2026年のAIとテクノロジーを形作るトレンド

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Anabelle Nicoud

Staff Writer

IBM

テクノロジーの世界では、1年が他の分野の10年のように感じられることがあります。

考えてみてください。1年前には、ChatGPTが「strawberry」に含まれる「r」の数を数えられない、という話題を議論していました。中国の最先端研究機関による推論モデル(DeepSeek-R1など)も、オープンソースの推論エージェントも、当時はまだ世界的な注目を集めていませんでした。

Claudeの専用コーディング・エージェントは、当時まだ存在していませんでした。IBMのGranite 3.0は、登場したばかりでした。エージェントに関する議論も始まったばかりで、MCPは春にSam Altman氏からの注目すべき支持を受け、ようやく関心を集め始めた段階でした。

一方、インフラストラクチャーの分野では、チップや計算資源の不足が進み、新たな地域が競争優位を得る状況が生まれていました。

過去数週間にわたり、IBM Thinkは、IBM内外の研究者、創業者、リーダーなど、テクノロジー分野の専門家約12名に話を聞き、今後1年の展望について見解を集めてきました。こうした専門家全員が、2026年においてもイノベーションのスピードは鈍化しない、という共通の見解を示しました。

「非常にクレイジーな時代です」と、IBMチューリッヒ研究所の主任研究員であるPeter Staarは、IBM Thinkのインタビューで語っています。「しかも、そのスピードは加速する一方です。」

新たなエージェント機能は、企業と個人の双方に新しい可能性をもたらします。「私は、Rick Rubin流の音楽制作と、AIによる創作とのあいだに強い共通点を感じています」と、IBMのディスティングイッシュト・エンジニアであるChris HayはIBM Thinkに語っています。「それはコーディングに限った話ではありません。」マーケターであれ、プログラマーであれ、PMであれ、私たちは皆、AIコンポーザーになると思います」。

多くの人は、効率性が新たなフロンティアになると考えています。「GPUは引き続き主流であり続けますが、ASICベースのアクセラレーター、チップレット設計、アナログ推論、さらには量子支援型オプティマイザーも成熟していくでしょう」と、IBMの主任研究員であるKaoutar El Maghraouiは、今週の「Mixture of Experts」で述べています。「エージェント型ワークロード向けの新たなクラスのチップが登場するかもしれません」。

AIのROIを巡る多くの懐疑論を経て、AIの機能はエンタープライズにおける新たなビジネスの在り方を切り開いていきます。また、オープンソースの推論モデルやエージェントは、エンタープライズAIを実現するために、限界を押し広げ続けるでしょう。

同時に、多くの企業がAI主権への注力を強める中で、信頼性とセキュリティーは重要な優先事項となります。

これは、今後のエンタープライズ・テクノロジーの展開に向けた序章にすぎません。2026年に注目すべき18の専門家予測をご覧ください。

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量子から効率性へ:新たなコンピュートのフロンティア

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量子は古典コンピューターを上回る | Jamie Garcia(IBM、戦略的成長・量子パートナーシップ担当ディレクター)

IBMは、2026年が、量子コンピューティングが初めて古典コンピューターを上回る年になると公言しています。これは、量子コンピューターが、すべての古典的手法よりも優れた形で問題を解決できる転換点です。

IBMによると、このマイルストーンは、創薬、材料科学、金融最適化など、極めて複雑な課題に直面する多くの産業分野でのブレークスルーをもたらします。

「私たちは理論の段階をすでに超えています」と、IBMで戦略的成長および量子パートナーシップ担当ディレクターを務めるJamie GarciaIBM Thinkに語っています。「現在、業界で利用可能な中で最先端の量子コンピューターを実際のユースケースに活用しています。これらはまだ本番規模の課題ではありませんが、量子技術が成熟し続けるにつれて価値の向上が見込まれる兆しです。また、創薬、材料探索、金融および物流の最適化といった分野で、研究面において著しい進展が見られています。」

GarciaはAIとの融合についても強調しており、Qiskit Code Assistantのようなツールが、すでに量子コードの自動生成で開発者を支援しています。IBMは、CPU、GPU、その他の計算エンジンに支えられた、高性能コンピューティングおよびAIインフラストラクチャーと量子コンピューティングを統合する、量子中心のスーパーコンピューティング・アーキテクチャーを構築していると、Garciaは説明しています。

