リーン・ポートフォリオ管理(LPM)とは

2025年2月24日

執筆者

Gita Jackson

Staff Writer

IBM Apptio team

リーン・ポートフォリオ管理(LPM)とは

リーン・ポートフォリオ管理(LPM)とは、リーン思考とシステム思考のアプローチを戦略と投資資金調達、アジャイル・ポートフォリオ運用とガバナンスに適用することで、戦略と実行を整合させる管理アプローチです。

LPMは、利害関係者や顧客が製品やアプリケーションの開発の取り組みを優先付けし、最大のビジネス価値をもたらすソリューションに集中するために役立ちます。

従来のタスクとリソース主導の製品開発アプローチとは異なり、リーン・アプローチでは成果の検証に重点を置いています。これは、製品の最も価値のあるコンポーネントを提供することが、より効率的かつ効果的であるという哲学に基づいています。製品全体をより早く提供するために、より多くの人員を仕事に投入すると、リスクとコストが高くなることがよくあります。

LPMは、組織がビジネスにおいて俊敏性を実現できるよう支援することを目的としたリーン・エンタープライズ管理アプローチの中核的な要素であり、その目標は、組織の戦略、投資資金調達、ガバナンス、アジャイルなポートフォリオ運用者を連携させ、より大きな価値を引き出すことです。

LPMにより、企業は次のことが可能になります。

  • 価値の高い重要な活動を特定し、それを優先させる
  • ROIの高い業務を、迅速かつ支障を最小限に抑えて実行する
  • 投資活動が企業の目標に確実に沿うようにする
  • 各スプリントの最後に作業を効率的に検証する

LPMが重要な理由

組織のポートフォリオ管理プラクティスに対するリーン・アジャイルアプローチは、現代における市場の急速な変化と混乱に対応するにあたって、従来の製品ポートフォリオ・アプローチよりも適しています。リーン・アジャイル・システムは、以下の核となる原則を遵守することで、顧客のニーズにより適切に対応できます。

  • 価値を重視する
  • 段階的に提供する
  • 意思決定を分散化する
  • アジャイル化を進める
  • 客観的な結果を活用する
  • 再評価と改善を行う

価値を重視する:従来のプロジェクト・ポートフォリオ管理では、期限に間に合わせることを重視する傾向がありましたが、LPMでは、それよりも顧客に価値を提供することをビジネス・プロセスの全体的な焦点とします。LPMでは、企業全体にとって「価値」の意味を定義するよう求めています。これにより、顧客や利害関係者が必要とするものを、プロジェクトが正確に提供できるようにするためです。

段階的に提供する:他のスケーリングされたアジャイル・フレームワーク(SAFe)のコンピテンシーと同様、LPMは段階的な提供を行います。プロジェクトを細かく分割することで、従来のポートフォリオ管理よりも迅速に完了、提供できます。こうして資金調達と開発のサイクルが短縮されることで、リスクが軽減され、顧客のフィードバックをより頻繁に導入できるようになり、チーム(およびプロジェクト)の柔軟性が高まります。

意思決定を分散化する:ビジネス目標の達成方法についてチームがより自律的になることで、生産性が高まり、創造的な問題解決が促進されます。また、ボトルネックを排除し、バックログを短縮するためにも役立ちます。

アジャイル化を進める:短いスプリントに取り組み、個人およびチームの自律性を促進することで、チームはよりアジャイルになり、ポートフォリオの目標、戦略、バックログを継続的に再評価して優先順位を付け直せるようになります。

客観的な結果を活用する: リーンの原則では、単にメトリクスを達成するのではなく、望ましい結果(価値の提供やバリュー・ストリームの改善)の達成を重視します。このアプローチにより、チームはより有用な主要業績評価指標(KPI)を特定し、戦略的目標を顧客価値を最大化する成果とより適切に整合させることができます。

再評価と改善を行う:従来のポートフォリオ管理では、ロードマップやビジネス目標は時間の経過とともに市場のニーズとずれてしまう可能性があります。LPMでは、顧客や利害関係者からのインプットをもとに目標を定期的に再調整することに重点を置いています。こうしたフィードバック・ループが、資金調達方針とプロセスの脱線を防ぎ、戦略目標をより的確に達成できるようになります。

