近年、大規模設備産業における設備集約・合理化のニュースが話題となっています。生産体制の効率化と言ったコスト面での大きなメリットがある一方で、突発故障の生産影響が大きくなり、安定稼働の重要性はますます高まっています。経年劣化が進む中で匠のノウハウで維持運用されている工場においては、ノウハウを形式知化しデータに基づいた保全計画・保全業務へ変革することが安定稼働を実現する為の重要なポイントになります。
大規模な工場において設備部品は数万点から数十万点に及ぶと言われていますが、安定稼働のためにはこれら設備部品の定期的な保全が欠かせません。従来の設備保全として、代表的な手法は2つ挙げられます。
日本の工場では稼働から数十年を経過しているケースは珍しいことではありませんが、現在でも設備保全業務に属人的な要素が残っていることも多く、以下のような課題が見られます
TBMでは、保全周期が適切であることが前提になっています。過去の突発的故障などが原因で、この保全周期が恣意的に短縮されることがありますが、逆に保全周期を延長することはまれであり、このような保全周期の短縮化が過剰保全を引き起こします。
保全周期短縮化の影響で、保全周期を超過した設備部品が多くなりますと、保全計画立案時に保全対象部品の保全費用が保全予算を超過してしまい、保全対象の絞り込みが必要になります。絞り込みには優先順位付けが必要になりますが、適切な基準がなく、保全担当者の属人的な判断に委ねられるケースも出ています
これらの課題を解決する手段として、リスク基準保全という手法が注目されています。リスク基準保全(Risk Based Maintenance : RBM)とは、故障のリスクという観点から設備部品を優先順位付けし、保全計画に活かす手法です。
従来の手法では「故障しそうかどうか」「いつごろ故障しそうか」という軸でのみ保全を考えてきましたが、RBMでは「故障が起きたときの重要度」という新しい軸を追加し、2軸で設備部品を評価します。
RBMの評価基準
重要度という概念を取り込むことにより、例えば同程度の故障発生確率の設備部品が複数あったときに、重要度に従った保全の優先順位付けが可能となり、客観的で裏付けのある保全対象部品の絞り込みを実現できます。
また、故障発生確率の計算についても、従来のTBMだけでなく、「IoTで得られる豊富なセンサー情報」と「ベテラン保全担当者に暗黙知として蓄積されている、設備部品の劣化メカニズム」を組み合わせ、高度に数理モデル化する取り組みが行われています。数理モデル化された劣化モデルは、従来のTBMのような恣意的な保全周期設定を回避し、設備部品の劣化実態に即した故障リスクの定量化を実現します。
さらに、重要度と故障発生確率からなるリスクマトリクスに設備部品をプロットすることで、膨大な設備部品の故障リスクを一覧化・見える化でき、工場全体のリスク状態が一元的に把握できるようになります。
リスク基準保全導入による定量効果は、2つ挙げられます
リスク基準保全は段階的に導入することも全体で一括導入することもできますが、ボトルネック工程から段階導入し、他工程、他工場へ展開することをお勧めします。システム構築のみならず業務変革を伴う活動になる為、関係者の問題意識の高いところからクイックに成功体験を積むことで、よりスムーズに変革を実現することが可能となります。