この目標をさらに前進させるため、AMD社とIBMは、AMDのCPU、GPU、FPGAをIBMの量子コンピューターと統合し、単独ではいずれの計算パラダイムでも到達できない新たなクラスの新興アルゴリズムを効率的に高速化する方法を模索しています。

ハードウェア効率が新たなスケーリング戦略になる |Kaoutar El Maghraoui(IBM、AIハードウェア・センター AIU Spyreモデル・イネーブルメント担当 プリンシパル・リサーチ・サイエンティスト兼マネージャー)

「2026年は、先進的なユーザー向けの高効率モデル・クラスの年になるでしょう」と、IBMの主任研究員であるKaoutar El Maghraouiは、最近の「Mixture of Experts」で述べています。数十億のパラメーターを持つ巨大モデルに加え、比較的控えめなアクセラレーター上で動作する、ハードウェアを意識した高効率モデルが登場してくるでしょう。「計算資源を拡張し続けることはできません。そのため、業界は効率性を高める方向へ進む必要があります」。

2025年には、需要がサプライチェーンを上回り、企業は利用可能な計算資源を前提とした最適化を迫られました。その圧力により、ハードウェア戦略は分岐しました。H200、B200、GB200といったスーパー・チップによるスケールアップ、あるいはエッジ最適化、量子化の進展、小規模LLMによるスケールアウトですと、IBMの主任研究員であるKaoutar El Maghraouiは述べています。

これはまた、エッジAIが誇張された期待の段階から現実へと移行することも意味します。そして、ハードウェア競争はGPUだけを軸とするものではなくなります。「GPUは引き続き主流であり続けますが、ASICベースのアクセラレーター、チップレット設計、アナログ推論、さらには量子支援型オプティマイザーも成熟していくでしょう」と、El Maghraouiは述べています。「エージェント型ワークロード向けの新たなクラスのチップが登場するかもしれません。」

モデルを超えて:AIシステムとエージェントの台頭

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AIのリーダーシップを定義するのは、モデルではなくシステムGabe Goodhart(IBM、AIオープン・イノベーション担当 チーフ・アーキテクト)

2026年の競争の中心は、AIモデルそのものではなく、システムになるでしょう。

「ある程度、コモディティー化の段階に入るはずです」と、IBMのAIオープン・イノベーション担当チーフ・アーキテクトであるGabe Goodhartは、IBM Thinkのインタビューで述べています。「今は買い手市場です。ユースケースに最適なモデルを選べば、すぐに活用を開始できます。モデル自体は、主な差別化要因にはなりません」。

いま重要なのはオーケストレーションです。モデル、ツール、ワークフローを組み合わせることが鍵となります。「ChatGPTを使うとき、単一のAIモデルと対話しているわけではありません」と、Goodhartは説明しています。「Web検索のためのツールや、さまざまなスクリプト化された個別処理、そしておそらくエージェント・ループを含むソフトウェア・システムと対話しているのです」。

「2026年には、より協調的なモデル・ルーティングが見られるようになると思います」と、Goodhartは述べています。「多くの処理をこなせる小規模モデルが必要に応じて大規模モデルに処理を委譲する形になるでしょう。そのシステム・レベルの統合を実現できた者が、市場を形作ることになります」。

エージェント型パーシングがモノリシックな文書処理に取って代わるBrian Raymond氏(Unstructured社、創業者兼CEO)

2026年には、ドキュメント処理は単一モデルで完結する作業ではなくなります。単一のシステムにファイル全体を解釈させるのではなく、合成パース・パイプラインによってドキュメントを構成要素(タイトル、段落、表、画像)に分解し、それぞれを最も適したモデルに振り分けます。

「各要素を最も適切に理解できるモデルが解釈することで、忠実度を高めながら計算コストを削減できます」と、Unstructured社の創業者兼CEOであるBrian Raymond氏は、IBM Thinkに対して述べています。Unstructured社は、非構造化データをAI活用に適したクリーンなデータへと変換する企業です。

「その結果、構造、系譜、意味に関する強力な保証を維持しながら、元の情報源を正確に再構成する柔軟な再構築レイヤーが実現します」と、Raymond氏は述べています。Unstructured社はこの目的を達成するため、IBM ResearchのDoclingが持つ物体検出機能を最近統合し、全体的な精度を向上させました。

