データ・ライフサイクル管理(DLM)とは、データ入力からデータ破棄まで、データのライフサイクル全体でデータを管理する方法です。データはさまざまな基準に基づいてフェーズに分けられ、さまざまなタスクを完了したり、特定の要件を満たしたりすると、これらのステージを移動します。
データ・ライフサイクル管理のプロセスを適切に行うことで、企業データを構造化、組織化できます。データ・セキュリティーやデータの可用性など、プロセス内での重要な目標を達成できます。
このような目標は事業の成功には不可欠であり、時間が経つにつれ重要性が増していきます。DLMのポリシーとプロセスにより、企業はデータ侵害、データ損失、またはシステム障害が発生した場合の壊滅的な結果に備えることができます。
優れたDLM戦略では、特にデータの急速な増加に伴いより多くの悪意のある攻撃者が市場に参入しているため、データ保護と災害復旧を優先しています。このようにして、災害発生時に効果的なデータ復旧計画が既に策定されており、ブランドの収益と全体的な評判への壊滅的な影響を軽減できます。
情報ライフサイクル管理(ILM)は、データ・ライフサイクル管理と同じ意味で使用されることが多く、データ管理手法の一部でもありますが、DLMとは別のものです。
データ・ライフサイクル管理では、ファイル・レベルのデータを監視します。つまり、タイプ、サイズ、保存期間に基づいてファイルを管理します。一方、ILMではファイル内の個々のデータを管理し、データの正確性とタイムリーな更新を保証します。これには、Eメールアドレスや口座残高などのユーザー情報が含まれます。
この電子書籍にアクセスしてみましょう。今日のリーダーが、より迅速かつ正確なデータ駆動型の意思決定を推進するためにMLOpsを採用している理由をご覧ください。
AIガバナンスに関するホワイト・ペーパーに登録する
データ・ライフサイクルは、耐用年数に沿った一連のフェーズで構成されます。ライフサイクルの各フェーズは、データの価値を最大化できるようにポリシーに基づいて管理されます。データ・ライフサイクル管理は、業務の作業ストリームに含まれるデータ量が増えるにつれ、重要度を増していきます。
フェーズ1: データ作成
新しいデータ・ライフサイクルはデータ収集から始まりますが、データ・ソースはありあまるほどあります。Webアプリケーションやモバイル・アプリケーション、モノのインターネット(IoT)デバイス、フォーム、調査など、多岐に渡ります。データはさまざまな方法で生成できますが、ビジネスを成功させる上で利用できるすべてのデータを収集する必要はありません。新しいデータを組み込む際は、データの品質と業務との関連性に基づいて常に評価する必要があります。
フェーズ2:データ・ストレージ
データは構造化の方法が異なる場合もあり、こうした違いは企業が使用するデータ・ストレージのタイプに影響を及ぼします。構造化データはリレーショナル・データベースを利用する傾向がありますが、非構造化データは通常NoSQLまたは非リレーショナル・データベースを利用します。データ・セットのストレージの種類が特定されると、インフラストラクチャーにセキュリティーの脆弱性がないかを評価でき、データはデータ暗号化やデータ変換などのさまざまな種類のデータ処理を受けて、悪意のある攻撃者からビジネスを保護できます。また、このタイプのデータ変更により、機密データがGDPRなどの政府のポリシーに関するプライバシー要件や政府要件を確実に満たすようになるため、企業はこうした類の規制により多額の罰金を科せられてしまうことを回避できます。
データ保護のもう1つの側面は、データの冗長性に重点を置くことです。保存されたデータのコピーは、データ削除やデータ破損などの状況が発生した際にバックアップとして機能し、偶発的なデータの変更やマルウェア攻撃などの意図的な変更からデータを保護できます。
フェーズ3: データの共有と使用
