再生可能エネルギーのメリットとデメリット

日没時に太陽光発電所でノートPCを操作するエンジニア

厳しい条件下で太陽光発電や風力発電に取り組む北極圏の辺境の村から、先進的な大規模地熱発電システムを計画している米国空軍基地まで、今日、再生可能エネルギーの新たな開発が注目を集め、世界中の地域社会に希望を与えています。

世界中の多くの国々が気候変動と地球温暖化の影響を緩和することに取り組む中、再生可能エネルギーの革新と進歩は明るい兆しとなっています。太陽エネルギー、風力エネルギー、水力エネルギー、地熱エネルギー、バイオマスエネルギーの生成は、石油、天然ガス、石炭などの化石燃料の燃焼よりも地球に優しいエネルギー生成方法です。

再生可能エネルギーには多くのメリットがある一方で、その開発と利用にはデメリットもあります。ここでは、その両方について掘り下げてみましょう。

再生可能エネルギーにはさまざまな(そして時には驚くべき)メリットがあります。

再生可能エネルギー電源のメリットは多岐にわたり、その中には群を抜いて顕著なものもあります。

枯渇しない供給源

太陽、風、水などの再生可能エネルギーの主なメリットの1つは、エネルギー源が決して枯渇しないということです。対照的に、再生不可能な資源は有限であるだけでなく、利用可能性が低下するにつれてコストが上昇し、環境への影響が大きい、より極端な抽出方法が必要になります。

カーボンフリーのエネルギー生成

クリーンエネルギーへの移行における目標は脱炭素化です。2022年の二酸化炭素排出量は石油だけで11.2ギガトン(Gt)に達しましたが、再生可能エネルギー発電では家庭、自動車、企業に電力を供給するのにほとんどまたは全く二酸化炭素を排出しません。

より清潔で健康的な環境

石炭などの化石燃料を燃やすと、窒素酸化物や二酸化硫黄などの大気汚染物質が放出され、また、これらの資源の採掘は水質汚染を引き起こし、動物の生息地に損害を与える可能性があります。化石燃料の代わりに再生可能エネルギーを使用すると、これらの汚染物質の排出量が削減され、人間の健康と自然環境へのリスクを軽減するのに役立ちます。

エネルギーの自立性

再生可能エネルギーは、国内でのエネルギー生成の新たな機会を開き、外国へのエネルギー依存を減らすことで、より強力なエネルギー安全保障を実現します。例えば、ロシアのウクライナ侵攻以来、欧州諸国はロシアからの石油とガスの輸入を削減しようと努めてきました。その結果2023年には、欧州の国内再生可能エネルギー生産が増加し、EUの電力構成の過去最高の44%を占めた一方、ロシアからの輸入量が減少し、より安定し、堅牢な電力網の構築に貢献しています。

保守の軽減

特定の種類の再生可能エネルギーでは、そのインフラストラクチャーの保守の必要性と保守コストは最小限に抑えられます。例えば、太陽光発電システムには一般的に可動部品がなく、ほとんど保守をせずに25年以上使用できます。また、水力発電所は一般的に運用コストが低く、保守もほとんど不要な状態で、設備の寿命が長く、何十年も稼働し続けることができます。

手頃な価格のエネルギー

コストに関して言えば、再生可能エネルギー源はかつては化石燃料に比べて割高でしたが、化石燃料の価格が上昇するにつれて、再生可能エネルギーが手頃な代替エネルギーの選択肢として浮上してきました。新規の大規模な太陽光発電プロジェクトや風力発電プロジェクトの96%で、新設される石炭火力発電所や天然ガス発電所よりも発電コストが低くなると推定されています。より多くの再生可能エネルギー資源が電力網に連携される中、企業はエネルギー使用を最適化し、全体的なエネルギーコストを削減するためのエネルギー管理プログラムも導入しています。

雇用創出

近年、クリーン・エネルギー業界と化石燃料業界の両業界で雇用は増加していますが、前者は著しい速さで成長しています。その結果、クリーン・エネルギー関連の仕事は現在、世界のエネルギー部門の6,700万の雇用のうち半分以上を占めるに至っています。こうした成長により、さらなる労働者需要が高まっており、現在、化石燃料発電施設で働いている労働者が再生可能エネルギー産業に移行するための再訓練も必要になっています。