次に登場するのが、エージェント型パースです。これは、専門分野のエキスパート・チームを想像すると分かりやすいでしょう。ただし、その正体はAIエージェントであり、コーパス全体を継続的にスキャンし、深い意味的プロファイルを構築し、すべてを多次元グラフ上でインデックス化します。「これにより、意図、構造、コンテンツ、メタデータを同時に横断する検索が可能となり、これまでアクセスできなかった社内知識をリアルタイムで活用できるようになります」と、Raymond氏は述べています。

これらの進展は、2026年に向けて、より迅速な意思決定と高度なワークフローを支える自己認識型エンタープライズ・データ・システムの基盤を示しています。

部門横断・チャネル横断の「スーパー・エージェント」が登場するChris Hay(IBM、ディスティングイッシュド・エンジニア)

「単一用途のエージェントの時代はすでに終わりました」と、IBMのディスティングイッシュド・エンジニアであるChris Hayは、最近の「Mixture of Experts」で述べています。2024年当時、エージェントは小規模で特化型でした。メール作成用やリサーチ支援用といった具合です。しかし現在では、推論能力を備えたことで、エージェントは計画を立て、ツールを呼び出し、複雑なタスクを完遂できるようになっています。

「私が『スーパー・エージェント』と呼ぶ存在の台頭が見られます」と、Hayは述べています。

「2026年には、エージェント制御プレーンやマルチ・エージェント・ダッシュボードが現実のものになると考えています。1カ所からタスクを開始するだけで、エージェントがブラウザー、エディター、受信トレイといった複数の環境を横断して動作し、多数のツールを個別に管理する必要がなくなります」と、Hayは述べています。ユーザー・エクスペリエンスやユーザー・インターフェースにおける静的なソフトウェアの発想は捨てるべきです。あらゆるシナリオに適応できるインターフェースやアプリケーションが登場し、すべてのユーザーがAIコンポーザーになると、Hayは予測しています。

「スーパー・エージェントへのフロントドアを握る者が、市場を形作ることになります」。

日常のユーザーが新たなエージェント・ビルダーとなり、AIエージェントは個人アシスタントからAIによりオーケストレーションされたチームへと移行するKevin Chung氏(Writer社、最高戦略責任者)

2026年は、AIを個人の生産性向上の枠を超えたものへと押し広げる3つのトレンドによって特徴付けられると、マーケティング業務向けのエンタープライズAIプラットフォームを提供するWriter社の最高戦略責任者であるKevin Chung氏は述べています。

「まず、AIは個人利用から、チームのワークフロー・オーケストレーションへと移行しています」と、Chung氏はIBM Thinkに語っています。これは、部門を横断してデータをつなぎ、アイデアから完了までプロジェクト全体のワークフローを調整することを意味します。

第二に、推論能力の向上により、システムは単に指示に従うだけでなく、ニーズを先回りして判断するようになります。「この進化により、AIは受動的なアシスタントから、実質的な問題解決や意思決定が可能な能動的な協働者へと変わります」と、Chung氏は述べています。

最後にChung氏は、AIエージェント作成の民主化という、最も注目すべき変化を挙げています。「インテリジェントなエージェントを設計・展開する能力は、開発者の手を離れ、日常業務に携わるビジネス・ユーザーの手に広がりつつあります」と、Chung氏は説明しています。「技術的な障壁が下がることで、現実の課題に最も近い人々によってイノベーションの波が生まれるでしょう」。

AIはエンジニアリングおよびITにおいて、ツールからチームメイトへと進化するIsmael Faro(IBM Research、量子・AI担当バイス・プレジデント)

エージェント型システムは、2025年にLLMやコーディング・アシスタントを、より動的な存在へと変えました。これは始まりにすぎないと、IBM Researchの量子およびAI担当バイス・プレジデントであるIsmael Faroは述べています。Faroは、ソフトウェアが非公式な対話中心の形から、ユーザーが目標を設定し進捗を検証しつつ、自律エージェントがタスクを実行し、人による承認を求める構造化されたアプローチへ移行すると見ています。

「ソフトウェア開発の実践は、バイブ・コーディングからオブジェクティブ・バリデーション・プロトコルへと進化していくでしょう」と、FaroはIBM Thinkで述べています。「ユーザーが目標を定義し検証を行う一方で、エージェントの集合体が自律的に実行を担い、人間参加型(ヒューマン・イン・ザ・ループ)の考え方を拡張しつつ、重要なチェックポイントでは人による承認を求めるようになります」。

