第6回 未来への展望 ― AI時代のFinOpsとFinOps時代のAI

9 April 2025

青柳 健

アソシエイト・パートナー,クラウド・アドバイザリー,ハイブリット・クラウド&データ,コンサルティング事業本部,日本アイ・ビー・エム株式会社

AI時代のFinOps/TBM

企業における生成AI活用が飛躍的に伸びているが、現時点ではAIを投資と考え、その投資対効果を測っている企業は少ないのが実態と思われる。

投資と割り切っているがゆえに、また技術検証など限定的なAI活用が主流のため大きくクローズアップされていないが、AIを活用するコストは非常に大きい。

FinOps/TBMとはIT投資対効果の可視化であり、技術検証であっても実運用フェーズであっても、その果たすべき役割は変わらず、AIを活用する上での投資と効果の可視化が必須である。従来型のFinOps/TBMの考え方や、単価 x 数量がそのまま適用できる部分もあれば、異なるコスト要素もある。

1, AIに対する投資(ITコスト)の可視化 TBM分類体系(タクソノミー)などITコストを可視化するための構造的なフレームワークは存在するが、急速に進化・成長するAIにピッタリ整合しているものとは言えないだろう。

GPUなどAIに特化したプラットフォームの利用コスト、基盤モデルの利用コスト、データガバナンスを維持するためのデータ管理コスト、枯渇するAI人材の育成・確保(維持)コストなどAI時代が故に発生するコストをAI利用におけるIT投資コストとして含めるべきである。

さらには、技術の進展が速すぎるため、AIに対してのリスク対策コストもバッファ的に確保しておくべきだろう。

2.AIによる効果の可視化 AIによる効果はさまざまである。AIを実装、または技術検証を行う中で、まず最初に適用ユースケースを検討することになる。そのユースケースにより効果と測定手法は変わります。

重要なことは、特に技術検証フェーズにおいては投資を回収できるか見極めることであり、それはすなわちPoCにおける測定可能(定量的)なKPIを定義することが重要である。そのKPIは本質的にAIに求める機能の観点から、IT視点(稼働率、応答速度など)ではなく、ビジネス視点での活用度、有効度をもって測るべきである。

FinOps/TBM時代のAI

AIの効果はFinOps/TBMにも及びFinOps/TBMは劇的に進化しました。以前は手動で行われていたITコスト管理運用が、AIを利用することで自動化され、効率化が進んでいる。

AIを活用したクラウドベースのFinOps/TBMシステムは、企業全体の財務管理を統合し、リアルタイムでのデータアクセスを提供します。これにより、財務担当者は迅速な意思決定を行い、ビジネスの成長をサポートすることができるようになる。

1. コスト予測の精度向上 AIは過去のデータを分析し、将来のコストを予測する精度を飛躍的に向上させます。ITコストが変動費化する中、予測技術はITコスト管理においてますます重要性を増しています。これにより、企業は予算計画をより正確に立てることができ、突発的な支出を減少させることが可能になります。また、期中における予実管理においてもより精度を高めることができます。

2. 自動化による効率化 日常的なITコスト管理運用を自動化することで、人為的なミスを減少させ、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。例えば、請求書処理や支払い処理の自動化はその一例です。

また、FinOps/TBMシステムがリコメンデーションを表示する機能、リコメンデーションを実装した時の影響、リコメンデーションの実施など様々なアクションをAIにより自動実行することが可能になります

3.リアルタイム分析 AIはリアルタイムでデータを分析し、異常な支出やパターンを即座に検出することができます。これにより、不正な取引や無駄な支出を早期に発見し、迅速に対応することが可能です。

まとめ

AI時代のFinOps/TBMとFinOps/TBM時代のAIは、財務業務の効率化とコスト管理の最適化を実現するためにお互いに欠かせない考え方です。これらのテクノロジーの融合により、企業は迅速な意思決定を行い、ビジネスの成長を加速させることができるのです。未来のビジネス環境では、AIとFinOps/TBMの連携がさらに重要となり、企業の競争力を高める鍵となるでしょう。

ITは貪欲に新たなテクノロジーを取り込みながら、日々進化し成長する宿命を負っています。企業はこれらの新しいテクノロジーを積極的に取り入れるだけでなく、柔軟かつ迅速に変化に対応し、投資と成果を可視化しビジネスに貢献していく必要があります。AIとFinOps/TBMの融合はその最初の一歩となるでしょう。

今後の新たなテクノロジーや考え方に対してもFinOps/TBMは対応し、企業におけるIT投資の最適化を続けていきます。キーは、可視化と関係者間での共通認識の醸成です。

 

第6回をもって、FinOps/TBMブログシリーズはいったん終了します。

一連のブログが皆さんのFinOps/TBMへの興味を引き、業務への適用を考えるきっかけになれば何よりです。

またの機会で第二弾ブログも考えていますので、またお会いしましょう!

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