デジタル・エクスペリエンス監視(DEM)は、アプリケーション・パフォーマンス監視(APM)とエンドユーザー・エクスペリエンス監視を組み合わせ、デジタル・アプリケーションとデジタル・サービスのパフォーマンスを分析するパフォーマンス分析手法です。
DEM(デジタル・エクスペリエンス管理とも呼ばれる)の目的は、モバイルおよびWebアプリケーション、API、Webサイト、その他のエンドポイントのパフォーマンスと、それらを使用するユーザーのエクスペリエンスを理解することです。この情報を使用することで、組織はサービスとアプリケーションのパフォーマンスをどのように最適化するか決定できます。
より多くの組織がデジタル・トランスフォーメーションに取り組み、デジタル・ビジネスやビジネス・コンポーネントを開始するにつれて、デジタル・アプリケーションやデジタル・サービスのユーザー(およびユーザー・デバイス)の数は増加しています。その結果、IT環境は複雑さを増し、エンドツーエンドの可視化が一層困難になっています。調査会社のMcKinsey社は2021年、IT監視は118億ドル規模の産業であると報告しました。
DEMソリューションは、そのほとんどがサービスとしてのソフトウェア(SaaS)ツールであり、組織にいくつかの重要なメリットをもたらしています。DEMダッシュボードを使用することで、サイト信頼性エンジニアなどのDevOpsプロフェッショナルは、ユーザー・エクスペリエンスを観察し、インシデントをより大きな問題と関連付け、パフォーマンス・ベンチマークを設定して評価できるようになります。DEMはカスタマー・リレーションシップ管理と従業員エクスペリエンス管理の双方に使用できるツールです。
アプリケーションの機能とネットワーク・パフォーマンスをリアルタイムで監視する機能は、優れた顧客体験を提供するために不可欠です。このようなユーザー・エクスペリエンスは、ポジティブなビジネス成果につながります。
DEMは、アプリケーション・パフォーマンス監視(APM)のコア・コンポーネントです。ダウンタイムや遅延、そしてその他のサービス品質の低下に影響を与える要因に対する現代の顧客の要求を考慮すると、APMは重要性が高まっている分野です。
DEMは、バックエンドとデータセンターからユーザーデバイスにいたるまで、エンドツーエンドのプロセス全体を評価します。エンド・ユーザー・エクスペリエンス監視(EUEM)は、それ自体はエンド・ユーザーに対する影響のみに焦点を当てており、DEMの構成要素です。
DEMが重要なITサービス機能である理由は3つあります。
エンド・ユーザーがソリューションをどのように体験しているかを理解することは、ソリューションのパフォーマンスを測定する最良の方法です。
ITサービスの複雑さが増すということは、あるインシデントが組織の他の部分にさらなる影響を与える可能性があることを意味します。インシデントがさらなる問題を引き起こす大きな問題に発展する前に特定することが最善です。
DEMツールは、ユーザーが組織のWebサービスとどのようなやり取りするかを評価し、やりとりのステップが多すぎたり、要求される情報が多すぎるたりするなど、やり取りの当事者が顧客になるのを妨げる要因がないかを確認します。
IT運用チームは、アプリケーションのパフォーマンスを最大限に高めるために、いくつかの主要なDEMツールと手法を組み込んだ包括的なDEM戦略を作成します。DEMツールは、システム出力に基づいてシステムの現在の状態を理解するオブザーバビリティーの向上に役立ちます。
エンド・ユーザー・モニタリング(EUM)とも呼ばれるリアルユーザー監視は、リアルタイムのブラウザーのリクエスト時間、ルートの読み込み時間、またはモバイル・アプリの読み込み時間を分析することで、本番のWebサイトとアプリのアクティビティーを検査します。ユーザー固有の行動を考慮し、現実的なパフォーマンス・データを提供することで、DevOpsチームは問題に対処し、修復を実施し、アプリケーションを最適化できます。
この手法では、スクリプトを通じてユーザーのアクションをシミュレートし、結果を監視することで、応答時間の遅延、セキュリティーの問題、ログインの問題などの実行可能な洞察を特定します。外形監視は、アプリケーションの機能を理解するために、カスタマー・ジャーニー全体にわたるアプリケーションの追跡に使用される強力なツールです。STMはAPIテスト・スクリプトを作成して、エラー、応答時間の遅延、機能の欠落の可能。
STMプログラムを使用してインシデントをプロアクティブに検出することで、DevOpsチームは、本番サイトにおいてインシデントがより大きな問題になる前に対処することができます。組織は、STMを連続的な間隔で実行するように設定することができる。
ほとんどのDEMプロバイダーは、RUMとSTMのデータを1つのダッシュボードにまとめることで、ITOpsチームとDevOpsチームがユーザー・エクスペリエンスに関する問題をできるだけ迅速に解決できるようにしています。
