AIのためのインテリジェンスは進化しています。
かつてはデータ・アクセスに重点が置かれていましたが、今日ではAI対応データの基準がさらに高くなっています。AIの実験からAIトランスフォーメーションへと進化している企業は、リアルタイムでデータをストリーミングし、データをコンテキストにより強化し、データの信頼性を確保しています。
IBMのソフトウェア担当SVP兼最高商業責任者であるRob Thomas氏は、「インテリジェンスは、単に利用可能なものから実行可能なものへと進化しなければなりません」と、Think 2026の基調講演で説明しました。「そうでなければ、AIは、多くの組織に存在する分断をさらに増幅させてしまでしょう。」
会議では、企業が断片化をはじめとするデータ関連の課題を克服してAIの性能を大規模に実現させる上で、IBMのwatsonx.dataならびにIBMが最近買収した大手のデータ・ストリーミング・プラットフォームであるConfluentがどのように役立っているかを、Thomas氏に加え、IBMのリーダーやパートナーが説明しました。
「リアルタイム・イベント・バックボーンを提供するConfluentは、発生したデータをその都度取り込み配信しています」と、IBMのwatsonx.data integrationの製品担当バイス・プレジデントであるScott Brokaw氏は、AIのためのよりスマートなアーキテクチャーの構築に関するThinkセッションで述べています。「IBMは、こうしたデータをまとめ、管理し、充実させ、AIによる処理の実現を可能にします。」
Confluentの共同創設者兼CEO(最高経営責任者)であるJay Kreps氏は、Thomas氏の基調講演に参加し、企業がどのようにデータのサイロ化を解消し、エンタープライズ・データから価値を引き出しているかについて説明しました。
データは「個々のシステムに閉じ込められているものから、組織間を行き来し、さまざまな主体を動かすものになりました」とKreps氏は言います。
彼は、Confluentのテクノロジーを使用して異種のデータ・ソースを統合し、顧客体験を向上させたMarriott社のお客様事例を紹介しました。
同ホテル・チェーンは、「顧客に関して持するあらゆるデータ(パーソナライゼーション、ロイヤルティ・プログラム、マーケティングなど)をまとめ、宿泊客について把握しているすべての情報を統合することで、顧客体験の最適化に取り組みました」とKreps氏は述べました。同氏によると、この効果的な取り組みにより、2億5,000万ドル以上の収益がもたらされたとのことです。
英国を拠点とする小売金融サービス・プロバイダーであるNationwide Building Society社のグループ最高執行責任者であるSuresh Visvanathan氏によると、全社的にタイムリーなデータを活用することは「攻撃と防御の両方を実施すること」です。
「攻撃」には、顧客に対するパーソナライゼーションの提供と迅速な実行が含まれます。「顧客が必要とするタイミングでこれを実行できなければ、手遅れになってしまいす」とThomas氏のセッションにゲストとして参加したVisvanathan氏は述べています。
「防御」の面では、深刻な問題に発展する前に小さな問題に対処するためにリアルタイムのデータが役立ちました。「他の業種でもそうであるように、オブザーバビリティーは私たちの業種においても重要なものです。そのため、ATMがダウンしたかどうか、モバイル・アプリケーションが機能しない場合はプロセスのどの部分で故障が起きているのか、そして問題にどのように対応するかを把握する能力が極めて重要になります」と、同氏は述べています。
AIの実験を超えて変革的な成果を上げているのは、Marriott社やNationwide Building Society社だけではありません。AI導入を進めている企業は、その規模やAI導入の進捗状況にかかわらず、リアルタイムのコンテキストとガバナンスを通じて企業データの価値を活用するための措置を講じることができます。
企業は、大きな影響をもたらす可能性のあるユースケースの特定など、まずは小さな取り組みから始めることができます。Confluent社のAIプロダクト責任者であるSean Falconer氏が「根本的に異なるデータへのアプローチ」と呼ぶ方法を通じて、AI対応の基盤を構築し、後からドメインごとに拡張できるようにすることができます。
成功した企業は下流でデータを処理して管理するのではなく、「その問題をデータのソース、つまりデータが作成され、すでにストリーミングされている場所に近づけています」と、Brokaw氏のセッションに参加したFalconer氏は述べています。
「その結果として、これらの企業は、リアルタイムで再利用可能かつ汎用的なデータ製品の構築を実現しています。これらの完全な管理対象データの資産に、企業は必要なタイミングで即座にアクセスできます」と同氏は説明します。
データに対して適切にアプローチすることにより、現在の最も強力なAIテクノロジーの1つであるAIエージェントを駆動できます。例えば、Confluent社のJay Kreps氏は、フードデリバリーに関する顧客の苦情に対処するようにAIエージェントを設計することが可能だと説明しました。
