IBM戦略コンサルタントの視点 #2|先端テクノロジー起点のイノベーション創出

27 June 2023

1世紀以上もの間、テクノロジーは世界中の企業の経済活動における根幹であり続けている。21世紀以降、先端テクノロジーの産業化のサイクルは一層加速し、政府や大規模な組織による巨大な活動に加えて、スタートアップを含めた民間主導の活動からのイノベーションが次々に生み出されている。

我々IBMは、”Making The World Work Better(世界をより良く変えていく)”という存在意義を企業活動の根幹として捉え、テクノロジーを現実の問題に適用することで、企業のビジネスと社会の双方に有益な進歩をもたらすことができると信じている。100年を超えるIBMの歴史の中で、先端テクノロジーに対する継続的な研究開発を通じて、現在のIT技術の基礎となる多くの発明(例:FORTRAN、DRAM、関係データーベース、RISCプロセッサー、AI等)が誕生した。また、量子コンピューターや耐量子暗号(情報セキュリティー)、2nmプロセス半導体等、その革新は続いている。

しかし、先端テクノロジー単体では、新しい市場創出やビジネス成果につながる真のイノベーションは生まれない。社会や企業の存在意義や問題が時代と共に変化していく中、革新的な先端テクノロジーのもたらす価値や脅威を正しく理解し、自社のビジネス戦略に結合させて自己変革を続けることが極めて重要である。

IBMでは、テクノロジー起点のイノベーション創出に際して、先端テクノロジーの研究開発への経営資源の重点投下から、テクノロジーを新たなビジネスの成長機会として育てる仕組みの実践、市場や環境変化を先取りする継続的ポートフォリオの見直しと成長へのシフトに一貫して取り組んでいる。

これまで、IBMのビジネスは、20世紀のハードウェアとソフトウェアの提供中心から、21世紀以降はコンサルティング・サービス、ハイブリッドクラウドとAI(人工知能)へと大きく転換を遂げた。この絶え間ない変革を支えている源泉は、何より先端テクノロジーに関する揺るぎないリーダーシップである。

先端テクノロジーの研究開発への経営資源の重点投下

IBMは戦略的な研究開発への投資により、競争力のある先端テクノロジーと知的財産の創出を牽引してきた。結果、1990年代後半から2020年代初頭までIBMは米国特許取得件数28年連続で第1位を達成している。競争力ある知的財産の創出は、市場での競争力を高め、ビジネス拡大の手段にもなりえる。先端テクノロジーの研究開発に関わる評価や管理の仕組みを設け、新しい挑戦を支えている。

テクノロジーを新たなビジネスの成長機会として育てる仕組みの実践

IBMでは、先端テクノロジーを新たなビジネスの成長機会として育てる仕組みを考案し、発展を続けている。成長機会を複数の段階に分け、長期的な視点で支援が必要なテーマには、本社が主体となって事業化に向けた取り組みを行う一方、短期のコア・ビジネスは事業部がROIと生産性を追求する。また、いずれの段階においても、市場を創生するためのエコシステム構築を戦略的に実践している。

  • コア・ビジネス:Horizon 1 – 拡大と維持、利益と生産性のコントリビューションの追求
  • 成長ビジネス:Horizon 2 – ビジネス・モデルのスケール、市場シェアと成長機会の拡大
  • エマージング・ビジネス:Horizon 3 – テクノロジーとビジネス・モデルのテストを行い、実行可能性、ケイパビリティー、価値を証明。成長機会につながるアイデアの種を質・量共に精錬

市場や環境変化を先取りする継続的ポートフォリオ見直しと成長へのシフト

IBMの存在意義は、”Making The World Work Better(世界をより良く変えていく)”である。テクノロジー・リーダー企業としての先端テクノロジーを起点としたイノベーション創出(オーガニック)のみならず、M&A(イン・オーガニック)を戦略的に活用し、絶え間のない変革と成長を続けている。

IBMのテクノロジー・リーダーシップを通じて、エマージング・ビジネスから成長ビジネスへの成長、コア・ビジネスとしてのイノベーションを目指す代表領域に量子コンピューティングと先端半導体がある。

量子コンピューティングは、日々技術革新が進み、更なる発展や実用化に向け、ビジネスへの適用検証や業界を超えたエコシステム形成による市場創出の取り組みが活発化している。今後、量子コンピューターの性能向上や利用機会の拡大が期待される中、各業界(インダストリー)におけるテクノロジーの特性を理解した上での実問題(ユースケース)探求と実装に関する取り組みは、量子コンピューティングの科学的進歩との相乗効果により、社会的にインパクトのある価値を創出する可能性を飛躍的に広げている。

