HPCとはハイパフォーマンス・コンピューティングの概要

HPCとは

HPCテクノロジーは、強力なプロセッサーのクラスターを使用して並行処理し、大量のマルチディメンション・データセット（ビッグ・データ）を処理して、超高速で複雑な問題を解決します。 HPCシステムは、通常、デスクトップ、ノートPC、サーバー・システムの最速の商品よりも数百万倍も高速で実行されます。

何十年もの間、HPCシステムのパラダイムは、何百万ものプロセッサーまたはプロセッサー・コアが取り入れられたスーパーコンピューターでした。スーパーコンピューターはまだ私たちと共にあります。この記事を書いている時点で、最速のスーパーコンピューターは米国を拠点とするFrontier （ ibm.comへのリンク）で、処理速度は1.102エクサフロップス、または1秒当たりの浮動小数点演算数（FLOPS）はクィンティリオンである。しかし今日、ますます多くの組織が、オンプレミス、またはクラウド上でホストされている高速コンピューター・サーバーのクラスター上でHPCソリューションを実行しています。

HPCのワークロードは、人間の知識を進歩させ、大きな競争上の優位性を生み出す重要な新しい洞察を引き出します。例えば、HPCは、DNA配列、株式取引の自動化、人工知能（AI）のアルゴリズムとシミュレーション（自動運転車を使用可能にしているものなど）の実行に使われており、IoTセンサー、レーダー、GPSシステムからのテラバイトのストリーミング・データをリアルタイムで分析し、瞬時に判断を下します。

HPCの仕組み

標準コンピューター・システムは、主にシリアル・コンピューティングを使用して問題を解決します。これは、ワークロードを一連のタスクに分割し、同じプロセッサー上でタスクを順次実行します。

これに対し、HPCは、以下を活用します。

超並列コンピューティング。並列コンピューティングは、複数のコンピューター・サーバーまたはプロセッサーで複数のタスクを同時に実行します。超並列コンピューティングは、数万から数百万のプロセッサーまたはプロセッサー・コアを使用する並列コンピューティングです。
コンピューター・クラスター（HPC Clusterとも呼ばれる）。 HPCクラスターは、ネットワーク化された複数の高速コンピューター・サーバーで構成され、並列コンピューティング・ワークロードを管理する一元化されたスケジューラーを備えています。ノードと呼ばれるコンピューターでは、高性能なマルチコアCPUが使用されるか、あるいは今日ではGPU（グラフィカル・プロセッシング・ユニット）が使用されることも増えています。GPUは、厳密な数学計算、機械学習モデル、グラフィックスを多用するタスクに適しています。単一のHPCクラスターに100,000以上のノードを含めることもできます。
ハイパフォーマンス・コンポーネント：HPCクラスター内のその他すべてのコンピューティング・リソース（ネットワーキング、メモリー、ストレージ、ファイル・システム）は、高速、高スループット、低遅延のコンポーネントであり、ノードに遅れることなく、クラスターのコンピューティング能力とパフォーマンスを最適化できます。

HPCとクラウド・コンピューティング

10 年前までは，スーパーコンピューターの所有やリース、オンプレミス・データセンターでのHPCクラスターの構築とホスティングなど、HPCの高いコストが、ほとんどの組織にとってHPCを手の届かないものにしていました。

今日、クラウド上のHPC（サービスとしてのHPC、またはHPCaaSと呼ばれることもあります）により、企業は、はるかに高速、スケーラブル、かつ手頃な方法でHPCを利用できるようなりました。通常、HPCaaSには、クラウド・サービス・プロバイダーのデータセンターでホストされるHPCクラスターとインフラストラクチャーへのアクセスに加えて、エコシステム機能（AIやデータ分析など）とHPCの専門家の助言が含まれます。

今日のクラウドで提供されるHPCの推進力は、次の3つのトレンドに集約されます。

急増する需要。 あらゆる業界の組織が、HPCアプリケーションでなければ解決できない複雑な問題を解決することで得られるリアルタイムの洞察と競争上の優位性への依存度を高めています。例えば、クレジット・カードの不正検知は、ほぼすべての人が信頼し、ほとんどの人が一度は経験したことがあるものですが、不正行為が拡大し、不正行為者の手口が絶えず変化している中において、不正を素早く特定し、迷惑な誤検知を減らすために、さらにHPCへの依存度は高まっています。
低遅延かつ高スループットのRDMAネットワーキングの普及。 RDMA（リモート直接メモリー・アクセス）を使用すると、ネットワークに接続されたコンピューターから別のネットワークに接続されたコンピューターのメモリーにアクセスできます。この際に、いずれかのコンピューターのオペレーティング・システムに影響を与えたり、いずれかのコンピューターの処理を中断させたりすることはありません。これにより、遅延を最小限に抑え、スループットを最大化できます。 Infiniband、仮想インターフェース・アーキテクチャー、RDMA over Converged Ethernet（RoCE）などの新しい高性能RDMAファブリックは、本質的にクラウド・ベースのHPCを可能にしています。
幅広く利用可能なパブリッククラウドおよびプライベートクラウドのHPCaaS。 今日では、すべての主要なパブリッククラウド・サービス・プロバイダーがHPCサービスを提供しています。また、規制の厳しい、あるいは機密性の高いHPCワークロードについては引き続きオンプレミスで実行している組織もありますが、多くの組織はハードウェア・ベンダーやソリューション・ベンダーが提供するプライベートクラウドのHPCソリューションを採用するか、またはそのようなソリューションに移行しています。

HPCのユースケース

HPCアプリケーションは、一般的にはAIアプリケーション、特に機械学習やディープ・ラーニング・アプリケーションと同義語になっており、今日では、ほとんどのHPCシステムはこれらのワークロードを念頭に置いて作成されています。これらのHPCアプリケーションは、以下の分野で継続的なイノベーションを推進しています。

医療、ゲノミクス、ライフサイエンス。 ヒトゲノムの配列を決定する最初の試みには13年かかりましたが、今日のHPCシステムでは、この作業を完了するのに1日もかかりません。医療およびライフサイエンスにおけるその他のHPCアプリケーションには、創薬と薬物設計、迅速ながん診断、分子モデリングなどがあります。

金融サービス。 HPCは、自動取引と不正検知（前述）に加えて、モンテカルロ・シミュレーションやその他のリスク分析手法のアプリケーションを強化します。

政府と防衛。 この分野で増加しているHPCの2つのユースケースは、気象予報と気候モデリングです。どちらも、膨大な量の過去の気象データと、気候関連データポイントにおける日々の変化を処理します。その他の政府および防衛のアプリケーションには、エネルギー研究や諜報活動などがあります。

エネルギー。 政府や防衛と重複する場合もありますが、エネルギー関連のHPCアプリケーションには、地震データ処理、貯水池のシミュレーションとモデリング、地理空間分析、風力シミュレーション、地形マッピングなどがあります。