オブザーバビリティー(可観測性)とは
オブザーバビリティーは、最新の分散アプリケーションを観察する機能やツールを提供し、迅速かつ自動的に問題を特定して解決します。
企業レベルのオブザーバビリティー実現ガイド オブザーバビリティー活用事例集
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オブザーバビリティー(可観測性)とは

オブザーバビリティー(可観測性)とは、システムから外部に出力されるデータから、複雑化したシステムの内部の状態または状況を理解および把握する能力を指します。「Observe(観察する)」と「ability(能力)」を組み合わせた言葉の通りにシステムを観察する能力を発揮することで、さまざまなパフォーマンス上の問題の根本的な原因の究明が、追加のテストやコーディングを行うことなく迅速かつ正確に把握できます。

オブザーバビリティーは比較的新たなトピックであることから、過剰なバズワードと見なされることがあります。また、アプリケーション・パフォーマンス管理(APM)やネットワーク・パフォーマンス管理(NPM)のリブランディングと誤解される場合もあります。実際のところ、オブザーバビリティーはAPMおよびNPMにおけるデータ収集方法が進化したものであり、迅速化、分散化、ダイナミック化するクラウドネイティブ・アプリケーションの展開に適切に対応します。オブザーバビリティーは監視に取って代わるものではなく、優れた監視と、優れたAPMおよびNPMを実現するものです。

(「オブザーバビリティー」という言葉は制御理論に由来しています。制御理論とは、例えば、システムからのフィードバックに基づいて自動的に実行される「パイプを流れる水流の制御」や「上り坂や下り坂を走行時の車両の制御」のような動的なシステムにおける自動的な調整に関する工学分野の理論のことです。 )

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オブザーバビリティーが必要な理由

過去20年近く、ITチームはアプリケーションの監視とトラブルシューティングを主にAPMに依存してきました。 APMは、アプリケーションのパフォーマンスの問題に関連することで知られている「テレメトリー(アプリケーションとシステムのデータ)」を定期的にサンプリングして集約します。 そして、APMは、重要業績評価指標(KPI)に関連するテレメトリーを分析し、結果をダッシュボードにまとめて、問題を解決または防止するために対処する必要のある異常な状態を運用チームやサポートチームに警告します。

新しいコードが定期的にリリースされ、アプリケーション・コンポーネントとサーバーおよび関連リソースとの間のワークフローと依存関係が、既知であるか追跡が容易になっている場合、APMは、モノリシック・アプリケーションや従来型の分散アプリケーションの監視とトラブルシューティングに十分な効果を発揮します。

しかし、今日、企業や組織は、急速に、現代の開発プラクティス(アジャイル開発、継続的インテグレーション/継続的デプロイメント(CI / CD)、DevOps、複数のプログラミング言語)と、クラウド・ネイティブ技術(例えば、マイクロサービス、Dockerコンテナ、Kubernetesやサーバーレス機能)を採用しています。 その結果、企業や組織は、これまで以上に迅速に、多くのサービスを市場に投入しています。 しかし、その過程で、企業や組織は、新たなアプリケーション・コンポーネントを、非常に頻繁に、多くの場所で、多言語で、(サーバーレス機能の場合)数秒または数分の1秒ごとに展開しているため、APMにおける1分ごとのデータサンプリングでは、テレメトリーとしては十分ではなくなっています。

必要なのは高品質のテレメトリーであり、高品質のテレメトリーがあれば、すべてのアプリケーション利用者のリクエストやトランザクションについて、忠実でコンテキストに富む、完全に相関する記録を作成できます。これこそが、オブザーバビリティーが必要となる理由です。

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オブザーバビリティーの仕組み

オブザーバビリティー・プラットフォームは、アプリケーションとインフラストラクチャーのコンポーネントに組み込まれている既存の計測機器と統合し、これらのコンポーネントに計測機能を追加するツールを提供することで、パフォーマンス・テレメトリーを継続的に検出および収集します。 オブザーバビリティーは、主に4つのテレメトリー・タイプに焦点を当てています。

  • ログ ログは、タイム・スタンプが付与されたアプリケーション・イベントの詳細で完全かつ不変のレコードです。 特に、ログを使用して、忠実度の高い、ミリ秒ごとのすべてのイベントのレコードを作成し、周囲のコンテキストを含めて、開発者が、トラブルシューティングやデバッグの目的で「再生」させられます。

  • メトリック メトリック(時系列メトリックと呼ばれることもあります)は、例えば、アプリケーションが5分間にどれだけのメモリーやCPUを使用したか、使用量が急増している間どれだけの遅延が発生したかなど、特定の期間におけるアプリケーションやシステムの健全性を図る基本的な尺度です。

  • トレース トレースは、UIまたはモバイルアプリから分散アーキテクチャ全体を経由してユーザーに戻るまで、全てのユーザー・リクエストにおけるエンド・ツー・エンドの「ジャーニー」を記録します。

  • 依存関係(依存関係マップとも呼ばれます)は、各アプリケーション・コンポーネントが、他のコンポーネント、アプリケーション、ITリソースにどのように依存しているかを明らかにするものです。

このテレメトリを収集した後、プラットフォームはそれをリアルタイムで関連付けます。そして、DevOpsチーム、サイト信頼性エンジニアリング(SRE)チーム、ITスタッフに、アプリケーションのパフォーマンスの問題を示唆、原因、対処に利用できる可能性があるイベントの内容、場所、理由を網羅したコンテキスト情報を提供します。 

多くのオブザーバビリティー・プラットフォームは、システム内に出現する可能性のあるテレメトリの新しいソース(別のソフトウェア・アプリケーションへの新しいAPI呼び出しなど)を自動的に検出します。 また、標準のAPMソリューションよりもはるかに多くのデータを処理するため、多くのプラットフォームは、ノイズ(問題に関係のないデータ)からシグナル(実際の問題の兆候)をふるいにかけるAIOps(AIを活用したIT運用)機能が搭載されています。

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オブザーバビリティーのメリット

オブザーバビリティーの包括的なメリットは、他のすべての条件が同じであれば、オブザーバビリティーの高いシステムの方がオブザーバビリティーの低いシステムに比べて、一般的にも細部においても理解しやすく、監視しやすく、新しいコードでの更新が容易であり、より安全で修復しやすいことです。 より具体的には、オブザーバビリティーは、企業や組織が以下を行えるようにすることで、より高品質なソフトウェアを、より迅速に提供するというアジャイル/DevOps/SREの目標を直接サポートします。

  • 存在することすら知らない「未知の未知」問題を発見して対処。 監視ツールの最大の欠点は、「既知の未知」(既知の例外的な状況)しか監視できないことです。 オブザーバビリティーは、知られていない状況、または探そうと思わないような状況を発見し、特定のパフォーマンスの問題との関係を追跡します。そして、根本的な原因を特定するための文脈を提供して、解決を迅速化します。
  • 開発の初期の段階で問題を見つけて解決。 オブザーバビリティーにより、ソフトウェア開発プロセスの初期段階に監視機能を組み込むことができます。 DevOpsチームは、新しいコードが、顧客体験やSLAに影響を与える前に、新しいコードの問題を特定して修正できます。
  • オブザーバビリティーを自動的にスケーリング。 例えば、Kubernetesクラスター構成の一部として、計測機能とデータ集約を指定し、起動した瞬間から終了するまで、テレメトリーの収集を開始できます。
  • 自動修復と自己修復アプリケーション・インフラストラクチャーを有効化。 オブザーバビリティーとAIOps機械学習および自動化機能を組み合わせて、システム出力に基づいて問題を予測し、管理者の介入なしに問題を解決できます。
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