ビジネス・パートナー視点から見た「日本Maximoユーザー会2025」

公開日 12月3日 2025

40年の歴史をもつ資産管理ソリューション「IBM Maximo」が、今あらためて世界で注目を集めています。

欧米では、製造、エネルギー、交通、公共インフラなど、多様な分野で導入が加速し、ユーザー会を中心としたコミュニティ活動もかつてない盛り上がりに。そしてその熱は、日本にも確実に届きはじめています。

2025年10月30日、日本IBM虎ノ門本社で開催された「日本Maximoユーザー会2025」は、そうした世界的潮流を体感できる一日となりました。

本稿では、現場のリアルな声とともに、今後のビジネスチャンスを探るためのヒントをお届けします。

欧米で再評価される理由 ― “熟成と進化”を両立するプラットフォーム

Maximoが長年支持され続けてきた理由は、「資産を守る」だけでなく「事業を進化させる」仕組みを提供してきた点にあります。

1980年代に誕生して以来、業界を超えて複雑化するEAM(Enterprise Asset Management:企業資産管理)のニーズに応え続け、今ではAI・IoT・クラウドなど最新テクノロジーを統合した“インテリジェントEAM”へと進化。

信頼性と拡張性を兼ね備えたMaximoは、「サステナビリティ」や「レジリエンス」といった現代経営のキーワードにも直結するプラットフォームとしての評価を高めており、革新性と時代を超越した柔軟性を備え持つプロダクトとして、世界的なリーディングポジションを盤石なものとしています。
 

欧米ではこの流れを背景に、ユーザーコミュニティが非常に活発です。

特に今年2025年は、Maximoが世に出てから40年を記念する特別な年。日本Maximoユーザー会2025でも、世界最大規模のMaximoユーザーイベント「Maximo World 2025」に現地参加してきた日本IBM 根来佳穂が、その熱気あふれる様子を紹介しました。

多様な業界・多様なステージに広がる導入の波 ― 現場×技術×コミュニティー

この欧米の熱気は、日本にも着実に波及しています。

以前は一部の大手製造業やインフラ企業が中心だったMaximoの導入が、最近では電力・エネルギー、製造業(素材・化学・自動車など)に加え、交通・物流、食品・飲料、設備保守・エンジニアリングなど多岐に渡っています。

また、新たな導入企業が増えただけでなく、「部分導入から全社展開へ」「設備管理から業務最適化へ」といったスケールアップ事例が相次いでいるのも、現在の日本でのMaximoの導入状況を表しています。

それをあらわすかのように、今回の「日本Maximoユーザー会」にも、さまざまな業種から過去最多となる30社80名の参加者が集まりました。

日本Maximoユーザー会では、そうしたスケールアップ事例発表として、ユーザー企業様と導入・バージョンアップ・改修支援を行ったMaximoパートナー企業様による共同事例発表やQAセッションも行われており、この日も「現場×技術×コミュニティー」が一体となった進化を進めている様子が伺えました。

【3つのユーザーセッションより】

・ ユーザーセッション#1 Maximo Application Suite(MAS)化への着手と現状

Maximoモバイルのオフライン活用に強い期待を寄せているというユーザー企業様より、Maximo7.6からMAS化を行うにあたった経緯と現状を共有いただきました。

海外環境、国内検証環境、国内本番環境それぞれのMASへのアップグレードを順次進めており、すべてが完了するのは2027年。OSレイヤーをINAP VISION様、アプリケーションレイヤーはソルパック様がご担当され、IBMがそれをサポートしています。

INAP VISION様はOpenshiftがもたらした運用保守の変化、ソルパック様はアップグレードによるアプリケーション領域の変更点について共有頂きました。

・ ユーザーセッション#2 Maximo運用改善の取組

ユーザー企業様より、2023年4月のシステムカットオーバー後に多数発生した問い合わせを削減するための取り組みを共有頂きました。今年1月にはUX改善ツールを導入。結果として前年同月比で約3割ほどのお問い合わせ削減を達成したそうです。

システム開発・保守パートナーの株式会社中電シーティーアイ様からは、画面表示速度など処理性能の不満に対して、負荷分散等を通して改善した取り組みを共有頂きました。

・ ユーザーセッション#3 Maximo×生成AIによる保全情報活用の取組み

2019年に旧保全管理システムの更新を目的としてMaximoを導入されたユーザー企業様より、保全業務のPDCA運用、生成AI活用構想、エンジニアリングチェーンDXとの連携、そして今後期待される効果についてご説明いただきました。将来的な生成AIの構想では、故障分析・定期保全分析、保全ノウハウやマニュアルをもとに活動改善提案や在庫数の最適化を検討。エンジニアリングチェーンDXでは、設計・生産・保全情報にAIを活用し、部門横断的な情報連携を推進する準備を進めています。