この変化により、制御メカニズムを備えたエージェント型ランタイムが複雑なワークフローを実行できるようになり、エージェントの振る舞いは、コードに縛られた静的な出力から、柔軟性と制御のバランスを取るポリシー駆動型スキーマによる動的な適応へと移行します。

これは「エージェント型オペレーティング・システム(AOS)」の基盤となるものであり、エージェント群全体にわたってオーケストレーション、安全性、コンプライアンス、リソース・ガバナンスを標準化すると、Faroは説明しています。

「セキュリティー、リソース管理、コンプライアンス、運用の卓越性に対して規律ある注意を払うことで、企業はエキスパート・システム・エージェントを活用し、ミッション・クリティカルなコンピューティング分野で主導権を取り戻すことができます」と、Faroは述べています。

マルチモーダルAIは人間のように世界を解釈する |Aaron Baughman(IBM、IBMフェロー兼マスター・インベンター)

生成モデルは、人間のように世界を解釈し、さらには人が見落とす可能性のあるシグナルも検知できるよう、マルチセンサーである必要があると、IBMフェロー兼マスター・インベンターのAaron Baughmanは、最近の「Mixture of Experts」で述べています。

Baughmanはスポーツ分野でマルチモーダルAIに取り組んできたほか、特に全米オープンESPN Fantasy Footballマスターズに関するIBMの取り組みにも携わってきました。Baughmanは、マルチモーダルAIが2026年にさらに広がるトレンドだと見ています。

「これらのモデルは、人間により近い形で世界を認識し、行動できるようになります。言語、視覚、行動を一体として結び付けられるようになるでしょう」と、Baughmanは述べています。「近い将来、物事を解釈するためにさまざまなタスクを自律的に完遂できる、こうしたマルチモーダルなデジタル・ワーカーが登場し、場合によっては複雑な医療ケースのような領域にも対応できるようになるでしょう」。

しかし、自律化は人による監督を取り除くことを意味するわけではありません。「将来においても、この人間参加型(ヒューマン・イン・ザ・ループ)のAIを維持することが重要です」と、Baughmanは述べています。

エージェント間コミュニケーションが主流になるKate Blair(IBM Research、インキュベーションおよびテクノロジー・エクスペリエンス担当ディレクター)

IBMのACPやGoogle社のA2Aと同様に、Anthropic社がMCPを発表してからまだ1年しか経っていない。2025年がエージェントの年だったとすれば、2026年はすべてのマルチ・エージェント・システムが本番環境へ移行する年になると、IBMのKate BlairIBM Thinkのインタビューで述べています。この移行は、プロトコルの成熟と収束にかかっています。

「2026年には、これらのパターンが研究室を出て、現実の世界で使われるようになるでしょう」と、IBMのBeeAIおよびAgent Stackの取り組みを主導するBlairは述べています。両プロジェクトは、Linux Foundationに移管されました。

Linux Foundationは最近、Agentic AI Foundationの設立と、Anthropic社によるMCPの提供を発表しました。「MCPがオープン・ガバナンスの枠組みに入ったことをうれしく思います」と、Blairは述べています。「オープンにガバナンスされたコミュニティー標準こそが、さらなる創造性、イノベーション、そして多様なソリューションを引き出す原動力になります」。

A2Aプロジェクトは、初の主要リリースを迎えようとしています。「MCPにおけるツールやリソース、あるいはA2Aにおけるエージェントといったエンティティーを単一のカードで記述するため、A2AとMCPの間ですでに連携が進んでいます」と、Blairは述べています。

Blairは、この統合カードを、相互運用性を促進し、レジストリーを共有し、エージェントおよびエージェント型システム全体での利用状況を把握する機会につながる触媒と捉えています。

「エージェント同士が対話する、広範な本番ユースケースについて本格的に語れる次の段階に進むことを楽しみにしています」。

再定義されるエンタープライズAI

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AIは安全に実質的なROIをもたらす David Lantzer氏(Abto社、共同創業者兼CEO)

Atolio社は、企業向けにセキュアでプライベートなAIプラットフォームを提供しています。同社が顧客の間で確認している課題は、新しいテクノロジーを迅速に試しながらも、AIデータの制御を失うリスクを抑える必要がある点です。

「来年に向けて最も重要なトレンドは、AIの実験や期待の段階から、企業において実際のROIを前提とした、プライベートでセキュアな導入へと移行することです」と、Atolio社の共同創業者兼CEOであるDavid Lanstein氏は、IBM Thinkに語っています。