コンピューターのキーボードに置かれた手、画面にテキストが重ね合わせて表示されている

リーン・ポートフォリオ管理(LPM)ツール導入時に陥りがちな5つの落とし穴

LPMの成功には、適切な補助ツールを選択することが極めて重要です。このホワイト・ペーパーを読み、LPMツールを適用する際に避けるべき5つの誤りについて確認しましょう。

リーン・ポートフォリオ管理の仕組み

リーン・ポートフォリオ管理では、企業が製品のポートフォリオを管理し、最も価値の高い投資提案を特定して優先順位を付け、それらの提案に資金を投入します。LPMではフィードバック・ループも作成されるため、ポートフォリオ・プロダクト・マネージャーは、リソースを効率的に配分して製品やソリューションをより迅速に提供できるようになります。

LPMが適切に実行されれば、、イノベーションと継続的な改善を重視する環境が構築されます。これは、事業計画、資金調達プロセス、事業戦略が企業の望む事業成果と一致している場合に実現されます。

LPMの主な機能は次のとおりです。

  • 価値の高い重要な活動を特定し、それを優先させる能力
  • ROIの高い業務を、迅速かつ支障を最小限に抑えて実行する
  • 投資活動が企業の目標に確実に沿うようにする
  • 各スプリントの締めくくりにおいて、作業を効率的に検証する

リーン・ポートフォリオ管理の要素

多くの組織は、アジャイル・トランスフォーメーション後に成功を収めることに苦労しています。これは、組織全体でチームの連携を維持することができていないためです。リーン・ポートフォリオ管理のさまざまな側面に焦点を当てることは、組織がリーン・アジャイルの原則に沿った状態を維持するために役立ちます。

戦略と投資資金調達

戦略と投資資金調達によって、ポートフォリオの整合性が保たれ、ビジネス価値とROIに従って優先順位が付けられ、企業が顧客の必要とするソリューションを開発・維持できるようになります。戦略と投資資金調達の役割は、投資資金を最も価値のあるプロジェクトに振り向け、組織が最も重要な事業目標を達成できるようにすることです。

戦略と投資資金調達により、チームは変化する市場の需要や機会に応じて継続的に調整を行い、計画を立てることができます。まずは成果ベースの目標と戦略的テーマを設定し、それをポートフォリオごとに再評価しましょう。これを目標と主要な成果(OKR)でさらに洗練させることで、企業が何に投資すべきかを明確化できます。

アジャイル・ポートフォリオ運用

アジャイル・ポートフォリオ運用は、分散化されたプログラムの実行を組織化し、運用の成功を支援、実現します。アジャイル・ポートフォリオ運用の役割には、次のようなものがあります。

  • ソリューション間の連携を確保することによりバリュー・ストリームを調整する

  • 主要な利害関係者が新しい働き方を採用することでプログラムの実行を支援する

  • 慣行、効率、成果の改善によりオペレーショナル・エクセレンスを推進する

カンバン・ボードなどのアジャイル・ツールは、ポートフォリオ管理者がライフサイクル全体にわたる特定のポートフォリオの成果を視覚化するために役立ちます。

リーン・ガバナンス

リーン・ガバナンスは、企業の測定、支出、コンプライアンス、監査、費用の予測を扱うものです。経営者、アジャイル・ワーカー、エンタープライズ・アーキテクトは、次のような役割に積極的に関与する必要があります。

  • すべてのソリューションについて、過去と将来の潜在的なコストを把握した上で行う、動的な予算編成と予測

  • 各ポートフォリオに対して、戦略の実行を促進するための最小限のメトリクスを作成し、合意された枠組みが支出と整合していること、そして成果が継続的に向上していることを確認する

リーン予算編成と計画

リーン予算編成は、プロジェクトベースのコストを削減し、スループットを向上させ、部門横断型のチームの生産性を向上させるための、費用対効果の高いLPMアプローチです。