「実際にソース・システムに接続して、このような情報やアプリケーション、データベースを取得してリアルタイムの変更をキャプチャし、寄せられている苦情の数々を受け取ることができます。さらに、その苦情を、顧客や配達員の詳細などを含むデリバリーについてのあらゆるコンテキストとリアルタイムで組み合わせることができます」と同氏は述べました。
その結果、エージェントは、払い戻しの発行や不正利用警告の送信など、重要な次のステップを決定するために必要な情報を入手することができます。
「最終的に、そのエージェントはビジネス全体で起こっていることの完全なコンテキストを把握しています。私たちが必要としていることだけで、私たちが望まないことではありません」とKreps氏は言います。「(それは)適切に管理され、適切に構造化されたデータであり、それに基づいて行動することができます」
さらに、エージェントによるリアルタイムの意思決定を支えているものと同じデータを、watsonx.dataを通じ、さらなる価値を提供できるよう他のインサイトにつなげることもできます。
「リアルタイムで流れているデータ、つまり行動の基盤となるデータを取り込んで、すべてのインテリジェンス機能と自然発生するさまざまな種類の質問に公開することができます」とKreps氏は説明します。「これを分析して、本番環境で実際に何が起こっているのか、エージェントが何をしているのか、どのようなタイプの顧客が利用しているのか、全体的な傾向はどのようなものか、などを把握することができます。」
「 watsonx.dataとの統合は素晴らしい成果を上げており、非常に大きな力となっています」とクレプス氏は述べています。
フードデリバリーの例は、適切なデータ管理へのアプローチにより何が起きるかを示しています。しかし、そのアプローチが欠けている場合はどうなるのでしょうか?
Brokaw氏は、エージェント型環境において、信頼できてタイムリーかつ文脈化されたデータが、通常どおり業務を継続できるか、それとも深刻な混乱に陥るかを左右し得ることをセッションで実演しました。同氏は、深夜の顧客注文処理という、Eコマースにおいてよくあるシナリオを提示しました。
これまでは、注文後に商品の在庫が切れた場合、人間のフルフィルメント・プランナーが問題に気づき、顧客に電話して返金手続きを行っていました。このような状況は理想的とは言えないものの、少なくとも封じ込めることはできていると、Brokaw氏は述べています。
しかし、AIエージェントがこのような作業を担当すると、状況が劇的に変わる可能性があります。AIエージェントは、適切なデータ(タイムリーな意思決定のためのリアルタイム・データと、傾向や異常を把握するための履歴データ)へのアクセスを必要とします。このようなインテリジェンスがなければ、企業のプラットフォームは注文を受け入れ続ける可能性があります。
「誰かが問題に気づく頃には、1件の(未履行の)注文にとどまらず、数百件、もしくは数千件に膨れ上がっている可能性があります。つまり、エージェントは問題を封じ込めるどころか、問題を増幅させたのです」とBrokaw氏は言います。「エージェントによるエラーに対処するためには、人間とエージェントの両方に対応できる、データ管理への新しいアプローチが不可欠です。」
watsonx.dataとConfluentは、この新しいアプローチを強化します。IBMの新しいデータ・スタックでは、KafkaとFlinkのテクノロジーに基づいて構築されたリアルタイムのデータ・ストリーム機能を備えたConfluentにより、エージェントは古い情報ではなく最新のデータで業務を行うことができます。さらに、データ・スタックのコンテキスト層において「データがインテリジェンスに変換される」とBrokawは説明します。
watsonx.dataの新たな「コンテキスト」機能により、AIシステムは分散環境全体で構造化情報と非構造化情報の両方にアクセスできます。watsonx.data上のOpenRAGは、企業ドキュメントを検索および推論ワークフロー向けのAI対応ナレッジに変換し、関連性のあるビジネスコンテキストをエージェントが発見して利用するプロセスを改善します。また、Confluent の「リアルタイム・コンテキスト・エンジン」は、モデル・コンテキスト・プロトコルを通じてAIシステムに強化された企業データを提供します。
データがキュレートされて提供される一方で、 watsonx.dataによる共有定義の適用、データ品質シグナルとリネージの監視、ガバナンス ポリシーの適用による管理も行われます。「エージェントがコンピューターの速度で自律的に行動する場合、エージェントが下す決定は信頼できるものでなければならず、事後的なガバナンスは許されません」とBrokaw氏は述べています。
タイムリーでコンテキストに沿った信頼できるデータをAIに提供する技術の進歩により、エンタープライズの世界は「データ・グラビティーの中心」への移行の過渡期にある、とも同氏は述べました。「リアルタイムの信号を入力し、信頼できるコンテキストを出力する基盤はすでに構築されています。」