ネット・プロモーター・スコア(NPS)とは

人の横顔、木の葉、雲のイラスト。

 

公開日:2024年8月28日
寄稿者:Keith O'Brien、Amanda Downie

ネット・プロモーター・スコア(NPS)とは

ネット・プロモーター・スコア(NPS)とは、顧客体験を測定する指標であり、組織が顧客のロイヤルティや、自社の製品や顧客対応に対する満足度をよりよく理解するのに役立ちます。良好なNPSスコアは、多くの場合、ビジネス・インテリジェンスを優先し、人々が望む製品やサービスを提供し、優れたカスタマー・サービスを提供する健全な組織であることを示します。

ある企業の製品やサービスを大いに気に入っている顧客であっても、パッシブの顧客であり続ける人がいるのは事実です。顧客を熱中させることができない企業は、スケールメリットを達成するのに苦労します。顧客が企業の製品やサービスに本当に満足しているか、あるいは全体的な顧客体験管理に満足しているかを企業が理解する上で、顧客からのフィードバックは優れた情報源となります。

企業は、NPS調査を頻繁に実施し、ベンチマークを確立し、顧客体験の変化がスコアを向上させているかどうかを把握すべきです。

NPSが重要である理由

組織は、それが顧客満足度の優れた判断要素であると確信しています。これは、組織のオーディエンスの中で誰が忠実な顧客であるかを追跡するだけでなく、肯定的な口コミを通じて組織の拡大を支援してくれている人々も追跡します。

スコアが低いということは、デトラクターが多すぎることを意味し、さらに多くの顧客にビジネスを拡大することが妨げられる可能性があります。また、組織の製品を推奨しない一部の人々が他の人々に製品を購入しないように話す可能性があるとして、否定的な口コミの予想割合を追跡することもできます。

NPSの歴史

Fred Reichheld氏、ソフトウェア・プロバイダーのSatmetrix社、ビジネス・コンサルタント会社のBain and Companyによって開発されたNPSは、タッチポイントを経験したユーザーに対して、その会社を他の人に勧める可能性を尋ねます。これは、有名な2003年のハーバード・ビジネス・レビューの記事「The One Metric You Need to Grow」で紹介され、それ以来、カスタマー・リレーションシップを理解するための重要なツールとなってきました1

それは、Enterprise Car Rentals社の元CEOであるAndy Taylor氏がオーディエンスとお客様事例を共有したことから始まりました。同氏が話すには、顧客に2つの質問を尋ねることで顧客ロイヤルティーを測定したそうです。それらの質問は、顧客は体験の質をどのレベルにランク付けするか、およびその会社のサービスを再び利用したいかどうかという質問でした。

Reichheld氏は、そのシンプルさを基に、製品やサービスをソーシャル・グループに推奨するかどうかを尋ねるNPSを作成しました。Bain & Company社は、NPSをネット・プロモーター・システムへと進化させ、それを使って企業が顧客体験のあらゆる側面で顧客により良いサービスを提供できるよう支援しています。

NPSの計算方法

NPSの方法論は簡単です。組織は、NPS調査で、その企業の製品やサービスを推薦する可能性がどの程度あるかを顧客にランク付けしてもらいます。回答者は、段階的回答(たいていは10段階評価)を使用して回答します。

回答が異なれば、意味も異なります。企業は、スコアを9または10とした顧客はプロモーターとみなし、7または8の顧客はたいていの場合パッシブ、6以下はデトラクターとみなします。

NPSの計算式では、「プロモーター」(9および10)の数から低スコア(6以下)の数を差し引き、最終得点をパーセンテージに変換します。このパーセンテージの範囲は、-100(すべて6以下)から+100(すべて9と10)までとなります。優良なパフォーマーは、平均80以上のNPSスコアを獲得します。

優れたNPSは、多くの場合、その会社に対して強い好意を持つ顧客ベースがあることを示しています。企業はNPSテンプレートを使用することも、独自のテンプレートを作成することもできます。企業によっては、顧客がどの製品機能を好ましく思っているかをさらに深く掘り下げるために、いくつかの自由回答形式の質問を含めています。この種の調査の質問例としては、そのNPSスコアを選択した理由や、そのスコアを向上させるために企業として何ができるかを尋ねることなどがあります。