DEMツールは、デジタル・エクスペリエンス全体に関する洞察を提供します。これらは、First Contentful PaintとLargest Contentful Paint(LCP)を含む、ページ読み込み時間の問題に関するデータポイントを生成します。問題にはリンク切れやサーバー停止などのエラーや遅延や帯域幅容量などのネットワーク・パフォーマンスが含まれます。
このテクノロジーは、根本原因の特定、インシデントの防止、およびITプロフェッショナルによるインシデントの修復管理を支援します。これにより、組織はデジタルエンドポイントを最適化し、強化することができます。
スマート・アラートにより、IT運用チームは、STMテストが失敗した場合や、実際のユーザー・インタラクションに問題が発生した場合に、即座に診断情報を受け取ることができます。
デジタル・エクスペリエンス監視ソリューションは、深い洞察を生成し、パフォーマンスを向上させるために、次の分野でよく活用されています。
現代の組織にとって、ユーザーが組織のWebサイトに安全にログインし、支払いやEメールの受信、サブスクリプションのキャンセルができるようにすることは、極めて重要です。Webサイトのログインの問題を認識し解決することは、顧客満足度を向上させるための重要な要素です。
組織は、顧客や従業員により堅牢なサービスを提供するために、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を利用しています。APIを使用することで、組織のサーバーまたはアプリケーションがサードパーティー・アプリケーションと通信できるようになります。
例えば、ソーシャル・メディア・プラットフォームやEメール・プロバイダーのログイン情報を使用してWebサイトにログインしたり、天気予報プロバイダーから情報を取得して気象データを含むレストラン予約アプリケーションを利用したりする機能などを含みます。API呼び出しの問題は、組織の他のサービスに複合的な影響を与える可能性があります。これは、インシデントがより大きな問題に発展する前に特定するDEMの重要性を浮き彫りにしています。
DEMツールは、Webページとアプリケーションのパフォーマンス、およびアクセスするユーザーの全体的なエクスペリエンスを監視します。レイテンシーの問題や予期しないダウンタイムが発生した場合、DEMツールは問題への対処が必要なことをDevOpsチームにアラートで通知します。
オンラインで商品やサービスを販売する組織は、安全、確実、シームレスに支払いを受けられるか、細心の注意を払う必要があります。ユーザーは、システムに時間がかかりすぎる場合や、銀行情報やクレジットカード情報の安全性が確保できない感じた場合に、取引をキャンセルします。今日の支払いの多くがサードパーティAPI呼び出しを使用しているため、プロセスが意図したとおりに機能しているか確認するために、定期的に監視することが重要です。
ITチームの監視機能を最大限に活用するには、カスタマー・ジャーニー全体をカバーする必要があります。DEMツールによってチームはこれを実現でき、ユーザーがWebサイトやアプリケーションにアクセスした瞬間から離脱するまでのプロセス全体を監視できます。
DEMソリューションには、次のようないくつかのメリットがあります。
- 応答性の高いデジタル・エンドポイント:顧客の観点でデジタル・エクスペリエンスを監視できるITチームは、エンドポイントの応答性を高め、予定外にダウンタイムが発生する可能性を最小限に抑えることができます。これは、高いユーザー満足度を維持するために重要です。
- Webサイトとアプリケーションの応答時間の短縮:組織のサービスのパフォーマンスが低下しているか、また、パフォーマンスが低下している場合はどの程度低いかを理解することで、サイト信頼性マネージャーとITチームは、より多くの知識に基づいて修復に関する決定を下すことができます。クイック・アラートは、ネガティブな経験をする従業員や顧客の数を最小限に抑えるのに役立ちます。
- より良いエンドユーザー・エクスペリエンス:ユーザーが組織のウェブサービスとどのようなやり取りしているかを調べることで、顧客体験を向上させることができます。たとえば、ユーザーがサインアップまたは支払いプロセスを完了しない場合、そのプロセスに問題があることが考えられます。アクションを完了するために必要なステップが多すぎる、読み込みに特に遅いページがある、または多すぎるフィールドへの入力が求められていることが考えられます。DEMツールは、エラーを検出し、質の悪いエクスペリエンスに対するユーザーの反応を記録するのに役立ちます。
- サービス・レベル契約(SLA)の遵守:多くの組織は、顧客がサービスを調達する際に署名する契約に基づく、Webサイトまたはアプリケーションの稼働時間と可用性に対する顧客からの一定の期待を受けています。DEMは、これらのSLAを維持するために必要なSLA指標を組織に提供します。
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