第1回は、サステナブル・サプライチェーン実現の重要性と鍵を紹介しています。
これまで日本では、サステナビリティーへの取り組みは、「企業価値向上には効くが儲からない」「原材料がリサイクル品や希少品となることで、コスト増加やオペレーションの煩雑性につながる」とされてきましたが、昨今では企業売上にも影響を与えるCSV戦略と位置付けられるほどにその重要性が増しています。エレクトロニクス企業がサステナビリティーを実現するためには、炭素排出量の計測・評価・削減を検討するのみならず、サプライチェーンの上流から下流までを見直し、再構築する事が喫緊の課題です。本稿では、サステナブル・サプライチェーン実現の重要性と鍵を紹介致します。
既に欧州などでは化学物質の排出量規制が実施されている様に、企業が製品や資源の回収、リサイクル品の活用について取り組む責任は、今後益々重視されます。企業のビジネス戦略を鑑みながら、サーキュラー・サプライチェーンの設計を検討する必要があります。
電機・電子業界において、大きく3つのグローバル・トレンドがあります。
1つ目は「運用コストの削減と業界競争力の維持」、2つ目は「リバース・サプライチェーン (RSC)の構築」、3つ目は「リサイクル/資材・材料廃棄物管理」です。
トレンド1「運用コストの削減と業界競争力の維持」
グリーン・ウォッシュが投資家から指摘されたり、消費者からの重圧が増したりする中、従来からの「サステナビリティーはコスト削減につながらない」という固定観念を覆して、運用コストを削減し業界競争力を維持するという動きです。
トレンド2「リバース・サプライチェーン (RSC)の構築」
地球規模の問題となる急増した電子廃棄物を、管理する要の取り組みとして注目を浴びているものです。
トレンド3「リサイクル/資材・材料廃棄物管理」
サステナブルな製品やプロセス、電子機器の転用などへの個々の企業の取組です。電子工学における主要な問題、業界に影響を与える重要な課題として考えられています。
これらのサステナビリティーのトレンドは、領域横断の課題となっており、IBMが考えるサステナブル・エンタープライズを実現する為の礎となる、サステナブル・サプライチェーン実現の重要な鍵になります。
しかしながら、企業としてすぐにサステナブル・エンタープライズに移行できないのと同様、サプライチェーンが一層サステナブルになるためには、各領域で取り組むべき施策と、領域横断で取り組むべき施策との関係を整理し、優先順位をつけたうえで、実行計画を検討する必要があります。以下にトレンドと各領域の施策の例を示します。この大きな枠組みだけでも11のテーマがある事が分かります。更に、これを細分化し、タスク・フォースを組んで進める段階においては、全体の管理体制やインパクト管理が出来る体制が重要となります。
各施策の優先順位や取り組みに向けたロードマップ作成を考えるヒントになるの は、サステナブル・サプライチェーンのステップです。IBMはサステナブル・サプ ライチェーンにおいて、4つのステップを提唱しています。
ステップ1「規制遵守(Comply)」
これは、政府機関や業界団体、株主、その他のステークホルダーから求められてい る情報開示を実施するステップです。ここで重要になるのは、開示に要するデータ を収集・加工・管理するシステムと統合的なレポーティング・ツール、及びそれを 実施する業務・承認・報告のサイクル設計です。一見、情報の可視化のみが求めら れているように捉えられがちですが、情報開示の内容によっては、企業の戦略や施 策、将来の目標値を求められるため、それらの情報を統合的に管理していく事が必 要です。まずは、企業内で既に管理されているデータを確認し、今後、報告に必要 になってくるデータ、及び、将来、報告や管理が必要になってくる情報をどのよう に収集していくかを検討する事が重要です。
ステップ2「エンドツーエンド最適化(Optimise)」
電機・電子業界においては、通常のサプライチェーンにおける環境負荷・運用コス ト・業界競争力を最適化するだけでなく、昨今のトレンドであるRSC(リバース・ サプライチェーン)を含めた形での最適化が重要になります。規制遵守のステップ を経て取り組むため、データ量が増える事が想像される中、それを蓄積・処理でき るデータ基盤の整備が重要です。さらに、通常のKPIモニタリングや数理解析は オートメーション化することで人間の作業負荷を減らしつつ、多面的な情報から重 要な判断を確実に実施できるようにする必要があります。当然、IoTやモバイル技術 を活用し、設備や製品の状態・位置などを自動的に把握し、それらの実データから リアルタイムで最適化を実施する事も重要となります。さらに、ロボティクスやド ローン技術の適用により最適化を加速する事が鍵となります。最適化については、 日本企業は「カイゼン」により世界的にも高度なレベルで実施することに定評があ ります。今後、一段進んだ形でサステナビリティーを加味した最適化においては、 最新技術も組み込んだ形での「カイゼン」が重要となってきます。
ステップ3「製品とサービスの刷新(Reinvent)」
自社の製品やサービスをよりサステナブルなものになるように、発想や設計を変え るステップです。このステージにおいては、多面的なサステナビリティーのパ フォーマンス管理、または、企業の経営管理と組み合わせた形での分析やシミュ レーションが重要になります。ここにおいては、AR/XRといった現実と仮想をつな ぐ技術、そしてそれを支えるデジタルツインの構築が必要になります。設計変更 が、素材や調達内容、生産工程や設備、物流、消費者やその先のリサイクル・回収 などの過程に、どのようなインパクトを与えるのか、シミュレーションしながら判 断する事が企業に求められるようになります。それゆえ、それを支える技術、デー タ、そしてAIを組み込んだ数理解析や傾向分析を実施し、その結果を統合して人間 が最適な判断を行うのが理想的な姿です。
ステップ4「サステナブル・リーダー(Lead)」
サステナビリティーを推進するリーダーとして、業界横断的な推進を担うととも に、自社での取り組みも一段進んだものが求められます。具体的には、イノベー ション・パイプラインとライフサイクル・インパクトの統合です。企業として新素 材や新技術を検討したり、取り組んだりするためのパイプラインとそれが調達・生 産・物流・消費者、そして、リバース・サプライチェーンに与えるインパクトを統 合的に管理する事が重要になります。このためには、業界・社会プラットフォーム との密接な連携と、各ステップを経て実現される高度な分析や情報解析の統合が必要になります。
上記のように、サステナブル・サプライチェーン実現のためには4つのステップが必要になり、複数領域においてどの取り組みを優先的に実施し、どこのステップを目指していくかという事を検討しながら、足元で必要な取り組みを実施していく事が重要です。
各社の戦略や取り組みを踏まえた上で、サステナビリティーをどのように着実に推進するのか、IBMはグローバルでの事例も紹介しながら、戦略・業務・システム・テクノロジーの4つの面からサポート致します。是非、ご相談ください。