お客様のイノベーションを変革するための新しいビジネス・モデル

お客様とニューカラー人材からの大きな関心

「スタートアップ・コミュニティーを目指していた私たちでしたが、Garageの概念が、パブリッククラウドとクラウドネイティブを理解しようとしている大企業にとっても非常に魅力的なものであることに気が付きました。」とRobinsonは述べています。「間もなくして、MetLife社が参加し、銀行が参加しました。誰もがこのサンフランシスコの西海岸で流行しているものを味わってみたいと思っていました。彼らは、Garageのことを、イノベーションを自社に呼び戻すための手段と見なしていました。Garageは、クラウドとパブリッククラウドに参入した、言わば「新しいIBM」を披露する絶好の展示場ともなりました。

「スタートアップ・コミュニティーに参入するというあの決断は、大企業顧客に対して、私たちが予想していたよりも大きな影響を与えました。」と、Garage CTOでIBMフェローでもあり、スタートアップの世界も経験したことがあるRachel Reinitzは同意しています。「お客様は困惑した様子で周囲を見回して"これがIBM?"と言っていました。」

「私たちとワークショップを行うために最初に来てくれたお客様は、カナダのManulife社でした。」と彼女は言っています。「そのプロジェクトは9月20日に開始する予定でした。私たちは週末に新しいスペースにまさに引っ越しをして、月曜日に開始しました。Manulife社は、開発者1人と製品責任者1人をサンフランシスコにフルタイムで5週間派遣しました。設計者も数回訪れました。」

Manulife社のプロジェクトは、労働者に経済的健全性に取り組ませる方法を見つけるために設計されたものでした。「彼らは、ゲーム化されたこの素晴らしいアプリを設計しました。」とReinitzは述べながら、そのアプリが長年使用されてきたことにも触れました。

潜在顧客は、Garageモデルを刺激的だと考えた企業だけではありませんでした。

「Garageを設立したことで、IBMの採用する力も本当に変わりました。」とReinitzは述べています。「私たちは"新しいIBM"という看板を背負っていました。当社が目指す企業文化、つまり、より協力的で、よりカジュアルな企業であるということを私たちは体現していたのです。Garageは、IBMが初めてニューカラーのスタッフを採用した場所の1つとなりました。

「私は女性の技術指導者として多様性を重視しています。革新的であるためには、多様性のあるチームが必要です。そうしたチームには、多様性のあるスキルや視点が必要です。多様性は、当初から私たちが焦点を当ててきたものでした。」

2019年にオーストラリアのメルボルンに新設されたGarageスペースの運用開始の一環として行われたMVPデザイン思考セッション

Garageメソドロジー

「当初から、Garageは、業界の一連のベスト・プラクティスを新しい方法で集約するための場所でした。」とReinitzは述べています。

彼女は、成功を収めているスタートアップでよく使用されている多様なアプローチとメソドロジーに由来する手法を組み合わせて、IBM Garageメソドロジーの重要な要素としました。それらの重要な要素とは、デザイン思考、リーン・スタートアップ、そしてdevOpsを取り入れたエクストリーム・プログラミング(アジャイル・メソドロジー)です。

「まず第一に、人々に関心を持ってもらえるもの、使用してもらえるもの、真のイノベーションをもたらしてくれるものを構築できるようにしようと私たちは考えていました。そこでデザイン思考を適用することにしました。そして次に、アイデアを実証すると同時に実際にビジネス価値を提供するものを最短で実現する方法を考えました。それがリーンの要素です。そして、ビジネス、開発、運用を日常的に連携させながら、高品質かつ高速で構築する方法を検討しました。そのために、アジャイルのエクストリーム・プログラミングの要素をdevOpsと組み合わせることにしました。」

これが現実世界でどのように機能するかを説明する例として、Reinitzはこう述べています。「例えば、ティーンエイジャーをターゲットにした新しいショッピング・アプリのための素晴らしいアイデアをあなたが思い付いたとしましょう。従来のアプローチであれば、その素晴らしいアイデアをあなたが私のところへ持ってきて、私がアプリを作っていたことでしょう。しかしこれは非常に危険です。あなたも私もティーンエイジャーではないからです。では、彼らが本当に欲しいものを知るにはどうすればよいでしょうか。そこで、プロセスの一部として、開発しながら実際にティーンエイジャーにアプリを試してもらいます。素晴らしい機能が揃っているだけでは十分ではありません。利用されなければならないのです。本当に人々の関心を引く機能がなければなりません。」

「そこで次の部分、リーンである(無駄がない)ことが重要な部分が始まります。構築できる実用最小限の製品(MVP:Minimal Viable Product)を考え出し、パイロット生産を開始し、検証しようとしているものに必要な品質のレベルにまで引き上げます。そして、ティーンエイジャーのところへ行き、インタビューをしてプロトタイプを見せます。意図した全体的なソリューションのうち、価格比較に焦点を当てた断片のみを彼らに提供して、実際に使用してもらえるのかどうかを調べることもできます。本当に気にしているのは価格だと言ってはいても、実際に欲しいのは、容姿に基づいて服を買う支援をしてくれるアプリだということが判明するかもしれません。」