「データが信頼を損ない続けることは許されません」と、同氏は述べています。本番環境におけるプロンプト・インジェクション攻撃という未解決の課題により、データ主権と第一級の権限管理は、譲れない要件となっています。

解決策となるのは、より大規模なモデルではなく、より賢いデータです。Lanstein氏の言葉を借りれば、「真の価値は、高品質で権限を考慮した構造化データをモデルに与え、知的で関連性が高く信頼できる回答を生成することから生まれます」。

「これを実現するために必要な収束が進んでいることこそ、私が最も期待している点です」と同氏は述べ、「セキュリティーへの新たな取り組み、文脈やユーザー・ニーズをより深く理解するためのツールの進化、そしてMCPエコシステムの継続的な進化」を挙げています。

AIエージェントの導入は、IDおよびアクセス管理戦略の再考を企業に迫る |Shlomi Yavani氏(AuthMind社、共同創業者兼CEO)

2020年に設立されたAuthMind社は、サイバーセキュリティー分野で最も困難な課題の一つに取り組んでいます。それは、すべてのIDのアクセスと活動をほぼリアルタイムで可視化し、攻撃が始まる前に防ぐことを企業に可能にすることです。

「今後数年で、エージェント型AIやその他の非人間のIDは、組織内の人間ユーザーの数を大きく上回るようになるでしょう」と、AuthMind社のCEO兼共同創業者であるShlomi Yanai氏は、IBM Thinkに語っています。

この変化は、エンタープライズ・セキュリティーとガバナンスを再定義します。「各エージェントが把握され、意図されたとおりに振る舞っていることを保証することは、いまや取締役会レベルの課題であり、生産性とセキュリティーの両方を高めるものです」と、Yanai氏は述べています。組織がAI活用を拡大するにつれ、課題は単にモデルを導入することではなく、システム全体で動作する自律エージェントという新たな利用者のIDを管理することへと移っています。

企業がこの文脈で優位性を得るためには、3つの重要な問いに答える必要があります。存在するすべてのAIエージェントを把握しているでしょうか。それらが何にアクセスしているのかを理解しているでしょうか。そして、システムにアクセスした際に、何をしているのかを確信できているでしょうか。

すべての人間だけでなく、すべてのAIエージェントを発見し、可視化し、保護することが、責任ある安全なAI導入において不可欠になっています。「すべてのAIエージェントIDにわたって、可視性、説明責任、信頼を確立できる企業の動向を非常に楽しみにしています」と、Yanai氏は述べています。

機械の自動化はは現実のものになるSteven Aberle氏(Rohirrim社、創業者兼CEO)

来年に向けて最も強力なトレンドは、AIが複雑なエンタープライズ・ワークフローに取り組むことです」と、調達エコシステム全体に注力するAIネイティブ・スタートアップであるRohirrim Labs社の創業者であるSteven Aberle氏は、IBM Thinkのインタビューで述べています。「しかもそれは、概念実証ではなく、エンド・ツー・エンドで高度なタスクを実行できる、信頼性の高いシステムとしてです」。

生成AIおよびエージェント型システムは、意図を解釈し、広範なネットワークを横断して検索し、適切なツールを選択し、成果が得られるまで処理を継続します。「この変化により、まったく新しいプラットフォームのカテゴリや、新たな市場さえ生まれます。単一の人間や単一のアプリケーションが把握できる範囲に、もはや制約されなくなるからです」と、同氏は説明しています。「これは真のマシン・オートメーションです」。

トランスフォーマーが、これを可能にしました。「トランスフォーマーは、膨大なテキスト、コード、履歴を取り込み、適切なガードレールのもとで、繊細かつ正確に応答できるシステムをもたらしました」と、Arbel氏は述べています。「AIが単に質問に答える存在から、結果そのものに直接影響を与える時代に入りつつあります」。

調達分野では、要件を追跡し、ギャップを早期に特定し、改善策を提案することで、専門家がより迅速かつ的確な意思決定を行えるようになります。

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オープンソースが未来を形作る

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オープンソースは規模と地域の両面で多様化を続ける |Matt White氏(PyTorch Foundation、エグゼクティブ・ディレクター)

1年前、Python Foundationのエグゼクティブ・ディレクターであるMatt White氏は、小規模モデルがAIをエッジへと押し広げていくと予測していました。