このフェーズで、ビジネス・ユーザーがデータを使用できるようになります。DLMでは、データを使用できるユーザーと使用目的を組織が定義できます。使用可能になったデータは、基本的な探索的データ分析やデータの可視化から、より高度なデータ・マイニングや機械学習技術まで、さまざまな分析に活用できます。これらの手法はすべて、ビジネス上の意思決定や、さまざまな利害関係者とのコミュニケーションにおいて役割を果たします。
また、データの使用は必ずしも社内使用に限定されません。例えば、外部のサービス・プロバイダーがマーケティング分析や広告などの目的でデータを使用できます。社内での使用には、ダッシュボードやプレゼンテーションなど、日々のビジネス・プロセスやワークフローが含まれます。
フェーズ4:データのアーカイブ
一定期間が経過したデータは日常業務の役に立たなくなります。しかし、訴訟の可能性や調査の必要性を考えて、頻繁にアクセスしない組織のデータのコピーを保持しておくことは重要です。その場合、アーカイブしておいたデータを必要に応じてアクティブな運用環境に復元できます。
組織のDLM戦略では、データをアーカイブするタイミング、場所、期間を明確に定義する必要があります。この段階で、データは冗長性を確保するアーカイブ・プロセスの対象となります。
フェーズ5:データの削除
ライフサイクルのこの最終段階では、データを記録から消去し、安全に破棄します。企業は、不要になったデータを削除することで、アクティブなデータのためのストレージ容量を増やします。このフェーズでは、必要な保存期間を超えたデータや、組織にとって意味のある目的を満たさなくなったデータを、アーカイブから削除します。
データ・ライフサイクル管理には次のような重要なメリットがあります。
•プロセスの改善:組織の戦略的イニシアチブを推進するうえでデータは重要な役割を果たします。DLMは、データ・ライフサイクル全体を通じたデータ品質の維持を支援し、プロセスの改善と効率化を実現します。優れたDLM戦略を取り入れることで、ユーザーが使用できるデータの正確性と信頼性が確保され、企業がデータの価値を最大化できます。
•コストの管理:DLMのプロセスでは、ライフサイクルの各段階でデータの価値を把握します。本番環境で使用しなくなったデータは、組織がさまざまなソリューションを活用して、データのバックアップ、複製、アーカイブなどのコストを削減できます。例えば、オンプレミスやクラウド、ネットワーク接続ストレージを利用した低コストのストレージに移行できます。
•データの使いやすさ:ITチームはDLM戦略のもとで、すべてのメタデータに一貫したタグ付けを確実に行うためのポリシーと手順を策定できるため、必要なときのアクセスが容易になります。強制力のあるガバナンス・ポリシーを確立し、データの保持が必要な期間全体にわたってデータの価値を確保できます。クリーンで有用なデータを使用できることから、企業のプロセスの俊敏性と効率性が向上します。
•コンプライアンスとガバナンス:データ保持に関するルールや規制は業界セクターごとにそれぞれ定められており、企業は堅牢なDLM戦略を取り入れることでコンプライアンス維持を強化できます。DLMを導入した組織は、データ処理の効率性やセキュリティーの向上とあわせて、個人データや組織の記録に関するデータ・プライバシー法のコンプライアンスを維持できます。
IBMのシニア・セキュリティー・アーキテクトやコンサルタントを交え、サイバーセキュリティーを巡る自社の現状を理解し、取り組みの優先度付けを決定することをテーマに、3時間の無料デザイン思考セッションをオンライン形式または対面形式で実施します。
この電子書籍では、ハイブリッド環境のためのデータ統合とライフサイクル管理戦略を構築して遂行する方法を学びます。
この電子書籍では、Information Lifecycle Governanceのさまざまなソリューションについて学びます。
State Bank of India社がいくつかのIBMソリューションとIBM Garage方法論を使用して包括的なオンライン・バンキング・プラットフォームをどのように開発したかを学びましょう。
ビジネスの優位性を高めるデータ戦略を設けて、実施するための戦略的手法を検討します。
IBMの調査は、IBM Cloud Pak for Dataの新機能に定期的に統合されます。