リーン予算編成では、顧客にとって最も重要なバリュー・ストリーム(製品、システム、サービスなど)を定義し、企業のプロジェクトやタスクよりもバリュー・ストリームを優先します。これにより、チームは顧客からのフィードバックに基づいて柔軟に計画を変更し、会社とその全体的な目標に貢献する新しいアイデアを練ることができます。これにより、成果が出ていない取り組みに資金を費やすことを防ぎ、バリュー・ストリームを最適化できます。

SAFeとリーン・ポートフォリオ管理

Scaled Agile Framework(SAFe)とは、組織がエンタープライズ規模でアジャイル・モデルを実装できるように設計された、組織およびワークフローの原則、プラクティス、およびコンピテンシーに関する知識ベースです。これは本質的には、組織全体でアジャイル・チームを連携させるためのモデルです。

SAFeは、リーン、アジャイル、DevOps、システム思考といった方法論を単一のスケーラブルなモデルに統合しています。SAFeは、ビジネスの俊敏性に関する7つのコア・コンピテンシーを中心に構成されています。その7つとは、リーンアジャイル・リーダーシップ、チームと技術的俊敏性、アジャイルな製品提供、エンタープライズ・ソリューションの提供、リーン・ポートフォリオ管理、組織の俊敏性、継続的な学習文化です。

LPMは、ポートフォリオ・マネージャーが投資や大きな組織的戦略を、ポートフォリオおよびポートフォリオ戦略とより適切に整合させるために役立ちます。これを適切に行うことで、ポートフォリオのバリュー・フローを最適化できます。

SAFeリーン・ポートフォリオ管理を使用することにより、組織は以下のような効果を期待できます。

  • アジャイル環境にいる全員が、従来的なヒエラルキーではなく、バリューを中心に組織されるネットワーク構造となる。

  • 財務上のバリュー・フローを通じて取り込まれた変化により、さらに継続性のあるチームが生まれ、学習レベルと提供スピードが向上。

  • 硬直的な年次計画・予算策定手法ではなく、ネットワーク内のチームが歩調を合わせ、段階的に計画・予算策定・意思決定を行う。

  • 組織にとって最も価値のあるプロジェクトへの集中と資金調達のために、無駄のないビジネス・ケースが活用される。

  • 顧客からのフィードバックを集めながら、成果物を段階期に提供するとともに、フィードバックを次のプロジェクトの決定に活用する。

  • 最高の顧客価値を生み出すように設計された、柔軟かつ価値主導型の計画を策定する。

リーン・ポートフォリオ管理のメリット

ポートフォリオ管理と、戦略および投資との連携が強化されることで、組織は次のようなメリットを実現できます。

戦略的整合性:とりわけ重要なのは、LPMは、プロジェクトが企業のストラテジーと目標に沿うために役立つということです。こうした整合性により、チームと組織は顧客に最大の価値をもたらす取り組みに集中できます。

俊敏性の向上:リーン・ポートフォリオ管理が依拠するアジャイルの実践には、短いスプリント、フィードバック・ループ、定期的なレビューといったプロセスが組み込まれており、チームは市場環境や顧客ニーズの変化にすばやく対応し、柔軟に方向転換することが可能になります。

市場投入までの時間短縮:投資と戦略との整合性が高まり、最も価値のあるソリューションの提供に重点を置くことで、組織は無駄な労力を削減し、最も重要な製品をより早く市場に投入できるようになります。

継続的な改善:LPMは、顧客からのフィードバックとメトリクス分析、および目標と戦略を達成するために行う定期的な評価により、反復的なスプリントと改善を行うことで、継続的な改善を推進します。

ボトルネックの減少と無駄の削減:リーン・アジャイルの原則により、ポートフォリオ・マネージャーは依存関係と介入を減らしつつ、作業をより細かく制御できます。これにより自律性がもたらされ、問題に対する創造的な解決策を見つけられるようになり、解決プロセスにおけるボトルネックが解消されます。

さらに、組織のリソース割り当てやプロジェクトの強調点を精査することにより、価値を生まないプロジェクトへの支出をなくせるようになります。

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リーン・ポートフォリオ管理(LPM)ツール導入時に陥りがちな5つの落とし穴

LPMの成功には、適切な補助ツールを選択することが極めて重要です。このホワイト・ペーパーを読み、LPMツールを適用する際に避けるべき5つの誤りについて確認しましょう。

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