クリーン・エネルギー移行へのハードル:再生可能エネルギーのデメリット

再生可能エネルギーのメリットは高く評価される一方で、デメリットもあります。再生可能エネルギーのデメリットを理解することで、組織は再生可能エネルギーの導入をより適切に計画できるようになります。今日の再生可能エネルギー・プロジェクトのデメリットをいくつかご紹介します。

高額な初期費用

再生可能エネルギー技術への移行は長期的にはコストを節約しますが、部品コストと初期コストが高額になる可能性があります。例えば、中小企業は、エネルギー需要に応じて、商業用太陽光発電設備に100,000米ドル以上を支払うことが予想されます。しかし、インセンティブや税額控除、さまざまな割引に関する法律が、これらのコストを相殺するのに役立つでしょう。

立地と地形に関する要件

再生可能エネルギーによる発電のほとんどは立地が極めて重要になります。太陽光発電所には遮るもののない日光が、水力発電には水の動きが、風力発電所にはオープンスペースが、また、従来の地熱発電には温水源の近くにあることが必要です。多くの場合、再生可能エネルギーシステムには、従来の発電所よりも多くのスペースが求められます。気候変動に関する知識や洞察を提供しているICF Climate Centerが実施した調査によると、大規模な再生可能エネルギー施設には、石炭火力発電所や天然ガス火力発電所よりも10倍の広さの土地が必要であることがわかりました。

生成量のばらつき

再生可能電力の発電量は気象条件の影響を受けやすいことが問題となっています。例えば、太陽光発電は曇りの日に、水力発電は干ばつに、風力発電は風の穏やかな日にそれぞれ影響を受けやすいことが特長です。そのため、特定の時点で生成されるエネルギーの量を保証することは困難です。企業がこの不安定さに適応できるよう、IBM Environmental Intelligence Suiteなどのソリューションは、センサーや地理空間データ、高度な分析、機械学習人工知能(AI)、気象データを使用して、翌日の風力および太陽光の予測を行っています。

ストレージ要件

再生可能エネルギーによる発電は断続的に行われるため、バッテリーはピーク発電期間中にエネルギーを収集し、発電量が少ないまたは発電が行われていない期間には、管理された一貫した方法で配電を行う必要があります。公益事業規模のアプリケーションをサポートするエネルギー貯蔵システムは高価ですが、より手頃な価格の長期貯蔵をサポートする技術が開発されています。

サプライチェーンにおける障害

サプライチェーンにおける障害が再生可能エネルギー・プロジェクトの導入を妨げています。米調査会社であるMcKinsey社のレポートによると、プロジェクト開発者は、3つの主な課題に直面しています。1つ目は供給不足が予測される中での原材料と希土類金属の入手、2つ目は必要な人材と機械の入手、そして3つ目が重要な部品のサプライヤーにほとんど選択肢がないことです。例えば、太陽光パネルに使用される材料であるポリシリコンの場合、世界の生産能力の79%が中国に集中しており、太陽光発電産業は中国での混乱に対して脆弱です。

二酸化炭素排出量と廃棄物

太陽光発電や風力発電では発電時に有害な排出物は出ませんが、再生可能エネルギー機器の製造、設置、輸送の段階では温室効果ガス排出が発生することがよくあります。さらに、資産の生産プロセスと廃棄の過程で廃棄物が発生し、風力タービンのブレードやソーラーパネルが埋め立て地の大きなスペースを取ることになります。

再生可能エネルギーの調達の最適化

再生可能エネルギー業界にある企業や再生可能エネルギーの調達に関心のある企業は、適切なツールを使用して再生可能エネルギーの動向を積極的に監視できます。例えば、IBM Environmental Intelligence Suiteは、過去のエネルギー生成データ、気象データなどを使用して、風力および太陽光資産の高精度なエネルギー予測を生成し、企業が重要な意思決定をするのに貢献します。

 

著者

Alice Gomstyn

Staff Writer

IBM Think