開発プロセスにお客様を組み込むという判断をしたことも、この新しいビジネス・モデルを作成するための重要な要素になりました。

「Garageプロジェクトのためのチームを立ち上げるときには、お客様が、構築するものについての意思決定を行う製品責任者を投入する必要があります。」とReinitzは述べています。「権限を持った製品責任者であることが重要です。製品責任者は、一連の仕様を開発者に伝えるだけではなく、チームの一員として開発者たちと協力しながら、何を構築すべきかを開発者たちに指示します。スポンサーも、毎週、その週に構築したものについて振り返る作業を通して定期的に関与します。」

2016年のサンフランシスコのGarageで開催されたスタンドアップ・ミーティング。このような日常的な会合でチーム・メンバーが進行状況について話し合い、問題に対処する。

アプリはつまりピザ

2015年後半、IBMは革新的な追加の一歩としてGarageメソドロジーを公開しました。「できる限り多くの人に対象を広げることが目標でした。」とRobinsonは述べています。

彼は、このアプローチを、お店でクッキング・セミナーを開催してから、自宅でレシピを試したい人のために料理本を出版するレストランのアプローチに例えました。

「Garageはレストランです。料理長と一緒に本格的な料理を実際に体験したいのなら、Garageの1つに足を運んで私たちの仲間と一緒に作業してみてください。そして、実際に私たちと手を取り合って学習し、言わば素晴らしい食事を体験するわけです。」

「このメソドロジーも料理本になったようなものです。つまり、皆さんに公開するので、自分で家で試してみたいという人はどうぞお試しくださいということです。人によって少し違うレシピになるかもしれませんが、重要な概念はすべてもれなく記載されています。」

「要するに、私たちが目指しているのは皆さんの成功を実現することです。」とReinitzは付け加えました。「それなら、私たちのアプローチを共有すればよい。そうですよね。」

Garageのチームメンバー14人の写真撮影のショット

IBM ThinkコンファレンスのGarageのお客様イベントで「フォト・ブース」に集まったゲスト

お客様のニーズの変化に対応するための変革

すべてを変える小さなアイデア

「サンフランシスコの1つのGarage拠点から始まったこのアイデアが、IBM Bluemixの支えになりました。」とRobinsonは述べています。「次の数年間で、このアイデアは世界各地へと広がり、IBMパブリッククラウドのすべてを支えるものとなり、さらにはハイブリッドクラウドも包含するように焦点を広げてきました。」

「そこから、エンタープライズ・クラウドの導入の実現に向けてお客様を支援するために設計された、充実したメソドロジーへと発展し、さらにその後、IBMのグローバル・ビジネス・サービスと統合され、IBMがお客様と手を取り合ってイノベーションを行うための方法がさらに拡張されました。」

「2021年の初め、プリセールスGarageの発表により、Garageはさらに境界を超えました。そして今、私たちは、主要顧客と協働するためのGarageを準備している最中です。また、プリセールス・プロジェクトとポストセールス・プロジェクトの両方を包含するためにスケールアウトする中で、Garageモデルに十分なスタッフを投入するべく採用も強化しています。」

「小さなアイデアを、会社を変革できるほどの重要なアイデアに育てる方法を人々はいつも尋ねていますが、Garageはその方法を示す素晴らしい例です。」

「Garageは、コロナ禍のお客様に本当に共鳴した働き方です。」とVavangasは付け加えています。「これによって、テスト、学習、イテレーションの作業を迅速化できます。パンデミックの世界では、投資対効果を得られる領域を推測するのではなく把握することが、かつてないほど重要になっています。それにより、そうした投資のリスクをなくし、意思決定を加速します。」

「新しいテクノロジーを試す方法から、変革を加速する方法へと変わっています。さまざまなテクノロジーを試して学習し、最大の価値をもたらすもの、最大の価値を迅速にもたらすものを見つけ出し、そのテクノロジー、ソリューション、製品、またはサービスを拡張する速度を最大化することが重要です。」

「サービスの観点から見ると、Garageは、お客様が私たちを経験する主要な手段になりつつあります。」と彼女は続けています。「最初は"製品の問題"と呼ぶものから始まっていた場所ですが、今や、お客様が何らかのものを構築したい、あるいは何らかのテクノロジーをテストしたいと思ったら、すぐに実行に移せる場所となりました。その多くは成果の課題に関するものになりました。"この地域で事業を10%成長させたいが、顧客体験が良くないので達成できない"、あるいは"事業の30%をグローバル展開したいが、バックオフィスの処理が対応できないので達成できない"といった課題です。

私たちは、このような問題に対処できる新しいテクノロジーについて検討すると同時に、お客様の戦略的ビジョンの策定に役立つ組織変化についても検討します。」

デジタル・リインベンションの強化に役立つものとして、IBM Garageは、あらゆる規模の組織から選ばれています。ほんの数例を挙げただけでも、Audi社、Frito-Lay社、CEMEX社、Kraft Heinz Company社、ノバスコシア州政府などがあります。Delta Airlines社は、ハイブリッドクラウド環境への移行、既存アプリケーションのモダン化、新しいソリューションの共同制作などを含む「フルコース」の変革のためにGarageを利用しました。これとは対照的に、Raise Green社とIBM Garageのコラボレーションでは、共同太陽エネルギー事業を開始できるように起業家を支援する取り組みを行っています。

「Garageは変革のアクセラレーターです。」とVavangasは述べています。「そこには、より速く進むことを必要としてないお客様や幹部は存在しません。」

2020年のGalvanizeコミュニティーにてサンフランシスコのGarageスペースで行われたチーム・ミーティング