IT組織変革のすすめ|戦略パートナーとの共創による課題解決(2/4)

IT組織の果たす役割は従来業務および新たなビジネス・トレンドへの対応により、指数関数的に重要性を増しています。経営のトップはこれらの役割を果たすために組織構造の見直し、最適化を図らなければなりません。

このブログ・シリーズは以下の4パートで構成されており、IT部門が直面する課題を乗り越えるための取り組みについてご紹介します。

IT組織変革のすすめ|迫りくるビジネス・トレンドと課題(1/4)

IT組織変革のすすめ|戦略パートナーとの共創による課題解決(2/4)

IT組織変革のすすめ|IBMとの“DXパートナーシップ”による変革(3/4)

IT組織変革のすすめ|IBMとの共創によるIT組織変革事例(4/4)

本パート「戦略パートナーとの共創による課題解決」では、パート1で触れたIT組織が抱える現状課題に対する解決の方向性についてご紹介します。

解決の方向性

パート1で触れた問題への解決の方向性として、IBMではIT部門の業務を“戦略領域”と“実行領域”にセグメントし、事業部門およびパートナーとの連携を前提として業務を再配置した“共創スキーム”で組織全体のIT機能の拡張を図ることを提案しています。具体的には、従来の“実行領域に軸足をおいたリソース配置”から“戦略領域に軸足をおいたリソース配置”へ転換することで新たなチャレンジへとシフトします。

IT部門の課題を解決し組織機能を拡張するための共創スキーム例

  • 実行領域(開発・保守運用)
    実行領域はパートナーに業務委託し、さらにパートナーのメソッド・ナレッジで業務を最適化しコスト・コントロール(スリム化)します。この領域はブラックボックス化させることがないようにITのマネジメント・プロセスを標準化し、ツールと会議体での見える化により自社でのマネジメント可能な状態を維持します。可視化された情報を下地としてサービスレベル改善のPDCA(Plan-Do-Check-Act cycle)を回すことで品質・ユーザ満足度の向上を目指します。
  • 戦略領域(企画などの上流業務)
    戦略領域にはIT組織の主たる業務として自社人材を割りあて経営に一層直接的な影響力を行使できるあるべきIT組織の姿にシフトします。開発領域については従来からのパートナーとの連携を維持するものの、アジャイル開発、クラウド化、生成系AIの業務適用など、新たなメソッドをパートナーから移入し、必要に応じて将来的には内製開発も視野に入れた段階的な自社リソースの拡張も考慮します。

IBMの取り組み/業務最適配置のためのDXパートナーシップ

この解決の方向性である“共創スキーム”の具体的取り組みとして、IBMでは“DXパートナーシップ”を提供しています。DXパートナーシップは、現行システム運営から人材と予算を捻出するための受け皿としてIBMを利用していただき、そこで捻出された人材と予算をDXの推進力などへ最大限変換するための枠組みです。実行領域の業務をIBMに委託していただくことで人材と予算を事業部門との協業と共創に振り分けていただきます。また、戦略領域においても人材育成やDX推進に関するノウハウをもってお客様のビジネス貢献に伴走します。

DXパートナーシップにより、実行領域はIBMが主体となり取り組み、IBMメソッド、AIやツール、ベストプラクティスを展開することで業務生産性および品質向上を実現します。また、IBMの豊富なリソース・プール活用により、規模変動する開発業務にもフレキシブルに対応し事業継続性の確保、変化への対応能力を向上させます。

戦略領域ではお客様がシフトされる次の取り組みに対し、DXパートナーシップによりIBMは必要な機能(メソッド・リソース)を補完します。

  • IT戦略部門と事業部が一体となった企業変革の実行
  • IT活用による収益拡大・新規事業創出につながる企画能力の強化、および、戦略ITプロジェクトへの自社リソースの集中、開発力の強化
  • メインフレーム・アプリケーションのモダナイゼーション、オープン系アプリケーションのクラウド・モダナイゼーション、マイグレーション
  • IoT・ブロックチェーンなどテクノロジー・トレンドを活用したデジタル・イノベーションの創出
  • 戦略領域における人材育成(デザイン思考、アジャイル、データ活用など)

DX推進や事業貢献を考える際、戦略領域・実行領域どちらにも備えなければなりませんが、前パートでも触れたように期待される役割は増え続け、外部からの人材確保はより困難になる傾向にあります。戦略領域を担える人材は市場でも需要が高く獲得競争が激化していることに加え、戦略領域では「経営戦略を実現するためのIT戦略策定」「事業部門とのコラボレーションによる新規事業の創出」など自社事業に対する業務的理解、それを支えるシステム構造の理解など自社理解が一定水準必要になることから自社内部から戦略領域へのシフトを目指すことが重要になります。

そのためには、従来は比率高く取り組んできた実行領域に対する今後の取り組み方針を明確にし、事業構造の抜本的な見直しが不可避となります。

ただ、こういった考えに理解や共感をしていただけたとしても従来大幅なリソースを割いてきた実行領域に対して「そのような構造変革をしても大丈夫なのだろうか」「果たしてどうやるのだろうか」といった不安や懸念から検討はされても実行に移されないケースが多くあります。また、共創スキームによる構造変革の実行においては気を付けなければならないいくつかの注意点があります。

次のパート3では、変革に潜む罠と具体的な解決策として、実行上の注意点、IBMでの取り組みとIBMが考える実行領域の変革に対する勘所・アプローチについてご紹介いたします。

ブログ・シリーズ

寄稿者

藤田 順平

日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 ハイブリッド・クラウド・サービス Business Transformation Consultant