日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート

2025年5月7日

 

 

2024年10⽉15〜16⽇の2⽇間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「⽇本Maximoユーザー会」が開催されました。

 

⽯油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企業、施設管理企業など、IBM Maximoをご利⽤中のお客様を中⼼に、導⼊・運⽤⽀援をされているパートナー企業様を含め11社・26名の⽅がたが参加され、Maximoをより効果的に活⽤するためのディスカッションや情報交換が活発に⾏われました。

⽇本Maximoユーザー会2024 2⽇間の実施プログラム

当レポートでは、7つの章に分けられたプログラムの中から参加者の評価が特に⾼かったものを、注⽬ポイントとともにご紹介します。

パネルディスカッション | ⼈材とシステム

ユーザー会幹事企業のジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社 ⼆⼝剛さんよりMaximoユーザー会2024にかける期待が語られた後、参加者の⾃⼰紹介と、参加企業の「Maximo運⽤・活⽤ステータス」の分析結果発表が⾏われました。

オープニング挨拶中のジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社 ⼆⼝剛さん

 

続いて⾏われたのが、開催後の参加者アンケート結果で、満⾜度や有⽤性がとりわけ⾼く評価されたプログラムの1つであるパネルディスカッションです。

下記テーマに沿って2グループに分かれ、パネリストによるディスカッションを45分聴講した後、それぞれのグループで1時間の追加ディスカッションを⾏いました。

その後、各グループによるまとめと発表を約1時間で⾏い、最後に参加者全体でのディスカッションタイムとなりました。

テーマ1: Maximoの⼈材育成・教育テーマ2: システム拡張・運⽤に関する取り組み

「テーマ1: Maximoの⼈材育成・教育」グループでは、過去・現在・未来の3つの視点でパネリストが実施している⼯夫や課題について議論を⾏いました。

単なるシステムの切り替えではなく、パッケージを理解して業務を変えていくことが必要であること。そしてその必要性を、トップダウン・ボトムアップ両⾯で浸透させること。——これが労働⼈⼝の減少や労働時間の制約といった「⼈材不⾜」という課題に対しても、そして熟練者の退職やノウハウの属⼈化からなる「育成・教育」という課題に対しても重要であることが、グループ全体の共通認識となり参加者全員が深く共感していました。

そして「テーマ2: システム拡張・運⽤に関する取り組み」グループでは、複雑化するシステム環境における設備保全やアセットマネジメントに対するスタンスや、パッケージシステムの強みをより⽣かした運⽤について、各社の経験や戦略、課題感が共有され、打ち

⼿についての討論が進みました。

 

「ここまで本⾳で、課題とそれに対するアプローチを聞ける場所は他に考えられない。」

「唯⼀無⼆の解決策がないことがわかった。しかし、多数の具体的な打ち⼿のヒントを、濃い内容とボリュームで得ることができた。」

——懇親会や振り返りの場では、こうした声が多くの参加者から聞こえてきました。

⽣成AI on Maximo | 「分析的かつ説得⼒のある形で」

「⼈材」と「システム」という異なるテーマのパネルディスカッションの両者で、課題解決策として「⽣成AI(ジェネレーティブ

AI)」に⼤きな期待が寄せられていたのが興味深く、印象的で、下記に代表される発⾔が数多く聞かれました。

 

•     ⽣成AIを活⽤するために、どのように/どのようなデータを取りためるべきか。

•     カスタマイゼーションやテーラリングをし過ぎると、⽣成AIの活⽤やBI(ビジネス・インテリジェンス)連携などの「データ利活

⽤」に悪影響が出かねない。どこが注意ポイントとなるのか。

•     信頼性中⼼保全 (RCM)を実現したい。具体的には、保全メンバーに対しては⽣成AIによる信頼性とコストの両⾯で適正な保全実⾏を推奨してほしい。経営層には、コストをかけてでも⼿厚く対応すべきところと事後保全でもよい部分とを、分析的かつ説得