量子コンピューティングは企業に計り知れないほど大きな利益をもたらすポテンシャルを秘めており、社会に大きな影響を及ぼすと考えられている。同時に、これに伴って、デジタル経済を守るための情報セキュリティーのあり方も決定的に変わっていく。「耐量子」セキュリティーは、量子コンピューティングの時代に先駆けて到来すると見込まれており、全体の枠組みや標準も加速している。

そして、半導体デバイスはコンピューティングから電気製品、通信装置、交通システム、インフラまで、あらゆる分野で重要な役割を果たしている。IBMの革新的な2nmプロセスはパフォーマンスとエネルギー効率の向上に対する需要に挑戦するものである。2022年末に公表された量産化への取り組みは、日本の半導体産業のリーダーシップ確立に寄与し、バランスの取れた先端ロジック半導体のグローバル・サプライチェーンを確保し、企業や国々による活気あるエコシステムと新市場の創出を実現していくと期待される。

このように、IBMは社会・経営課題に、先端テクノロジーの研究開発への経営資源の重点投下から、テクノロジーを新たなビジネスの成長機会として育てる仕組みの実践している。革新的な先端テクノロジーと強い戦略を結合させ、自己変革を続けることの重要性を我々自ら証明しているのである。

IBMは、量子コンピューティングや半導体、AIなどの先端研究を始めとするテクノロジー企業として培った世界最先端の知見を有している。我々IBMの戦略コンサルタントは、先端テクノロジー起点のイノベーション創出を常に実践してきたIBMを日々コンサルタントとしての視点で分析・学習すると同時に、IBMの経営的視点に立って、これらの事業活動に当事者として取り組んでいる。我々はこれらの活きた知識と経験から得られた示唆に基づき、先端テクノロジー専門家や業界エキスパートと有機的に連携し、先端テクノロジーを活用したビジネスの変革、イノベーション創造、実行性の高い競争戦略を策定し、実現を牽引する。是非貴社の変革パートナーとして我々を活用いただきたい。

先端テクノロジー起点のイノベーション創出:IBMの提供価値

1. テクノロジー領域リーダーとしての知見活用

  • IBMはテクノロジー領域におけるリーダーシップを数十年以上継続して発揮し続けている
  • 先端テクノロジー要素は、量子コンピューティングや先端半導体、耐量子暗号(次世代情報セキュリティー)、AI・データ分析、クラウド、インダストリー・サイエンスなど多岐に渡っている

2. 先端テクノロジーの市場・事業化の実績

  • テクノロジーとビジネスの双方に精通する人材を保有し、先端テクノロジーを用いた事業化を実現する豊富な実績を有する
  • IBM自身の活動及びお客様への支援を通じて、先端テクノロジーを活用した事業・市場の立上げや事業化に関する実績を培い、市場での競争力を持続的に高めている

3. 戦略策定から実行まで一気通貫での伴走

  • 机上の戦略策定のみならず、先端テクノロジーからビジネスの創出の実行まで一気通貫でパートナーとして伴走・完遂する
  • また、事業を段階的に発展させるための専門家・組織(事業・技術領域、業界別)に加えて、新しい市場を創出するために、IBMのグローバル顧客・共創基盤を活用することも可能である
本シリーズでは、IBMの戦略コンサルタントが、IBM自身の経営・変革の仕組みを解説する。
IBMは、絶え間ない変革を続け100年以上も技術革新の激しいIT業界の中で、一時は赤字の苦境に立たされながらも会社を大きく改革させることで存続してきた。
そして今もIBMは、AIやHybrid Cloudなど最先端のテクノロジーと創造性をもって、お客様・業界・社会のあらゆる枠を乗り越えて、より良い未来づくりを実現すべくチャレンジし続けている。

IBMの戦略コンサルタントは、IBM自身のグローバル企業としての変革実践に裏打ちされた知見も用い、お客様の変革をサポートします。

寄稿者

西林 泰如

日本アイ・ビー・エム株式会社,コンサルティング事業本部, 事業戦略コンサルティング部門責任者, パートナー

橋本 光弘

日本アイ・ビー・エム株式会社,コンサルティング事業本部, 経営戦略コンサルティング, アソシエイト・パートナー