「より小さく、ドメインに最適化されたモデルが中核になるという仮説は、業界によって裏付けられた」と、White氏は最近、IBM Thinkに語っています。「蒸留、量子化、メモリー効率の高いランタイムの進展により、コスト、レイテンシー、データ主権の要請を背景として、推論はエッジ・クラスターや組み込みデバイスへと押し出されました」。

White氏によれば、2026年のオープンソースAIを規定する力は3つあります。中国発の多言語・推論重視のリリースに主導されるグローバルなモデル多様化、フレームワークやランタイムが共通標準に沿って整合することで競争軸となる相互運用性、そして、セキュリティー監査済みリリースと透明なデータ・パイプラインを伴う強化されたガバナンスです。

「エージェント型システムが登場するにつれ、学習、シミュレーション、オーケストレーションの共通基盤としてのPyTorchの役割は、さらに重要性を増すでしょう」と、White氏は述べています。「開発者には、マルチモーダル推論、メモリー圧縮、安全性と整合した評価のための柔軟なツールが必要であり、そこにオープンソースの強みがあります」。

スケーリングは限界に達し、フィジカルAIが勢いを増す |Peter Staar(IBM Research、プリンシパル・リサーチ・スタッフ・メンバー/Linux Foundation for AI and DataにおけるDocling技術運営委員会 議長)

IBMのPeter Staarは、2026年には、実用性を重視する方向へAI研究の優先順位が転換する節目になると予測しています。「ロボティクスとフィジカルAIは、確実に勢いを増すでしょう」と、Staarは述べています。また、大規模言語モデルが引き続き主流である一方で、業界はスケーリングによる効果の逓減に直面しているとも指摘しています。「人々はスケーリングに疲れ、新しい発想を求めるようになっています」と、同氏は説明しています。

Staarは、現実環境で感知し、行動し、学習できるAIへの関心が高まっていると見ており、ここに技術的な課題があるとしています。これはイノベーションの次のフロンティアになる可能性があります。

同時に、オープンソースAIは今後も競争環境を形作り続けるとも考えています。「先行する側はクローズドを維持したがり、追い上げる側はオープンに向かいます」と、同氏は述べています。

NVIDIAが、独自モデルではなくGPUの広範な採用にビジネスが依存していることから、オープンなエコシステムの主要な推進役として台頭する中、AIが画面の内側から物理世界へと広がるにつれて、コラボレーションは加速するとStaarは予測しています。

AIは巨大モデルからドメイン特化型の推論システムへと移行するAnthony Annunziata(IBM、オープンソースAI担当ディレクター/AI Alliance)

2024年は、Meta社のLlamaモデルが支持を拡大し、オープンソースAIにとって好調な締めくくりとなりました。それ以降、オープンソースAIのエコシステムは大きく成長し、小規模でドメイン特化型のモデルが顕著な成果を上げています。IBMのGraniteAi2社のOlmo、そしてDeepSeek社の各種モデルがその例です。IBMでオープンソースAI担当ディレクターを務め、AI AllianceのメンバーでもあるAnthony Annunziataは、この傾向が2026年に加速すると見ています。

「マルチモーダルで、特定のドメイン向けに調整しやすい、より小規模な推論モデルが登場していくでしょう」と、IBM Thinkのインタビューで述べています。

ファイン・チューニング強化学習の進展により、企業はオープンソースAIを採用できるようになり、小規模で効率的なモデルへの需要が高まっています。「すべてを1つの巨大モデルで賄うのではなく、適切なユースケースに合わせて調整すれば、同等、あるいはそれ以上に正確な、より小さく効率的なモデルを使うことになります」と述べています。

オープンソースのエージェント型AIは、この流れをさらに加速させるでしょう。「汎用エージェントだけでは、法務、医療、製造といった分野には不十分です」と、Annunziataは述べています。「専門家のワークフローを反映した、ドメイン知識を組み込んだモデルとアーキテクチャーが必要です」。

オープンソースAIは不可欠です。「自動化されたAIの能力が多くの作業を担う経済に向かっていると考えるなら、インタラクションの標準はオープンでなければなりません」と述べています。「そうでなければ、分断されたサイロ、あるいは勝者総取りのプラットフォームに行き着いてしまいます」。

戦略としての信頼

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分散型AIはプロトタイプ段階を超えるTomás Hernando Kofman氏(Not Diamond社、共同創業者)