⼒のある形で⽣成AIに提⾔してほしい。

 

こうした各ユーザー企業の意⾒に対し、プロフェッショナル・サービス組織「IBM Technology Expert Labs」所属の横⼭からは、「業務処理とデータ構造を崩さない開発を。」「⾼度な分析や使い勝⼿にこだわったUIは、APIを活⽤した『外出し』の検討を。」などのアドバイスが提供されました。

また、Maximoの強みであるAPM(アプリケーション・パフォーマンス管理)領域をより⽣かした信頼性中⼼保全の実現に向けた取り組みについては、2⽇⽬のプログラム「MaximoWorld参加報告」や、「Maximo最新情報紹介」で⾏われ、Maximoの⽣成AI組み込みおよび連携に関する現在実験中の取り組みや今後の計画が紹介され、参加者から⼤きな期待が寄せられていました。

MUWGご参加に関するご講演 | 競合⽐較と⾃社開発との⽐較

2⽇⽬のオープニングは、中部電⼒パワーグリッド株式会社 システム部⾨にてMaximo担当5年⽬の⾦井 健太さんによる「MUWGご参加に関するご講演」からスタートしました。

 

MUWGの概要紹介中の、中部電⼒パワーグリッド株式会社⾦井健太さん

MUWGとは「Maximo Utility Working Group」の略で「マーグ」と発⾳される、世界各国の電気、ガス、⽔道などの公益事業組織を中

⼼としたMaximoユーザーコミュニティーです。

⾦井さんは今年4⽉に⽶国テネシー州の都市チャタヌーガで開催されたMUWGのカンファレンスにセッション・スピーカーとして参加されました。今回は、その際にお話しされた中部電⼒パワーグリッドにおけるMaximoの導⼊〜運⽤〜未来展望について共有いただくとともに、MUWGでの経験についてお話いただきました。

ユーザー会参加者からの評価がとても⾼かった⾦井さんのMUWG講演レポート。その⼀部をご紹介します。

 

•     「電⼒の安定供給」をミッションとしている中部電⼒パワーグリッドは、配電、送電、変電、系統、通信、建築といった複数部⾨における多くのアセット管理にMaximoを導⼊・運⽤している。

•     Maximo導⼊検討では、さまざまな観点で競合製品との⽐較を実施していた。Maximo採⽤決定理由は「新機能追加の容易さ」「保守性の⾼さ」「ユーザーフレンドリーなインターフェース」。なお、⾃社開発との⽐較では、開発費⽤および開発期間でMaximo の優位性が明らかになった。

•     Maximo導⼊以前は、⾼い開発コストや⼆重⼊⼒、そしてアセットのライフサイクル(設置・点検・修理・撤去)コストが不明であることが主な課題だった。Maximo導⼊後は、ライフサイクルコストの記録が容易に⾏われるようになったため、今後、各コストデータを蓄積しデータ分析につなげていきたい。

•     Maximo運開後も残った課題は、「当社独⾃の点検ルールがMaximo標準に合わない」や「ロケーションと設備の関係性を可視化し、ユーザービリティを向上したい」。Maximo標準に合わない部分は別システムを組むなど対応を進めている。

•     ⼀⾔で⾔うなら、チャタヌーガでのMUWGカンファレンスは「とても楽しかった!」。全体参加者はおよそ500名、中部電⼒パワーグリッドのブレイクアウトセッションには40名程度参加。システム開発期間やユーザートレーニングについていくつかの質疑応答を⾏った。パートナー企業が中⼼となった「Vendor Night」というイベントもあり、とても盛り上がっていた。

ラウンドテーブル | 経営層の期待と現場の期待のバランス

続いてご紹介するのは、2⽇⽬最後のセッションとなったラウンドテーブルです。5つの少⼈数グループに分かれて、踏み込んだ討議と共同作業を⾏いました。それぞれのグループテーマは以下です(テーマ3は⼈数が多かったので2グループに分割)。

