IBMが描く2027年に向けた「AI時代のアーキテクチャー」とは

ハイブリッドクラウドランドスペース

「AI時代のアーキテクチャー」で実現する、2027年に架ける橋

DX(デジタル・トランスフォーメーション)が加速するにつれて、ITインフラは大きな変革の必要性に直面しています。2018年に経済産業省が発行した『DXレポート』では、「既存システムのブラックボックス化」、「従来型IT人材の不足」が指摘されました。

2025年を迎えた今、当時予想されていた以上に各企業でのDXは進んでいます。懸念されていた人材不足は定年延長や人材育成への注力で解消方向に、また既存システムのメインフレームはクラウドと共存したハイブリッドクラウドへの移行が進んでいます。

しかしその一方、JavaやPhyton人材に対する企業ニーズの一層の高まりや、生成AIの全社的な活用への壁など、新たな課題が浮上しています。

IBMは、これらの動向に対応すべく、ITシステム全体の目指すべき姿として「AI時代のアーキテクチャー」を整備し、ハイブリッドクラウドとAIが実現するこれからのあるべきシステムへのロードマップを「2027年に架ける橋」としてお客様に提案します。

企業のコア業務を支えるメインフレームは、これからも進化する

今日の企業のITインフラは、クラウドとメインフレームなど既存基幹システムの共存であるハイブリッドクラウドが大多数を占めています。IBMのメインフレームは60年にわたりビジネスの安定稼働を実現しており、大量処理の同時実行と安定性が求められる企業の基幹業務を担ってきました。

メインフレームのデータ活用はDXを進める上で課題とされていましたが、基幹データをほぼリアルタイムにクラウドと連携させるソリューションによってデータ活用が可能となります。

基幹業務は企業の中枢であり、それを支えるメインフレームはこれからも進化し続けます。2025年4月8日に発表されたIBM z17は、AI時代のアークテクチャーを具現化したIBMメインフレームの次世代モデルです。新しいIBM Telum® II プロセッサーを搭載したIBM z17は、融資のリスク軽減、チャットボットの管理、医療画像の分析、小売犯罪の防止など、幅広いAIのユースケースを通じて、さまざまな業界でビジネス価値を高めることができます。

あらゆる場所での活用が期待される生成AIとの連携を通して、戦略策定からシステム開発、運用、プロジェクト管理まで、ハイブリッドクラウドとAIがお客様のビジネスを支えます。

生成AIはヒトとコワーク(共創)する、次の段階へ

2023年時点で日本企業の約2割が生成AIを業務に導入しているように、生成AIはもはや一過性のトレンドではなく、企業成長の重要な鍵を握る存在になっています。今後ますます加速していくことが予想される企業のAI活用は、概念検証(PoC)を通して得られた結果や知見を踏まえて、ビジネスの本番適用の段階へ、そして全社的なAI活用へとシフトしていきます。

これからのAIは、ヒトの指示に従い、ヒトの作業を支援するAIアシスタント(補佐)から、ヒトに代わり複雑な作業を自律的に考えるAIエージェント(代理)、さらにそこから一歩進み、ヒトと分担して一緒に作業したり、ヒトができない作業やタスクマネージメントも担当したりするAIコワーカー(共創)に発展するだろうと予測されます。AIの発展に合わせて業務の自動化(オートメーション)がさらに進み、複数のAIアシスタントをAIエージェントが束ねるようなイメージで、これまでの自動化の範囲を超えて複雑なタスクが実現できるようになります。IBMは、さらに複数のAIエージェントを使い分ける「マルチエージェント」や「オーケストレイター」といったAI機能も配置されることを想定し、研究と製品ソリューション提供を進めています。

企業のAI活用の高度化に向けて重要視すべき点は「生成AIの特性への理解の深化」と「AIガバナンスの確立」の2つ。日々進化するモデルの品質維持はもちろん、既存の基幹システムとAIのスムーズな連携のため、データの受け渡しやフィードバックの仕組みが必要です。またリスク回避策として、AIが誤作動を起こさないための「AIガードレール」の確立が求められています。

AIによる作業支援から、ヒトとAIの共創へ

AIによる作業支援からヒトとAIの共創 これからのAIは、ヒトの指示に従い、ヒトの作業を支援(アシスト)するAI機能から、ヒトに代わり複雑な作業を自律的に考え行動し、さらにヒトと共創(コワーク)するAI機能に発展する。ヒトはこれまで成し得なかった目的を達成する。

