人材紹介における AI

2023年6月30日

読了時間:6分

効率的で効果的な採用プロセスを構築することは、逼迫した雇用市場や競争の激しい雇用市場において特に重要です。米国商工会議所(リンクはibm.comの外にあります)によると、2023年春には全米で1000万件以上の求人があった一方で、失業者は570万人しかいませんでした。これはつまり、労働者は有利になり、より高い賃金、より良い福利厚生、より良好なワーク・ライフ・バランスを生み出す条件を求めて交渉できることを意味します。

採用目標を達成するために、企業は採用プロセスを再評価を行っています。具体的には、候補者や従業員にとってより魅力的なプロセスにするために、人工知能(AI)自動化を適用すべき非効率な業務と候補者とのタッチポイントを探っています。

なぜ採用が重要なのでしょうか?

採用活動は、組織で活躍しうる候補者を引きつけ、雇用するプロセスです。このひとつずつ進んでいくワークフローは、必要なスキルの特定から新入社員としての受け入れまで、広範にわたります。採用プロセスは究極的には、より効率的で費用対効果高く、状況に応じて拡大でき、企業の目標や法的要件に沿った採用活動となるよう設計されています。

今日の採用戦略は、ポジションを埋め、労働者のニーズを満たすだけでなく、候補者にポジティブな経験を提供することを目指しています。人事(HR)チームは、企業文化の優れた点を強調し、テクノロジーを活用して応募プロセスをより効率化することで戦略を実現します。求職者に有利な環境では、データとAIを駆使することで、必要とする労働者のタイプと、候補者をさらに引きつける方法をより深く理解できるようになり、企業は競争上の優位性を得ることができます。

採用プロセスにおける重要なステップ

より良い採用プロセスを構築するには、採用戦略を立案することから始めます。企業が頻繁に行っているいくつかの重要なステップを次に示します。

  • 採用ニーズの把握:効果的な採用プロセスの第一歩は、組織のニーズを理解することです。企業は、スキルギャップ、主要な欠員、人員不足がサービスやパフォーマンスに影響を与えている分野を特定します。これには、ニーズを既存の従業員でどのように満たせるか、どうすれば新入社員がチームに最適な形で補えるのか、すべての募集職種について見直すことを含みます。
  • 採用アプローチの決定:採用を進めるために、社内で採用するのか、リクルーターを利用するのか、あるいはコンサルティングチームを入れるのかを検討します。採用計画を作成する際、組織は多くの場合、候補者とのやり取りを主導する関係者で構成された採用チームを編成します。
  • 職務記述書の作成:詳細な職務名と職務内容は、その職務にふさわしい候補者を見極める際に重要な役割を果たすため、慎重に作成する必要があります。言葉の使い方によっては、意図せず偏見が明らかになることがあります。たとえば、「プロフェッショナルな外見と服装」ではなく「ひげを剃っていること」という表現の使用するなどです。職務記述書には次のものが含まれます。
    • タイトル
    • ロール
    • 役職に伴う責任
    • 譲れないスキル・人物要件
    • 勤務地
    • 出社、ハイブリッド、リモート勤務のいずれか
    • メリット
  • 求人の掲載:この段階では、特に同業他社に勤務している人物に、自社の求人について知らせることが重要です。これには、社内、求人サイト、ソーシャル・メディアなどへのポジションの掲示を含みます。ここでの目標は、トップ候補者となる可能性が最も高い人材をターゲットに定め、人材プールの質を高め、トップ候補者をより迅速に見出すことです。
  • 応募書類と履歴書の審査:手作業であれ、応募者追跡システム(ATS)であれ、貴社は応募者を審査し、優秀な候補者を絞り込む必要があります。組織は多くの場合、スキルだけでなく、会社の目標やダイバーシティー、エクイティ、インクルージョン(DEI)の指標に対してどうマッチしているか検討します。予測AIツールを使用することで、トップ候補者と比較するための理想的な候補者プロファイルを作成し、最適な候補者をさらに絞り込むことができます。
  • 電話インタビューの実施:トップ候補者が決まったら、候補者の経験や資質を把握するための電話インタビューの日程を決めます。これは、人事スタッフまたは採用チームのメンバーが対応します。
  • 面接の実施:上位2~3名の候補者を選んだ後、適切な人材であるかを見極めるために、対面での面接やビデオ面接の日程を決めます。採用チームのメンバーまたは採用を直接管理する人が面接に出席する必要があります。
  • 候補者の選定:採用する候補者を検討する際には、面接プロセスに関与した様々な関係者が関与すべきです。このステップでは、リファレンスを取ったり、バックグランドチェックを実施したりして、候補者の経歴を精査することもあります。
  • 内定:次に、職種、勤務開始日、雇用条件、労働時間、報酬に関する重要な情報を記載したオファーレターを送付します。
  • オンボーディングの開始:トレーニング、仕事をするためのツールやテクノロジーの提供、同僚との顔合わせなどを含みます。1対1のオンボーディングには時間がかかる場合があるため、多くの企業が自動化ツールとAIツールを活用して、従業員向けのシステムをより効率的に提供し、トレーニングを支援しています。
  • レビュー、修正、再投稿:ATSプラットフォームとアナリティクスを利用して、ポジションクローズにかかる時間、応募者数、その他のデータを確認し、より効率的に採用できるよう、プロセスを調整します。最有力候補者が内定を受諾しなかった場合、何が悪かったのかを理解したり、他の候補者にオファーを出したり、次の面接に備えて求人情報を調整したりすることもあります。