1.  利活⽤推進・現場のチェンジマネジメント

2.  保全管理業務に対する⾃社の⼯夫 (業務視点の⼯夫)

3.  Maximo利⽤の懸念・⼯夫(投資対効果の測り⽅など)

4.  データ利活⽤に関する課題・⼯夫

 

ここでは、各グループに書記として参加したIBM社員の声をご紹介します。

1. 利活⽤推進・現場のチェンジマネジメント(橋本)

経営層の「合理化・成果への期待」と、現場の「現状維持・使いやすさへの期待」のバランスに苦⼼されている様⼦が強く感じられた。

CBM(状態基準保全)に使えるデータの⼊⼒や蓄積でお悩みの参加者が多かったので、今後より突っ込んだ議論の場を検討したい。

2. 保全管理業務に対する⾃社の⼯夫 (業務視点の⼯夫)(津久井)

ユーザー企業様ごとに業務の⼯夫についてお話しいただき、参加者全員での深掘りを⾏い、必要に応じてパートナー様やIBMから対応策をコメントさせていただきました。

ドローン活⽤や作業⽇報の対応などトピックの共通点も多く、⾚裸々にお話しいただけたことで皆様にとって有益な時間となった印象です。

3. Maximo利⽤の懸念・⼯夫(投資対効果の測り⽅など)(⼩林)

共通する懸念点、反省点を踏まえた今後の利⽤⽅法について議論いただきつつ、すでにMaximoを⼤規模利⽤されているお客様が利⽤拡⼤を検討中のお客様へアドバイスされたりと、活発に意⾒交換をしていただきました。

4. データ利活⽤に関する課題・⼯夫(梅原)

レガシーシステムが残っている影響もあり、データが散在しているという課題は各社共通のお悩みのようで、活発に意⾒交換されていました。また、データサイエンティストやDX⼈材育成についても同様のようで、お役に⽴てることがありそうだと感じました。

パートナー企業による展⽰ | お悩み相談室

最後に、今回初の試みとなった懇親会会場でのパートナー展⽰ブースに対する参加者の感想と、ユーザー会全体コーディネートを⾏ったIBM 根来佳穂の⾔葉をご紹介します。

 

・ 株式会社ソルパック ブース

「Maximo Application Suite 9.0へのバージョンアップ検討に向け、実際のインターフェースや使い勝⼿を確認できてありがたかった。特にモバイルアプリのメニューや挙動などを実機で触れたのはありがたかったです。」

 

・ 株式会社EXA ブース

「『お悩み相談室』のように、時間を気にせずさまざまな質問にご回答いただけて、⼤いに参考になりました。続けて欲しいです。また、導⼊⽬的の明確化と事前の業務調査を⾏った上で、パッケーシの特性理解を進めることが⾮常に重要だと改めて理解できました。」

 

・ 東芝デジタルソリューションズ  ブース

「⻑年Maximoおよびアセットマネジメントに取り組まれている⼆⾒さんの話を、もっとじっくり聞いてみたいと思いました。WAOT についてももう少し調べてみようと思います。」

ユーザー会全体コーディネート IBM 根来佳穂

今回、企画段階から参加させていただきましたが、初めてのMaximoユーザー会参加ということもあり、当初は不安を感じていました。

特に、「意⾒交換の場が盛り上がらなかったらどうしよう…」と⼼配していましたが、ユーザーの皆様が積極的にご参加くださり活発にご発⾔いただいたおかげで、その不安はまったくの杞憂に終わり、ユーザーの皆様のリアルな声を直接お聞きできるとても貴重な経験となりました。

皆様からいただいた具体的な課題をもとに、今後はその解決に向けた提案や⽀援ができるよう、さらに学びを深めていきたいと思います。今回の開催にあたりご協⼒いただいたユーザーの皆様、パートナーの皆様、そして関係者の皆様に、⼼より感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

ユーザー会クロージング挨拶中のIBM 根来佳穂

八木橋 パチ

日本アイ・ビー・エム株式会社、Partner Ecosystem、コラボレーション・エナジャイザー