IBMが毎年実施している世界の経営層を対象にしたCEOスタディ、2022年のテーマはサステナビリティー(持続可能性)でした。
これらに応える大変興味深い調査結果となっています。
調査全体の概要については、CEOスタディーのウェブサイトをご覧ください。
この記事では、自動車業界経営トップ層のサステナビリティーの取り組みへの姿勢を読み解いていきます。
まず、自動車業界にとってのサステナビリティーを考えるにあたって、背景となる特徴をいくつかあげたいと思います。
自動車業界に関係の無い方でも、「自動車」は毎日目にしていると思います。また、毎日ご自身が車を運転している方も多いでしょう。人々が毎日目にする車の多くは化石燃料を消費し、排気ガスを出しています。サステナビリティーを考える上で、自動車は多くの人の目に触れ、とても目立つ存在であるということは重要です。これはほかの製品、例えば銀行サービスや産業資材などと比較して見ればよくわかるでしょう。
自動車は膨大な点数の部品からなっており、商品企画や製品開発、製造過程もとても複雑です。基礎技術を研究開発し、製品を世に出し、サービスを提供し、リサイクルするまでに多数の企業が関わります。日本だけでも、関連産業も含めると500万人の雇用を抱える規模だと言われており、社会に与える影響力も甚大です。
では、IBMのCEOスタディでの自動車業界経営層の回答を見ていきましょう。世界の自動車業界180人のCEOへのインタビュー調査を実施しました。うち60人は自動車会社、120人はサプライヤーの経営トップです。
今後2〜3年間のビジネスにとって最も影響がある外部要因について、自動車会社の経営層は「環境」をトップにあげています。一方、サプライヤーの経営層は「市場動向」を最大要因としてあげており、「環境」は7位と比較的下位です。自動車会社経営層が環境対応について外部から直接のプレッシャーを感じている一方、サプライヤーは、自動車会社が進む方向性によって作られる市場動向を注視する、という姿勢なのかもしれません。
次に自動車業界経営層にとっての今後数年間の優先事項と課題について見ていきます。経営上の優先事項としては、「1.イノベーション促進(62%)」「2.サプライチェーン改善(52%)」「3.販売効率向上(51%)」が上位に上がっており、「サステナビリティー(4位47%)」は最優先ではありません。これは自動車会社が現在大変革期にあること、直近のサプライチェーンの混乱を踏まえれば妥当な回答だと思います。
一方、課題という観点から見ると、サステナビリティー対応は、サプライチェーン問題対応に次ぐ難しい課題だと認識されています。ここでも、サプライヤー経営者は、市場の移り変わりへの対応や規制対応が大きな課題だと回答しており、自動車会社とサプライヤーの間に温度差があるのは大変興味深い点です。
では、サステナビリティー対応について、ビジネスに関わるステークホルダーのうち、誰に対して情報開示が求められているのでしょうか。他業界の経営者同様、役員会(72%)と投資家(63%)への報告義務が規制当局(36%)顧客(12%)従業員(6%)を大きく上回っています。これが意味することは、投下した資本に対してのリターン、投資効率が求められるということでしょう。実際に、自動車O E Mの半分以上(53%)が、「サステナビリティー投資はビジネスの成長につながる」と回答しており、サステナビリティーと収益性を結びつける強い意思を窺い知れます。
サステナビリティー投資のリターンが実際にリターンを生み出す時期については、半分以上(55%)の自動車業界CEOが「3年以内」と回答しています。一方、サステナビリティー目標を達成するための最大の障害は投資効果の算定(58%)やデータからの洞察不足(47%)となっています。すばやくサステナビリティー関連のデータ分析基盤を整備し、活動を見える化していくことが重要でしょう。
CEOスタディでは、業績や利益率が高い企業グループのサステナビリティー戦略や考え方と、そのほかのグループを比較して、自社戦略へ活かすヒントを抽出しています。今回3つのポイントが提示されています。
もっと細かい調査結果のニュアンスについて知りたい、自社の状況について他社と比較して立ち位置を知りたいなどのご要望がございましたら、ぜひお問い合わせください。