採用プロセスを再考しましょう新しい会社の採用プロセスを設計するとしたら、最高の人材を見つけて獲得するためにプロセスのどの部分にAIと自動化を利用しますか?

効果的な採用プロセスのメリット

目指すところが新入社員の雇用にかかるコストと時間の削減であろうと、単により多様な職場の形成であろうと、適切に設計された採用プロセスには次のような多くの利点があります。

  • 採用コストの削減:成功する人材獲得戦略は、採用プロセスが合理的であり、より迅速で費用対効果の高いものです。優秀な人材を積極的にターゲットにすることで、彼らが応募する可能性が高まり、企業が効果的に運営するために必要なコンピテンシーを獲得できます。
  • 優秀な人材の獲得:2021年にRobert Halfが行った調査(リンクはibm.com外部にあります)によると、2週間以内に雇用主から連絡がない場合、プロフェッショナルの62%がポジションへの興味を失うことがわかりました。効率的な採用プロセスを採用することで、候補者のエクスペリエンスが向上し、放置によって優秀な人材を待たされていると感じることがなくなります。
  • 人事の生産性向上:選考プロセスに費やす時間を減らすことで、人事チームは研修、従業員の能力開発、企業文化に関連する取り組みに充てる時間を増やすことができます。
  • スキルとビジネス目標の一致:企業は、必要とするスキルと、そのポジションが目指すべきビジネス目標を十分に理解するために努力することで、職務記述書の質を高め、適切な候補者を選べる可能性が高まり、定着率を向上させることができます。ここではアナリティクスとAIが重要なツールであり、企業が見逃しているかもしれないスキルギャップを提示します。
  • コンプライアンスと社内要件への適合:応募者データの保護から機会均等やDEIイニシアチブに至るまでのベストプラクティスが守られ、法規制を遵守していることが採用戦略には求められます。
  • プロセス上の問題に迅速に対処:データの収集と分析に基づいた採用に対する包括的なアプローチによって、成功と失敗を容易に把握でき、最終的にはより適切な採用決定を下すことができます。