パートナー企業が語る「Maximoユーザー会の価値とそこで得られるもの」

日本Maximoユーザー会の最大の特徴は、ユーザー主導のコミュニティー文化にあります。ユーザーが実体験を語り、パートナーが技術で支え、IBMがそれを橋渡しする。

この三者連携が、Maximoというプロダクトの信頼を支え、次の導入企業や新たなパートナーを自然に巻き込む力になっています。

この日のすべてのプログラムが終了すると、参加者の多くが会場の虎ノ門ヒルズステーションタワーの別フロアで開催された懇親会にも参加されていました。こうした懇親タイムもユーザー会の醍醐味の一つかもしれません。

懇親会の前後に、何名かのパートナー企業の皆さまより、以下の質問にお答えいただきました。

パートナー企業の皆様にとって、

 Maximoユーザー会の存在意義やそれに参加することの意味とは?

・ エクサ 高橋さん

ユーザーの「今の声」をどれだけ知っているか——。それが導入のご提案にも、インテグレーターとしての設計や実装にも効いてくると感じています。「今の声」を踏まえていなければ、お客様には響きませんから。そういった点からも、こうしたユーザー会の存在とそこに参加させていただけることは非常にありがたいですし、私たちにとって意義深いものです。

そして私が知らないだけかもしれませんが、IBMのMaximoユーザー会ほど、ユーザーがあらゆる面で前面に出ているものは珍しいのではないでしょうか。

・ INAP Vision 黒澤さん

これまでお客様とはオンラインですべてやりとりしていたんです。だから、こうして直接会ってコミュニケーションできるのは、今日ユーザー会があるからこそです。すごくありがたいですし、僕にとっては意義深いですね。

また、セミナーという形式よりも「共通テーマに取り組んでいる仲間」という感じがあって、そのせいか少し打ち解けた感じで話せるのもありがたいですね。

・ アクセンチュア 山下さん

ユーザー企業の実担当者の方の生の声が聞けて、それが他社の実担当者の方たちにどんな反応で受け止められているのかを直接目にできる。また、ユーザー企業同士が話している場に混ぜていただき、取り組みについての深掘った会話に加えていただける——こうした場がパートナー企業にも開かれているのは大変ありがたいです。

Maximoユーザー会には大きな魅力がありますね。これからも参加させていただくつもりです。

・ ソルパック 千葉さん

同窓会的な楽しさがありますし、導入支援をしたお客様が今どんな状況かを知ることができるのは、Maximo導入支援をするものとして価値が高いですね。

昨年参加させていただいた天城で一泊するものが「問題解決を目指し関係を深めるもの」だとしたら、今回の虎ノ門での半日開催は「情報を収集し関係を広げていくこと」なのかなという感じです。今後も一回おきくらいに両方を開催いただけるといいのかもしれませんね。

・ ソルパック 加賀さん

普段聞けないユーザー様事例と、そこでパートナー様がどんな作業を実施されたのかを見聞きできることの意味はやはり大きいですね。普段、そういう機会はほぼありませんから。

もちろんそれは手の内を明かすということでもありますが、それ以上にお互いの切磋琢磨につながっています。

また、新しい関係性が生まれるのもこうした場の魅力ですね。


来年のMaximoユーザー会でも、多くの新しい関係がきっと生まれることでしょう。

最後に、今回のMaximoユーザー会で全体司会という「大役」を務めた、2025年日本IBM新卒入社の名倉 明香里の感想を共有します。

日本IBM 名倉 明香里(テクノロジー事業本部 オートメーション テクニカル・セールス)

「歴史ある製品でありながらも、ユーザー様とパートナー様の創意工夫によってこれからもさらに進化を重ねていく製品でありコミュニティーなのだと、感じた1日でした。

また、ユーザー様とパートナー様がそれぞれの立場から進化のために議論し合えるコミュニティーが存在しているということにとても驚いた1日でもありました。

私も少しでも早く、Maximoコミュニティーの皆さんに負けない知識と熱量を身につけたいと思っています。」


 

関連コンテンツ

日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート

https://www.ibm.com/jp-ja/think/insights/iot-maximo-user-conference-2024
 

Maximo Japan Community

https://community.ibm.com/community/user/groups/community-home/digestviewer?CommunityKey=247def71-6f32-44ba-a78c-01874de764c9


寄稿者

八木橋 パチ

日本アイ・ビー・エム株式会社、Partner Ecosystem、コラボレーション・エナジャイザー