AI時代のアーキテクチャーを支えるハイブリッド・バイ・デザイン

進化するメインフレームとAI活用のさらなる発展、この2つを踏まえたITアーキテクチャーが「AI時代のアーキテクチャー」です。オンプレミスやクラウドなどのハイブリッドクラウド・プラットフォームの上にAIとデータの共通サービス・プラットフォームがあり、その上にフロントサービスとデジタルサービス、ビジネスサービスを位置付ける構造を指します。

このアーキテクチャーを実現するための考えとして必要不可欠なのが、Hybrid by Design(ハイブリッド・バイ・デザイン=以下、略称HbD)という、ビジネス価値を最適化するためのIT戦略策定のアプローチです。「バイ・デザイン(by Design)」とは「意図的に、計画的に」という意味を持ち、企業の製品やサービス自体を中心に考え、その強化およびビジネス拡大に向けて、意図的にアーキテクチャーを構築する考え方です。逆に、by Designの対比表現である「バイ・デフォルト(by Default)」は、「特段の考慮なく」という意味で、社内にスクラッチ・ビルドのAIが乱立しているなど、モデルやデータの管理が困難な状態を指します。by Defaultがサイロ化された個別最適のアプローチであることに対し、俯瞰的にIT全体戦略を立てるのが by Designです。

HbDで設計することで、共通化すべきところは共通化し、ビジネス要件を実現するワークロード個別の機能部分と切り分けられるコンポーザブルなITアーキテクチャーとなります。プラットフォームやアプリのアーキテクチャーだけでなく、運用やセキュリティーの標準化、高度化にもつながります。

ハイブリッド・バイ・デザインの進め方

HbDで設計されるアーキテクチャーは、5つの特徴と利点が挙げられます。

  1. プロダクト(企業が取り扱う製品、サービス)中心の考え方を推進していくことでビジネスの優先事項を実現する
  2. ビジネス能力を加速および拡大するために「意図を持った」アーキテクチャーを策定する(個別最適ではなく全体を俯瞰した検討プロセスが重要)
  3. 効果と効率の最大化のため、プラットフォームを跨いで一貫した開発・運用体験を提供する(セキュリティー対策にも有用)
  4. スピード感を持ってビジネス価値を実現するため、プロダクトチームがハイブリッドクラウドを活用できるように強化する
  5. あらかじめ、意図を持ったAI戦略立案により、すべてのデータを活用し、生成AIの適用を広げていく

HbDでは、あらかじめ、意図的に考えるべき領域として、12のケイパビリティー・ドメイン(能力ドメイン)が定義されています(下図の右「ハイブリッド・バイ・デザインで実現する能力」参照)。お客様にとって優先度が高いドメインから変革の戦略策定を始めますが、効果的に進めるために、まずは12のドメインを全網羅的に検討することが重要です。この12のケイパビリティー・ドメインに対して、成熟度アセスメントをすることで効果的な施策が打ちやすくなります。

Hybrid By Designの適用

Hybrid By Designの適用

また「AI時代のアーキテクチャー」では、業界共通編に加えて主要11業界業種の特徴を考慮した目指すべき参照アーキテクチャーを用意しています。

「AI時代のアーキテクチャー」を目指すべきITシステムの雛形とし、HbDの4つのステップを経て招待に向けた包括的なIT戦略ロードマップを策定します。

  1. ビジネス目標の理解:ケイパビリティー・ドメイン・フレームワークを用いたAs-Is/To-Beの把握
  2. To-BeとのGAPを埋めるソリューションの検討:お客様ごとの現状や環境を考慮した最適なソリューションを選定
  3. 各ソリューションがもたらす価値定義とROIの算出:ソリューション毎に価値定義を行い、そのソリューション=イニシアティブがどのくらいの効果をもたらすかを算出
  4. 包括的なロードマップの策定:3で定義した個々のソリューション=イニシアティブを実現するためのロードマップを策定

企業のIT戦略が大きな転換期を迎えていく2027年に向け、競争力強化と持続可能な成長を実現するための架け橋となるべく、IBMは「ハイブリッド・バイ・デザイン」を推進していきます。

寄稿者

高橋 紀瑛

IBM Malaysia、マーケティング部門、 Brand, Content & Creative Professional


監修:二上哲也 (コンサルティング事業本部 CTO 執行役員 IBM フェロー)、大久保そのみ (テクノロジー事業本部 テクニカル・リーダーシップ事業統括 執行役員)、久波健二 (コンサルティング事業本部 技術理事)、青柳健 (コンサルティング事業本部 アソシエイト・パートナー)