可観測性(オブザーバビリティー)とは、外部出力の情報のみに基づいて、複雑なシステムの内部状態を理解できる程度を指します。システムの可観測性が高いほど、パフォーマンスの問題を確認したときに、追加のテストやコーディングを行わなくても、その根本原因までより迅速かつ正確にたどり着くことができます。
可観測性により、最新の分散アプリケーションに対する詳細な可視性が提供され、問題の特定と解決がより迅速に自動化されます。
ITおよびクラウド・コンピューティングにおいては、可観測性にはソフトウェア・ツールの使用とプラクティスの実施が含まれます。これらのツールは、分散アプリケーションとそれが実行されているハードウェアおよびネットワークから絶え間なく流れるパフォーマンス・データを集約、関連付け、分析するためのものです。このプロセスは、アプリケーションとネットワークを効果的にモニタリング、トラブルシューティング、及びデバッグするのに役立ちます。目標は、顧客体験の期待に応え、サービス・レベル・アグリーメント(SLA)、およびその他のビジネス要件を満たすことです。
可観測性は、比較的新しいITトピックであり、大げさなバズワード、またはシステム監視、アプリケーション・パフォーマンス監視(APM)、ネットワーク・パフォーマンス管理(NPM)の「リブランディング(新たな名称)」として誤解されることがよくあります。実際、可観測性は、APMやNPMのデータ収集手法の自然な進化であり、高速化・分散化され、よりダイナミックになりつつあるクラウド・ネイティブ・アプリケーションの展開に、よりよく対応するためものです。可観測性はモニタリングに取って代わるものではなく、モニタリングの改善、APMとNPMの改善を可能にするものです。
「可観測性」という用語は、ダイナミックなシステムの自動制御に関連する工学分野の制御理論に由来しています。例えばシステムからのフィードバックに基づき、パイプを通る水の流れを調整したり、上り坂や下り坂で自動車の速度を制御したりすることなどが含まれます。
この電子ブックは、可観測性にまつわる俗説を覆し、今日のダイナミックなデジタル世界において不可欠なその役割を紹介します。
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過去20年ほどにわたり、ITチームは主にAPMに依存してアプリケーションの監視とトラブルシューティングを行ってきました。APMは、アプリケーション・パフォーマンスの問題に関連することが知られている、テレメトリーと呼ばれるアプリケーションとシステムのデータを定期的にサンプリングし、集約します。
APMは、KPIに関連するテレメトリーを分析し、結果をダッシュボードにまとめます。これらの調査結果は、問題を解決または防止するために対処する必要がある異常な状態について、オペレーションおよびサポートチームに通知されます。
APMは、モノリシック・アプリケーションまたは従来の分散アプリケーションの監視とトラブルシューティングには十分に効果的です。これらの構成では、新しいコードが定期的にリリースされ、アプリケーション・コンポーネント、サーバー、関連リソース間のワークフローと依存関係はよく知られているか、簡単に追跡できます。
今日、組織は最新の開発プラクティスを急速に採用しています。これら最新プラクティスには、アジャイル開発、継続的インテグレーションと継続的デプロイメント(CI/CD)、DevOps、複数のプログラミング言語が含まれます。
組織では、マイクロサービス、Dockerコンテナ、Kubernetes、サーバーレス機能などのクラウドネイティブ・テクノロジーも採用されています。その結果、これまでよりも早く、より多くのサービスを市場に投入することができるようになっています。しかしその過程で、新しいアプリケーション・コンポーネントがデプロイされます。サーバーレス機能では、場所、言語、時間(数秒またはコンマ何秒の単位)を問わずこれが行われています。APMの1分に1回のデータ・サンプリングでは追いついていません。
そこで今必要とされるのは、すべてのアプリケーション・ユーザーのリクエストやトランザクションについて、忠実度が高く、コンテキストが豊富で、完全に関連付けられた記録を作成するために使用できる、より高品質のテレメトリー、それも格段に多くのテレメトリーです。そこで可観測性が重要になってきます。
オブザーバビリティー・プラットフォームは、アプリケーションやインフラストラクチャー・コンポーネントに組み込まれている既存のインストルメンテーションと統合し、これらのコンポーネントにインストルメンテーションを追加するツールを提供することで、パフォーマンスのテレメトリーを継続的に検出して収集します。可観測性は、次の4つの主要なテレメトリー・タイプに焦点を当てています。
このテレメトリーを収集した後、プラットフォームがリアルタイムで関連付けます。このプロセスにより、DevOpsチーム、サイト信頼性エンジニアリング(SRE)チーム、ITスタッフに完全なコンテキスト情報が提供されます。チームは、つまり、アプリケーションのパフォーマンスの問題を示す、原因となる、または対処するために使用される可能性のあるイベントの内容、場所、理由などを把握できます。
多くのオブザーバビリティー・プラットフォームは、システム内で発生する可能性のあるテレメトリーの新しいソース(別のソフトウェア・アプリケーションへの新しいAPI呼び出しなど)を自動的に検出します。このプラットフォームは、標準のAPMソリューションよりも多くのデータを処理します。多くのプラットフォームには、実際の問題の兆候である信号をノイズ(問題とは無関係なデータ)からふるいにかけるAIOps (オペレーションのための人工知能)機能が含まれています。
可観測性により、システムは、可観測性の低いシステムよりも(一般的かつ詳細に)理解して監視しやすくなり、新しいコードでの更新がより簡単かつ安全になり、修復が容易になります。具体的には、可観測性は、組織が次をできるようにすることで、高品質のソフトウェアをより迅速に提供するというアジャイル/DevOps/SRE の目標を直接サポートします。
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