IT組織変革のすすめ|IBMとの共創によるIT組織変革事例(4/4)

IT組織の果たす役割は従来業務および新たなビジネス・トレンドへの対応により、指数関数的に重要性を増しています。経営のトップはこれらの役割を果たすために組織構造の見直し、最適化を図らなければなりません。

このブログ・シリーズは以下の4パートで構成されており、IT部門が直面する課題を乗り越えるための取り組みについてご紹介します。

IT組織変革のすすめ|迫りくるビジネス・トレンドと課題(1/4)

IT組織変革のすすめ|戦略パートナーとの共創による課題解決(2/4)

IT組織変革のすすめ|IBMとの“DXパートナーシップ”による変革(3/4)

IT組織変革のすすめ|IBMとの共創によるIT組織変革事例(4/4)

本パート「IBMとの共創によるIT組織変革事例」では、パート2と3で触れた解決の方向性である“共創スキーム”をIBMとともに実現いただいた実際のお客様事例についてご紹介します。

IBMの支援事例(国内製造業のお客様)

事例概要

100超のアプリケーションの開発・運用保守をIT子会社にて実行されておりましたが、後述の目的達成のため、お客様の社員400名をIBM子会社へ転籍いただくことにより、実行領域の共創スキームを実現しています。既存の委託会社についてもIBM管理下への移管およびIBM地域DXセンターへの変更を行ないました。

これにより大幅な品質改善および人件費の変動費化と削減を実現し、お客様が掲げられていたDXへ注力するための資源を獲得・次世代に向けた変革を推し進めていただくことに成功しています。

事例詳細

この事例のお客様ではビジネス・サイドから以下の期待を寄せられておりましたが、自社だけでは実現困難であったことから、外部の力を活用する意思決定のもとIBMとのパートナーシップをご採用いただきました。

  1.コスト最適化(継続的な削減、人件費の変動費化)

  2.最新ITの採用・適用

  3.IT人材の強化(DX推進・アーキテクチャーなど)

DXパートナーシップによる共創スキームには「IBMによるお客様IT部門・IT子会社の補完」や「共同出資によるジョイント・ベンチャー設置」など複数のパターンがあります。本件では、特にDX推進に向けた体質改善としてのコスト最適化に対する期待が大きかったことに加え、大幅な人材強化も必要であったことから抜本的な改善に向けIBMアセットへのアクセスが最も高く、フル・ナレッジを活用いただける「IBMサービス子会社への出向・転籍」の選択を決断されました。

この大きな決断により、1年間で100超のアプリケーションの開発、保守運用をIBMスキームに移行し、お客様IT組織のスリム化、転籍モデルによる人件費の変動費化、業務変革によるITコスト最適化を達成しました。これによりお客様はDX戦略の実行を加速、IBMも共創DXスキームであるIBM Garage※を立ち上げDX戦略の実現に貢献しています。

具体的な成果として、以下の2つの施策・効果創出を実現しました。

1.IBMアセット・リソースを活用した開発・運用保守の徹底的な効率化

移行前では複数の委託会社を採用されており、領域ごとにプロセス・品質が疎らであったことで作業の無駄・重複や障害が多く生じておりました。そのため、まずプロセス標準化とツールの適用に取り組みました。

移行には実績あるIBMグローバル標準のプロセスと最新のITSMツールを採用しています。実行領域の業務については、既存ベンダーを見直し、全面的にオフショア、ニアショアを活用しています。オフショアへの業務移管についてもグローバルで確立されたマイグレーション・フレームワークがあり、移管におけるチェックポイントをもれなく押さえ、業務の移行・人材の教育を効率的に実施したことで、業界を代表する大企業のIT業務を対象としながらわずか1年という短期間での移行を実現しています。

このように確立されたプロセス・フレームワークや新たなテクノロジーの導入による開発、運用保守モデルの近代化、および、既存ベンダーの見直し、オフショア、ニアショア活用したローコスト・デリバリーによって品質と効率性が向上し、コスト削減を実現しました。

2.ITとしての対応力強化とDX推進

1の施策での成功をもとに、DX推進のためのIT適用や人材育成へも取り組みました。IBMグループ企業へ転籍や出向を頂いたことで、従来IT領域においてはIBMメソッドを習得いただき大幅なレベルアップを実現しています。加えて、転籍、出向されることで他顧客への案件参画機会を得ることもできます。従来から持たれていた業務知見とIBMメソッドに基づくITの実行力を他顧客の案件で実践することで更なるスキル向上・自社案件への還元という好サイクルを実現いただいています。

DX推進については、お客様で掲げられていたDXプランの実現に向けてIBMが提供するDX具現化のための共創DXスキーム“IBM Garage”を立ち上げました。

IBM Garageとは

デジタル・イノベーションを起こすために必要なリソース・メソッドを提供する枠組みです。デザイン思考、アジャイル/DevOpsなどの思考法、手法からIoT、ブロックチェーン、セキュリティーや先端リサーチによるナレッジを提供し、イノベーションの面においても共創パートナーとしてご支援します。

この取り組みの1つでは、生成系AIを活用した画像認識業務の高度化により数か月数千万円規模での時間、費用削減を実現され顕著な成果を挙げられましたが、ここで特筆すべきはこのプロセスそのものであると考えています。

従来のIT組織では取り組むことができていなかったDX推進活動をゼロから立ち上げ、IT部門が主体となってユーザ・インタビュー、MVP構築、PoC実行、ソリューション構築を行なう組織へ変革をなしとげられました。入社してまもないため下流工程の業務に従事されていた方や、従来IT領域で業務が固定的だったベテランの方が若さや経験を生かして提案、実証案件をいくつも生み出し、直接的な売上貢献を果たされていくなかでDX推進の組織風土を確立されました。

まとめ

全4パートにわたり、IT部門が変革を迫られる背景と課題、その解決の方向性や変革に向けた注意点と具体的な取り組み施策、具体的変革の事例についてご紹介してきました。最後までご覧いただきありがとうございました。

IBMは、国内、グローバルで長年培ったアウトソーシング・サービスの経験と実績、先進技術への知見を有しており、IT変革のベスト・パートナーになり得ると自負しています。デジタル変革に向けて全社をあげてご支援いたしますのでご興味、ご関心がございましたら是非一度お声がけください。

ブログ・シリーズ

寄稿者

藤田 順平

日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 ハイブリッド・クラウド・サービス Business Transformation Consultant