リーン予算編成とは、プロジェクトではなくバリュー・ストリームに資金を投入する、費用対効果の高いリーン・ポートフォリオ管理のアプローチです。価値の提供を加速し、間接費などのコストを削減することを目的としています。
このコンセプトにより、スループットが増加し、部門横断的なチームの生産性も向上します。このアプローチは、柔軟で反復的な性質がリーンおよびアジャイルの実践に適しているため、アジャイル手法を採用している組織でよく用いられています。
リーン予算編成では、プロジェクトよりもバリュー・ストリームを優先します。バリュー・ストリームとは、顧客にとって価値のあるソリューションを提供するための手順のことです。ソリューションとは、顧客に提供される製品、システム、またはサービスのことです。
各企業は、それぞれの考えに基づいてバリュー・ストリームを定義します。顧客に特定の価値を提供するチームをバリュー・ストリームと捉える企業もあれば、顧客に価値を提供するための、企業全体にわたるエンドツーエンドのソリューションと捉える企業もあります。
リーン予算編成は、イノベーションと改善を促進します。チームは、自社の成長につながる新たなアイデアを提案したり、有益なフィードバックを提供したりできるようになります。収集した情報やデータに基づいて計画を変更、調整できるため、組織はより効率的な支出ができるようになります。
従来の予算編成では、経営陣が今年度の支出に基づいて来年度の予算を策定します。このアプローチは多くの企業で一般的に使用されていますが、有害でずさんな予算編成となる場合があります。
従来型の予算編成プロセスは、市場や組織の変化に柔軟に対応できません。また、競合に遅れずについていくために必要となるイノベーションや変化に対して、資金面で制約を課してしまうこともあります。
次に、リーン予算編成について見ていきましょう。このコンセプトは、企業が業務運営に活用しているリーン管理と同様であり、それを予算編成に応用したものです。
リーン予算編成では、どこに予算を配分するかを判断するために、プロジェクトやシステムを評価します。ビジネスの成長とイノベーションを促進しながら、成功のための持続可能な財務体制を構築することを目的としています。
このような予算アプローチには、多くのメリットがあります。まず、バリュー・ストリームに焦点を当てることで、企業は長期的なインパクトを達成しやすくなります。将来的に利益が出るか不確かなプロジェクトに資金を投入するのではなく、すでに収益性が実証されているバリュー・ストリームに注力するためです。
リーン・アジャイル型予算アプローチを採用している企業が実感しているその他のメリットには、以下のようなものがあります。
こうしたアプローチでは、経営陣がポートフォリオについて自主的に決定できます。また、チームがより長期的に共同作業できるようになり、士気や協業体制の向上にもつながります。
リーン・アジャイル・チームは、長期的かつ自立した体制で構成されており、担当するバリュー・ストリームに関する意思決定を自ら行います。
リーン予算編成への移行には、大きな手間はかかりません。ほとんどの変化は、意思決定者のマインドセットが変化することによりもたらされます。変化には困難が伴い、不安を感じることもあります。そのため、全員の賛同を得ることが課題となるでしょう。
リーン予算編成へ移行する際の主な手順は、以下のとおりです。
リーン・アジャイル・アプローチでは、継続的なデリバリーと改善が鍵となります。チームは常にパフォーマンスや市場環境を評価しながら、バリュー・ストリームの運用方法を見直し、改善を重ねていきます。
リーン予算編成におけるガードレールとは、特定のポートフォリオに対して設定されるプロセス、ガイドライン、および方針のことです。最適なビジネス成果を実現するには、リーン・ポートフォリオ管理における予算編成のアプローチを理解することが重要です。利害関係者と意思決定者は協力してガードレールを決定する必要があります。
このガードレールは、バリュー・ストリームに予算を配分する際の方針や、予算編成時に取るべき手順についての指針を提供します。
リーン・アプローチでは、チームが自分たちの行っていることを継続的に評価し、それが引き続き機能しているか確認することが重要です。アプローチの修正や適応は日常的に行われるため、企業の意思決定者や利害関係者も評価プロセスを決定する必要があります。
予算のガードレールを設定したら、バリュー・ストリームごとに予算を設定できます。予算額には、バリュー・ストリームをサポートするために必要な人員とリソースを含める必要があります。リーン予算編成では、従来型の予算編成より短期間の予算を設定します。
バリュー・ストリームに予算を充てる場合は、今後数カ月のみに焦点を当てるか、四半期ごとに実行します。あらかじめ定めた期間ごとに各バリュー・ストリームとその予算の効果を評価することで、資金が価値のあるタスクに継続的に使われるようにします。
経営陣は、組織全体の目標を明確に定義する必要があります。各バリュー・ストリームはその目標を理解し、それに応じて自らの目標を整合させる必要があります。ポートフォリオごとに異なる目標がある場合もありますが、それ自体は問題ありません。
組織内の各チームが、組織全体がどのように形成され、何に向かって取り組んでいるのかを理解しているのなら、それで良いのです。