昨今よく⽿にする企業のGX(グリーントランスフォーメーション)において、まずは企業の温室効果ガス(以下GHG)排出量を可視化し、規制当局からの開⽰要求に応えることが喫緊の課題となっています。さらに脱炭素を推進していくには、サプライチェーン全体でのカーボンフットプリント(以下CFP)算定が必要となり、例えば製造業では、最終完成品を製造する企業だけでなく、その部品、材料を提供するサプライヤーに対しても製品単位でのCFPの算定が求められます。本ブログでは、製品単位のCFP可視化とその管理・分析に貢献するIBM Supply Chain Intelligence Suite(以下SCIS)を活⽤した伊藤忠テクノソリューションズのGXサービスについてご紹介いたします。
CFPの開⽰が要求される例として、欧州連合(EU)によるバッテリー規制が挙げられます。この規制では、バッテリー製品の原材料調達から設計・⽣産プロセス、廃棄・リサイクルに⾄るライフサイクル全体にわたる、CFP申告義務やリサイクルされた原材料の最低使⽤割合などが規定されます。これらは、社会全体のGHG排出量削減に対して、⼀企業の努⼒では取りうる施策に限界があることに起因しています。
国内においても環境省と経済産業省のカーボンフットプリントガイドライン(*1)によると、従来の環境意識の⾼い消費者への環境ラベルとしての使い⽅に加え、近年はサプライチェーン全体のGHG排出量把握とその削減効果の評価にですか︖CFPを利⽤する例が増えてきています。
他社製品と⽐較しない前提においては、ISO 14067:20182(*2)や GHG Protocol Product Standard(*3)を参照する場合が多いですが、
カットオフの基準やバウンダリーの定義等には様々な解釈の余地があり、企業は独⾃の⽅法で算定する必要があります。サプライヤー同⼠でCFPの⽐較ができない点や提出されたデータがその企業独⾃の実績データに基づく算定(1次データ)となっていない場合、⾃社の削減努⼒がCFPに反映されず、結果としてサプライチェーン全体でのGHG削減へつながらない点が課題となります。
また、近年のサプライチェーン・バリューチェーンの複雑化に伴い、製品のトレーサビリティや、製品のライフサイクル全体(原材料採掘〜⽣産〜利⽤〜廃棄リサイクル)にわたる社会・経済問題を解決するためには、例えば⾷品のトレーサビリティにおいて⽣産地偽造・改ざんを防ぐ⽬的に対してブロックチェーン技術を活⽤することで流通量を担保するなど、ITを活⽤することが重要となります。
複雑化するサプライチェーン・バリューチェーン
出典︓経済産業省 第12回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2023.3.1
*1 カーボンフットプリント ガイドライン 20230331_3_1.pdf (meti.go.jp)
*2 ISO 14067:2018 温室効果ガス-製品のカーボンフットプリント-定量化のための要求事項及び指針
*3 Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard
これらの課題を解決するためには、⾃社の努⼒だけではなく、取引先企業とのデータ連携・管理とですか︖CFP算定、分析に必要な情報の共有が重要となります。これを解決するのがブロックチェーン技術を活⽤してCFPを管理・証明することが可能なSCISなのです。
SCISは複雑化したサプライチェーンにおけるデータ連携とトレーサビリティの実施に課題を持つ企業向けに設計されたソリューションです。SCISは、サプライチェーンのトレーサビリティを実現するために必要な共通機能を提供し、ユーザー独⾃のサプライチェーン・プラットフォーム環境を構築することで、サプライチェーンにおける信頼性の⾼いデータのトレーサビリティとデジタル変⾰の推進を⽀援いたします。
IBM Supply Chain Intelligence Suite (SCIS) 概要図
[課題]
CFP算定において、購⼊した⾦額・数量によるGHG排出量の算定(按分⽅式)のみでは、製品単位でのカーボンホットスポットを⾒抜くことができず、削減ポテンシャルのある原材料、プロセスを特定できないという課題があります。また、サプライヤー側からは製造プロセスのすべてを下流の企業に渡してしまうと、その部品原価や製造にかかわる秘密情報も漏れてしまうといった問題もあります。
その両⽅が、SCISを活⽤したCTCのGXソリューションにより解決します。
[解決⽅法] 上記の問題解決⼿段の⼀つとしてSCISを活⽤したCFP算定〜分析の⽅法を以下の図に従い、ステップごとにご紹介します。
1. 各原材料CFPは企業ごとに⾃社⼯場から算定された1次データを基に各原材料別に算定します。
2. 算定されたGHG排出量はCFP認定を受け、SCISを介して各製造⼯程で排出量が加算され各部品単位のCFPとなります。それを繰り返すことによって、各企業では⾃社より1つ上流⼯程の企業で算定されたCFPのみが参照できる状態となり、それより上流⼯程の情報は秘匿されたまま運⽤することが可能となります。
3. 最終的に集まったデータをBIツールなどで可視化・分析することにより、⼀つの製品におけるGHG排出量のホットスポット分析が可能となります。
SCISのCFPデータ登録⽅式はPACT(*4)に基づいており、1次データ⽐率の⼊⼒も必須となっておりますので、1次データ⽐率の低い
(≒2次データ⽐率の⾼い)部品、⼯程を特定し、削減努⼒の対象とすることが可能です。サプライチェーン下流側からは直接の仕⼊先に対しGHG排出量の削減余地がないか、施策を協議・提案し、より競争⼒のある製品を作り出すことも可能となります。
*4 PACT 持続可能な発展のための世界経済⼈会議(WBCSD)が主催する炭素の透明性のためのパートナーシップ
SCISを活⽤したCFPデータの分析イメージ
伊藤忠テクノソリューションズとIBMのGX⽀援サービスは、企業が⾃社製品のGHG排出量を正確に可視化し、サプライチェーン全体ですか︖の脱炭素化への道を確固たるものにするため強⼒にサポートいたします。
今回のSCISを使ったデモのご説明や、無料評価版をお試しいただくことも可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。