「エンタープライズのベルカーブにおける大きな中間層が、実験段階から本番運用レベルのシステムへと移行し始めています」と、マルチモデルAIインフラストラクチャー・プラットフォームであるNot Diamondの共同創業者であるTomás Hernando Kofman氏は、IBM Thinkのインタビューで述べています。

その移行は容易ではありません。「AIチームは、評価、信頼性、最適化、効率性、スケーラビリティー、保守性に多大な投資を行う必要があります」と述べています。

これには、綿密な調整と相応のリソースが求められます。企業がその投資を行わなければ、適切な能力を持てず、システムが有用にならないという行き詰まりに陥り、その有用性の欠如が問題をさらに悪化させることになります。

最前線では、課題の様相が異なります。「この分野は、継続的学習、メモリー、スケーラビリティーという3つの大きな課題に直面するでしょう」と、Kofman氏は述べています。

取り組みは、モデル・アーキテクチャーのレベルとエージェント型システムの両方で進められます。

「エージェント同士が学習し合い、情報を共有し、重要な知識を数週間、数カ月、さらには数年といった長期間にわたって保持できる分散型ネットワークが現れ始めるでしょう」と述べています。「こうしたシステムは、動的な進化と継続的な改善を促しつつ、エージェントやモデルが効率的で特化した能力へと専門化することを可能にします」。

協調的な防御が武器化されたAIに対抗するBen Colman氏(Reality Defender社、CEO兼共同創業者)

ディープフェイクと武器化されたAIの危機は、単一の組織で解決できるものではありません。特に、武器化されたAIエージェントのような新たな脅威ベクトルが今年後半に出現した状況ではなおさらです」と、ディープフェイク検知ツールを提供するサイバーセキュリティー企業であるReality Defender社のCEO兼共同創業者であるBen Colman氏は述べています。生成AIの急速な進化には、協調的なエコシステムが求められます。

「戦略的パートナーシップは、防御を強化するためだけでなく、次に来る高度なモデルや業界特有の脆弱性を予測するためにも不可欠です」と、IBM Thinkに語っています。

「私たち自身や、同様の課題の異なる側面に取り組む他の企業との間で、こうしたパートナーシップが、AIの進歩と同じ速さ、あるいはそれ以上の速さで進んでいるのを目にしています」。

Colman氏は、多層型のセキュリティー・モデルへの移行を見ています。「異なる防御対策を重ねることで、ある層のギャップを別の層が補い、突破不可能な盾を作り出します」と述べています。

次の段階を規定するのは、統合です。「こうした新興技術が、当社のような検知プラットフォームと結び付くことで、包括的な『多層防御』戦略が実現します」と述べています。「これにより、単一障害点に依存することなく、あらゆるメディア形式、侵入口、ユースケース、ツールセットにわたって、組織を保護できます」。

AIのレジリエンスが重要になるAnthony Marshall(IBM Institute for Business Value、シニア・ディレクター兼バイス・プレジデント)

組織はAIプロジェクトを中断させる余裕はありませんが、ビジネス・リーダーが制御できる範囲には限界があります。「AI主権、すなわち外部の主体に依存することなくAIシステム、データ、インフラストラクチャーを統治する能力は、ミッションクリティカルな要件になっています」と、IBM Institute for Business Value(IBV)のシニア・ディレクター兼バイス・プレジデントであるAnthony Marshallは述べています。

IBVが調査した経営層の93%は、AI主権を事業戦略に組み込むことが、2026年には必須になると回答しています。「これは単なる形式的な対応ではありません」と、Marshallは述べています。

経営層の半数は、特定の地域におけるコンピュート資源への過度な依存を懸念しており(特に中東およびAPACのビジネス・リーダーでその懸念が高い)、そうした資源に依存することで幅広いリスクが生じ得ると考えています。例えば、データ侵害、データへのアクセス喪失、知的財産の盗難です。

透明性と信頼も引き続き重要な優先事項となります。「規制当局と消費者の双方が、AIエージェントがどのように特定の判断に至ったのかを説明することを、組織に求めています。「最も複雑なアウトプットであっても、その過程を示せるエージェントを設計しなければなりません」と、同氏は述べています。

これは、モジュール化を通じて主権を確立すること、すなわち、ワークロード、データ、エージェントが信頼できる地域やプロバイダー間で移動できるようにAI環境を設計することを意味します。

「パフォーマンスを損なったり、バイアスを生じさせたりする前にモデル・ドリフトを検知し、対処するためには、継続的な監視が不可欠です」と、Marshallは結論づけています。

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