収集が使用可能になっていても bin ファイルに書き込めないと、システムが突然停止します。WPAR で実行した場合、panic オプションはサポートされません。

fullpath オプションを指定した場合、FILE_Open、FILE_Read、および FILE_Write 監査イベントはファイルの絶対パス名を取り込みます。

query 監査サブシステムの監査状況を照会します。-@ オプションを指定すると、このキーワードはグローバルに開始された WPAR の監査状況を照会します。このキーワードは、次のフォーマットで監査サブシステムの現在の状況を表示します。
auditing on {panic | fullpath} | auditing off
  
bin manager off |  is process number pid
 
audit events:
    audit class: audit event, audit event...
audit objects:
    object name: object mode: audit event 

セキュリティー

アクセス制御

このコマンドに対する実行 (x) アクセス権は、root ユーザーと監査グループのメンバーにのみ与えてください。 コマンドは、setuid で root ユーザーに設定され、trusted computing base 属性を持っていなければなりません。

アクセスするファイル

モード ファイル
r /etc/security/audit/config
r /etc/security/audit/objects
x /usr/sbin/auditbin
x /usr/sbin/auditstream

RBAC ユーザーと Trusted AIX ユーザーへの注意: このコマンドは特権命令を実行できます。特権命令を実行できるのは特権ユーザーのみです。 権限および特権の詳細情報については、「セキュリティー」の『特権コマンド・データベース』を参照してください。このコマンドに関連した特権および権限のリストについては、lssecattr コマンドまたは getcmdattr サブコマンドの項を参照してください。

  1. 監査プロセスを始動するには、「セキュリティー」の『監査の設定』のセクションの説明に従って監査システムを構成し、システム初期化ファイル (グローバル環境では /etc/rcWPAR では /etc/rc.bootc) に次の行を追加します。
    
    /usr/sbin/audit start 1>&- 2>&- 
    システムを初期化するたびに、監査プロセスが構成どおりに始動します。
  2. wpar1 という名前の WPAR の監査プロセスをグローバル WPAR から開始するには、以下のコマンドを入力します。
    /usr/sbin/audit start -@ wpar1
  3. 監査プロセスの操作を終了するには、以下のコマンドを入力します。
    /usr/sbin/audit shutdown
    再び audit start コマンドを指定するまで、データ収集は停止したままになります。 オペレーティング・システム・カーネル内のクラスの構成は失われます。
    注: audit shutdown コマンドも、/etc/shutdown ファイル内になければなりません。
  4. wpar1 という名前の WPAR の監査プロセスをグローバル WPAR から終了するには、以下のコマンドを入力します。
    /usr/sbin/audit shutdown -@ wpar1
    もう一度 audit start -@ wpar1 コマンドを指定するまで、データ収集は停止します。 オペレーティング・システム・カーネル内のクラスの構成は失われます。

    注意: audit shutdown コマンドをオプションを指定せずに実行すると、グローバル WPAR から開始されたすべての WPAR の監査プロセスがシャットダウンされます。

  5. 監査サブシステムを中断するには、以下のコマンドを入力します。
    /usr/sbin/audit off
  6. audit off コマンドによって中断された監査プロセスを再開するには、以下のコマンドを実行します。
    /usr/sbin/audit on
    システムが正しく構成されていれば、中断状態が終わり、再び監査レコードが生成されます。
  7. 監査システムの現在の状況を表示するには、以下のコマンドを入力します。
    
    /usr/sbin/audit query
    以下は、audit query 状況メッセージの例です。
    
    auditing on
     
    bin manager is process number 123
     
    audit events:
        authentication- USER_Login, USER_Logout
        administration- USER_Create, GROUP_Create
     
    audit objects:
        /etc/security/passwd :
          r = AUTH_Read
        /etc/security/passwd : 
          w = AUTH_Write 
    この照会は、指定されたユーザーがログインまたはログアウトしたとき、指定された管理者がユーザーまたはグループを作成したとき、およびシステムが /etc/security/passwd ファイルに対する許可された読み取りまたは書き込み命令を受信したときに監査レコードが書き込まれたことをユーザーに通知します。

ファイル

項目 説明
/etc/security/audit/bincmds 監査ビン・データを処理するためのシェル・コマンドが入っています。
/etc/security/audit/config 監査構成情報が入っています。
/etc/security/audit/events 監査イベントとそれぞれの証跡フォーマット仕様のリストが入っています。
/etc/security/audit/objects 各ファイル (オブジェクト) の監査イベントのリストが入っています。
/etc/security/audit/streamcmds auditstream コマンドが入っています。
/etc/rc システム初期化コマンドが入っています。
/usr/sbin/audit audit コマンドのパスが入っています。