採用に対するアプローチの開発

採用プロセスの開発と適切な調整は、変化が激しい雇用市場において常につきまとうな課題です。人材を効果的に引きつける能力を向上させるには、次のような方法があります。

  • ブランドの評判の活用:優秀な人材は一般的に、従業員エクスペリエンスに投資し、ポジティブな企業ブランドを築いている企業に魅力を感じます。候補者と話す際は、職場の魅力を強調するために、必要に応じて従業員の定着率、従業員満足度、地域社会への取り組みに関する情報を提示します。
  • インセンティブの創出:入社祝い金など、基本給に追加する手当について検討します。さらに、従業員紹介プログラムを実施するのも良いアイデアです。インセンティブをいつどのように活用するか、また人事担当者または採用担当者が決定権を持つのかを定めます。
  • アウトソーシングまたはコンサルタントの利用:社内で採用を行う方が、外部ののリクルーターやコンサルタントを利用するよりも効果が高いか見定めます。これは、組織全体における決定の場合もあれば、特定のポジションおける決定の場合もあります。
  • 社内候補者と社外候補者の優先度の決定:組織内からの採用を優先するか、新しい視点を取り入れるために外部に目を向けるかを決めます。
  • 求人広告のターゲティング:最適な候補者にアプローチできるよう、最適な方法とプラットフォームをリサーチします。これには、LinkedInなどのオンライン・チャネルや業界特有の採用チャネルが含まれる場合があります。
  • 先進ツールの活用:採用、候補者選定、オンボーディングにおいて、自動化やAIなどのテクノロジーをどう活用するか見極めます。これらのツールが偏見の軽減、効率化、従業員エクスペリエンスの向上にどう役立つか検討します。

採用プロセスにおけるツールとテクノロジー

テクノロジーとデータは、採用プロセスにおいて重要な候補者の情報をいつでも確認できるようにし、ワークフローを合理化することで、採用プロセスの最適化を実現します。一般的に使用されるツールには、次のものがあります。

  • 採用管理システム(ATS):ATSは、候補者のデータをトラッキングし、求人情報の掲載や履歴書のフィルタリング、最適な応募者の検索といった実務を自動化する幅広い機能を提供します。
  • 包括的なデータ分析:データ分析システムは、何人が求人に応募し、何人が面接を受け、最も優秀な候補者の採用経路を人事チームに示すことができます。これらの洞察の活用と、各採用プロセスの分析は、採用プロセス全体の改善に有用です。

他の新しいツールはAIを活用して、新しい機能とより深い洞察を提供します。主要なツールとして以下があります。

  • 機械学習(ML):企業の採用プロセスを改善する最善の方法は、何がうまくいっていて何がうまくいっていないかを評価することです。しかし、多くの人事部門では、分析を行い、過去の採用データを評価する時間とリソースが不足しています。機械学習は非常に有用であり、アプリケーション全体の採用データに関する洞察を提供し、より優れた意思決定を可能にします。
  • AIによる自動化:人事部門は近年、オンボーディング・プロセスを自動化することで、手作業で行う時間を大幅に削減し、プロセスの効率化を図っています。AIは、個々人に対するより適切なオンボーディング・プロセスの提供を可能にします。新しく入社するチームメンバーは、自然言語処理と適応型AIを活用したツールによるオンボーディングのガイドを受けます。
  • 予測AI:AIは今日、理想的な候補者プロフィールを作成し、将来の人材ニーズを評価するだけでなく、従業員のパフォーマンスに関するより深い洞察を提供し、報酬に関して公平かつ業界標準に合う意志決定をより的確に導くために活用されています。

IBM、AI、そして採用プロセス

採用担当者との際限のないやりとり、手動でのトラッキングやスプレッドシートの利用、さまざまなシステムで複数のツールの使用が候補者の採用プロセスの中で起きています。IBM watsonx Orchestrateを活用することで、求人情報の作成や掲載などのタスクが賢く自動化され、採用ステップとツールの数を減らせ、プロセスを合理化できます。Orchestrateは、候補者の発掘ソフトウェアやアプリケーション追跡ソフトウェアなど、毎日使用する主要なツールと統合します。

 

著者

IBM Education

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