NPSのベンチマーキング

業界ごとにベースラインNPSスコアはやや異なるため、業界標準に照らしてベンチマークすることが重要です。2024年のRetently調査2では、業界間でNPS平均に有意差があることがわかりました。例えば、保険会社の平均NPSは80ですが、クラウドとホスティングの提供会社の平均NPSは39です。この平均値を下回る企業は、顧客のニーズと期待により良く応えるために、顧客体験の向上に注力する必要があります。

NPS、CSAT、CESの比較

NPSは、企業が顧客体験を測定するために使用するメトリクスの1つです。

顧客満足度スコア(CSAT)では、調査で「満足」(4)または「非常に満足」(5)と回答した回答者の割合が算出されます。

カスタマー・エフォート・スコア(CES)は、企業とのやり取りに関連して、顧客が目標を達成することの難易度を示します。目標の例としては、購入や、問題の解決などがあります。ほとんどのCES調査では、アクションを完了するまでの難易度を1(簡単)~5または7(難しい)段階で評価するように顧客に求めています。

3つのスコアはすべて、企業に対する一般的な顧客の満足度を測定するのに役立ちますが、それぞれの役割は異なります。CESは特定の行動に焦点を当てているため、企業に対する個人の総合的な満足度をそれほど表していない場合があります。CSATは、顧客の満足度を把握するには役立ちますが、その個人が自身のネットワークに会社の製品を推奨する可能性があるかを判断することはできません。

NPS回答の収集方法

 

    多くの質問が設定されていなくても、顧客に調査に回答してもらうことは難しい場合があります。企業はカスタマー・ジャーニー中にいつでもNPS調査を実施できますが、多くの企業はトランザクションNPS調査を送信することを選択しています。それは顧客の購入後に実施される調査です。回答率を向上させる可能性のあるその他の選択肢には、次のものがあります。

    • Eメール調査
    • オンサイト・ポップアップ
    • SMSとテキスト・メッセージ
    • ポストコール調査
    • 対面式調査

    Eメール調査

     

    理想的なアプローチは、購入後やカスタマー・ケアの解決後にすぐに顧客にEメールを送り、フィードバックをもらうことです。

    オンサイト・ポップアップ

     

    企業のWebサイトにログインしている顧客にリーチすることは、NPSスコアへの回答を求める最適な方法です。ポップアップは回答をすばやく記録でき、顧客はWebサイトの閲覧を続けることができます。

    SMSとテキスト・メッセージ

     

    企業はメッセージを顧客の携帯電話に送信することができます。そのNPSの質問には外出先でも答えることができます。

    ポストコール調査

     

    カスタマー・ケア担当者は、顧客の問題を解決した後に、電話相手の顧客に電話を切らずにおいてポストコール調査に回答するように依頼できます。

    対面式調査

     

    小売業者は、ブースを設置することや、支払いレジの列に並んでいる人々に「今後さらに良いサービスを提供するための調査にご協力いただけませんか」と尋ねることができます。

    NPSを向上させる方法

    企業がNPSの結果を改善する方法はいくつかあります。

    • オムニチャネル・マーケティングとサポートの改善
    • カスタマー・ケアの改善
    • より優れた顧客体験の提供
    • パッシブ層への注力
    • 根本原因分析の実施

    オムニチャネル・マーケティングとサポートの改善

     

    企業は、Webサイト、モバイル・デバイス、ソーシャル・メディアなどの複数のタッチポイントとチャネルにわたって顧客にリーチする必要があります。ツールを使用してこれらのエクスペリエンスを追跡および標準化することは、顧客満足度を維持するための優れた方法です。

    カスタマー・ケアの改善

     

