OVHcloudやqBraidが提供するJupyterベースの環境は、クラウド上でQiskitを扱うプロセスを簡略化します。
IBM®は、量子回路に初めて取り掛かろうとしている初心者に対しても、既に100量子ビットを持ったユーティリティー・スケールのワークロードを組み上げているエキスパートに対しても、ユーザーが自分のローカル・マシンから IBMの量子ソフトウェアとユーティリティー・スケール量子ハードウェア・リソースにアクセスすることを容易にします。Qiskit SDKとQiskit Runtimeクライアントをダウンロードしてインストールしさえすれば、回路を用いた実験、量子プログラムのローカル・シミュレーション、そして IBM Quantum™ハードウェア実機へのジョブの投入ができるようになります。しかし、ローカルでなくクラウドでの作業を好むユーザーはどうしたらいいでしょうか?
IBMはクラウド・サービス・プロバイダーOVHcloudと、量子ソフトウェア開発クラウド・プラットフォームqBraidを、クラウド上でQiskitを使用するためのノートブック環境の推奨プロバイダーとして選びました。IBM Quantum Labを終了するという最近の発表の直後に行ったこの発表は、IBM Quantumがユーティリティー・スケール量子計算に集中しつつ Qiskitエコシステムの持続的な成長を促進するための、広い範囲にわたる取り組みの一環です。今後、これらの新しい推奨プロバイダーは、Qiskitの事前導入された便利なクラウド・ベースJupyter環境を求めるニーズを満たしてくれることと期待されます。
また、IBM Watson® Studio、Google Colab、Microsoft Azure Machine Learning Studioなど人気のあるJupyter Notebookサービスを利用しているユーザーも、Qiskit SDKやQiskit Runtimeクライアントをノートブックにインストールすることで、クラウド越しにQiskitを扱うことができます。
このブログ投稿では、これらの異なるクラウド・ベースのツールを活用する方法を紹介します。
OVHcloud Public CloudやOVHcloud Startupのユーザーは、OVHcloudの量子ノートブックを利用してQiskitを利用し、IBM QuantumやIBM Cloud®アカウントでIBM Quantumハードウェアにジョブを投入することができるようになりました。OVHcloudの量子ノートブックを使用するためには、下記の手順に従ってください。ただしOVHcloud AI Notebookは一部のリージョンのみで利用可能であることにご注意ください。
OVH Cloud AI Notebooksでの使用開始方法:
(1) OVHcloudの無料アカウントを設定してください。
(2) OVH Public Cloudプロジェクトを作成してください。
(3) Qiskitノートブックを作成して実行してください。
また、クラウドベースの量子ソフトウェア開発プラットフォームであるqBraidは、2024年5月末にQiskitユーザーの推奨ノートブック環境の一覧に加わると発表しました。Qiskit SDK v1.0および最近リリースされたv1.1のユーザーは、事前設定されたqBraidのPython環境にローカルマシンやIBM Quantum Labから作業を移行できます。これを実現するためには、ここにあるqBraidの移行ガイドを参照してください。qBraidプラットフォームで、古いQiskitのバージョンで既存のコードを持っているユーザーも、バージョン管理されたQiskit環境でノートブックを実行してシームレスな移行をするのにqBraidプラットフォームを利用することができます。
qBraid Labでの使用開始方法:
(1) qBraidの無料アカウントを設定してください。
(2) Jupyter Lab Environmentを作成し、Qiskitを起動してください。
Qiskitのネイティブ・サポートを提供することで、qBraidやOVHcloudはクラウド・ベースのノートブック環境でのQiskit利用開始の手続きを簡略化してくれます。一方、QiskitはIBM Watson Studio、Google Colab、Microsoft Azure Machine Learning Studioなどその他の人気のあるノートブック環境でも簡単にインストールできます。
ユーザーがどのノートブック環境を選ぶとしても、Qiskitのインストール手順はほぼ同じです。ユーザーはアカウントを作成し、新しいプロジェクト(プラットフォームによっては「ノートブック」あるいは「ワークスペース」と呼ばれる場合もあります)を開始し、Qiskitをpip installします。各環境での利用手続きについて以下で見てみましょう。
IBM Watson Studioでの使用開始方法
(1) IBM Watson Studioの無料トライアルを設定してください。
(2) Watson Studioプロジェクトの作成
(3) Qiskitパッケージと必要な依存モジュールのインストール
Google Colabでの使用開始方法
(1) Googleアカウントを設定してください。
(2) ノートブックを作成しQiskitをインストールします。
Microsoft Azure Machine Learning Studioでの使用開始方法
(1) Azure Accountを設定してください。
(2) Azure ML Studio Workspaceを作成し、Qiskitをインストールしてください。
これで完了です!これらの手順に従えば、OVHcloudやqBraidなど推奨ノートブック環境でも、あるいはIBM Watson Studio、Google Colab、Microsoft Azure Machine Learning Studioなどの主流プラットフォームでも、クラウド上でQiskitを使う準備が整います。
この他の人気のあるノートブック環境でQiskitをインストールする方法についてヘルプが必要な場合は、対応するプラットフォームのドキュメントを確認してください。また、Qiskit Slackチャンネルで質問を投稿することも考えてみてください。
この記事は英語版IBM Researchブログ「Explore newly recommended notebook environments for Qiskit」(2024年6月3日公開)を翻訳し一部更新したものです。