IBMは、お客様企業の「ハイブリッド・クラウド戦略」の支援に取り組む一方で、IBM自身のハイブリッド・クラウド戦略にも取り組んできました。この目標に向けて、IBMのCIOは、他のお客様が抱えている課題と同様な、以下の様々な課題に直面しました:
CIOに期待されたのは、ハイブリッド・クラウド戦略の推進において、ビジネス目標にあわせてITを有効に活用するために、IT支出に透明性を持たせ、適正な意思決定を行い、ITの予算を再分配することです。
しかし、ハイブリッド・クラウド環境にまたがり複雑化したIT資源を整理し、そのコスト評価やパフォーマンス測定をすることは非常に困難でした。
一例としては、ある業務アプリケーションの運用に伴うソフトウェア・ライセンス費用、インフラ費用、保守運用に関わる人件費などを総所有コスト(TCO)として評価した上で、アプリケーションの統廃合の意思決定がありました。
また、各アプリケーションのクラウド移行戦略において、オンプレミス環境やパブリッククラウド環境がどのようにコスト構造に影響を及ぼすかを理解する必要がありました。
さらに、各アプリケーションやITサービスがIBMの事業部門にどのように消費され、それがどのようにビジネスパフォーマンスに寄与しているかを可視化する必要がありました。
前述の課題の解決を目指し、以下のような観点でIT関連投資とコストを評価できるようにすることを目指しました:
IT関連投資とコストを評価するために必要な情報の例
これらの情報を整理するために、図1の様に4階層でITコストを構造化したTBM分類体系を導入しました。そして、利用部門単位に関するITコスト情報を分類体系毎に整理し、最下位層にある実績や予算(コストセンター)から最上位層のビジネス部門までを関連付けて整理できるようにしていきました。
これにより、部門毎に異なる視点で見ていたコストを、共通言語としての会話ができるような可視化を実現しました。
更に、コスト情報の一元管理を実現するために、図2のように旧Apptio社のSaaS製品(IBM Targetprocess&Cloudability)とIBMの運用監視ツールTurbonomicを導入したことで、コスト情報の可視化が進みました。
図2.コスト情報一元管理のために導入したツール
次に、IBMは組織変革管理がTBMにおける重要な機能であると判断し、TBMをプログラム化して、戦略的かつ確実に、そのミッション遂行を担う専門スタッフを割り当てた「TBMオフィス」を設立しました。
このオフィスの目標は「30%のIT支出の抑制とIBMの戦略的変革の加速」です。
専門スタッフには、ファイナンスオペレーション、ビジネスオペレーション、ファイナンスアナリスト、ビジネスアナリスト、ビジネス部門のオーナーなど、幅広いメンバーが集結し、各自の役割が成果にどのように影響を与えるのかを理解したことで、お互いが責任を持ち、目標達成に向けて取り組むことが出来ました。
こうしたTBMのプログラム化が重要な成功要因となり、以下の成果を上げました:
この取り組みから得られた教訓として、以下が挙げられます:
現在も、IBMではこの取り組みを継続しており、自動化とAI活用を通じて生産性を上げる活動へと更に拡大しています。
次回は、AI for FinOps/TBM についてご説明します。