    企業が適切なカスタマー・サポートを提供しなければ、素晴らしい製品を製造して販売してもあまり意味がありません。カスタマー・ケアのエクスペリエンスの質が低いと、NPSフィードバックに悪影響を与える可能性があります。したがって、企業は顧客の問題を迅速に解決することに重点を置く必要があります。顧客に追加の質問や問題があるかどうかを確認するためのフォローアップができます。顧客体験全体に焦点を当てることで、NPSが向上する可能性が高くなります。

    より優れた顧客体験の提供

     

    例えば、企業はApdexスコアによって、組織のWebアプリケーションやサービスの応答時間に関するユーザーの満足度を追跡できます。顧客が企業のWebサイト上の重要な情報にアクセスできなかったりアプリが動作しなかったりすると、NPSスコアに影響が及びます。Webサイトもアプリもその企業が設計した実製品でなくてもそのようになってしまいます。

    パッシブ層への注力

     

    企業がデトラクターをプロモーターに変えたいと望むのは当然のことですが、それには多くの労力がかかる可能性があります。また、一部のデトラクターは絶対にパッシブやプロモーターにならないという可能性もあります。企業はデトラクターではなくパッシブ層で勝ちを収めることに集中できます。それらのパッシブである顧客はやがてプロモーターになります。これにより、デトラクターの数は変わらなくても、全体的なNPSは向上します。

    根本原因分析の実施

     

    NPSの結果が低いということは、顧客体験がうまくいっていないか、製品やサービスが顧客のニーズに合っていないということを意味している可能性が高いです。

    NPSのメリット

    組織がNPSデータを使用する主な理由には、次のようなものがあります。

    • ビジネス成長の理解
    • 解約率の低減
    • 新規顧客の獲得
    • 顧客体験の向上

    ビジネス成長の理解

     

    NPSが高い組織は、単に顧客維持率が高いだけではありません。そのような組織ではそのビジネスが、既存の多くの顧客によって効果的に紹介されています。

    解約率の低減

     

    この調査では、「その組織から製品やサービスをまた購入したいか」といった具体的な質問はしませんが、満足していない顧客が非常に多かったり顧客を失うリスクがあったりしないかを組織が特定するのに役立ちます。NPSが低い場合は、企業に顧客離れが増加するリスクがあることを示している可能性があります。

    新規顧客の獲得

     

    概念的には、NPSが高いということは、既存の顧客が市場でその企業の製品やサービスにどれだけ満足しているかを共有していることを意味します。それにより、友人や同僚から聞いたメリットを体験したいと考える新たな見込み客が生まれる可能性があります。

    顧客体験の向上

     

    NPSベンチマークを確立し、NPSデータを継続的に分析することで、企業は既存の顧客体験をより良く理解することができます。NPSが低い企業は、顧客とのコミュニケーション方法やサービス提供方法を再検討し、改善すべき点を特定することが必要である可能性があります。

    NPSの課題

    質問が特異であることを考えると、それはストーリー全体を伝えるものではありません。企業には、その製品やサービスについて他人に共有するつもりがなくても満足している多くの顧客がいる可能性もあります。顧客が満足していないような印象を受けることがあるとしても、それは正確ではありません。

    組織が自由回答形式によるさらに多くのフォローアップの質問をしない限り、実用的な洞察が得られないという可能性もあります。さらに、フォローアップの質問をする企業にとって、そのすべての情報を分析するのは難しい場合があります。多くの企業が感情分析に目を向けていますが、過去それは俗語や婉曲表現の理解に苦労してきました。ありがたいことに、人工知能(AI)で強化された感情分析は、発言の全容をよりインテリジェントに理解し、それが肯定的か否定的かを判断できます。

    最後に、企業は、NPS調査に回答してもらうために、顧客に複数のリクエストを送信することが必要な場合があります。その結果、会社の積極的な調査戦略を好ましく思っていない回答者からの否定的なスコアのほうに一層の影響を与える可能性があります。そのため、企業はいつ、どの媒体で多くの回答が行われているのかを調査し、そのチャネルに高い優先順位を付ける必要があります。

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    脚注

    1 The One Number You Need to Grow、HBR、2003年12月。

    2 What is a Good Net Promoter Score?、Retently、2024年3月29日。