第1回 FinOpsの基本 ― 筋トレとダイエットに学ぶクラウドコスト管理術

FinOpsとTBMの概念を示す、相互に接続されたクラウドサービスのアイコン
佐々木 嶺

シニア・インフラストラクチャー・スペシャリスト,アプリケーション・オペレーションズ,コンサルティング事業本部,日本アイ・ビー・エム株式会社

河合 恭太

アーキテクト,ハイブリット・クラウド&データ,コンサルティング事業本部,日本アイ・ビー・エム株式会社

佐々木 敦守

プリンシパル・アーキテクト,ハイブリット・クラウド&データ,コンサルティング事業本部,日本アイ・ビー・エム株式会社

FinOpsとは?

FinOps(Financial Operations)は、クラウドコストを適切に管理・最適化するためのフレームワークです。

AWS、Azure、GCPなどをはじめとしたクラウドの活用が進む現代、クラウドコスト管理は企業にとって重要な課題となっています。クラウドの料金は動的であり、リアルタイムでのコスト可視化と最適化が求められます。

しかし、「クラウドコスト管理」と聞くと、何だか難しく感じるかもしれません。そこで本記事では、我々筆者が大好きな筋トレに例えて、FinOpsの考え方をわかりやすく解説します。

筋トレ・ダイエットとFinOpsの共通点

筋トレやダイエットと同じように、FinOpsも「ただやればいい」というものではありません。目標設定、データ活用による最適化、継続的な改善が必要です。

例えば、筋トレも計画なしに闇雲に取り組んでも効果は出ません。目標設定に基づき適切なメニューを組み、体重や筋肉量を記録し、食事管理をしながら継続していくことで、理想の体が手に入ります。

FinOpsも同様に、以下の3フェーズを繰り返すことで、効果的なITコスト管理が可能になります。

フェーズFinOpsの活動内容筋トレとダイエットの対応内容
Inform
  • 現状の可視化
  • クラウドコストと使用状況の見える化
  • 予算編成とKPIの設定
  • 現状の可視化と目標設定
  • 体重、体脂肪、筋肉量、食事内容を記録・把握
  • ベンチプレス100kg、体脂肪率5%減といった目標設定
Optimize
  • コストの最適化
  • リソースの無駄を削減
  • 最適なクラウドプランの選択
  • トレーニング&食事の最適化
  • 筋トレのフォーム改善、最適なメニューの選定
  • 食事の栄養バランスを最適化し、カロリー管理
Operate
  • 継続的な改善
  • FinOpsの運用ガイドラインを作成
  • 組織全体でFinOpsを意識する文化を醸成
  • 習慣化と持続的な成果の維持
  • トレーニングと食事管理を日常のルーティンに組み込み
  • 定期的に成果を振り返り、モチベーションを維持

1.「現状の可視化」:まずは現状を知る!

筋トレでは、まずは「現状を知る」ことが大切です。体重や体脂肪率を記録し、食事内容を把握することで目標が明確になります。

FinOpsも同様に、クラウドコストの可視化が重要です。どの部署がどれだけクラウドを利用しているのか、無駄なリソースはないかを把握することが適切な予算管理の第一歩です。

クラウドコストの可視化のポイント:

  • クラウドの利用状況をコスト管理ツールで可視化(AWS Cost Explorer, Azure Cost Management , Apptio)
  • コストの発生源を特定(どのサービス・プロジェクトがどれだけ使っているか)
  • 予算を立て、KPIを設定

筋トレの「体重・トレーニングの記録」と同様、クラウド利用データも記録・管理することが大切です。

2.「コストの最適化」:無駄をなくし、効率的にシェイプアップ!

筋トレでは、闇雲にトレーニングをしても効果は出ません。例えば、フォームが間違っていたり、摂取カロリーが過剰だったりすると、思うように筋肉がつかなかったり、逆に太ってしまうことも…

FinOpsでも無駄なリソースを削減し、効率的に運用することが重要です。

コスト最適化の方法:

  • 使っていないリソースの削減
  • スケール調整(リソースの動的スケーリング)
  • 割安プランの活用(予約インスタンスやスポットインスタンス)

クラウドも使い方を見直し、効果的なコスト管理を目指しましょう。

3.「継続的な改善」:継続こそ力なり!

筋トレは、一時的に頑張るだけでは理想の体を作り上げることは難しいです。

クラウドコスト管理も同様で、一度最適化して終わりではなく、定期的な見直しとそれを実現する体制作りが必要です。

継続的な改善のポイント:

  • 適切なガイドラインの作成と更新(クラウド利用ポリシーやコスト管理基準の明確化)
  • チーム内のFinOpsに関するトレーニングや知識共有
  • 社内にFinOps文化を定着

クラウドは進化し続けるため、筋トレと同じように「継続すること」が成果につながります。

4. 専門家の活用:プロの知識を取り入れる

自己流ではなかなか結果が出ない…」、「モチベーションが続かない…」というのは、筋トレでもよくある話です。そんなときに頼れるのがパーソナルトレーナーです。

FinOpsでも同様に、専門のコンサルタントやツールを活用することで、より効率的なクラウドコスト管理が可能になります。

 FinOps筋トレとダイエット
自己流
  • コストを可視化せず、無駄に気づかず支出が増える
  • リソースの最適化をせず、不安定コストが発生し続ける
  • FinOpsの意識が低く、継続的な改善が進まない
  • 現状を把握せず、原因が分からないまま結果が出にくい
  • 間違った方法で非効率な努力を続けがち
  • 挫折しやすく、リバウンドや停滞期に対応できない
プロのサポート
  • データ分析に基づき、適切なKPIを設定できる
  • 最適なクラウドプランを選び、コストを削減できる
  • ルールを整備し、チーム全体で効率的に運用できる
  • データを活用し、適切な目標を設定できる
  • 体質や目標に合った最適なプランで効率よく効果を出せる
  • 定期的な見直しで継続しやすく、成果を維持できる

まとめ:クラウドも身体も「計画・実践・継続」が大切

クラウドコスト管理を筋トレやダイエットのように考え、しっかり取り組むことで、企業の財務健全性を保ちながら、効率的なIT投資が実現できます。

FinOpsも筋トレ・ダイエットも、大事なのは計画・実践・継続です。鍛え上げた身体が強さを生むように、最適化されたIT投資が企業の競争力を高めることができると信じています。今日からFinOpsを始めてみませんか?

今回はFinOpsの概要を説明していきました。FinOpsはクラウドにフォーカスしたITコスト管理の内容になっておりますが、次回は企業全体のIT投資の価値を最大化し、効果的に管理するためのフレームワークであるTBMについて紹介します。

もしFinOpsの導入に興味をお持ちでしたら、IBM Consultingをご活用ください。専門家チームが、効率化とコスト削減を全力でサポートします。

関連リンク